カーボンニュートラル達成のための自動車業界の取り組みとは?

政府は2050年までにカーボンニュートラルを達成すると表明しました。これは、日本の基幹産業である自動車業界も例外ではありません。

自動車業界は二酸化炭素排出にどのように取り組むべきなのでしょうか。自動車業界の取り組みの現状と世界で開発が進む電動車、主な電動車の種類などについてまとめます。

目次

  1. 政府が目標とする2050年カーボンニュートラル達成

  2. カーボンニュートラルで削減に取り組むべき温室効果ガスとは

  3. 自動車業界と二酸化炭素の関わり

  4. 世界で開発が進む電動車

  5. 主な電動車(xEV車)の種類

  6. まとめ:自動車業界全体で二酸化炭素排出量削減に取り組もう

1. 政府が目標とする2050年カーボンニュートラル達成

2020年10月、菅総理は国会で行われた所信表明演説で、2050年までに日本はカーボンニュートラルを達成すると宣言しました。これをうけて、関係各省庁はカーボンニュートラル実現のための取り組みを加速させます。

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』(2020)

そもそも、カーボンニュートラルとはどのような状態なのでしょうか。簡単に言えば、二酸化炭素排出量と吸収・除去量を差し引きゼロにする取り組みだといえます。

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』(2021/2/16)

カーボンニュートラルは日本独自の取り組みではありません。ヨーロッパやアメリカを中心に世界124カ国が2050年までのカーボンニュートラルを表明しました。日本はこの世界的な潮流に乗り、環境保護と産業成長の両立を図らねばならないのです。

2. カーボンニュートラルで削減に取り組むべき温室効果ガスとは

地球温暖化を加速させると考えられる気体を「温室効果ガス」と呼びます。温室効果ガスには、二酸化炭素のほかにメタンや一酸化炭素、代替フロンガスなども含まれます。

出典:資源エネルギー庁『環境 | 日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」 』(2020)

日本で排出される温室効果ガスの85%が火力発電などエネルギー起源の二酸化炭素です。ということは、このエネルギー起源の二酸化炭素こそ、もっとも削減しなければならない温室効果ガスだといえます。

そのため、政府は再生可能エネルギーの利用促進や温室効果ガスの排出量が少ない原子力発電の割合増加に力を入れています。

3. 自動車産業と二酸化炭素の関わり

出典:経済産業省『自動車製造業における地球温暖化対策の取り組み』(P4)(2020)

自動車産業はの規模は非常に大きく、主要製造業の設備投資金額のおよそ4分の1を占めます。金額ベースでみると、生産額は21.5兆円に達しました。これは、部門別で最大の金額です。このことから、自動車産業が日本の中核産業の1つであることがわかります。

自動車の製造工程は大きく分けて車両本体の製造と、エンジンをはじめとする各種部品にわけて考えられます。二酸化炭素排出量が多いのは塗装と部品の鋳造、機械加工の工程です。

特に部品は下請けの中小企業が自動車会社に納品する場合が大半です。中小企業は鋳造や機械加工・鍛造などの工程で二酸化炭素排出量の削減を強く求められるでしょう。

出典:経済産業省『自動車製造業における地球温暖化対策の取り組み』(P15)(2021/1/28)

こうした状況を踏まえ、自動車産業全体で二酸化炭素排出量の削減をはかりました。その結果、エネルギー供給や使用、運用管理技術、生産ラインの改善などを通じて11.9万トンの二酸化炭素削減に成功しました。

4. 世界で開発が進む電動車

出典:経済産業省『資料3 事務局参考資料』(P34)

電動車とは、バッテリーに蓄えられた電力の一部、または全てを動力として用いる車両のことです。世界的に電動車の普及が加速しています。かつて、すべての自動車はガソリンエンジン車でしたが、2020年の段階で1.5%が電動車に切り替わりました。

2020年段階で1.5%だった電動車のシェアは2030年で32%に、2040年には51%にまで増えると予想。ガソリンエンジンの搭載率は2040年には84%に低下すると考えられます。これにともなって、電動車用の充電設備の増設などインフラ面での対応が急務となります。

出典:経済産業省『資料3 事務局参考資料』(P34)

5. 主な電動車(xEV)の種類

出典:資源エネルギー庁『「電気自動車(EV)」だけじゃない?「xEV」で自動車の新時代を考える』(2018/8/21)

HV車・PHV車

HV車(ハイブリッド車)は2つ以上の動力源を備えている自動車のこと。ガソリンエンジンと電動モーターを組み合わせて動力源とするのが一般的です。トヨタ自動車の「プリウス」がもっともイメージしやすいHV車ではないでしょうか。

ただ、HV車は外から充電することはできず、ガソリンエンジンを使って走行中に発生するエネルギーの一部を充電に回します。

これに対し、PHV車(プラグインハイブリッド車)は外部の電源から充電可能ならハイブリッド車です。ということは、充電のみでも走行可能だということです。ガソリン車でもあり、充電可能な電気自動車でもあるというのがPHV車の強みといえるでしょう。

EV車

EV車(電気自動車)は、バッテリーに電気を充電し、その力で走行する自動車のことです。日産自動車の「リーフ」が電気自動車の先駆けとなりました。バッテリーでモーターを動かす仕組みのため、ガソリンエンジンは搭載していません。

ガソリンエンジンを使わないので、EV車は非常に静かという利点があります。さらに、再生可能エネルギーを用いることで二酸化炭素削減に貢献できるとして世界中で期待されています。

しかし、現在はまだ開発途上の技術であり、航続距離やバッテリー性能への不安があります。また、充電設備の整備も進めなければなりません。

FCEV車

FCEV車(燃料電池車)は、燃料電池で発電した電力をつかって走行します。燃料電池は水素と酸素を化学反応させ、それによって発電します。水素と酸素の反応では水と電気が生み出されるだけなので二酸化炭素を排出しません。

燃料となる水素は水素ステーションで補充します。今後、全国各地に水素ステーションが整備されると、FCEV車の普及促進につながるのではないでしょうか。

出典:資源エネルギー庁『第3節 ”水素社会”の実現に向けた取組の加速 』(2016)

ちなみに、燃料電池に使用される水素エネルギーは自動車だけではなく、他の産業にも応用できると期待されています。今後は大企業だけではなく、中小企業も水素ビジネスに参入するのではないでしょうか。

6. まとめ:自動車業界全体で二酸化炭素排出量削減に取り組もう

自動車は約3万点の部品を組み立てる総合組立工業です。そのため、自動車産業に関わる下請けの中小企業は全国に多数存在しています。

一つ一つの企業が排出する二酸化炭素量はたかが知れているかもしれません。しかし、その小さな排出量が積もり積もれば大きな排出量となってしまいます。

今後は、自動車業界に関わるすべての企業が二酸化炭素排出量を削減することが求められるでしょう。生産活動の見直しや再生可能エネルギーの導入など、それぞれの企業ができる二酸化炭素排出に積極的に取り組む必要があるのではないでしょうか。

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