世界の省エネルギーの取り組みは?今あなたに出来る事は何か?

日本は外国に比べると化石資源に乏しい国となっており、それゆえに数々の省エネルギー政策に取り組んできました。その努力の結果からか、日本は省エネルギー分野でトップクラスとなっています。

しかし世界中で資源の枯渇が危惧されており、省エネルギーの取り組みは継続していく必要があります。今回は企業や家庭で取り組める省エネルギー活動と、世界の各国ではどのような省エネルギー政策を実施しているのかをまとめてみました。

目次

  1. 世界が取り組んでいる省エネルギーとは?

  2. 企業が取り組んでいる省エネルギーの方法

  3. 家庭で取り組むことが出来る省エネルギー

  4. まとめ:試しに1つ、省エネルギーの取り組みを実行してみよう

1. 世界が取り組んでいる省エネルギーとは?

省エネルギー政策は世界各国でも次々に実施されています。世界全体では法体系と連携することで、省エネルギーを義務化するといった動向も見られており、省エネルギーが世界共通の目標になっているのがわかります。

アメリカの省エネルギーの取り組み

元来アメリカは世界最大のエネルギー生産国でありながら最大の消費国でもあり、エネルギーの輸入国家でした。しかしシェールという硬い岩盤の層から天然ガスの採掘に成功し採算性が向上したため、エネルギーの自給割合は約90%まで上昇しています。

そんなアメリカでは現在、建築法の一部として省エネルギーに取り組んでいます。省エネ基準の遵守はその建物のオーナーに法的義務として課されており、州の制度によって多少の違いはあれど省エネに対して前向きに取り組んでいるように思います。

さらにEERS(The Emissions and Energy Reporting System)という省エネ対策が実施されており、エネルギー供給事業者に省エネ義務量を設定するといった方法も取られています。エネルギー供給事業者はエネルギーを消費する需要家に対し、一定の省エネルギー目標値を達成しなければいけないという義務があります。

達成期間としては1年間もしくは数年の累積の削減値で評価するシステムが実施されており、州ごとに目標値も異なっています。現在では目標値は低く設定されておりほとんどの州では目標の値に達成することができているようです。

イギリスの省エネルギーの取り組み

イギリスは元来化石資源に富んだ国だったのですが、現在では段々とエネルギーが枯渇し生産量は減少の一途を辿っています。そういった問題に対処する為にイギリスでは国を挙げて環境問題や省エネに取り組んでおり、2035年には温室効果ガスを1980年比で78%削減することを目標に掲げています。

主要国の削減目標(2021時点)

出典:各種報道資料を元にアスエネが作成

そんなイギリスでは、スマートメーターの全世帯設置やグリーンディールという省エネ施策に対する融資の制度、原子力発電の新設決定といった取り組みも行っています。国規模の政策では、原子力や洋上風力発電といった電力貯蔵のコストダウンを促進する為に9億ポンドの投資をしています。

出典:資源エネルギー庁「省エネ法の概要」

その他には、2025年を目標とした石炭燃料の廃止であったり、2040年を目標としたガソリン車やディーゼル車の販売禁止であったりが決定されています。

日本の省エネルギーの取り組み

日本では1973年と1979年に起こったオイルショックや2011年の東日本大震災を経て、省エネに対しては前向きに取り組んできており、世界の中でも高水準の省エネ国家となりました。

省エネ法(正式名称は「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」)が制定され、今日まで度重なる法改正を行うごとに国全体での省エネに対する意識はかなり高いものとなっています。省エネ法の中には、エネルギーの販売事業者を対象に、省エネの規範を示すことにより各企業に省エネに努めさせることを規定するものもあります

また一定以上のエネルギーを消費している事業所には、年に一度国に定期報告を行うことが義務づけられています。各事業所の省エネへの取り組みの評価をするシステムも存在しており、評価の基準の一つとして「エネルギー消費原単位※を年間で1%以上低減できているか」というものがあります。

※エネルギー消費原単位とは、一定の生産活動を行う企業などのエネルギー使用量の単位です。工場などでエネルギーの消費効率が高いつまり省エネ対策が行われている機器などを投入すると、製品の製造にかかるエネルギー量は減り、エネルギー消費原単位は低減されるという結果になります。

省エネ法では消費原単位を含む数々の判断基準に照らし合わせ、定期報告の内容も加味した上で、場合によっては立ち入り検査や指導を行っています。

出典:資源エネルギー庁「省エネ法の概要」

2. 企業が取り組んでいる省エネルギーの方法

省エネは全国共通の課題になっており、企業や事業所でも省エネ対策は盛んに行われています。

例えばスマートメーターを設置することで使用電力を可視化することができ、省エネの結果を実感することも可能となっています。企業によっては太陽光発電を自社建物に設置することで、電気を自分達で作り出しその電力を使用するといった自給自足を行っている企業も存在します。

現在では各企業での省エネ対策に加え、企業間での連携も重視されています。

従来の工業地帯では、各企業が太陽光発電の使用やLEDライトへの変更などの省エネ対策をしてきましたが、近年では各企業や工場の垣根を超え、工業地帯全体でコージェネレーションシステム※といったものも導入されています。例えば、複数の企業や工場でエネルギーを共有することによって単独では難しく思うこともあった省エネを全体で実施するといったものです。

コージェネレーションシステムとは、石油やガスから発電し、その際に生じた熱も利用するシステム・設備のことです。

中小企業が行っている省エネ法の実例

中小企業での省エネルギー対策としては、機材を新規に買い替えるといったものより個人個人の省エネに対する意識の向上が図られています。

たとえば照明に関して、間引きなどの不要時の消灯を徹底することやLED照明への交換、空調換気システムにおいては温度の適切化や室外機のフィンとフィルターの清掃といった細かい部分まで意識する必要があります。

その他にも対策できる項目は多々あります。

  1. コンプレッサの吐出圧力の適正化

  2. エア配管の漏れ防止

  3. 吸気フィルターの清掃

  4. 生産設備の不要時の停止

  5. 設定温度・流量・圧力等の適正化

  6. 工場炉の空気比の適正化

  7. 給湯配管設備の空気比・空気圧力温度の適正化

など、多数の項目が挙げられます。

このように中小企業で行える省エネは現在使用している機材の最適化を図ることや、個人の意識で不要時にしっかりと電源を切るといったことが重要になってきます。

省エネ法の支援制度

現在では法人向けの省エネ支援制度は多数あり、補助金の量も多種多様になっています。二酸化炭素の排出量を抑える為の機材の導入には助成金がおりる場合もあります。

他にも、企業に診断機関を派遣し、設備の導入や使用状況、エネルギーの消費状況を確認してもらい、現場に合った適切な二酸化炭素の排出を抑える為の提案を行ってくれます。その結果省エネ機材の購入などを提案された場合には、その機材の導入費にかかる費用の支援を受けることができます。

地方公共団体の所有施設及びに中小企業の所有ビルに対しては、ZEB※の実現に資する省エネ性の高い設備や機材の導入を支援してくれる制度も存在します。

※ZEBは、Net Zero Energy Building の略称で、快適な室内環境を維持しつつ、省エネと自家発電によりエネルギーの消費量をゼロにしようとする取り組みです。

出典:資源エネルギー庁「事業者向け省エネ関連情報 各種支援制度

3. 家庭で取り組むことが出来る省エネルギー

これまでは企業が実施できる省エネ対策を紹介してきましたが、個人でもできる省エネ対策は多数あります。家では器具の使用方法によっては大量のエネルギーが消費され続けています。例えば冷暖房器具や自動車。これらは常にエネルギーを使用します。

家庭での取り組みでは賢くエネルギーを使用することが重要になっており、エネルギーを節約することによって燃料代や電気代といった定期の出費を抑えることも可能になります。企業と同様に、無駄なエネルギーを使用しないことが基本になってきます。

家庭で生産されている二酸化炭素

日常生活を送るにあたって二酸化炭素の排出は避けて通ることのできる問題ではないと思います。もちろん生物が呼吸をするだけでも二酸化炭素は生成されますが、なによりも多くの二酸化炭素を排出してしまうのは家庭ごみの燃焼です。

一家庭での二酸化炭素の排出量は車がトップなのですが、それに次いで廃棄物の燃焼は二酸化炭素を多く排出しています。車は電気自動車やハイブリット車が多くなってきており、二酸化炭素の排出量はやや減少傾向にありますが、家庭ごみは未だに減少傾向にありません。

今後省エネや省ガスを行う上で、家庭ごみを減らしていくことも重要です。

家庭で行う省エネ行動

家庭で行える省エネも数多く存在します。上記でも記載しましたがスマートメーターを使用することにより実際にどれほど省エネができているのかを実感することができます。

家庭を省エネルギー化する取り組みとしてZEH化するという方法もあります。企業向けの取り組みとしてZEB化するという言葉がでできたと思いますが、ZEBのBはビルディングからきています。つまりZEHのHはハウスからきており、個人で所有する家を省エネ化することで企業のビルや工場と各家庭の家での大規模な省エネができると考えられています。

省エネをすることによって余分な排気ガスや電力を減らし、創エネによって作り出したエネルギーを使用することにより今まで使用していた分のエネルギーを節約することができ、ZEB化やZEH化の理想どおりにいけば実質家庭や企業での消費エネルギーがゼロになると言われています。

4. まとめ:試しに1つ、省エネルギーの取り組みを実行してみよう

法体制として補助金がおりる場合もあったりと、日本でも全面的に省エネに取り組んでいる様子が伺えます。いずれ近いうちに化石燃料などの資源も枯渇すると危惧されているため、世界規模で省エネルギー化は重要課題とされています。

個人での省エネルギーに対する取り組みはもちろん、企業間の連携を行うことで消費電力の高効率化を図ることは、今後より一層求められます。今まで様々な方法を紹介しましたが、実行しなければ効果は出ません。まずは1つ、試しに実行してみてはいかがでしょうか。

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