食品ロスと企業が必要な取り組みについてご紹介

近年、日本で問題になっていることの一つが「食品ロス」です。食品ロスをなくすため、企業はどのように取り組んでいるのでしょうか。

今回は食品ロスとは何か、食品ロスに企業が取り組まなかった場合のデメリット、企業が対応すべき取り組みなどについてまとめます。

目次

  1. なぜ、企業が食品ロスに対しての取り組みをしなければいけないのか

  2. 食品ロスに対して企業が取り組みをしなかった場合の悪影響

  3. 食品ロスに対して企業が対応すべき2つの取り組み

  4. まとめ:中小企業にとっても、食品ロス対策は必須となる

1. なぜ、企業が食品ロスに対しての取り組みをしなければいけないのか

企業が食品ロスに対応しなければならない理由を考える前に、そもそも、食品ロスとはどのようなものか整理する必要があります。その上で、企業ができる食品ロス対策について整理してみましょう。

(1)そもそも食品ロスとはなにか

食品ロスとは、本来ならば食べられるにもかかわらず捨てられている食べ物のことです。

令和元年度の食品ロス

出典:環境省「消費者向け情報 | 食品ロスポータルサイト」

2019年(令和元年度)の食品ロスは、家庭で261万トン、事業者で309万トン発生しており、合計で570万トンに及ぶと推計されます。

こうした膨大な量の食品ロスは、SDGsを重視する近年の世界情勢と逆行するものであり、可能な限り減らさなければなりません。

(2)食品ロスの現状

食品ロスの内容をさらに細かく分析すると、家庭用では食べ残しが最も多く、次いで直接廃棄、過剰除去と続きます。食卓に上ったもののうち、食べきれずに廃棄してしまう食べ残しが最多であるのは意外かもしれません。

次に多い直接廃棄は、賞味期限切れなどにより使用されず手つかずのまま廃棄される食品のことです。賞味期限が過ぎる前であっても廃棄するケースなどがみられ、かねてから疑問視する報道がみられました。

3つ目の過剰除去は、食べられない部分を取り除くときに、一緒に食べられる部分も取り除いてしまう結果発生する廃棄です。

出典:環境省「消費者向け情報 | 食品ロスポータルサイト」

一方、事業者の食品ロスについてはどうでしょうか。

業種別食品ロス量の推移

出典:環境省「事業者向け情報 | 食品ロスポータルサイト」

最もロスが多いのは食品製造業、次いで外食産業、食品小売業、食品卸業と続きます。食品製造業における食品ロスの原因は、製造工程のロス(パンの耳等)や返品が多くを占めます。

外食産業の食品ロスは食べ残しや仕込みロスが、食品小売業・卸売業での食品ロスは返品、納品期限切れ、売れ残りや破損品等がそれぞれ原因として考えられています。

出典:環境省「事業者向け情報 | 食品ロスポータルサイト」

(3)食品ロスに対しての取り組みで企業ができること

食品ロスを削減するため、企業はどのような取り組みが可能なのでしょうか。国は、事業者に対して以下のような削減方法を提案しています。

事業者が食品ロス対策としてできること

出典:環境省「事業者向け情報 | 食品ロスポータルサイト」

まず、食品に関わる全ての事業者に対し、商習慣の見直しや余剰食品のフードバンクへの寄付、需要予測の精度向上などを求めています。特に注目するべきは商習慣の見直しです。

食品の3分の1ルールとその見直し出典:農林水産省「MAFF TOPICS(2)」

食品業界には「3分の1ルール」という商慣習があります。製造日から小売への納品期限は賞味期限の3分の1までとされ、賞味期限の3分の1を切ったら店頭から撤去し廃棄するというルールです。

上の図では、賞味期限6カ月の商品は、納品までに2か月かかり販売期限が賞味期限の2か月前であるため、実際に店頭に並んでいるのは期間の3分の1である2か月に過ぎません。

国は、納品期限や賞味期限のあり方を見直し、ぎりぎりまで商品が店頭に並ばせることを目指しています。同時に、納品期限を緩やかにすることで、期限に間に合わず廃棄されることも防ごうとしています。

2. 食品ロスに対して企業が取り組みをしなかった場合の悪影響

国は2030年までに事業系食品ロスを2000年度比で2030年までに半減させるという目標を建てました。なぜ、そこまで早急に食品ロスを減らしたいのでしょうか。そこには、食品ロスへの対策が進まなかったときにおきるさまざまな事象があったのです。

(1)環境面への悪影響

廃棄されてしまった食べ物は可燃ごみとして捨てられます。各家庭や事業所から出された可燃ごみは処理場で燃やされCO2を排出します。これが、地球温暖化を促進させてしまいます。

また、水分を多く含む食料は重量がかさみ運搬する際に燃料を消費します。その結果、CO2排出量を増加させてしまいます。

出典:農林水産省「食品ロスの現状を知る」

(2)経済面への悪影響

食品ロスは経済的観点から見ても悪影響をもたらします。2017年に全国の市町村や特別地方自治体がゴミの処理に費やした経費は2億円。この中に、廃棄された食料品が含まれます。

その一方、家計における食費は消費支出の4分の1を占めています。折角手に入れた食料品を作りすぎたり、消費しなかったことなどによってゴミにしてしまっているという現実があります。

食品ロスを改善しなければ、こうした経済的損失を減少させることはできないでしょう。

出典:消費者庁「令和2年版消費者白書」

3. 食品ロスに対して企業が対応すべき2つの取り組み

食品ロスを削減するため、企業はどのような取り組みができるでしょうか。取り組みを3点取り上げます。

(1)冷凍保存技術の活用

1つ目は冷凍保存技術の活用です。農林水産省では以下の4つの条件をクリアしたものを「冷凍食品」としています。

  • 商品を-18度以下の温度で保管していること

  • 前処理をしていること

  • 適切に包装していること

  • 急速凍結していること

出典:農林水産省「おいしさの秘密を探る! 冷凍食品豆知識と製造工場レポート」

余った食料品を冷凍保存したり、冷凍食品の生産量を増やしたりすることで、食品の廃棄を防ぐことができます。

(2)賞味期限の延長

2つ目は賞味期限の延長です。農林水産省は『食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢』の中で「製造過程における⾷品の品質保持技術の発展によって、賞味期限の⾒直しが可能」となったとして、賞味期限の見直しを各事業者に促しました。

平成24年から始まったこの試みにより、平成26年から袋麺の賞味期限は6か月から8カ月に、カップ麺の賞味期限は5カ月から6か月にしたものが現れました。

賞味期限表示の年月表示化の実施状況

出典:農林水産省『食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢』2023年1月 p.43

賞味期限の延長は徐々に進められ、清涼飲料水や菓子、レトルト食品、調味料、冷凍食品などでも実施されつつあります。

3. まとめ:中小企業にとっても、食品ロス対策は必須となる

今回は、食品ロスの現状と食品ロスに対応しなかった場合の悪影響、企業が取り組むべき2つの対応についてまとめました。

食品ロスはSDGsの観点からも、また、企業の持続的発展という観点からも避けて通れないテーマとなるでしょう。食品ロス対策をコストと考えるのではなく、積極的に取り入れ、自社のアピールポイントとして活用しましょう。

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