気候変動により大型台風が日本を襲う!その時企業がとるべき対策とは

近年の日本では、台風や線状降水帯による水害が毎年のように発生しており、その原因は気候変動と考えられています。1日で1か月分の降水量が降ることも珍しくなく、企業も甚大な被害を受けている状況です。

さらに、今後は気候変動により、台風の最大風速及び降雨量が増加する可能性が示唆されています。地域によっては毎年被害が発生する可能性もゼロではありません。

そこで今回は、大型台風の襲来やに備え、企業がとるべき対処法を解説していきたいと思います。気候変動により発生する台風以外のリスクも紹介しますので、甚大な被害が出る前にぜひ対策を行ってください。

目次

  1. なぜ気候変動により大型台風が生まれるのか

  2. 台風だけではない気候変動によるリスク

  3. 気候変動を見据えたビジネスのポイント

  4. まとめ:災害への徹底したリスク管理を!

1.  なぜ気候変動により大型台風が生まれるのか

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書によると、世界全土で気候変動が観測されています。この気候変動の原因とされているのが、温室効果ガス(二酸化炭素)の増加による地球温暖化です。台風が大型化する原因もここにあります。

出典:連合広報センター『気候変動は拡大し、加速し、深刻化している』(2021)

(1)温暖化による海水温の上昇

台風は海面水温が26.5℃以上の暖かい海で発生し、海面水温が高いほど台風の勢力は強くなると言われています。水温が高いと、大気中に含まれる水蒸気の量は多くなり、これが台風のエネルギー源となるためです。

気象庁の観測データによると、日本近海の海面水温は年々高くなっており、猛烈な台風が上陸する可能性が高くなることが示唆されています。

出典:気象庁『台風の将来予測』(2014)

出典:気象庁『海面水温の長期変化傾向(日本近海)』(2020)

出典:気象庁『地球温暖化で猛烈な熱帯低気圧(台風)の頻度が日本の南海上で高まる ~ 多数の高解像度温暖化シミュレーションによる予測 ~』(2017)

(2)将来的にも続く温暖化

出典:気象庁 『二酸化炭素濃度の経年変化』(2020)

気象庁が公開している地球全体の二酸化炭素の経年変化のデータを見て分かる通り、1985年から比べると2020年の二酸化炭素濃度は約18%増加しています。IPCC第5次評価報告書によると、このまま対策が取られなければ、2100年までに気温は最大で4.8℃上がるとされています。

仮に、直ちに大幅な二酸化炭素削減の対策を取ったとしても、気温の上昇は免れません。今後も温暖化の傾向は続き、台風大型化の可能性も高くなるでしょう。

出典:温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センター『 700~2100年までの気温変動(観測と予測)(2007)』

(3)日本ではほかの地域に比べ早いペースで気候変動が起きる可能性がある

皆さんご存じの通り、温暖化は世界各国で起こっています。気象庁が2021年に発表した「気候変動監視レポート 2020」では、2020 年の世界の平均気温の基準値(1981~2010 年の 30 年平均値)からの偏差は+0.45℃です。

一方で、2020 年の日本の年平均気温の偏差は+0.95℃と世界平均を上回る値でした。これは、日本がほかの地域に比べて早いペースで、気候変動が起こる可能性を示唆しています。

出典:気象庁『気候変動監視レポート 2020』(2020)

出典:気象庁『気候変動監視レポート 2020』(2020)

2. 台風だけではない気候変動によるリスク

気候変動によってもたらされるリスクは、台風だけではありません。私たちが今までに経験したことのない様々な現象が起こることが予想されます。

(1)大雨

2021年8月、佐賀県では3日強で1000mmを超す雨が降っており、1000㎜という雨量は、年間雨量の40%以上となる大雨です。佐賀県の発表によると、この大雨による被害金額は300億円を超えています。地元の個人商店、中小企業も甚大な被害を受け、事業継続の危機に瀕している企業もあります。

出典:佐賀県『被災状況』(2021)

(2)洪水と干ばつの二極化

日本では短期間に100mm以上の大雨が降り水害が発生していますが、亜熱帯地域の大部分では雨期の降水量が減少すると予想されています。さらに、アフリカでは洪水と干ばつの両方の被害を受けている地域もあります。世界に拠点がある企業は、地域に合わせた対策が必要となります。

出典:ピースウィンズ・ジャパン『【エチオピア調査】干ばつと洪水の二重苦の中で』(2021)

(3)海洋生態系の変化

温暖化により、海水温が上昇しています。このほかにも、海の酸性化、酸素濃度の低下などの現象が発生しており、海の中の生態系は変化しつつあります。

出典:神奈川県『気候変動と海洋生態系』(2021)

これらの変化は、直ちに温暖化対策をとっても直ちに改善するものではありません。日本は島国で海に囲まれており、海に関連する仕事に従事している人も多くいます。今後も続く海洋生態系の変化に合わせ、事業形態を変えざるを得ない人が多く出てくるでしょう。

(4)気温上昇による熱ストレス

近年、夏の暑さが厳しくなったと感じる人も多いのではないでしょうか。気象庁の統計によると、全国の真夏日の年間日数はこの100年間で、7日増加しています。

出典:気象庁『大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化』(2020)

国立環境研究所の報告によると、熱中症による死亡者数も右肩上がりで増えていることがわかります。真夏日の増加に伴い、夏場の屋外作業を伴う仕事に従事する人は、適切な対応を取らなければ命に係わる環境の中、業務に当たらなくてはなりません。

出典:国立環境研究所『熱中症患者の発生状況と今後の予測』(2009)

3. 気候変動を見据えたビジネスのポイント

今後、私たちが今までにない災害に直面する可能は非常に高いと言っていいでしょう。日本のみならず、世界各国で気候変動による災害の被害にあう可能性があります。2021年、カナダでは、異常熱波が発生し最気温が49.6度を記録しました。研究者たちもカナダのような緯度の高い地域でこのような熱波が発生するとは予想していませんでした。「これまで災害がない地域で事業を行っているから安全」ということはありません。気候変動を見据えた対策が必要になってきます。

出典:気象庁『世界の月ごとの異常気象』(2021)

(1)風水害に対応できる技術・サービスの提供

今後も台風や大雨の発生リスクは、上がることはあってもしばらく下がることはないでしょう。台風や洪水、集中豪雨により対策を盛り込んだ設備設計、サービスの提供が必要になってきます。必ずしも新規に事業を立ち上げる必要はなく、自社の既存製品やサービス、強みを「適応ビジネス」として活用できないか検討してみましょう。

出典:環境省『民間企業の気候変動対応ガイド』(2019)

出典:環境省 文部科学省 農林水産省 国土交通省 気象庁『気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018 』(2018)

(2)気象情報を蓄積できるサービスの提供

農業や水産分野は、特に天候に左右されます。気象情報を蓄積できるサービスは、今後、需要が伸びてくると予想されます。その他にも、天候に売り上げが左右されるアイスクリームやホッカイロといった季節商品分野でも需要があるでしょう。

これまでに経験した事例を収集することが、気候変動に適応をするための第一歩となります。災害が起こったが被害が発生しなかった事例、一見、気候変動との因果関係がなさそうな事例、他社の事例など、データを蓄積することで自社の事業計画に生かせることもあります。

出典:環境省『民間企業の気候変動対応ガイド』(2019)

出典:環境省 文部科学省 農林水産省 国土交通省 気象庁『気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018 』(2018)

(3)気候変動による被害を見据えたリスクマネジメント

企業としては、災害に備えた設備、システムの構築が必要です。複数の拠点に生産やシステムを分散させたり、定期的なバックアップを行い、被災した際のリスクを低減させましょう。災害が起こった時にも、製品やサービスを安定供給できる体制が求められます。

出典:環境省『民間企業の気候変動対応ガイド』(2019)

出典:環境省 文部科学省 農林水産省 国土交通省 気象庁『気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018 』(2018)

新型コロナウイルス感染症の流行により、パラレルワークが注目されましたが、企業も複数の商品や分野で売り上げの柱を作っておくと安心です。

 (4)従業員の安全確保

気候変動に伴い、作業中に熱中症で体調不良になるリスクも増えてくるでしょう。企業としては、適切な休憩や水分補給を促す、冷気が停滞する場所を作るなど、作業現場における体調管理を行う必要があります。

その他にも、台風が接近している場合は、臨時休業や自宅待機の判断を素早く行う必要があります。強風や大雨の中で出勤をさせ、従業員が事故にあった。退勤の判断が遅くなり、公共交通機関が止まり、従業員が帰宅困難になる。このような事態が多発すれば、従業員からも会社の危機管理が不十分であると判断されかねません。

4. まとめ:災害への徹底したリスク管理を!

気象庁の研究によると、気候変動により台風は大型化する可能性が示唆されています。台風以外にも、大雨による洪水や土石流、平均気温の上昇による熱中症の増加など、気候変動に起因する災害は今後も増えていくでしょう。

企業として、気候変動を見据えたリスクマネジメントが必要です。災害は起こってから対応していては間に合いません。緊急事態が発生した場合、損害を最小限にとどめ、事業継続ができるよう前もって対応しておきましょう。

アスエネESGサミット2024資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
アスエネESGサミット2024