日本でも推進!カーボンプライシングとは?

カーボンプライシングとはどのような脱炭素への取り組みなのでしょうか。日本においてカーボンプライシングは、2050年までのカーボンニュートラルを実現させるための取り組みの1つに位置づけられており、世界的に見ても導入は進んでいる状況にあります。

この記事では、カーボンプライシングに関する理解を深めたいと考える法人のみなさまが知っておくべき、概念や普及状況など基本的な知識や、企業での取り組み、日本が今後さらなる普及を推進する上での課題などについてご紹介します。

目次

  1. 脱炭素につながるカーボンプライシングとは?

  2. 企業が実施!カーボンプライシング取り組み状況

  3. 日本におけるカーボンプライシングの課題

  4. まとめ:カーボンプライシングの動向を理解し、今後に備えよう!

1. 脱炭素につながるカーボンプライシングとは?

脱炭素への行動変容を促すカーボンプライシングとはどのようなものなのでしょうか。ここでは、カーボンプライシングの概要や日本は普及が進んでいるのか、世界での導入状況をご紹介します。

カーボンプライシングとは?

カーボンプライシングとは、炭素に価格を付け、CO2を排出する企業などに負担を求めることで、脱炭素への行動変容を促す手法の1つです。以下の4種類が代表的なカーボンプライシングです。

[1]炭素税:排出したCO2量に応じて課される税金のことで、税金は政府が決定します。

[2]排出量取引制度:企業ごとにCO2排出量の上限を定め、超過した企業と余剰がある企業との間で売買する制度です。

[3]クレジット取引:CO2削減価値を証書化・クレジット化することで、J-クレジットやJCM(二国間クレジット)などがあります。

[4]インターナル・カーボンプライシング:企業が自社のCO2排出に価格付けをし、投資判断などに活用されます。

出典:環境省『カーボンプライシング(炭素への価格付け)の全体像』

日本は遅れてる?世界での普及状況

OECD(経済協力開発機構)によると、日本を含む46ヶ国と35地域がカーボンプライシングを導入しています。世界的に見ると、日本のカーボンプライシングの普及状況は進んでいます。日本を含む世界での導入年度と種類は、以下の通りです。

  • 1990 フィンランド 炭素税

  • 1991 スウェーデン 炭素税

  • 2005 EU 排出量取引

  • 2009 米国北東部9州 排出量取引

  • 2010 東京都 排出量取引

  • 2011 埼玉県 排出量取引

  • 2012 日本 地球温暖化対策のための税

  • 2013 米国カリフォルニア州 排出量取引

  • 2013 日本 J-クレジット

  • 2013 日本 JCM

  • 2015 韓国 排出量取引

  • 2017 中国 排出量取引

  • 2018 カナダ 連邦カーボンプライシング

  • 2018 日本 非化石価値取引

出典:環境省『カーボンプライシング(炭素への価格付け)の全体像』

2. 企業が実施!カーボンプライシング取り組み状況

日本では、政府が主体となり実施しているカーボンプライシングの他に、企業が独自で実施しているカーボンプライシングがあります。ここでは、カーボンプライシングの導入状況と日本企業の導入事例についてご紹介します。

インターナル・カーボンプライシングの導入状況

2020年3月に環境省が取りまとめたデータによると、インターナル・カーボンプライシングを導入している国別企業数は米国122、日本118、中国11、英国63、台湾34、フランス51、ドイツ40、カナダ44、ブラジル26、インド25、韓国39。2年以内に導入を検討している企業は2,000社以上あることから、インターナル・カーボンプライシングに高い関心が集まっていることが伺えます。

出典:環境省『インターナル・カーボンプライシングについて』(p.4)

日本企業のインターナル・カーボンプライシング導入事例

企業が独自に自社が排出するCO2に価格付けをし、投資判断などに活用しているインターナル・カーボンプライシングを導入している企業の事例をご紹介します。

[1]デンカ株式会社

デンカ株式会社は、東京都に本社を置く日本の総合化学品会社で、2050年度までのカーボンニュートラルを宣言しています。新規設備投資によるCO2排出量をもとに価格を設定し、設備投資時の参考データとして活用しています。

出典:世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会『世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会 中間整理』(2021年8月)(p.4) 

[2]アステラス製薬

アステラス製薬は、東京都に本社を置く日本の製薬会社です。経営管理・コンプライアンス担当者が価格を設定し、CO2削減コストが設定価格を下回った時を投資実施の目安にしています。

出典:環境省:【参考資料】インターナルカーボンプライシングの概要』(p.18)

3. 日本におけるカーボンプライシングの課題

環境省は、カーボンプライシングをさらに普及させるにあたり、解決すべき3つの課題を提起しています。

[1]産業の国際競争力への悪影響

日本経済団体連合は、国際的にエネルギーコストが高い日本がカーボンプライシングにより人為的にコストをさらに引き上げることは、産業の国際競争力を損なうことになるとの見解を示しています。

出典:(一社)日本経済団体連合会『カーボンプライシングに対する意見』(2017/10/13)(p.11)

[2]世界全体では脱炭素実現が困難

カーボンプライシングを実施しない他国に産業が移り、その結果CO2が増加するため世界全体で見ると脱炭素につながらない。

[3]脱炭素のための企業の投資や研究開発の資金が奪われる。

カーボンプライシングは、CO2排出量により課税などを行うため、そちらに資金が使われ、企業が脱炭素のために行う投資やイノベーションなど研究開発資金が奪われる問題があります。

出典:環境省『カーボンプライシング(炭素への価格付け)の全体像』

4. まとめ:カーボンプライシングの動向を理解し、今後に備えよう!

脱炭素へつながるカーボンプライシングについての基本的な知識をご紹介しました。日本はカーボンプライシング普及を推進する上でいくつか課題を抱えていますが、導入は進んでいます。企業が独自に実施するインターナル・カーボンプライシングに取り組む企業も増加しています。今後の導入を検討している企業も多いことから、カーボンプライシングは今後ますます注目を集めることが予想されます。カーボンプライシングの動向を理解し、今後の企業の取り組みの検討につなげていただければと思います。

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