脱炭素社会とは?日本や企業の取り組みなど徹底解説

2050年までの脱炭素社会実現という目標を達成させるために、日本は様々な取り組みを実施していますが。目標達成のためにはCO2排出量が多い企業の取り組みが欠かせません。この記事では、脱炭素社会に向けた取り組みをご検討中の法人の皆さまが知っておくべき、脱炭素社会に関する基礎知識や、企業が取り組む必要性やメリットなどについてご紹介します。

目次

  1. 脱炭素社会に関する基礎知識

  2. 企業が脱炭素に取り組む必要性とメリット

  3. 脱炭素社会実現のための2つのポイント

  4. 脱炭素社会実現に向けた企業の取り組み

  5. まとめ:脱炭素社会に関する理解を深め、企業も脱炭素社会に向け取り組もう!

1. 脱炭素社会に関する基礎知識

そもそも脱炭素社会とはどのような社会で、日本では脱炭素社会実現に向け、どのような動向が見られるのでしょうか。ここでは、脱炭素社会に関する基礎知識についてご紹介します。

脱炭素社会の概要

脱炭素はカーボンニュートラルと同じ意味で使用されています。脱炭素社会が意味しているのは、温室効果ガス排出量が実質ゼロの社会です。省エネや電源の脱炭素化などによりできるだけ温室効果ガス排出量を減らし、削減できない分をネガティブエミッション技術などにより実質ゼロにするというのが、脱炭素の基本的な考え方です。

脱炭素イメージ

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(後編)~なぜ日本は実現を目指しているの?』(2021/3/16)

脱炭素社会に向けた世界の取り組み

2050年までに脱炭素社会を実現させるためには、2030年までの取り組みが重要であるとし、全世界で取り組みが活発化しています。世界において温室効果ガス排出量が多いアメリカと中国乃脱炭素化に向けた動向についてご紹介します。

[1]アメリカ

2050年までの脱炭素社会が目標です。4年間で電気自動車の普及や建設のグリーン化に約20兆円の投資を行うことを公約しています。

[2]中国

2030年までに温室効果ガス排出量を減少傾向に転じ、2060年までに脱炭素社会を実現させる目標を掲げています。電気自動車などの技術の育成に力を入れています。

日本でも政府の主導で地球温暖化対策推進法の改正や地球温暖化対策計画等の見直しを行っています。自治体や企業レベルで見ると、脱炭素を宣言し、温室効果ガス排出量削減に向け取り組みを始めている自治体や企業が増加しています。

出典:環境省 脱炭素ポータル『カーボンニュートラルとは』
出典:経済産業省『2050年カーボンニュートラルを巡る国内外の動き』(2020年12月)(p.5.10.11)

脱炭素社会に向けた日本の取り組み

[1]RE 100

RE100は、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的な枠組みです。主に影響力のある大企業が加盟しています。2021年7月27日時点における加盟企業数は320社で、最も多いのがアメリカの79社、次に多いのが日本の58社、イギリスの45社です。RE 100に加盟した企業は、独自に目標と目標を達成させるための手段を設定し、温室効果ガス排出量削減に努めています。

REに参加している国別企業数グラフ(上位10ヵ国)

出典:環境省『RE100に参加している国別企業数』(2021年7月27日)

出典:環境省『環境省RE100の取組』

[2]再エネ100宣言 RE Action

RE 100が国内外にある主な大企業を対象としていることから、中小企業や自治体を対象に日本で発足したのが再エネ100宣言 RE Actionです。2021年8月現在において164団体が参加しています。

出典:再エネ100宣言 RE Action『NEWS』

[3]2050年ゼロカーボンシティ表明

2020年8月時点において、日本の151の自治体が2050年度までにCO2排出量を実質ゼロにすることを宣言しています。表明している自治体の合計総人口数は約7,155万人で、日本の総人口数の半数を超えており、今後さらなる拡大が見込まれています。

自治体 人口

出典:環境省『2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明自治体(2020年8月6日)
出典:環境省 脱炭素ポータル『カーボンニュートラルとは』

2. 企業が脱炭素に取り組む必要性とメリット

なぜ企業が積極的に脱炭素に取り組んでいく必要があるのでしょうか。ここでは企業が脱炭素に取り組む必要性と、取り組むことで得られるメリットについてご紹介します。

企業はCO2排出量が多い

企業が脱炭素に取り組む必要性が高い理由は、家庭部門より企業の活動を通して排出されるCO2排出量の方が多くを占めるためです。企業のCO2排出量削減なくして、脱炭素社会実現はできません。経済産業省によると、2019年度の部門別エネルギー起源CO2排出量の内訳は以下のようになっています。

電気・熱配分後排出量:産業部門38%、運輸部門20%、業務その他部門19%、家庭部門15%、エネルギー転換部門8%

電気・熱分配後排出量

*2:発電及び熱発生に伴うエネルギー起源のCO2排出量を、各最終消費部門の電力及び熱の消費量に応じて、消費者側の各部門に配分した排出量
出典:経済産業省『温室効果ガス排出の現状等』(p.13)

企業が得られるメリット

[1]ステークホルダーからの信頼

脱炭素に取り組んでいることを対外的に公表することで、ステークホルダーからの信頼を強めることができます。消費者からのイメージもよくなるため、企業の売り上げ向上などのメリットを得ることができます。

例えば、売上に関して消費者庁の「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査報告書によると、エシカル消費に興味があると回答した人の割合は、前回の35.9%から59.1%に増加しています。またエシカル消費の商品やサービスの購入意欲があると回答した人の割合は81.2%です。

出典:消費者庁『「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査報告書』(2020/2/28)(p.21.25)

[2]採用時の優秀な人材の確保・従業員の意識改革

採用時に脱炭素へ取り組んでいることを公表することで、環境問題に関心のある優秀な人材を確保しやすくなります。また従業員に研修など教育の場を設けることで、従業員の意識も高めることができます。

例えば、採用面で就活生の企業選びとSDGsに関する調査(2020年8月)によると、アンケートに回答した21年度に卒業予定の就活生の65.2%が、企業の社会貢献度の高さが就職志望度に「とても影響した・やや影響した」と回答しています。

出典:DISCO『NEWS RELEASE』

3. 脱炭素社会実現のための2つのポイント

2050年度までの脱炭素社会実現を目標に掲げている日本ですが、既存の取り組みのみでは実現が難しいとされています。脱炭素社会を実現させる鍵を握るのが、イノベーションの推進とグリーンボンドの推進です。

(1)イノベーションの推進

2050年度までの脱炭素社会という難しい目標を達成するためには、既存技術の最大限の活用、普及の推進に加え、新しい技術開発に取り組むことが重要であるとの見解が示されています。

民間企業にイノベーションをうながすために、2020年に2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略が策定されました。14の重要分野ごとに目標や予算、国際連携など様々な政策を盛り込んだ計画で、イノベーションに携わる企業を後押しする方針を固めています。

この他にも政府は脱炭素社会実現を目指し、イノベーションに取り組む企業をゼロエミ・チャレンジ企業とし、対外的に公表したり、話し合いの場を設けるなどしてイノベーションを推進しています。

出典:経済産業省『脱炭素社会の実現をイノベーションで切り拓く企業の取組を応援します』(2020/10/9)
出典:事務局『2050年カーボンニュートラルに向けたグリーンイノベーションの方向性』(2020/11)(p.2)
出典:経済産業省『2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しました』(2020/12/25)

(2)グリーンボンドの推進

日本では、脱炭素に向けた企業の取り組みを後押しするために、金融機関や地方自治体が主体となり、脱炭素に取り組む企業に向けグリーンボンドと呼ばれる債権を発行しています。グリーンボンドにより調達した資金は、環境改善効果がある事業のみに使用することができます。

出典:環境省『グリーンボンドとは』

4. 脱炭素社会実現に向けた企業の取り組み

脱炭素社会実現に向け、企業は様々な取り組みを始めています。ここでは、国がゼロエミ・チャレンジ企業に認定している企業のイノベーション事例やグリーンボンドの発行・活用事例についてご紹介します。

(1)イノベーションの事例

[1]株式会社 大林組

東京都港区に本社を置く、総合建築会社です。2050年のあるべき姿の構想をまとめた「Obayashi Sustainability Vision2050」を2019年に策定し、グループ全体でCO2排出量を実質ゼロにする脱炭素に取り組んでいます。水素社会実現に向け、地熱電力を利用したCO2フリー水素の製造や市街地で水素による熱と電気を供給するシステムなどのイノベーションに取り組んでいます。

出典:Challenge Zero 『技術のイノベーションによる「脱炭素」の実現に向けて』

[2]ゼネラルヒートポンプ工業株式会社

愛知県名古屋市に本社を置く産業用機器製造業者です。モンゴルで極寒冷地のための地中熱・太陽熱ハイブリッドヒートポンプ暖房システムの実証を実施するなど、途上国向けの低炭素技術のイノベーションに取り組んでいます。

出典:ゼネラルヒートポンプ工業株式会社『「コ・イノベーションによる途上国向け低炭素技術創出・普及事業」としてモンゴルでの実証事業が採択されました』

[3]株式会社 フジキン

大阪府大阪市に本社を置く、バルブや継手の製造・販売を行う会社です。2025年以降における水素ステーションの本格普及・自立化を目標とし、水素ステーションの整備費・運営費低減などに貢献するイノベーションに取り組んでいます。

出典:Fujikin『経済産業省「ゼロエミ・チャレンジ企業」にフジキンが選出されました。』(2020/10/09)

(2)グリーンボンドの事例

[1]SMBCグループ

三井住友フィナンシャルグループは、国内外に向け定期的にグリーンボンドを発行しています。グリーンボンドを発行することで、環境ビジネスの推進や環境リスクへの対応、環境負荷の軽減に貢献することを目指しています。

出典:三井住友銀行『【三井住友フィナンシャルグループ】グリーンボンド発行について』(2021/1/13)

[2]名古屋銀行

2018年4月に「めいぎんSDGs宣言」を行い、金融を通じ地域経済を活性化するために取り組んでいます。取り組みの1つにグリーンボンドの発行があります。名古屋銀行は、地域企業の支援とステークホルダーへのアピールのためにグリーンボンドを発行しています。

出典:名古屋銀行『グリーンボンド』

[3]GPSSホールディングス株式会社

東京都港区にある再生可能エネルギーの開発などを業務とする、再生可能エネルギーベンチャー企業です。グリーンボンドにより資金を調達し、太陽光発電設備や風力発電設備の投資資金として利用しています。

出典:SMBC『SDGsグリーン/ソーシャル/サステナビリティローンプロジェクト紹介』

5. まとめ:脱炭素社会に関する理解を深め、企業も脱炭素社会に向け取り組もう!

CO2排出量が多い企業の脱炭素社会に向けた取り組みが、気候変動問題解決の鍵を握っています。脱炭素に向け取り組むことで、企業は自社のブランドとステークホルダーからの信頼を高めたり、優秀な人材を確保することができます。脱炭素社会に関する理解を深め、脱炭素に向けた取り組みを始めましょう!

資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説