商社業界のカーボンニュートラル行動計画とは?企業の取り組み事例を紹介

商社業界におけるカーボンニュートラルの取り組みについて、わかりやすく解説します。地球温暖化対策に欠かせないカーボンニュートラルを実現するには、あらゆる産業における対応が必要です。商社業界でもカーボンニュートラル実現に向け、電力使用量の削減を中心としたさまざまな行動が求められます。

本記事ではカーボンニュートラルを実現するための商社の役割や商社業界の行動計画、実際の企業による取り組み事例などについて紹介します。

目次

  1. カーボンニュートラル実現における商社業界の役割

  2. 商社業界のカーボンニュートラル行動計画など

  3. カーボンニュートラルへの商社取り組み事例

  4. まとめ:カーボンニュートラル社会の実現に商社の取り組みは重要!

1. カーボンニュートラル実現における商社業界の役割

カーボンニュートラルは、地球温暖化を食い止めるための最優先課題です。カーボンニュートラル実現に向け、商社が果たすべき役割について解説します。

(1)カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、経済活動に伴う温室効果ガスの排出量と、植林や森林管理による吸収量を均衡させ、排出量を実質0にすることを意味します。2015年に地球温暖化問題の解決に向けたパリ協定が採択され、世界共通の長期目標としてカーボンニュートラルを目指すこととなりました。これを受け日本政府は、2050年までのカーボンニュートラルを目指すことを、2020年10月に宣言しました。カーボンニュートラル実現には、「温室効果ガスの廃出力削減」と「吸収作用の保全と強化」が必要となります。

出典:環境省「カーボンニュートラルとは」

(2)カーボンニュートラル実現における商社業界の取組み

商社におけるCO2排出の最大の要因は、オフィスにおける電力使用です。従って商社のオフィスにおける電力使用量削減が、商社業界におけるカーボンニュートラルへの取組みの中心となります。また商社は幅広い業種の商品を扱い、グローバルなバリューチェーン構築に関わることから、事業展開におけるカーボンニュートラルの視点も求められます。

出典:一般社団法人日本貿易会「商社業界における地球温暖化対策の取組~カーボンニュートラル行動計画2022年度実績報告~」p3-4(2024/2)

2. 商社業界のカーボンニュートラル行動計画など

商社の業界団体である一般社団法人日本貿易会(以下「日本貿易会」)は、経済産業省の流通・サービスワーキンググループへ毎年、商社業界における取組みについて報告しています。

(1)カーボンニュートラル行動計画

日本貿易会では、「2030年度の電力使用原単位(会社全体における床面積当たりの電力使用量)を2013年度比で15.7%削減するよう努める」ことを、2018年に目標として設定しました。これに対し2022年度は、2013年度対比43.4%の削減となり、設定目標を大きく上回っています。これは主要数社の本社移転計画による仮社屋への移転や、新型コロナウイルス感染症拡大を背景とする在宅勤務シフトなどに伴い、一時的に目標を上回っているもので、今後はリバウンドがあるものと推測されています。

出典:一般社団法人日本貿易会「商社業界における地球温暖化対策の取組~カーボンニュートラル行動計画2020年度実績報告~」p4,5,7(2024/2)

(2)低炭素製品・サービス等、物流によるカーボンニュートラル貢献

日本貿易会としての統一的な電力削減目標とは別に、各商社でのカーボンニュートラルへの貢献活動も行われています。そのひとつが低炭素製品の開発・販売や、自家物流の効率化など事業活動を通じた貢献です。例として燃料電池自動車への水素供給、バイオマス燃料の拡販といった環境配慮型事業や、国内輸送での鉄道利用拡大。トラック利用削減といった物流効率化が挙げられます。

出典:一般社団法人日本貿易会「商社業界における地球温暖化対策の取組~カーボンニュートラル行動計画2020年度実績報告~」p8(2024/2)

(3)海外でのカーボンニュートラル貢献

商社は海外でのCO2排出削減にも貢献しています。たとえば海外で再生可能エネルギーによる発電を行う独立系発電事業者(IIP)に出資し、2022年度には103件の案件での発電で1249万tのCO2削減に寄与しています。その他にも海外の工場や倉庫における省エネシステム導入、欧州でのグリーン水素サプライチェーン構築、低炭素排出型メタノールの販売、環境配慮型鉄鋼製品の販売など、グローバルでのカーボンニュートラル推進に各商社が取り組んでいます。

出典:一般社団法人日本貿易会「商社業界における地球温暖化対策の取組~カーボンニュートラル行動計画2020年度実績報告~」p9-10(2024/2)

3. カーボンニュートラルへの商社取り組み事例

商社は自社の電力消費削減だけでなく、事業活動を通じたカーボンニュートラルへの貢献にも挑戦しています。個別企業の取り組み事例をご紹介します。

(1)双日株式会社

総合商社である双日株式会社は、2050年長期ビジョン「サステナビリティチャレンジ」を掲げ、CO2廃出力削減に取り組んでいます。そのため、オーストラリアで太陽光発電により水素を製造し、太平洋島嶼国での水素燃料船舶などに利用する計画を推進しています。また大気からCO2を直接回収する「DAC技術」の開発や、植林後5年で伐採可能となる早生樹の生産・販売、水素燃料航空機事業への参画など、幅広い分野でカーボンニュートラルへの貢献を図っています。

出典:広島県公式ホームページ「総合商社・双日のカーボンニュートラルの取り組み」(2022/7/20)

(2)株式会社池田理化

理化学機器の総合商社である株式会社池田理化では、各事務所で排出するCO2や物流事業等の過程で発生するCO2をニュートラルに近付けることを目指しています。そのため各事業所でのプロセス改善、省エネ推進、CO2フリーエネルギー利用の最大化などのほか、サプライヤーと協力し、省エネルギー性能の高い設備・機器等の導入を促進しています。

出典:株式会社池田理化「地球環境に配慮した事業所を目指して」

(3)株式会社ノダキ

機械工具専門商社である株式会社ノダキでは、カーボンニュートラルへの貢献策として、「社用車をガソリン車からEV、PHEV車へ切り替え」「再生可能エネルギーを使った電力プランを採用」などの取組みを行っています。またカーボンニュートラル実現に向けた製品として、工場の天井に設置することで外部の気温変化の影響を抑制し節電につながる建材や、エアコンの熱効率を向上させる日射調整フィルムなどを扱っています。

出典:株式会社ノダキ「ノダキグループ カーボンニュートラルへの取り組み」

(4)株式会社山善

専門商社である株式会社山善は、自社からのCO2排出量削減のため、2022年7月から順次、大阪や仙台の拠点における電力を、再エネ電気に切り替えました。今後もその他の拠点への、再エネ電気導入を予定しています。またCO2排出を減らすために、環境負荷の低い省エネ機器の普及を図ることが商社としての責務と考え、太陽光発電システムや断熱保温システムバスルームなどの家庭用機器、省エネ型の送風機やLED照明など工場向けの製品を積極的に販売しています。

出典:株式会社山善「気候変動(TCFD提言に基づく情報開示)」

出典:株式会社山善「グリーンボールプロジェクトとは?」

4. まとめ:カーボンニュートラル社会の実現に商社の取り組みは重要!

CO2排出量と吸収量をバランスさせるカーボンニュートラルの実現は、地球温暖化問題における最重要課題です。商社業界においても、カーボンニュートラル実現に向け、オフィスでの使用電力量削減へ業界として取り組んでいます。また商社はさまざまな製品やサービスを取り扱い、サプライチェーンの構築にも関与することから、事業活動を通じて環境配慮型商材の普及や、物流効率化などによるCO2削減にも大きな影響力を持っています。

カーボンニュートラル社会の実現に向けた商社業界の取組みについて理解し、その実践に注目・期待しましょう。

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