CSRDとは!?概要・開示項目から日本企業におよぼす影響を解説
- 2024年03月11日
- CO2算定
CSRDとは何かについて、わかりやすく解説します!CSRDはEUにおける、主に大企業を対象としたサステナビリティ報告に関する規制で、2023年1月に発効し、2024年度以降段階的に対象が拡大されます。
日本企業もCSRDの対象となる場合がありますので、該当する企業は今後対応が必要となっていきます。本記事ではCSRDの概要や生まれた背景、CSRDの構成要素、日本企業における影響や各社の対応状況などについてご紹介します。
目次
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CSRDの概要
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CSRDにおける主な開示項目
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CSRDが日本企業におよぼす影響
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まとめ:CSRDに対応し、基準に従ってサステナビリティ情報を開示できるよう計画的に準備しよう!
1. CSRDの概要
CSRDはEUにおけるサステナビリティ報告規制で、大企業を主な対象としています。CSRDの概要について解説します。
CSRDとは
CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)はEU法に基づく規制で、大企業・上場企業に対し、各社が直面する社会問題や環境問題によるリスクと、事業活動が人々や環境にどのような影響を与えるかについて、定期的に報告書を発行することを義務付けています。CSRDは2022年12月に公表され、適用対象となる企業は、早ければ2024年度に関する報告を、2025年から実施する必要があります。
このCSRDにより、投資家やその他の利害関係者は、各企業のサステナビリティ関連の情報を確実に得られるようになります。さらにCSRDにおいては、各企業から提供されるサステナビリティ情報の規格を統一することによる、企業の報告コストの中長期的な削減も期待されます。
出典:European Commision「Corporate sustainability reporting」
CSRDが登場した背景
EUでは「欧州グリーンディール計画」を掲げており、温室効果ガス実質排出量ゼロ・自然資本の保全・健康と福祉の保護など、持続可能な社会をEU全体で目指しています。また、EUでは持続的な成長に不可欠な資金調達に関して、気候変動・資源枯渇・環境悪化・社会問題から生じる金融リスクを管理し、金融経済活動における透明性と長期主義を促進することも企図しています。
企業による、比較可能で信頼性の高いサステナビリティ情報の開示は、こうした目的を達成するための前提条件とされており、CSRDの制定へつながっています。
2. CSRDにおける主な開示項目
CSRDでは、EU内で元々適用されていた「非財務報告指令(NFRD)」を改正する形で、開示項目が指定されていますが、その詳細は別途欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)によって定められる予定となっています。CSRDとESRSによる主な開示項目について解説します。
CSRDの主な開示項目
CSRDで指定されている主な開示項目は、以下の通りです。
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(a)ビジネスモデルおよび戦略
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(b)サステナビリティ課題に関連する期限付き目標と進捗
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(c)サステナビリティ関連課題に関する取締役会・役員会・監査役会の役割など
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(d)サステナビリティ関連課題に関する企業ポリシー
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(e)サステナビリティ関連課題に関連する取締役会・役員会・監査役会のメンバーに提供されるインセンティブスキームの存在に関する情報
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(f)サステナビリティ関連課題について実施しているデューデリジェンス
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(g)サステナビリティ関連課題に関連する企業に対する主要なリスク
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(h)上記ポイント (a) から (g) で言及されている開示要求事項に関連する指標
これらの点について、バリューチェーン全体の情報まで求められている点にも注意が必要です。
ESRSにおける主な開示項目
CSRDを補完する形で、さらに詳細な開示項目を規定しているのがESRSです。ESRSにおける主な開示項目は以下の通りです。
ESRSでは単に開示項目を挙げているだけではなく、そのひとつ一つに詳細な要件を指定しています。
3. CSRDが日本企業におよぼす影響
CSRDはEUにおける規制ですが、グローバル展開している日本企業にとっては無縁な話ではありません。CSRDが日本企業におよぼす影響について解説します。
CSRDの適用対象
CSRDでは、以下のように適用対象が徐々に拡大することとなっています。
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2024年1月1日以降に始まる会計年度・・総資産2000万ユーロ以上、売上高4000万ユーロ以上、従業員数500人以上の、大規模な上場企業、金融機関、保険会社などの公的な企業及びグループ
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2025年1月1日以降に始まる会計年度・・総資産2000万ユーロ以上、売上高4000万ユーロ以上、従業員数250人以上の大企業及びグループ
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2026年1月1日以降に始まる会計年度・・総資産400万ユーロ以上、売上高800万ユーロ以上、従業員数50人以上の、零細企業でない中小規模の公的な企業
また、2028年1月1日以降は、これらの区分に従って、国連加盟国の企業にも適用が拡大することが見込まれており、日本企業にもCSRDによる開示要請が及ぶこととなります。
日本企業のCSRDへの対応
日本企業においても、CSRDへの対応について検討が始まっています。
アサヒグループホールディングス株式会社は、国際的な開示要請・フレームワークの動向については非常に注視しており、CSRDを策定している欧州における事業もあるため、長期的なスパンで計画を立てようと動いています。
オムロン株式会社では、日本の本社による対応だけでは限界があると考えています。CSRD については欧州の方が新基準を強く意識しており、日本との温度差がある中で、本社側から具体的な方針を出せていないことに課題を感じています。
今後はグローバルでの情報収集体制の構築や、欧州における情報収集と対応力を向上させていく予定です。 株式会社ブリヂストンは、今後の開示要求につながるCSRD の動向を注視しながら情報開示の強化に向けて対応を進めています。
出典:経済産業省「『社会の持続可能性の向上と長期的な企業価値の創出に向けたESG情報開示のあり方』に関する調査研究報告書」p92,101,180(2023/5)
4. まとめ:CSRDに対応し、基準に従ってサステナビリティ情報を開示できるよう計画的に準備しよう!
CSRDはEUのサステナブル情報報告規制で、欧州グリーンディール計画などの気候変動対策をはじめとするサステナビリティ対応のため、広く企業へ情報開示を求めるものです。CSRDにおける開示項目はビジネスモデルからデューデリジェンスの実施状況まで多岐にわたります。
さらにCSRDを補完する形でESRSという詳細項目も定められる予定で、日本企業においても影響が及ぶことが予想されます。
CSRDに対応し、基準に従って国際社会へサステナビリティ情報を開示できるよう、今のうちから計画的に準備していきましょう。