EUの化石燃料車禁止の背景とは!?カーボンニュートラル燃料とEV車も比較

カーボンニュートラルへの取り組みは、気候変動の抑制と環境保護のために不可欠であり、その一環として、EUは化石燃料車禁止政策を導入し、電気自動車(EV車)の普及を促進しています。そこで、この記事では、EUの化石燃料車禁止政策とEV車の優勢性について詳しく解説していきます。

目次

  1. なぜ化石燃料車禁止政策を行うのか?

  2. カーボンニュートラル燃料とEV車の比較

  3. EUの化石燃料車禁止政策の展望と課題

  4. まとめ:化石燃料禁止政策とEV車への理解を深め、EV車を日常生活に取り入れていこう!

1. なぜ化石燃料禁止政策を行うのか?

カーボンニュートラルへの移行の重要性とEUの化石燃料車禁止政策の背景について、解説します。

(1)カーボンニュートラルへの移行の重要性

地球温暖化や気候変動といった深刻な環境問題への対策は世界的に取り組むべき問題となっています。化石燃料(ガソリンなど)の使用は大気中に二酸化炭素(温室効果ガス)を排出する大きな要因であるため、持続可能な未来を実現するためには、私たちの生活による二酸化炭素の排出を削減し、カーボンニュートラルな社会を目指す必要があります。

カーボンニュートラルへの移行は、環境だけでなく、経済や社会にも多くの利益をもたらします。再生可能エネルギーの利用や省エネルギー技術の導入により、エネルギーコストを削減、エネルギー安全性を向上させることができるだけでなく、クリーンテクノロジーの開発と普及による新たな雇用機会や産業の成長を見込むことができます。

そのため、カーボンニュートラルへの移行は、地球の環境保全、エネルギーの持続可能性、経済の発展、人々の健康と生活の質の向上といった多くの利益に寄与するといえ、私たち一人一人が持続可能な社会への移行を意識する必要があるといえます

出典:脱炭素ポータル『カーボンニュートラルとは』(2021/7)

(2)EUの化石燃料車禁止政策の概要とその影響

EUの化石燃料禁止政策の背景、内容、その影響は、以下の通りです。

  1. 背景
    EUでは、EU内で占めるCO2排出量のうち道路交通から生じるCO2排出量が5分の1を占めています。この問題に対処するため、EUは、2050年までにEU加盟国のうち27か国が温室効果ガスをネットゼロにする、”気候中立(カーボンニュートラル)を達成する”という目標を掲げ、自動車からのCO2排出量を削減する措置を講じることを発表しました。

注釈:ネットゼロとは、大気中に排出される温室効果ガスと大気中から除去される温室効果ガスが同量でバランスが取れている状況のことをいいます。

  1. 内容

排出量削減措置の具体的内容は、2035年までにEU内で販売される新車(普通自動車やバン)から排出されるCO2量を100%削減することが自動車メーカーに義務付けられ、その中間排出削減目標として2030年に、普通自動車で55%、バンで50%の削減が設定されています。この措置により、2035年からディーゼルエンジンやガソリンエンジンといった内燃機関を搭載した車両の販売が事実上禁止されることになります。

  1. 影響

排出削減措置の影響はEUだけにとどまらずアメリカの一部州(カリフォルニア州やニューヨーク州)も同じ内容の規制を導入することを発表し、EUに追随する姿勢を見せています。当該規制に対して、自動車業界に新しい風が吹きプラスと捉える意見がある一方で、EU内の自動車部門に関連する1300万人の雇用のうち数万人を脅かす可能性があると実際上の懸念を批判する意見もあります。

出典:TheNewYorkTimes「European Union to Ban Gas-Powered Cars by 2035」(2023/2/14)
出典:EuropeanEnvironmentAgency「Electric vehicles」(2023/6/23)

出典:EU「EU ban on the sale of new petrol and diesel cars from 2035 explained」(2022/3/11)

2. カーボンニュートラル燃料とEV車の比較

EUは2035年までに新車乗用車のCO2排出量をネットゼロとすることを合意しましたが、その実現に向けた条件には批判的な点が存在しており、自動車業界ではEV車を推進するのかカーボンニュートラル燃料を推進するのかに関して議論が生じています。ここでは、カーボンニュートラル燃料とEV車に関する解説をします。

(1)カーボンニュートラル燃料についてとその利点

カーボンニュートラル燃料とは、CO2(二酸化炭素)とH2(水素)で作られる合成燃料のことをいいます。CO2は、工場等から排出されたものを使用し、将来的にはDAC技術を用いてCO2を回収し利用することが想定されており、またH2は、再生可能エネルギーを用いて、水から水素を作る水電解を行う方法が基本的な調達手段となっているため、燃料利用時の CO2排出量を製造工程で相殺することが可能となり、製品ライフサイクル全体においてカーボンニュートラル化に貢献することが可能となります。

さらに、カーボンニュートラル燃料は既存の石油製品に非常に近い成分であるため、製油所設備、燃料の流通インフおよび自動車や航空機等について全て既存のものをそのまま使用できるため注目されています。カーボンニュートラル燃料について詳しくは、こちらの記事もご覧ください。

出典:資源エネルギー庁『エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは』(2021/7/8)
出典:ENEOS株式会社「合成燃料製造技術の開発(二酸化炭素からの液体燃料製造)」

(2)カーボンニュートラル燃料の課題

もっとも、実際上、カーボンニュートラル燃料車の広範な導入は困難であると考えられており、その理由は以下のとおりです。

  1. 原料供給の制約
    カーボンニュートラル燃料の製造には、バイオマスや合成プロセスによる炭素源が必要です。しかし、これらの原料の供給は限られており、大規模な需要に対応することが難しい場合があります。持続可能な原料供給の確保は重要な課題です。

  2. 高コスト
    カーボンニュートラル燃料の製造や配備には高いコストがかかります。製造プロセスや技術の開発には膨大な資金が必要であり、それが燃料の価格に反映されます。高コストは、普及や大規模な利用に制約をもたらす要因となっています。

  3. エネルギー効率の低下
    カーボンニュートラル燃料の製造プロセスは、従来の燃料に比べてエネルギー効率が低下する傾向があり、理由としては、製造段階でのエネルギー消費量が多いためです。効率の低下は、燃料の持続可能性や環境への影響に関わる重要な要素です。

  4. 環境影響
    カーボンニュートラル燃料の製造や使用には、環境への影響が懸念されます。例えば、バイオマスの収穫や生産においては、森林破壊や生態系への影響が生じる可能性があります。また、一部の合成燃料の製造プロセスには二酸化炭素の排出が伴うこともあります。

  5. スケーラビリティの制約
    カーボンニュートラル燃料の大規模な製造や普及には、産業活動で使用される整備や技術の拡大が必要です。これには時間と資金がかかるため、 拡張性に制約が生じることがあります。

以上の理由から、カーボンニュートラル燃料の持続可能性には多くの課題が存在します。

出典:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに向けた 自動車業界の課題と取組み」(2022/12/15)p5
出典:資源エネルギー庁『CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクトの研究開発・社会実装の方向性(案)(2021年10月)(p.23)』(2021/10)

出典:資源エネルギー庁『エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは』(2021/7/8)

(3)EV車についてとその利点

EV車とは電気自動車のことをいい「Electric Vehicle」の頭文字からきています。電気自動車は、バッテリー(蓄電池)に蓄えた電気でモーターを回転させて走る自動車を指し、以下のような利点があります。

  1. 小型化可能性
    ガソリ ンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関を搭載した自動車と比較して、構造が簡易で部品数が少ないため、自動車事態の小型化が可能となり、ひいては軽量化することができるため、必要とするエネルギーが少量で済みます。

  2. 排出ガス量と騒音の低減
    走行中にCO2や大気汚染物質といった排出ガスを排出しない(いわゆる、ゼロエミッション)ため環境に優しく、また走行中の振動・騒音も少なく静かなため社会にも優しいです。

注釈:ゼロエミッションとは、廃棄物のエミッション(排出)をゼロにできること

  1. 災害時における非常用電源としての使用可能性
    EV車は、走行のために電気を貯めたり、電気を生成することができます。そのため、災害時にバッテリーを取り外し、自動車の外部で活用することができます。

出典:環境省ほか「次世代自動車ガイドブック」p4-5
出典:経済産業省資源エネルギー庁「災害時には電動車が命綱に!?EVの非常用電源としての活用法」(2020/9/2)

(4)EV車の課題

  1. 販売モデル数
    EV車の販売モデル数は、近年増えてきているものの、従来のガソリン自動車に比べてまだ限られています。そのため、消費者にとって選択肢が少なく、個々のニーズや好みに合った車を見つけるのが難しく購買意欲を刺激することが困難となっています。

  2. 充電インフラの不充足
    米国や欧州では、充電設備の出力が120k-350kwであるのに対し、日本では90kwが基本です。そのため、例えばテスラ社のモデルの充電設備を導入したとしても出力が120kw-250kwとなっており、充電インフラが整っていません。また、集合住宅では管理組合の同意、賃貸住宅や月極駐車場では物権オーナーの許諾が必要となっており、充電設備の設置ハードルが高いです。

  3. 電気事業法による規制
    米国、欧州の急速充電設備の規格では、1000Vまで扱える一方で、日本の電気事業法では、600Vまでしか消費者が自分で操作できません。そのため、ポルシェ・アウディやヒョンデが出している800V充電に対応した電気自動車を日本への導入が困難となっています。

出典:環境省「環境対応車普及の課題と対策」(2010/2/4)p2
出典:内閣府「EV普及に向けた 充電器の課題と規制制度改革の要望」p3,6,14

3. EUの化石燃料車禁止政策の展望と課題

EUの化石燃料車禁止政策は持続可能な交通システムの構築を目指していますが、カーボンニュートラル燃料の導入による構築は現段階では難しいと考えられています。一方で、EV車の普及にもインフラ整備や価格・利便性の改善、自動車産業の変革などの課題が存在しているものの、EV車は次第に国際的に普及してます。これらの課題を解決するためには、政府、自動車メーカー、エネルギー業界などの関係者が協力し、継続的な取り組みが求められます。

現段階では乗用車市場における電気自動車(EV車)の普及が着実に進んでおり、政府の規制や環境意識の高まりにより、EV車の需要は急速に伸びています。将来的には、EV車が乗用車市場の主流となると予測されており、その理由として、EV車開発の技術の進歩による価格の低下、及び充電インフラ等の整備による利便性の向上があげられます。

一方、上述で示した通り、カーボンニュートラル燃料の導入は困難と予測されており、その理由は、合成燃料の生産には高コストと複雑な製造プロセスが必要であり、経済面においても実現性に課題が生じているためです。また、同時に合成燃料の供給源や原料の入手も限られており、大規模な導入には供給の確保が難しいという問題もあります。

出典:経済産業省資源エネルギー庁「エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは」(2021/7/8)

出典:経済産業省資源エネルギー庁「CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト の研究開発・社会実装の方向性(案)」(2021/10)p18.p23

4. まとめ:化石燃料禁止政策とEV車への理解を深め、環境問題に対処するため、EV車の日常生活に取り入れていこう!

化石燃料禁止政策は、地球温暖化や気候変動への対策として重要であり、カーボンニュートラルへの移行が求められます。EUの禁止政策は、2035年までに新車乗用車のCO2排出量をネットゼロにすることを目指しており、その達成手段としてEV車のさらなる普及が予想されます。そこで、化石燃料禁止政策とEV車への理解を深め、環境問題に対処するため、EV車を日常に取り入れていきましょう。

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