SAF燃料とは?SAF燃料のメリットや航空会社の取り組みを解説!

SAF燃料についてご存じでしょうか。SAF燃料はバイオマス由来の原料を使って生成されるジェット燃料のことで、世界中の航空各社で利用が進められています。

今回はSAF燃料とは何か、SAF燃料の製造、SAF燃料のメリット、国内航空会社の取り組みなどについてまとめます。

目次

  1. SAF燃料とは

  2. SAF燃料の製造

  3. SAF燃料のメリット

  4. SAFに関する航空会社の取り組み

  5. まとめ:運輸分野でのCO2削減は今後も進む

1. SAF燃料とは

SAF燃料とはいったいどのようなものなのでしょうか。SAFの意味やSAF燃料が必要とされる理由などについてまとめます。

(1)SAF燃料とは何か

SAFとはSustainable Aviation Fuelの略称で日本語では「持続可能な燃料」と訳されます。「持続可能」の基準を満たす再生可能燃料や廃棄物を原料とした燃料のことをSAF燃料といいます。

出典:環境省「持続可能な航空燃料(SAF)について」(2022/6/27)(p2)

(2)SAF燃料が必要とされる理由

運輸部門における二酸化炭素排出量

出典:国土交通省「環境:運輸部門における二酸化炭素排出量」(2022/7/5)

日本国内で排出されるCO2のうち、運輸部門が占める割合は約17.7%。そのうち、航空機が占める割合は2.8%と決して大きなものではありません。

輸送量あたりの二酸化炭素排出量

出典:国土交通省「環境:運輸部門における二酸化炭素排出量」(2022/7/5)

しかし、輸送量あたりのCO2排出量という観点で見てみると航空機は自動車と並んで排出量が多い交通機関となっています。パンデミックが収まりつつある現在、国内外の物流や人の動きがますます活発になることが予想され、航空機のCO2削減が今まで以上に求められると予想されます。

(3)SAF燃料普及の目標

CO2の排出に関して、国際的な取り組みも始まっています。2010年に国際民間航空機関(ICAO)は、2020年以降の国際航空からのCO2排出総量を増加させないことを目標としています。さらに、国際航空運送協会(IATA)は2050年には炭素排出をネットゼロにするなどの目標を掲げています。

日本国内でもSAF燃料普及加速の動きが見られます。2021年12月、国土交通省は2030年までに国内エアラインで使用する燃料の10%をSAF燃料に置き換えるという目標を立てました。

中長期的なこれらの目標を達成するには現状のSAF燃料の課題である供給量・コスト面の改善が必要となるでしょう。

出典:環境省「持続可能な航空燃料(SAF)について」(2022/6/27)(p2)

出典:環境省「持続可能な航空燃料(SAF)について」(2022/6/27)(p2)

(4)SAF燃料の供給量・必要量

現在、SAF燃料の普及率は非常に低い水準にとどまっています。2020年時点のSAF燃料供給量は6.3万klで世界全体のジェット燃料供給量のわずか0.03%にすぎません。2050年のSAF燃料の需要量は4.1億kl〜5.5億klと予想されていますので、需要の供給が追い付いていないのが現状です。

出典:環境省「持続可能な航空燃料(SAF)について」(2022/6/27)(p2)

2. SAF燃料の製造

SAF燃料はどのように製造されるのでしょうか。SAF燃料の原料や製造方法についてまとめます。

(1)SAF燃料の原料

SAF燃料の原料となるのはバイオマス(生物資源)由来の原料や廃棄物・植物油などです。

バイオマス種類

出典:資源エネルギー庁「バイオマス発電|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー」

上記の表でわかるようにバイオマスには様々なものが含まれています。これらをガス化するなどしてエタノールを生成し、SAF燃料の原料とします。

バイオマス由来のSAF燃料は植物の光合成作用によって生み出されたものであり、排出したCO2は、かつて空気中に存在したものであるため、CO2の総量は増加しません。SAF燃料はCO2の総量を増加させないネットゼロの燃料といえるのです。

(2)SAF燃料の製造方法

SAF燃料の製造方法は現在研究中で、決定的な方法はありません。現在研究されているのは以下の技術です。

SAF燃料の製造方法

出典:資源エネルギー庁「2030年に向けた エネルギー政策の在り方」(2021/3/11)(p110)

FT(フィッシャー・トロプシュ法)合成は廃木材や農業廃棄物・紙ごみなどをガス化し、触媒を使って液化することでジェット燃料を製造する方法です。

HEFA(Hydroprocessed Esters and Fatty Acids)は廃食油や牛脂・微細藻類などを原料とし、高圧化で水素分解・還元してジェット燃料を作る方法で、ミドリムシの研究で知られるユーグレナなどが取り組んでいます。

今後、様々な方法が研究されていきますが、航空燃料での需要を満たす必要性があるため、各国とも競って開発を進めることが予想されます。

3. SAF燃料のメリット

SAF燃料を導入するメリットは何でしょうか。2つのメリットについてまとめます。

(1)CO2の排出量を増やさない

1つ目のメリットはCO2の排出量を増やさないことです。これまで航空燃料として用いられてきたのは化石燃料です。地下から取り出した化石燃料を燃焼させることで地表のCO2量が増加し、温暖化を加速させています。

しかし、バイオマス由来のSAFであれば新たにCO2を排出しません。SAFの原料となる植物が大気中にあるCO2を光合成によって取り込み、その植物由来の燃料を燃焼させるだけなので大気中のCO2総量が変わらないからです。

(2)従来の燃料と同じように使用できる

2つ目のメリットは従来の燃料と同じように使用できることです。SAF燃料は従来の化石燃料由来のジェット燃料と混合して使用できるため、従来の設備をそのまま使用できます。将来的にはSAF燃料のみで使用することも検討されています。

4. SAFに関する航空会社の取り組み

SAFに関して、日本の2大航空会社であるJAL(日本航空)やANA(全日空)はどのような対応をしているのでしょうか。それぞれの取り組みについてまとめます。

(1)JALの取り組み

JALは2050年にカーボンニュートラルを達成するため、化石燃料由来の燃料からSAF燃料に切り替えようとしています。当面の目標として、2030年までに使用する燃料の10%をSAF燃料に置き換える予定です。

しかし、SAF燃料の供給量が圧倒的に不足しているため、安定的に使用するためには国産SAF燃料の量産化が必要不可欠としています。

出典:経済産業省「JALグループにおける SAFの取り組みについて」(2022/4/22)(p2~3)

(2)ANAの取り組み

ANAでもSAF燃料導入への取り組みが始まっています。ANAが取り組んでいるのは「SAF Flight Initiative」です。事業におけるCO2の排出削減やSAF燃料普及に協賛する企業を募り、サプライチェーン全体でCO2の排出削減を目指しています。

SAF燃料開発を行うユーグレナへの出資や海外のSAF燃料生産メーカーとの契約などSAF燃料確保への取り組みを加速させています。

出典:ANA「SAF Flight Initiative GHGプロトコルに基づく脱酸素プログラム」

5. まとめ:運輸分野でのCO2削減は今後も進む

今回はSAF燃料についてまとめました。航空会社を含む運輸部門は日本のCO2排出量の17.7%を占めています。日本政府が掲げる2050年までのカーボンニュートラルを達成するにはまだまだCO2の排出削減が必要です。

今後はSAFに限らず、運輸部門全体でのCO2排出削減が急務となります。バイオエタノールの燃料使用や電気自動車の活用などは中小企業でもできる対策です。将来的なCO2排出削減圧力の増加を予測し、中小企業であっても積極的にCO2排出削減を目指したほうがよいのではないでしょうか。

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