再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の仕組みと利点を解説

「日本のエネルギー問題」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。電力代高騰、再生可能エネルギー普及の可否など、最近では電力に関する話題が多く取り上げられています。

今回は日本が抱えるエネルギー問題について解説していきます。現在はどのような課題があるのか。どのような対策を検討されているのか。そして、自分たちの事業活動にはどのような影響が出るのか。一緒に整理していきましょう。

目次

  1. 日本が抱えるエネルギー問題:エネルギー自給率と安定供給

  2. エネルギー問題による日本への影響とは

  3. 日本のエネルギー問題の改善策

  4. エネルギー問題が事業活動に与える影響とは

  5. まとめ

1. 日本が抱えるエネルギー問題:エネルギー自給率と安定供給

日本のエネルギー自給率は11.8%

 

主要国の一次エネルギー自給率比較(2018年)

出典:資源エネルギー庁『日本は、国内の資源でどのくらいエネルギーを自給できていますか?「エネルギーの今を知る10の質問」』

まず課題に上がるのは、日本のエネルギー自給率の低さです。これは、日本がかねてより、化石燃料を利用する火力発電に頼りすぎていること、その化石燃料のほとんどを輸入に頼っていることが原因です。

日本の一次エネルギー供給構成の推移によると、2018年度の一次エネルギーのうち85.5%が化石燃料に依存しており、2019年のデータでは原油99.7%、LNG(液化天然ガス)97.7%、石炭99.5%が海外に依存しています。

日本の化石燃料輸入先(2019年)

出典:資源エネルギー庁『日本はどのような国から化石燃料を輸入していますか?「エネルギーの今を知る10の質問」』

化石燃料に頼る日本、安定供給の危険性

エネルギー自給率が低下することで、日本は国際情勢の影響を強く受けます。その影響は大きく2つで、1つ目はエネルギーの安定供給が外的要因に強く脅かされること。2つ目は、それに伴う電気代高騰の危険性です。

日本のエネルギー政策では、かねてより「安定供給」「経済効率性」「環境への適合」のバランスをとる「3E+S」の方針をとっていました。エネルギーの4割を占める石油と、23%を占めるLNGに対しての調達先の多様化。米国のシェール開発への参画。ロシアからの供給拡大見込みなど、様々な国際資源戦略を組んでいます。

出典:資源エネルギー庁『日本の新たな国際資源戦略 ①石油の安定供給基盤をさらに強化する』(2020-07-03)
出典:資源エネルギー庁『日本の新たな国際資源戦略 ②LNGセキュリティの強化に向けて』(2020-07-22)

しかし実際に、20年末~21年1月にかけて、LNGの供給不足を一因として、電力供給の逼迫、それに伴う電気代高騰が起こり、22年夏と冬も、電力需給の逼迫が懸念されています。こちらの原因は近年の火力発電の休廃止による電力供給力の低下と言われており、供給力の確保や節電の呼びかけが検討されています。

出典:資源エネルギー庁『今冬の電力需給逼迫について』(2021/3/22)(p.2)
出典:日本経済新聞『電力・ガス大手が6月値上げ、燃料価格高騰を反映』(2021/4/28)
出典:資源エネルギー庁『2021年度夏季及び冬季の電力需給の見通しと対策について』(2021/5/25)(p.8)

2. エネルギー問題による日本への影響とは

温室効果ガスの排出量が問題視

日本が化石燃料に頼っていることで、国際的に問題視されているのが、温室効果ガスの排出量です。

2018年の世界のCO2 排出量に対する日本の排出割合は3.2%と、中国やアメリカ等ほかの主要国と比べても決して高い数字ではありません。

出典:環境省『世界のエネルギー起源CO2排出量(2018)』

しかし、化石燃料、特に環境への負荷が大きい石炭火力に対して、世界の脱石炭の流れの中でも意欲的な姿勢を見せることができず、COP25(第25回気候変動枠組み条約締約国会議)では2度の化石賞を受賞しています。

出典:日本経済新聞『脱石炭示さぬ日本に再び「化石賞」 COP25で環境団体』(2019/12/12)

温室効果ガス増加による気候変動の影響

温室効果ガスの増加によって、私たちの生活に大きな影響を与えるのは気候変動です。国内であれば、19年に関東を襲った台風15号・19号や、20年に熊本を襲った台風10号が記憶に新しいです。19年の台風15号では、千葉県内で最大約64万軒が停電、建物被害や倒木、断水や通信障害に襲われました。

出典:千葉市『令和元年台風15号・19号・10月25日の大雨により市域に甚大な被害発生』(2019/12/26)

世界各地への影響は「海面上昇」「異常気象(猛暑日が増える・スーパー台風の増加など)」「山林火災が増える」「食糧危機の発生」「生態系への影響」などが考えられます。

海面上昇は、1901年から2010年の期間で世界の海面水位は0.19メートル上昇したと発表されています。現在も上昇を続けており、今世紀末には1986年から2005年と比較して0.26~0.82メートル上昇すると予測されています。

出典:環境省『IPCC第5次評価報告書の概要』(p41)

推進される再生可能エネルギーの活用

エネルギー自給率の増加、地球温暖化対策のために注目を浴びているのが、再生可能エネルギーの活用です。

再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、水力など自然由来のエネルギーのことで、これを元に発電された電力は国産のエネルギーとして、エネルギー自給率の増加に寄与できます。

菅総理の20年10月所信表明演説「2050年カーボンニュートラルの実現」、21年4月気候変動サミット「2030年目標:温室効果ガス13年度比46%減」の流れも受けて、日本全体で再生可能エネルギーの普及が求められています。

出典:経済産業省『再生可能エネルギーとは

3. 日本のエネルギー問題の改善策事業活動に与える影響

2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

今や多くの国が2050年の温室効果ガスをゼロにするという取り組みに向かってエネルギーの転換に取り組んでいます。日本では「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(以下グリーン成長戦略)を掲げています。

これは温暖化への対応を「成長の機会」ととらえ、民間企業の大胆なイノベーションをうながし、新しい時代に向けた挑戦を応援するために策定されました。

グリーン成長戦略では、今後産業として成長が期待され、なおかつ温室効果ガスの排出を削減する観点からも取り組みが不可欠と考えられる分野として、14の重要分野を設定しています。

グリーン成長戦略「実行計画」の14分野

出典:資源エネルギー庁『カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは?』(2021/5/20)

それぞれの活動については割愛しますが、注目すべきはこれらを推し進めることが、日本のエネルギー問題であったエネルギー自給率や、安定供給の課題の解決につながるということです。

エネルギー関連産業の洋上風力や水素は国産エネルギーとしてエネルギー自給率の向上に、また、輸送・製造関連産業の蓄電池産業や省エネ半導体は、電力需要の急増を防ぎ安定供給に寄与します。

4. エネルギー問題が事業活動に与える影響は?

エネルギー問題からカーボンニュートラル、グリーン成長戦略まで様々な流れがあることはわかりましたが、実のところ、今の自分たちの事業活動にはどのような影響があるのでしょうか。ここでは時間軸を大きく2つに分けて紹介します。

1. 短期:電力需給の逼迫・電力代高騰リスク

日本のみならず、世界各国で次世代に向けて様々な取り組みを行っていますが、今すぐ問題が解決するわけではありません。現時点で22年の夏と冬は電力需給の逼迫が予想されているため、これに対処する必要があります。

出典:資源エネルギー庁『2021年度夏季及び冬季の電力需給の見通しと対策について』(2021/5/25)(p.8)

ほとんどの業界にとって、電力はなくてはならないものです。短中期的な省エネ対策を洗い出し、企業としての取り組みを定めたり、いざ停電が起きたときの備品の確認などをしておきましょう。

2. 中長期:脱炭素経営がより一般的に

現在、大手企業のみならず中小企業でも「脱炭素経営」が注目を浴びています。中小企業が脱炭素を取り組むメリットは次の5つです。

出典:環境省『中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック』

  1. 優位性の構築:サプライヤーに対しての脱炭素を求める傾向の強まり

原材料・部品調達や製品の使用段階も含めた温室効果ガス削減目標を示す「SBT目標」を策定する企業が増加し、サプライヤー全体での脱炭素の取り組みが求められます。

  1. 光熱費・燃料費の低減:設備やプロセスの最適化に伴うコスト削減

エネルギー削減の必要性が高まり、設備の更新などが進むことで光熱費・燃料費の削減につながります。また、一般的にコストがかかるとされている再エネ電力調達に関しても、追加の負担なく実施できる例も増えています。

  1. 知名度・認知度の向上:メディアへの掲載や国・自治体からの表彰対象に

最近のニュースにもある通り、大幅な温室効果ガス削減の達成や、再エネ導入を先駆的に進めた企業は大手・地方新聞などに掲載されやすいです。また、省エネ・再エネを提供する企業によっては無償でPRを作成する企業もあります。

出典:神戸新聞NEXT『年間1億円分、ため池ソーラーで自社工場の全電力自給 兵庫の企業』(2021/2/3)

  1. 社員モチベーション・人材獲得力の向上:社会課題解決に伴う活動への共感

気候変動に取り組むことで、社員の共感や信頼の獲得につながり、社員のモチベーション向上につながります。また、近年増加しているSDGsへの関心の高い人材から共感され、この会社で働きたいという人材を集める効果も期待されます。

  1. 事業機会創出や資金調達の優位性:脱炭素経営が融資先の選定基準に

「サステナビリティ・リンク・ローン」と呼ばれる、温室効果ガス削減や再エネ導入の目標達成度合いに応じで貸出金利が変動する投資方法が広まりつつあります。

出典:三井住友銀行『サステナビリティ・リンク・ローン』

5. まとめ:エネルギー問題のリスクを理解し、自社にできる省エネ・再エネに取り組もう

今回は日本が抱えるエネルギー問題と、それに伴う短期~中長期の日本の流れをまとめました。

  1. 日本の大きなエネルギー問題は自給率と安定供給。85.5%を占める化石燃料への依存が自給率の低下と安定供給の危機を生んでいる

  2. 化石燃料に頼る影響で日本は世界的に風当たりの強い評価を受けており、再生可能エネルギーを含めた脱炭素の取り組みが求められる

  3. 脱炭素に向けたグリーン成長戦略は、現状の産業を大きく変える政策でエネルギー問題も解決する

  4. 中長期的に、多くの企業で脱炭素の取り組みが求められる

 

農業革命、工業革命、IT革命と続き、世界は脱炭素に向けた革命の中にあります。自社の社員、ステークホルダーのためにも、日本の未来の子供たちのためにも、まずは自社にできることを積極的に探し、対策を講じていきましょう。

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