ESG投資は優良企業を育てられるか? ESG投資とESG経営企業の事例4選

ESGという概念単体で耳にする機会が増えました。この言葉が広く知れ渡るようになったのは、ESG投資という言葉が出てきた頃ですが、みなさんはESG投資について、どこまで理解をしていますか。経営に関わる投資概念として一般用語になっているESG投資について、実際に経営に取り入れている企業を参考に整理してみましょう。

目次

  1. 企業のESG投資とは?
  2. 企業のESG投資が注目されている理由
  3. ESG投資の拡大による、ESG経営が企業に与えるメリット
  4. 企業のESG投資・経営の実際の取り組み事例
  5. まとめ:ESG投資は注目度が高く、将来的なリターンも大きい

1. 企業のESG投資とは?

そもそもESGとは、今まで企業を評価してきた財務状況とは異なる評価基準で、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)という3つの観点から企業を評価しようとする考え方です。

このESGの視点から評価の高い企業の事業は、環境や社会的に貢献度が高いと認知されます。また、企業統治も検討項目のため「企業として生き残れる」「持続性の高い企業」と考えられるようになりました。

  • 環境(Environment):環境汚染を考慮した取り組みなど
  • 社会(Social):地元地域や他地域に貢献する取り組みや社内の労働環境などに対する取り組みなど
  • 企業統治(Governance):企業コンプライアンスや企業の透明性、健全な企業運営に対する取り組みなど

SDGsの達成を目指した企業活動に投資する投資手法

ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3つの評価基準で優れた企業に対して資金を投入していく投資スタイルです。

以前は企業の財務情報などから投資判断をしていましたが、現在ではその傾向は変わりつつあります。ESGの重視が経済を持続させ、長期的利益につながるという考えに基づき、企業の取り組みを判断材料に株投資などがされるようになってきました。

2. 企業のESG投資が注目されている理由

なぜここまでESG投資が注目されてきたのでしょうか。ESG投資の考え方が広まったキッカケは、2008年のリーマン・ショックでした。ご存じの通りリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻したことで、連鎖的に世界規模の金融危機になった事件です。

リーマンショックが起こるまでは、目先の利益を追求した企業が良しとされてきましたが、それが投資や融資の基準になってしまった結果、金融危機を招いてしまいました。そういった反省から、欧米の投資家や企業のなかで、ESG投資という考えが広がっていったのです。 

また、それを後押しするように2015年、国連は2030年までに達成すべき世界共通の目標としてSDGs(Sustainable Development Goals =持続可能な開発目標)を採択しました。

SDGsが世界的に注目され始めている

SDGsが国連によって採択されたことにより、世界全体が地球に存在する様々な社会問題に目を向けるようになり、その目標を達成するために動き出しました。社会に大きな影響力を持つ企業が、事業を通じてSDGsの達成に取り組むようにするのが、このESG投資です。

SDGs達成を後押しする投資手法がESG投資

ESG投資は企業の財務情報だけを見るのではなく、環境や社会への責任を果たしているかどうかを重視して、企業価値を判断しながら投資を行う投資手法です。つまり、企業は自分たちの利益を優先するだけでは、資金を集めることができなくなります。

このようにSDGsの達成を世界が目指せば目指すほど、それに比例するように機関投資家(大規模な投資を行う企業・金融機関などの投資家)は、SDGsの達成に貢献する企業を応援する形で投資します。企業にとっては、ESGを考慮して経営したほうが、事業運営資金の調達につながり、結果としてSDGsの達成につながるわけです。

GRIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資に巨額の資金投入

SDGs採択後、各先進国でESG投資が広まっていましたが、当時の日本ではあまり注目されていませんでした。しかし、2017年にGRIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が約1兆円のESG投資を行ったと発表し、日本でもESG投資の名が一気に知れ渡りました。

GPIFは約157兆円の資産をもつ日本最大の機関投資家で、私たちの年金資産を運用しています。このGPIFがESG投資に乗り出したことで、お金の流れがESGの流れに大きくシフトしたと同時に、他の投資家もその流れに傾いていきました。それは今までの投資基準である利益第一主義とは異なる判断であるため、世間で大きく話題になりました。

ESG投資が拡大し、企業のESG経営の重要性が増している

ESG投資が拡大すればするほど、今までのようになにかを犠牲にして目先の利益を求める経営スタイルは企業価値を落とすようになりました。ESGを考慮した経営をすると投資家に評価されるため、企業は運営資金を確保するため、ESG経営に積極的に取り組む必要性が高くなっています。

3. ESG投資の拡大による、ESG経営が企業に与えるメリット

具体的に、ESG経営は企業にどのようなメリットを与えるのでしょうか。

ESG経営が企業価値を高め、ESG投資が増える

今まで述べてきた通り、ESGは経営を考えるうえで不可欠な存在になってきました。企業はESG経営を行えば、投資による会社運営資金を調達できるようになります。

企業価値の判断材料の一つであるESGスコア

ESG経営をしているかどうかの判断基準はESGスコアです。そしてそのESGスコアがそのまま企業価値を判断する判断材料になりつつあります。機関投資家はこのESGスコアを活用して投資先の選定をするため、企業はESG経営に取り組むことでESGスコアを上昇させることができます。

持続可能な経営になり、結果として長期的にキャッシュフローが増強される

ESG経営とはなにかを犠牲にして、目先の利益を追求するといった経営ではなく、環境や社会に貢献する責任を果たす、持続性が高い経営スタイルです。そういった経営スタイルは企業自体のPRになり、企業のブランディングにつながります。

最近では消費者の消費行動にも変化が出てきていて、同じ値段なら、より持続可能な経営を実践している企業の製品が支持されるようになってきました。その結果、長期的にみると、ESGに取り組む企業は持続的に利益を確保することができ、キャッシュフローが増強されることにつながります。

経営上のリスクを軽減させることができる

ESG経営は透明性やコンプライアンスを意識した経営スタイルのため、経営上の不祥事を未然に防止することにつながります。

企業による不祥事が1回でも発生した場合、その企業イメージは大きく損なわれます。例えば雪印の集団食中毒事件などのように、企業の管理上の不備や不祥事があった場合、倒産まで追い込まれるケースも多くあります。こういった事態を未然に防ぐことができるのもESG経営のメリットです。

4. 企業のESG投資・経営の実際の取り組み事例

実際に私たちの身近でESGに取り組んでいる企業を紹介します。

株式会社丸井グループ

丸井グループは東洋経済新報社が発表しているESG企業ランキングで2位にランクインしています。

環境面に関して、循環型ファッションの取り組みを行っています。また社会では女性の活躍推進や障がい者雇用など多様性の推進の取り組みを実践しています。ドレスレンタルサービスの「DRENi」を開始してドレス1着の環境負荷の削減を目指すなど、先進的な取り組みにも挑戦している企業です。

日本マクドナルドホールディングス株式会社 

日本マクドナルドもESGへの取り組みを行っています。森林保全対策や海洋プラスチック問題への取り組みや廃棄物対策、エネルギー対策など幅広く取り組みを展開しています。また社会では、支援活動としての「ドナルド・マクドナルド・ハウス支援」やスポーツ支援、食育支援などに取り組んでいます。

キャノン株式会社(Canon)

日本の電子メーカー大手のCanonでもESGを強く意識した経営を行っています。地球温暖化対策やリサイクル、有害部物質排除や生物多様性保全などの環境への取り組みをはじめ、企業としての責任を果たすための取り組み(CSR)をinstagramなどで発信しています。

KDDI株式会社

電気通信事業大手のKDDIはESG企業ランキング(東洋経済)で4位にランクインするほど、ESG経営に対する評価が高い企業です。特に環境への取り組みに力を入れており、KDDI単体の二酸化炭素の排出量を2013年比で7%減など具体的な数値目標を出しています。また循環型社会の形成として使用済みの携帯電話のマテリアルリサイクル率99%を維持しています。

5. まとめ:ESG投資は注目度が高く、将来的なリターンも大きい

ESG投資は企業の健全化と社会や環境にやさしい企業を多く生み出す投資手法であり、SDGsが注目されている現在、注目度の高い投資です。ESG投資は目先の利益に飛びつく企業ではなく、持続可能性の高い企業に投資するため、長期的にはリターンの大きい投資になります。世界は今このESG投資の流れになりつつあり、私たちもESGの視点で企業を評価していく必要があります。

 

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