企業がCO2削減に取り組む理由とは?企業事例とともに解説!

CO2の削減に向けた企業の取り組みは、地球環境を考える上で非常に重要な役割を担っています。温室効果ガスとして高いパーセンテージを占めるCO2を削減できれば、地球温暖化など環境問題へ直接効果が期待できるからです。

更に現在では、CO2の削減は、単に環境への配慮だけではなく、ユーザーの意識や世界情勢、更には投資家が投資するかどうかの判断基準にも繋がっていきます。今回は、CO2削減に取り組むメリットや実例をまとめましたのでぜひご覧ください。

目次

  1. なぜ企業がCO2削減に取り組むべきなのか

  2. 企業のCO2削減への取り組み事例をチェック

  3. CO2削減が企業にとって難しいポイントとは

  4. 企業のCO2削減への取り組みのメリットとは

  5. 企業のCO2削減に向けた取り組みについてのまとめ

なぜ企業がCO2削減に取り組むべきなのか

そもそも、企業はなぜCO2削減に取り組むべきべきなのでしょうか。答えは、日本のCO2排出量と企業活動は大きく関わりがあるからです。

まず日本全体の話をすると、1997年に採択された「京都議定書」では温室効果ガスを2008年から2012年の間に、1990年比で6%削減するという目標が課せられました。また、2015年に締結されたパリ協定では温室効果ガスの排出量を、2030年に2013年対比で46%減に持っていくことを目標として定めています。

出典:時事通信『「46%削減」問われる具体策 野心的目標、政治主導で決断―気候変動』(2021年4月24日)

日本での温室効果ガスは、CO2が91%を超えているので、どれだけCO2排出を抑えられるかが大きなテーマです。中でも、全体のCO2排出量のうち企業活動が占める割合は80%以上となっています。

二酸化炭素の排出

出典:全国地球温暖化防止活動推進センター 『日本の部門別二酸化炭素排出量の割合 -各部門の直接排出量-』

だからこそ、企業がどれだけCO2削減に取り組むかは直接日本の環境への取り組みとして評価される重要なポイントとなります。

また、企業としても環境保護への取り組みは環境面だけでなくブランディングやPRといった面でも効果的です。最近ではエシカル消費の概念が広がり、「環境に配慮した商品か」といったポイントがユーザーの選定基準にもなり得ます。

さらに、環境が汚染されてしまうと異常気象につながり、食物連鎖が崩れて食糧難になったり、経済活動が真っ当に行えない状況なることも考えられます。

企業としてCO2削減へ取り組んでいくことは、全世界的な課題への対策でもあり、自社のブランディング施策でもあり、マーケットを維持するための方法となります。

出典:外務省 『2020年以降の枠組み:パリ協定』(2020年4月2日)

そもそもCO2が与える影響とは

CO2に対して、このまま対策をせずに地球温暖化が進行すると、21世紀末には平均気温が平均で4度、最大4.8度も上がってしまうという計算結果が出ています。

世界平均気温

出典:環境省『観測された影響と将来予測』(p.1)

出典:WWF『地球温暖化についてのIPCCの予想シナリオ』(2015年8月24日)

平均気温が4度上がると、まず変化が起きるのは異常気象です。

異常気象が起きてしまうと下記のようなストーリーが進みます。

  1. 異常気象:本来温帯のエリアが亜熱帯になり、南極の氷が溶けてしまう

  2. 環境変化:それぞれの環境に適応して生活してきた動植物が環境変化についていけず絶滅など大きな影響を与える

  3. 食物連鎖の崩壊:農業や漁業で不作、不漁などの影響が出る

  4. 経済活動の停滞:世界的な食糧不足、既存産業のバランスの崩壊

つまり、CO2が増加してこのまま進んでしまうと、自然の生態系はもちろん人間の社会生活や経済活動にも影響を及ぼしてしまうと懸念されています。

出典:WWF JAPAN 『地球温暖化が進むとどうなる?その影響は?』(2019年12月12日)

ユーザーの消費もエコを考慮したものに

地球環境や人間にとっての社会生活といった大きなテーマでも、CO2の削減は取り組むべきポイントですが、1ユーザーとして考える場合もエコを考慮した消費が今後ポイントとなります。

特に、キーワードとなるのが「エシカル消費」です。

エシカルは「倫理的な」という意味で、生産過程で低賃金での劣悪な労働や、児童労働、環境破壊といったマイナスな要因を起こしていないものを消費者が選択することで、持続可能な生活を維持する元となります。

例えば、普段何気なく食べているチョコレート。

原料であるカカオの原産国のガーナなどのアフリカの国では、貧困問題、児童労働など社会的問題がまだまだ後を絶ちません。中には劣悪な環境でカカオを取ったり、加工するといった仕事に従事する方が居ます。エシカル消費では、そもそも劣悪な環境でカカオを採取・加工している原料を取り扱うメーカーのものは購入しないという考え方となります。

エシカル消費の観点ではユーザーが商品を選ぶ際、原料供給だけでなく生産から利用の過程でCO2を減らすなど環境保護に取り組んでいるメーカーの商品も重要視されています。

エシカル消費

出典:消費者庁 『エシカル消費とは』

ESGやSDGsとの関係

ESGやSDGsといった言葉はご存じでしょうか。

ESGはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3つの頭文字を取った言葉です。また、SDGsは2015年9月の国連サミットで提唱された「持続可能な環境開発」を目的に、世界的に取り組むべき17のゴールと169のターゲットを提示したものです。

実は、ESGやSDGsの観点から見てもCO2の排出量削減は大きな意味を持ちます。企業にとって健全なマーケットを維持したり、ユーザーに選ばれる基準として環境対策は今後より重要視されます。また、ESGは現在投資家の投資基準として財務状況と並ぶほど重要視されている指標です。

特に国や財政の機関投資家は、短期的な収益を追うのではなく、安定的に成長する企業に投資してリターンの最大化を図ることが王道です。その点、ESG経営を実践している企業は環境配慮、社会への影響、透明性の高い企業統治の3点を併せ持った優良な企業が多く投資先としても安心感があるのでお金が集まりやすいメリットがあります。だからこそ、環境に配慮した商品作りをしている企業はユーザーに支持されやすく、自ずと企業価値も高まっていきます。

出典:外務省 『2018年版開発協力白書 日本の国際協力』

2. 企業のCO2削減への取り組み事例をチェック

CO2削減を実現するためには個人や一部署ではなく、全社を巻き込んで行動する必要があります。

CO2削減への取り組みで有名な企業はどのように環境へ配慮しているのか、具体的な内容やどういったメリットがあったのかをチェックして、自社での取り組みに活かしましょう。

日本企業の代表例

CO2削減に取り組む日本企業の代表例は、佐川急便株式会社(以下佐川急便)やコニカミノルタジャパン株式会社(以下コニカミノルタ)です。

佐川急便は運送業なので、ビジネスに欠かせない車両には環境に対応したクリーンエネルギー車の導入を行ったり、余計なCO2排出を抑えるための物流網の効率化、近隣エリアへの配達には車を使わず台車や自転車を活用するといった取り組みで、2017年には前年比約マイナス5%を実現しています。

コニカミノルタは、主にオフィス内での取り組みとして、水や電力の節約、物品購入時には環境に配慮された商品を選ぶといったすぐに実行できるアクションでCO2の削減を実施しています。

出典:佐川急便株式会社 『環境への取り組み』

出典:コニカミノルタジャパン株式会社 『環境活動の取り組み』

海外企業の代表例

海外企業のCO2削減での、代表例はMicrosoft 社(以下Microsoft)が挙げられます。

一見、PCの販売やソフトウェアの開発をしているMicrosoftと環境は繋がりが薄そうですが製品開発には「電気」が欠かせません。

つまり、環境に優しい電力を使えば、ダイレクトにCO2削減に繋がっていきますMicrosoftは、風力発電の電力を購入して利用することで大幅にCO2を削減しています。

ちなみに、海外では再生可能エネルギーが1キロワットあたり2〜5円程度となっており、日本の半分以下の価格です。

コストカットにもつながるので、海外では多くの企業が積極的にCO2削減に取り組んでいます。

出典:TechCrunchJapan 『Microsoft、GEが新設したアイルランド風力発電所の全電力を15年間分購入』(2017年10月11日)

取り組み事例の共通点

日本企業、海外企業のCO2削減への取り組みをまとめると、共通点が見えてきます。それは企業として「どこを改善すればCO2削減につながるか、スムーズに実行できるか」をきちんと把握してプロジェクトを進めていることです。

例えば、佐川急便の例だとどれだけ社内のオペレーションを整えても大きくCO2を排出する配達車を改善しないと会社としてCO2削減への取り組みとしては弱くなります。

また、コニカミノルタはオフィスの改善など、目の前の出来ることに注目することがスムーズな取り組みに繋がっています。

海外企業のMicrosoftは、自分たちのビジネスに欠かせない電力の部分で工夫を行っています。

本来は化石燃料などを使って得られる電力を、クリーンエネルギーからの供給に切り替えることで、現場スタッフは同じ仕事をしていても、結果的にエコに繋がっています。

3. CO2削減が企業にとって難しいポイントとは

CO2の削減自体は企業全体として取り組めるのが理想ですが、難しいポイントも存在します。どういったポイントがボトルネックになってくるのかを把握して、改善策や対策を検討しておきましょう。

原料コストが上がる可能性がある

CO2排出量をはじめとして、原料開発の際に環境への配慮が求められていますが、環境保護のために特殊な原料を使うことによって原料コストが上がる可能性はあります。重要なのはコストと環境保護のバランスを意識することです。

環境保護だけを優先して原料コストが上がると製品価格も上がり、ユーザーから受け入れられにくい価格になりかねません。

コストだけを重視して環境を気にせずに開発する企業は、エシカル消費の観点から見ても、ESGやSDGsの目線でも短期的な売上のために無茶をする企業といった印象を受けてしまい、マーケットでの評価が得られにくくなります。

目に見える効果がわかりづらい

CO2削減への取り組み自体は、広告費を増やして広告露出を増やすような分かりやすく目に見える効果が無いので、評価する難易度が高くなります。

一方で、企業のブランドイメージ向上やユーザーが共感するストーリー作りといったポイントとして、CO2削減への取り組みはプラスイメージを想起させます。

イニシャルコストが大きい

CO2削減に向けて企業が取り組むときには、仕入れ先の再選定や取引先の見直しや、製品を開発する際に環境に悪影響を与えないかのチェックを入れるなど大掛かりな取り組みとなることがほとんどです。しかも、CO2削減への取り組みはすぐに結果は出づらく、購買や研究、経営企画などさまざまな部署のリソースを使うことになるので人件費もかさみます。

4. 企業のCO2削減への取り組みのメリットとは

企業がCO2削減に取り組むには、コストの増大、他部署との複雑な調整、上層部への理解の通し方などさまざまなハードルがありますが、乗り越えると非常にメリットがあります。

これからは環境への配慮が企業価値に直結

企業のCO2削減への取り組みは、時間も労力もコストもかかります。

だからこそ、取り組みが実施できるかどうかはまさしく企業の考え方や思いが反映されるので、実現できれば大きな差別化要因となります。

例えば、大手日用品メーカーのユニリーバ社では、2010年からサスティナブルへの取り組みを進めており、今や売上増加分の79%をサスティナブルブランドが占めるほどになっています。また、サスティナブルブランドの成長率はユニリーバ社全体の成長率を46%も上回っていて、近年の消費者傾向を反映した結果が現れています。

さらに、エシカル消費という考え方が普及すればユーザーにとって「環境へ配慮した商品なのか」という点が非常に重要視されます。

出典:ユニリーバ社 『Unilever’s Sustainable Living Plan continues to fuel growth』(2018年10月5日)

ESG経営の実現

ESG経営にもCO2削減への取り組みは直結しています。特に環境面への配慮は企業の持続的な成長には欠かせないポイントです。

投資家の投資判断基準としてESGへの取り組みを指標化したESG指数を重要視するトレンドもあり、温熱効果ガスであるCO2を削減できれば、環境問題へ取り組んでいる企業として認識されて、マーケットでの存在感も高まります。

CO2削減には助成金の活用も可能

CO2削減に取り組む際には、助成金の活用も念頭に置きましょう。

CO2削減を実現するため、例えばアメリカでは4年間で2兆ドル(約200兆円)、EUでは10年間で1兆ユーロ(約120兆円)の投資計画が発表されています。

比較すると少ないですが、日本でも経済産業省では令和2年度に2兆円の予算を組んで、「グリーンイノベーション基金」を実施しています。

そもそも、日本では温室効果ガスの85%がエネルギーを作る際に発生するCO2が占めています。

グリーンイノベーション基金は、新たなエネルギーの産出など、現状からの転換を図る企業に対して、基金を設立して10年の長期的な支援を行う取り組みです。

中長期の成長戦略としてCO2削減を検討するなら、ぜひ自社が適用可能な助成金をチェックしましょう。

出典:経済産業省 『令和2年度第3次補正予算(経済産業省関連)の概要』内 令和2年度第3次補正予算の事業概要(PR資料)(PDF形式:3,339KB)P9(2021年1月28日)

5. 企業のCO2削減に向けた取り組みについてのまとめ

企業のCO2削減は、京都議定書やパリ協定といった世界的な環境問題への取り組み内容を実現するための大きなポイントです。

日本では温室効果ガスのうち2018年時点で91.7%がCO2となっているので、CO2削減に取り組むことがそのまま環境問題への取り組みとなります。

温室効果ガス排出量

出典:環境省『2018年度(平成30年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』(2020年4月14日)

現在日本のCO2排出量は、2018年で12億4000万トンとなっています。2015年に締結されたパリ協定において、当初は「2030年に2013年度比で26%の削減」という目標でしたが、気候サミットなど各国、各団体との協議を経て「2030年に46%の削減」という高い目標が掲げられました。

また、環境はもちろんESGといった経済的な指標や、SDGsといった世界的な取り組みにも合致しています。企業が実施する際には、コストやリソース・他部署との調整など乗り越えるべきハードルはあります。しかし、実行する難易度が高い施策なので、実現すれば競合他社との大きな差別化要因となります。

企業ブランディング、市場からの評価、投資の受けやすさ、メディアPR、他社との差別化による売上アップなど、CO2削減への取り組みは様々な面でメリットを生む施策です。

まずはクールビズやウォームビズから始めて、エアコンの使用を控えるといった身近なことも素晴らしい取り組みです。ぜひ、自社にとって取り組みやすいポイントからCO2削減をはじめていきましょう。

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