再生可能エネルギーの発電効率と発電量を種類別に解説 導入の参考に

再生可能エネルギー(以降文中は再エネ)導入は持続可能な社会の構築とともに、持続可能な企業となるための投資です。CO2排出量を削減できるだけでなく、停電時でも発電できる、導入に補助金が使える、電気料金を削減できる、余剰電力を売ることができる、など多くのメリットもあります。再生エネには様々な種類があります。再エネの種類と発電量を特徴とともに見てみましょう。

目次

  1. 再生可能エネルギーの種類と特徴

  2. 再生可能エネルギーの発電量

  3. まとめ:再エネ導入が企業の成長につながる

1.再生可能エネルギーの種類と特徴

日本のエネルギーにおける再エネの占める割合は2020年には22%で、政府は2030年には再エネ比率を最低でも40%達成を目指し、2035年には発電における非化石化100%を公約に掲げています。

出典:資源エネルギー庁『再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 2021年3月16日』p.4

※2010年以前は資源エネルギー庁「電源開発の概要」「電力供給計画の概要」をもとに作成、2010年以降は資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」をもとに作成

出典:資源エネルギー庁『エネルギー白書 国内のエネルギーの動向』p.134

出典:資源エネルギー庁『2020−日本が抱えているエネルギー問題(前編)

太陽光発電

太陽電池で太陽光を直接的に電力に変換する発電方式です。エンジンやタービンなどがなく、仕組みも単純なため管理に手がかからず、騒音もありません。

基本的に設置する地域の制限はなく、屋根や壁などにも設置できるため、新たな用地は必要ありません。

太陽光を利用するため、昼夜など時間帯や天候によって発電量が左右されます。日本の太陽光発電設備の導入コストは海外に比べ高い水準ですが、技術開発などにより安くなる傾向にあります。

風力発電

風の力でタービンを回す発電方式です。

風力発電機は自動的に風の強さや向きを測り、プロペラの角度や向きを調整します。風が強すぎてプロペラの回転速度が上がりすぎる場合は、安全のために停止させます。

風の強い地域でないと発電効率が悪く、また騒音も出るため設置場所が限られます。

出典:中部電力『風力発電の仕組み

水力発電

水が高いところから低いところへ落ちる力を利用してタービンを回す発電方法です。再生エネの中では比較的安定した発電量が見込める発電方法ですが、雨や雪が少ないと発電できないこともあります。

従来はダムや川を利用した大規模な水力発電が中心でしたが、全国の農業水利施設などには小規模な水力発電施設の設置が可能な地点が多くあり、開発と普及が進められています。

出典:農林水産省『再生可能エネルギーの推進と新事業の創出

地熱発電

地中深くから取り出した蒸気でタービンを回す発電方法です。火山や天然の噴気孔、硫気孔、温泉、変質岩などがある地熱地帯と呼ばれる地域で地球内部の熱を直接エネルギーとして利用します。

昼夜を問わず安定した発電が可能ですが、地熱発電に適した場所は国立公園など自然の景観に恵まれた場所が多く、周辺環境との調和も守る必要があります。

出典:九州電力『地熱発電

バイオマス発電

木屑や燃えるごみ、下水汚泥、家畜の排せつ物などを燃料化して、燃やす際の熱を利用する発電方法です。発電した後の排熱も周辺地域の暖房や温水として利用できます。

バイオマスは広く薄く存在しているため、経済性の向上が重要です。地域によるバイオマスの特質を生かした取り組みが全国各地で行われています。

出典:農林水産省『再生可能エネルギーの推進と新事業の創出

その他の再生可能エネルギー

その他にも再エネは多種多様にあります。ここでは実用化されている例をいくつか紹介します。

  • 太陽熱利用…太陽熱を利用する給湯や冷暖房システムで、古くから導入されています。

  • 雪氷熱利用…冬の間に降った雪や低い気温を利用して作った氷を保管し、冷熱が必要な時に利用します。

  • 温度差熱利用…地下水、河川水、下水などの水源を利用したエネルギーです。水の持つ熱をヒートポンプを使い利用します。

  • 地中熱利用…地中の温度が地下10m~15mになると年間を通して温度の変化がなくなることから、外気温との温度差を利用して効率的な冷暖房を行うシステムです。

出典:資源エネルギー庁『再生可能エネルギーとは

出典:資源エネルギー庁『電気をつくる方法 その②太陽光・風力・地熱発電

2.再生可能エネルギーの発電量

発電量(発電電力量)とは

発電量とは発電設備が一定の時間に供給できる電力です。

年間発電電力量(kWh/年) =設備容量(kW)×年間時間数(365 日×24 時間)×設備利用率(%)で計算されます。

導入量とは

発電において導入量とは、既に発電を開始した設備の設備容量です。

設備容量とは発電設備における時間あたりの最大仕事量、設備利用率とは設備容量に対する発電量との比で、有効に設備が使われているかを表します。

 設備利用率(%) =年間発電電力量(kWh/年)/(年間時間数(365 日×24 時間)×設備容量(kW))×100(%)で計算されます。

太陽光発電

出典:資源エネルギー庁『2030年における再生可能エネルギーについて』p.9

出典:資源エネルギー庁『太陽光発電について』p.12

太陽光発電の導入量は2020年では日本全体で5,580万kW と報告されています。単位をGW(ギガワット)に換算すると55.8GWです。

1つ目の表の認定容量と導入容量の差(24GW)は未稼働の設備分で、この中の75%(約18GW)は運転開始が見込まれています。

2つ目の表の2018年データでは太陽光発電の導入量は56GWで、太陽光発電の導入量だけでみると世界第3位です。

風力発電

出典:資源エネルギー庁『2030年における再生可能エネルギーについて』p.40

風力発電の導入量は420万kW(4.2GW)です。FIT認定量と導入量の値に大きく開きがあるのは、風力発電は導入にあたって現在4~5年の環境アセスメント(=環境調査)期間が必要なことと、森林エリアでの許可認定に2年ほどかかるなど環境影響評価に長い時間がかかるためです。

出典:資源エネルギー庁『2030年における再生可能エネルギーについて』p.50

現在陸上風力発電が主流ですが、今後は洋上風力発電が大量導入される方針です。現在は0.01GWほどの洋上風量発電の導入量を、2030年までには200万kW~300万kW(2GW~3GW)に増やす計画です。

出典:資源エネルギー庁『2030年における再生可能エネルギーについて』p.57

水力発電

出典:資源エネルギー庁『2030年における再生可能エネルギーについて』p.74

2020年の中小水力発電の導入量は977万kW(9.77GW)で、FIT認定をうけた設備は確実に事業化する傾向にあります。

認定量・導入量の推移も増加傾向にあり、国内にはまだ未利用の水力エネルギーが多数存在することから、政府は今後も現在のペースを上回る設備容量の増加を目指しています。

出典:資源エネルギー庁『2030年における再生可能エネルギーについて』p.77

地熱発電

資源エネルギー庁『2030年における再生可能エネルギーについて』p.62

2020年の地熱発電の導入量は59.3万kW(0.593GW)です。地熱発電は安定した電力供給が可能ですが、開発に多額の費用と長い期間、環境アセスメント、地元との調整、立地の制約などへの対応が必要など、設備の建設に課題の多い発電です。

日本企業の海外での地熱発電設備の世界シェアは約7割と高く、地熱発電の技術面においては世界でもトップレベルと言えます。

出典:『地熱発電導入拡大に向けた経済産業省の取り組み』p.2

バイオマス発電

資源エネルギー庁『2030年における再生可能エネルギーについて』p.85

バイオマス発電の導入量は450万kW(4.5GW)です。FIT認定量に対する導入率が35%と低く、他の区分と比較して導入が遅れています。

バイオマス発電は燃料の安定確保に課題があり、国産木質バイオマス利用拡大やバイオマス燃料の持続可能性確保に向けた政策が進められています。

資源エネルギー庁『2030年における再生可能エネルギーについて』p.92

一般廃棄物とその他のバイオマス区分では現在、発電機能を有するごみ焼却施設は全体の35%で、さらなる発電機能を有するごみ焼却施設の導入・更新の加速が必要です。

資源エネルギー庁『2030年における再生可能エネルギーについて』p.95

3.まとめ:再エネ導入が企業の成長につながる

2020年、日本は「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。世界でも再エネコストの低下が進み、ビジネスベースでの再生エネルギー導入が加速しています。

地球温暖化への対応をコストとらえる時代は終わり、成長の機会、企業の未来への投資、ビジネスチャンス拡大ととらえる時代に突入しています。

従来の発想を転換し、積極的に再エネ導入など地球温暖化への対策に取り組むことが企業の成長と存続に繋がります。

政府も企業の前向きな挑戦を積極的に支援する方針です。この機会を逃さず、すぐにできることから再エネ導入に取り組みましょう。

出典:資源エネルギー庁『今後の再生可能エネルギー政策について』p.4~6

※カーボンニュートラル:森林などの自然が吸収するCO2量と人間の活動によるCO2排出量が差し引きゼロになった状態

アスエネESGサミット2024資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
アスエネESGサミット2024