火力発電への依存はなぜ危険?火力発電のメリット・デメリットを理解しよう

世界的な脱炭素の流れを受け、日本でも再生可能エネルギーの普及と、主力電源である火力発電の規模の縮小への取り組みが活発になっています。

日本が火力発電から再生可能エネルギー発電に舵を切った背景には、火力発電が持つ様々なデメリットがありました。この記事では、法人の皆さまが知っておくべき、日本における火力発電の基礎知識やメリット・デメリットについてご紹介します。

目次

  1. 日本の火力発電に関する基礎知識

  2. 火力発電のメリット

  3. 火力発電はデメリットの方が大きい

  4. まとめ:火力発電のデメリットを理解して、再エネを推進しよう!

1. 日本の火力発電に関する基礎知識

日本の火力発電の歴史と推移

経済産業省によると、日本の化石燃料依存度と一次エネルギー供給構成は、次のように推移しています。

1973年度(第一次石油ショック時):化石燃料依存度94.0%(石油75.5%/石炭16.9%/LNG1.6%)、原子力0.6%、水力4.4%、再エネ等1.0%

2010年度(東日本大震災前):化石燃料依存度81.2%(石油40.3%/石炭22.7%/LNG18.2%)、原子力11.2%、水力3.3%、再エネ等4.4%

2018年度:化石燃料依存度85.5%(石油37.6%/石炭25.1%/LNG22.9%)、原子力2.8%、水力3.5%、再エネ等8.2%

日本は、石油ショック時と東日本大震災時にエネルギー供給構成に大きな変化が見られました。1970年代に起きた石油ショックによる石油価格の高騰をきっかけに、エネルギー政策が見直され、エネルギー源が分散化されています。石油ショック時には0.6%だった原子力が2010年度には11.2%まで伸びるも、東日本大震災の影響で2.8%まで縮小しています。2010年度から2018年度において伸びているのが石炭とLNG、そして再生可能エネルギーです。

出典:資源エネルギー庁『2020—日本が抱えているエネルギー問題(前編)』(2020/11/18)

日本における火力発電割合が高い理由

これまで日本において火力発電への依存が高かった理由の1つとして、日本のエネルギー自給率の低さがあげられます。経済産業省によると、日本のエネルギー自給率は次のように推移しています。

菅政権の誕生により、日本は2050年度までに再生可能エネルギーなど脱炭素電源を最大限に活用することで、二酸化炭素排出量実質ゼロの脱炭素社会を実現することを新たな目標として掲げています。2030年、2050年に掲げる目標を達成するために、今後日本において再生可能エネルギーの普及がさらに推進され、自給率が高くなることが予想されます。

出典:資源エネルギー庁『2020—日本が抱えているエネルギー問題(前編)』(2020/11/18)

今後の火力発電の推進

資源エネルギー庁は、2030年度の電源構成が以下のようになる見通しを示しています。

総発電電力量10,650億kWh程度内:石油3%程度、LNG27%程度、石炭26%程度、原子力20〜22%、再エネ22〜24%

21年6月現在は、再エネ比率を30年度36~38%を前提に電源構成の見直しされています。資源エネルギー庁によると、日本は今後再生可能エネルギーが拡大したとしても、季節や天候に左右される電源もあるため、完全に火力発電がゼロになることはありません。

出典:資源エネルギー庁『さまざまなエネルギーの低炭素化に向けた取り組み』(2018/2/8)

2. 火力発電のメリット

エネルギー自給率の低さの他にも、火力発電が持つメリットのために、日本では化石燃料への依存率が高くなっています。ここでは、火力発電の主な電源別にメリットをご紹介します。

石油火力発電のメリット

資源エネルギー庁は、石油火力発電のメリットは「燃料貯蔵が容易であり、供給弾力に優れていること」であると説明しています。供給弾力とは価格が上昇したときにどれくらい供給量が上がるかのことで、大きいほど良いとされます。価格が上昇した時に供給量が増えるため、供給曲線が緩やかになるためです。

出典:資源エネルギー庁『火力発電について』(2012/2)(p.2)

石炭火力発電のメリット

資源エネルギー庁は、石炭火力発電のメリットについて「安定供給や経済性において優れている」と説明しています。石炭は、石油やLNGと比較すると採掘できる年数が153年で、この数値は石油やLNGの約3倍です。また価格面でも石炭やLNGより安く、採掘できる地域も分散しています。これらの理由から、日本では石油発電の割合は減少していますが、石炭発電割合が増加しています。

出典:資源エネルギー庁『なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み』(2018/4/6)

LNG(液化天然ガス)火力発電のメリット

LNG火力発電は、石油や石炭と比較すると、ライフサイクル二酸化炭素排出量が少ないという特徴があります。資源エネルギー庁によると、石油火力発電のライフサイクル二酸化炭素排出量が738g-CO2/kWh、石炭火力発電の排出量が942.7g-CO2/kWhであるのに対して、LNG火力発電の二酸化炭素排出量は473.5g-CO2/kWhです。

出典:資源エネルギー庁『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』(2019/6/27)

3. 火力発電はデメリットの方が大きい

エネルギー自給率が低い日本は、安定した供給のために火力発電に長く依存してきました。しかし火力発電が持つデメリットのために、今後日本は火力発電を最小限に抑えつつ、再生可能エネルギーを最大限に活用していく方針を固めています。ここでは、なぜ火力発電に依存しすぎると危険なのか、その理由についてご紹介します。

二酸化炭素の排出量が多い

LNG火力発電は、石油火力発電や石炭火力発電と比べると二酸化炭素排出量は少ないです。しかし再生可能エネルギーの二酸化炭素排出量と比べると圧倒的に多い数値です。資源エネルギー庁によると、電源別のライフサイクル二酸化炭素排出量は以下のようになっています。

  • 石油火力発電:738g-CO2/kWh

  • 石炭火力発電:942.7g-CO2/kWh

  • LNG火力発電:473.5g-CO2/kWh

  • 風力発電:25.7g-CO2/kWh

  • 太陽光事業用:58.6g-CO2/kWh

  • 地熱:13.1g-CO2/kWh

  • 水力:10.9g-CO2/kWh

  • 原子力:19.4g-CO2/kWh

出典:資源エネルギー庁『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』(2019/6/27)

資源を輸入に依存

日本は、石油や石炭、LNGのほとんどを海外からの輸入に頼っています。国際情勢に影響され、価格が高騰し、安定的にエネルギー源を確保できないリスクがあります。

資源エネルギー庁によると、2019年度における原油海外依存度は99.7%、石炭海外依存度は99.5%、LNG海外依存度は97.7%です。

出典:資源エネルギー庁『2020—日本が抱えているエネルギー問題(前編)』(2020/11/18)

化石燃料は有限の資源である

石油や石炭、LNGなどの化石燃料は、風や水、太陽などの力で繰り返し発電できる再生可能エネルギーと異なり、有限の資源です。もしも枯渇するようなことがあれば、化石燃料に依存している国は大規模なエネルギー不足に陥ることになります。

4. まとめ:火力発電のデメリットを理解して、再エネを推進しよう!

この記事では、法人の皆さまが知っておくべき火力発電の基礎知識についてお伝えしました。火力発電のデメリットを理解し、再生可能エネルギーの取り組みにつなげていただければと思います!

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