地球温暖化の原因?温室効果ガスの影響と削減への取り組みとは

1970年以降、地球温暖化の影響が問題視され、1985年にオーストリアのフィラハでおこなわれた世界会議(フィラハ会議)で二酸化炭素などで構成される「温室効果ガス」の影響がとりあげられ、注目されるようになりました。では、温室効果ガスとは何をさし、どのような影響があるのでしょうか。ここでは温室効果ガスの影響と、世界が取り組む温室効果ガス削減の動きについてご紹介します。政府レベルで対策がすすむ地球温暖化対策に、企業としてどのような対応が求められているのか理解しておくことで今後の経営方針にも参考になると思います。

目次

  1. 温室効果ガスとは

  2. 地球温暖化と温室効果ガスの関係

  3. 地球温暖化対策となる温室効果ガス削減への取り組み

  4. 【まとめ】地球温暖化の原因は温室効果ガス!削減に取り組もう!

1. 温室効果ガスとは

温室効果ガスは大きく分けて4種類のガスによって構成されています。それぞれ発生原因や温室効果に差があります。構成比は日本の数値を基にご紹介していきます。

  1. 二酸化炭素(CO2)

温室効果ガスの中で最も代表的なガスであり、総排出量のうち91.4%を占めています。そのうち、化石燃料の焼却による発生が84.9%となっています。18世紀の産業革命以降、化石燃料の大量消費により爆発的に増え続けており、大気中の二酸化炭素は急激に増加しています。

  1. メタン

天然ガスの主成分として主に都市ガスに使用されています。有機物が空気の少ない状態で発酵する際に発生し、水田や家畜の腸内発酵、糞尿から発生します。温室効果ガスの中では2.3%となりますが、温室効果は二酸化炭素の21倍となっています。

  1. フロン

温室効果ガスの4.6%がフロンです。塩素を含むものはオゾン層の破壊の原因として有名ですが、平成9年より生産禁止となっており、その後「代替フロン」が使われるようになりました。しかしこちらも温室効果は二酸化炭素の1000倍以上となっています。スプレーの発泡剤やエアコン、冷蔵庫の冷媒などに使用されています。

  1. 一酸化二窒素

全身麻酔剤などにも使用されていたガスで、CO2の298倍の温室効果があります。大気中の寿命(濃度増加の影響が小さくなるまでの時間)が121年と長い特徴があります。1999年から排出削減が行われ、現在は排出量の1.6%となっています。燃料の焼却、工業プロセスにより発生されます。

出典:国立環境研究所『2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』(2021年4月13日)(p3)

2. 地球温暖化と温室効果ガスの関係

温暖化の仕組み

地球上の気温は温室効果ガスにより生物の生息できる気温が維持されています。温室効果ガスがなければ地球の気温はマイナス19℃ほどに低下します。これは太陽から地球に降り注ぐ光が地表を暖め、その地表から放射される熱を温室効果ガスが吸収し大気を暖めているからです。

しかし、近年では人類の化石燃料の燃焼などにより、温室効果ガスが増加し、地球の平均気温は上昇し続けています。2014年の「ICPP第5次評価報告書」によると、1880年から2012年の間で世界の平均気温は0.85℃上昇しています。これは2001年発表の「第3次評価報告書」で示された1901年から2000年の上昇傾向の0.6℃を上回り、現在も上昇のペースは衰えていません。このまま温室効果ガスの削減に対処しなかった場合は2100年には、1986年~2005年より4.8℃上昇すると予想されています。

出典:気象庁『IPCC第5次評価報告書気象庁訳』(p19)

日本においても、1898年の統計開始以降上昇を続けており、特に1990年から高温となる年が頻出しています。温暖化の影響の大きい北半球の中緯度ということもあり、世界の平均上昇率を上回る上昇となっています。

出典:気象庁『日本の気候の変化』

温暖化の影響

温暖化の影響として、

  • 海面の熱膨張や、南極、グリーンランドの氷河が融けて今世紀末には海面が最大82センチ上昇すると言われています。

  • 生態系の変化により、現在絶滅の危機にさらされている生物はさらに絶滅に追い込まれます。

  • マラリアなど、熱帯性の感染症の発生範囲が広がります。

  • 気象の変化により、内陸部では乾燥化、熱帯地域では熱帯性低気圧の台風、ハリケーンなどの発生が増加し、洪水や高潮の被害が増えるでしょう。

  • 病害虫の発生で穀物の生産に影響が起こり、世界的な食糧難を招く恐れがあります。

温暖化がすすむことにより、経済活動だけでなく、生活の安全も脅かされることになるのです。

出典:JCCCA『地球温暖化の影響予測』

温室効果ガスの排出量の多くは事業者から

日本の2019年度温室効果ガスの部門別排出量のシェア率をみると、工場などの産業部門で37.4 %、配送・輸送などの運輸部門で20%、商業・サービス・事業所など業務その他部門で18.8%となっており、合計76.2%とそのほとんどが事業者からの排出となっています。政府も企業に対する温室効果ガス削減への取り組みを推進しており、今後さらに注目されていくでしょう。

出典:国立環境研究所『2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』(p3)

3. 地球温暖化対策となる温室効果ガス削減への取り組み

京都議定書からパリ協定(IPCC)

1997年に第3回国連気候変動枠組条約の締約国会議が京都で行われ、参加先進国に対して「温室効果ガスを2008年から2012年の間に1990年比で5%削減する」という取り決めが採択されました。これを「京都議定書」といい、世界で初めての削減目標が示されました。

また、2015年にはフランス・パリでおこなわれた第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)では世界の平均気温上昇を2℃より低く抑え、1.5℃に抑える努力を追及するという目標に対して、世界約200国が合意しました。

これにより、地球温暖化対策は地球上の全ての国や人々が取り組むべき世界共通の目標となるのです。

出典:外務省『気候変動枠組条約京都議定書』

出典:外務省『2020年以降の枠組:パリ協定』

日本政府が示す今後の目標

日本ではパリ協定により、温室効果ガスの排出を2030年度までに2013年度比で26%削減するという目標を掲げており、その後2021年4月には、削減目標を2013年度比で46%に引き上げる方針を発表しています。

出典:bloomberg『政府、30年度の温室効果ガス削減目標を46%に引き上げ』(2021年4月22日)

また、温暖化対策に取り組む企業291団体のネットワークである「気候変動イニシアティブ(JCI)」は、菅首相に「45%を超えて50%削減を目指すことを求める」内容の書簡を送っています。これにより、企業による温室効果ガス排出削減への取り組みはさらに重要性が上がっていくことでしょう。

出典:朝日新聞『温室効果ガス「50%削減」を企業などが首相に書簡』(2021年4月21日)

4. 【まとめ】地球温暖化の原因は温室効果ガス!削減に取り組もう!

  • 温室効果ガスの91.4%は二酸化炭素で、そのほとんどは化石燃料の焼却により発生している。

  • ICPPの報告によると、温室効果ガスの削減に取り組まなかった場合、2100年には世界の平均温度は4.8%上昇すると試算されている。

  • 日本の2019年度温室効果ガスの排出量のシェアは事業者系の排出が76.2%を占めており、排出削減には企業による削減への取り組みが不可欠となっている。

  • 日本政府は2021年4月に温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%削減するという目標を掲げており、削減に取り組む企業団体の「気候変動イニシアティブ(JCI)」では首相に50%削減を求める書簡を送っている。

温室効果ガス削減への取り組みは、世界的にみてもすでに企業の経営継続には欠かせないものとなっています。自社の現状を把握し、削減に向けた具体的な対策を考えていきましょう。

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