ESG情報の開示基準はどう選ぶ?種類や現状について

ESG情報開示を自主的に行う企業数が増加していますが、ESG情報開示基準が複数あることから、企業側の選択が難しいとの課題があります。また、課題を解消することを目的にESG情報開示基準を統一化しようとの動きも出ています。

この記事ではESG情報開示基準を取り巻く動向や、主要なESG情報開示基準の特徴などについてご紹介します。各ESG情報開示基準の特徴を理解し、最適な基準を選択しESG情報開示に取り組みましょう。

目次

  1. ESG情報の開示基準の動向・乱立と統一の動き

  2. 主要なESG情報の開示基準の特徴

  3. 企業がESG情報の開示基準を選ぶ時の注意点

  4. まとめ:ESG情報の開示基準の特徴を理解しよう!

1. ESG情報の開示基準の動向・乱立と統一の動き

投資家の間で企業のESGへの取り組みが高く評価されるようになり、その結果、複数のESG情報開示基準が存在しています。より高度なESG情報が開示できるよう、ESG情報開示基準は乱立から統一の動きが出ています。ここでは、そもそもESG情報開示基準とはどのようなものなのか、また、ESG情報開示基準のあり方を巡る動向についてご紹介します。

そもそもESG情報の開示基準とは?

企業のESGへの取り組みを評価する際に投資家が参考にするのが、企業の情報開示です。企業は複数あるESG情報の開示基準の中から選択し、基準に沿って情報を開示します。

主要なESG情報開示基準

  • 国際統合報告フレームワーク

  • SASB基準

  • GRI基準

  • CDSBフレームワーク

  • TCFD提言

出典:経済産業省『サステナビリティ関連情報開示と企業価値創造の好循環に向けて』(2021/11/12)(p.10)

ESG情報の開示基準の動向

企業のESGへの取り組みを投資する時の判断基準とする投資家が増えたことにより、複数のESG情報開示基準が作られました。ESG情報開示基準が複数存在することで課題がいくつか生まれています。

  • 企業は基準の選択が難しいと感じている。

  • 複数の基準に対応するにはその分コストがかかる。

これらの課題を解消するためにESG情報開示基準は乱立から統一の動きが出ています。その顕著な取り組みとしてCDSB(気候変動開示基準委員会)とVRF(価値報告財団)の機関が統合され、2021年11月にISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が設立され新しい基準が作られています。

出典:日本経済新聞『統合に向かう開示基準 東証再編、「TCFD」対応必須に(2022/1/10)

2. 主要なESG情報の開示基準の特徴

主要なESG情報開示基準の特徴について整理していきましょう。

国際統合報告フレームワーク

国際統合報告フレームとは、GRIなどにより2010年に設立されたIIRCが2013年に設定したESG情報開示基準です。財務資本の提供者に対して、企業が長期に渡りどのように価値を創造していくのかを説明することを主な目的としており、関連する財務情報とその他の情報開示が求められます。以下の情報が開示項目です。

  • 財務資本

  • 製造資本

  • 知的資本

  • 人的資本

  • 社会・関係資本

  • 自然資本

出典:Integrated Reporting『国際統合報告 フレームワーク 日本語訳』(p.8)

SASB基準

SASB(サステナビリティ会計基準審議会)とは、2011年にアメリカで設立された機関です。SASB基準は企業が投資家に対して、持続可能性に関する財務情報を開示することを目的としています。業種(77業種)ごとに開示項目が設定されています。

出典:日本経済新聞『企業活動と環境保全(3)「重要課題」への対応が評価左右(2021/10/4)

GRI基準

GRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)は、1997年にアメリカで設立された機関です。GRI基準では企業は投資家を含む幅広いステークホルダーに対して、気候変動だけではなく経済や環境、社会への影響に関する幅広い情報開示が求められます。

出典:経済産業省『サステナビリティ関連情報開示と企業価値創造の好循環に向けて』(2021/11/12)(p.10)

CDSBフレームワーク

CDSB(気候変動開示基準審議会)とは、2007年にCDPなどにより設立された機関です。環境情報を財務情報に統合し、環境に係る投資家の意思決定を促すことを主な目的としています。開示情報の項目はCDPと同様に環境関連の情報です。

出典:経済産業省『サステナビリティ関連情報開示と企業価値創造の好循環に向けて』(2021/11/12)(p.10)

TCFD提言

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とは、金融安定理事会により2015年に設立された機関です。開示情報の項目は、気候変動に関するリスクと機会です。日本はTCFDに賛同する企業数が世界第1位です。2022年3月31日時点の賛同企業数は以下の通りです。

  • 日本 757社

  • イギリス 439社

  • アメリカ 392社

TCFD取組企業数

出典:環境省『企業の脱炭素経営への取組状況』

3. 企業がESG情報の開示基準を選ぶ時の注意点

ESG情報を開示することは企業に義務付けられてはいませんが、自主的にESG情報開示に取り組む企業数が増加しています。開示の目的や開示する対象、開示する情報の項目を理解した上で選択することが重要です。ESG情報開示基準を複数選択する場合は、重複する部分とそうではない部分を把握し、包括的に情報開示ができる基準を選択するようにしましょう。

4. まとめ:ESG情報の開示基準の特徴を理解しよう!

この記事では、ESG情報開示基準を取り巻く動向や主要なESG情報開示基準の特徴などについてご紹介しました。ESG情報開示は企業に義務付けられているものではありませんが、投資家やステークホルダーからの信頼を高めるためには欠かせません。各ESG情報開示基準の特徴を理解し、ESG情報開示に取り組みましょう。

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