海外とは大きな差がある?日本のCO2排出量の現状とは

全世界がCO2の排出量削減に向けて取り組んでいますが、日本の現状はどうなっているのかご存じでしょうか。今や世界的に脱炭素の取り組みが活発化し、企業の活動でもCO2削減が求められています。しかし、経営陣や社員の中で、コストなど経済面とのバランスを見て活動に懐疑的・消極的な方もいるかもしれません。

日本のCO2排出量の現状を正しく知ることで、自社の取り組みの必要性を理解し、協力を得られる場合があります。今回は、日本のCO2排出量や海外との意識の差、実際の企業の取り組みまで、日本の現状を解説します。

目次

  1. 世界で求められる、CO2排出量削減の背景とは

  2. 日本企業のCO2排出量低減に向けた取り組みとは

  3. 日本企業と海外企業のCO2排出量への意識の違い

  4. CO2排出量削減に先進的な日本企業の事例とは

  5. 日本のCO2排出量についてのまとめ

1. 世界で求められる、CO2排出量削減の背景とは

CO2排出量削減に関して、1997年に締結された「京都議定書」、2015年に採択された「パリ協定」によって、全世界でその取り組みが求められています。

国際社会で初めて温室効果ガスの削減に向けて締結されたのは「京都議定書」です。日本の現状は、基準年度である1990年から2018年で1163.9→1137.8(百万t-CO2)と、CO2の排出量は2.2%のダウンとなっています。

更に部門別で見ると「産業部門(工場等)」は503.5→398.0の21.0%、「工業プロセス」は65.6 →46.4の29.2%と大きく削減しています。

出典:全国地球温暖化防止活動推進センター日本の部門別二酸化炭素排出量の推移(1990-2018年度)(2020年4月14日)

また、パリ協定では産業革命以降の気温上昇を2℃未満に抑えることを目標に、2013年比で日本は26%(21年5月現在の目標は46%)、アメリカは18〜21%、EUは24%減少といった方向性を打ち出しています。

出典:経済産業省資源エネルギー庁 『今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~』(2017年8月17年)

2. 日本企業のCO2排出量低減に向けた取り組みとは

日本における企業のCO2排出量は、低下傾向にあります。

CO2排出量は京都議定書の基準年である1990年では12億6100万トンでしたが、2018年では12億4000万トンとなっています。

出典:環境省『2018年度(平成30年度)の温室効果ガス排出量(確報値(注 1))<概要>』

温室効果ガスの排出量削減のために再生可能エネルギーを利活用したり、クールビズやウォームビズの励行といった身近なものはもちろん、運送業における電気自動車の導入、再生エネルギー由来の電気を購入するなど業界特有の取り組みが代表的なものとして挙げられます。

2015年に国連で採択されたSDGsのように、持続可能な環境があってこそ、人間の社会活動やビジネスも持続できます。

SDGsでも、持続可能な環境を維持するためにもCO2削減は大きなポイントとなります。

出典:環境省 『京都議定書目標達成計画の進捗状況について』(2014年7月3日)

CO2対策を実施するポイント

CO2削減に向けて、施策を実行する場合は身近な取り組みから意識を変えていくことがポイントです。

例えば、クールビズやウォームビズを行うことは、エアコンの利用を抑えて、温室効果ガスの排出量削減に寄与します。

しかし、企業内でクールビズやウォームビズといった手段が前面に押し出されて実施するかどうかという判断を行っている場合もしばしばあります。

同じく、環境への対策が企業にとってどのようにメリットを生み出すのかを考えないと意識は変わりません。

環境対策は、今後ユーザーから「他社とは違う」と感じてもらえる差別化要因になり得るので、今のうちから社内での取り組みは、目的も伝えて意識改革を進めていきましょう。

代表的な取り組み企業例

CO2削減に取り組む代表的な日本企業として、ソニーグループ株式会社(SONY)が挙げられます。

SONYは、2050年までに環境負荷を0にするという目標の元、全社を挙げて環境問題へ取り組んでいます。

中でも、ヨーロッパの生産拠点では既に再生可能エネルギー100%で稼働しており、2030年には日本国内でも再生可能エネルギー比率を30%、2040年には100%と上げる取り組みを進めています。

出典:SONY 『サステナビリティレポート』

企業がすぐに取り組めるCO2対策とは

企業にとって、CO2削減への取り組みはコストやリソースも大きいもの以外にも、すぐに実行できるものがあります。

こまめに電気を消したり、クールビズを実行してエアコンの使用量を減らすといった取り組みは、すぐに出来る環境対策として有力です。

3. 日本企業と海外企業のCO2排出量への意識の違い

日本企業と海外企業には、CO2排出量への意識への差があります。

特に、CO2削減のベースとなる再生可能エネルギーのインフラ整備という面で、日本は海外に大きく遅れを取ってしまっています。世界的には、CO2排出量への危機感の高さが、企業はもちろん社会や国家を巻き込んでスピーディーなインフラ整備に繋がっています。

一方で、日本はまだまだ再生可能エネルギーの利活用が進んでいません。電力事業の既得損益もあり、新たな改革が進みにくいという課題も明らかになっています。

出典:環境エネルギー政策研究所 『日本と世界のエネルギー』

海外企業は環境対策を重要視

海外企業、特にヨーロッパやアメリカなどの先進国では再生可能エネルギーを中心とした、クリーンエネルギーの活用によって環境対策を行っています。

クリーンエネルギーの活用が進んでいる理由としては2つあります。

1つ目は、クリーンエネルギーが化石燃料同等以下のコストになることです。単にクリーンエネルギーを活用するだけではなく、コストも安く抑えられるのでメリットが大きくなります。

2つ目は、ユーザー側の環境への配慮もレベルが高い点です。環境へ配慮していることが前提で商品を選ぶ場合も多く、企業もユーザーも環境へ配慮していて当たり前という意識があります。

環境対策がそのままコストダウンや、ユーザーに選ばれる理由になることを考えると、環境対策は必要不可欠と考えられます。

日本企業が海外から学べることは

日本企業にとって、海外企業の環境対策をそのまま実行するのは社会的インフラの未整備など大きなハードルがあります。しかし、自分たちの身の回りのものでも、CO2削減につながるものはあります。

例えば、企業が物品を購入する際には環境へ配慮された製品を選ぶエシカル消費を実施したり、電気をこまめに消すなど、CO2を産み出す元から断ち切っていくのが分かりやすい対策と言えるでしょう。

CO2削減に向けた世界的な潮流とは

CO2削減に向けて、世界的な流れとなっているのは、SDGsやESG経営に共通する持続可能な環境の維持です。その場の売上や利益のために、森林伐採や環境汚染を起こしてしまうと、未来につながる事業とは言えません。

また、マーケットからすると、目先の売上を追って中長期的な発展がないと判断されてしまう可能性もあります。安定的な企業の成長にも、CO2削減をはじめとした環境への取り組みは欠かせないものとなっています。

4. CO2排出量削減に先進的な日本企業の事例とは

CO2排出量の削減に取り組む日本企業の事例を、ポイントを絞ってチェックしてみましょう。

特に、ブランディング要素として他社との差別化要因を作ったり、経営戦略の土台として環境問題対策を組み込んでいる企業です。

ブランディング

ブランディング要素を中心に、CO2削減に取り組んでいる日本企業の事例としては、SGホールディングス株式会社(佐川急便)が挙げられます。

物流業界大手の佐川急便は、環境へ配慮した車の導入など大きくコストがかかる部分はもちろん、営業所の電気をLEDにしたり、集配所の近くのエリアは車を使わず自電車などで配送を行うといった取り組みも進んでいます。

物流業というCO2を排出してしまう企業の中でも、他社とは違うポイントを打ち出しています。大きな視点を持ちながら、足元のすぐに実行できる施策を実行している好例です。

出典:佐川ホールディングス 『環境に配慮した事業推進』

経営

経営の土台として環境対策を組み込んでいる日本企業としては株式会社ユーグレナが挙げられます。

スーパーフードであるユーグレナを利用した健康食品を中心に事業を行っていますが、経営理念はずばり「サステナビリティ・ファースト」です。バイオマス燃料事業や、アジアを中心とした海外の労働環境向上などの取り組みを実行しています。

また、主力飲料商品の「からだにユーグレナ」では紙から作られたカートカンを利用したり、商品配送時の緩衝材として紙の緩衝材や段ボールによる仕切りを採用して、プラスチックの排出量を抑えつつ、過剰な森林伐採などが起こらないよう環境へ配慮しています。

出典:ユーグレナ 『サステナビリティ』

企業価値は今後、環境配慮の影響を大きく受ける

これからの社会における企業価値は、環境問題への取り組みとリンクしていきます。

企業が中長期的に成長を遂げるにあたって、環境への配慮は当然となり、周囲の環境へ配慮しない取り組みは、一過性の売上や利益しか作られないからです。

投資家が、投資判断の基準として財務状況のみを活用していたのは昔の話です。

今や、「透明性を持って、社会や環境に良い影響を与えているか」というESGという観点も、投資基準として財務状況と並ぶほど重要視されているポイントです。だからこそ、企業にとって環境への対策は、マーケットから評価される上でも重要な要素となっています。

出典:みずほコーポレート銀行 『環境経営による企業価値向上』

5. 日本のCO2排出量についてのまとめ

日本のCO2排出量は年々減少しています。「京都議定書」では、2008年から2012年までに1990年対比で温室効果ガスを6%削減することを目標としていた中、8.4%削減とクリアできています。また、今後はパリ協定において2030年に2013年度対比で温室効果ガスを46%削減することを目標にしています。

再生可能エネルギーの利活用という大きな取り組みや、クールビズやウォームビズといった取り組みによりエアコンの利用を控えて、温室効果ガスの排出を抑えるといった地道な取り組みも功を奏し、結果に繋がっています。

しかし、諸外国と比べたらまだ再生可能エネルギーの利用や環境問題への意識という点で低いと言わざるを得ません。これから先の社会は、ユーザーのエコ意識も高まり、エシカル消費が進み、環境に配慮できていない商品は選ばれない時代がやってきます。

未来のユーザー離れを防ぐためにも、ぜひ環境対策への意識を高く持っておきましょう。

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