世界の再生可能エネルギーの状況と今後の課題は?

温暖化による異常気象が現実のものとなり、世界各国がCO2排出量削減の取り組みを始めています。CO2を効果的に削減できるのが再生可能エネルギーの導入ですが、課題も抱えています。

この記事では、再生可能エネルギーの導入をご検討中の法人の皆さまが知っておくべき、再生可能エネルギーの基本的な知識についてご紹介します。

目次

  1. 世界が導入する再生可能エネルギーとは?

  2. 世界の再生可能エネルギーの取り組み状況

  3. 世界で普及。再生可能エネルギーのメリットとは

  4. 日本が抱える再生可能エネルギーの課題

  5. まとめ:再生可能エネルギーを導入して温暖化対策に貢献しよう!

1. 世界が導入する再生可能エネルギーとは?

温暖化の原因であるCO2排出量を抑えられることから、世界各国が再生可能エネルギーの導入を始めています。再生可能エネルギーが抱える課題を知る前に、再生可能エネルギーの定義や種類などの基本的な知識についてご紹介します。

再生可能エネルギーは温暖化対策につながるエネルギー

再生可能エネルギーは、2009年8月に施行された『エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用および化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律』において、『非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用できると認められるもの』と定義されています。

非化石エネルギーとは、化石燃料に由来しない、太陽光や風力など自然界に常に存在しているエネルギーのことです。再生可能エネルギーは、ほとんどCO2を排出しないため、積極的に活用することで、深刻化している地球温暖化を食い止めることができます。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー』

再生可能エネルギーの種類

再生可能エネルギーは、大きく7種類に分類されています。どのような種類の再生可能エネルギーがあるのか簡単にご紹介します。

  1. 太陽光発電

太陽の光を直接電気に変換する発電方法で、2019年末において日本は、太陽光発電の導入量が中国、アメリカに次ぐ世界第3位です。

  1. 風力発電

集めた風の力を電気に変換する発電方法です。風力発電を設備する場所が限定的であることから、欧米諸国と比較すると日本での導入は遅れていましたが、2000年以降から風力発電の導入件数が増加しています。

  1. バイオマス

動植物などの生物資源を燃焼したり、ガス化することで電気を作る発電方法です。

  1. 水力発電

水に恵まれている日本は、昔から水力発電を積極的に利用してきました。大きなダムだけでなく、中小水力発電の建設も増加しています。

  1. 地熱発電

火山帯に位置する日本は、東北や九州を拠点に、地熱発電所を運転しています。太陽光発電などと比較すると総発電量は少ないですが、安定してエネルギーを供給することができます。

  1. 太陽熱利用

集めた太陽の熱エネルギーを給湯や冷暖房などに活用するシステムです。

  1. 大気中の熱その他の自然界に存在する熱

浅い地盤中に存在する熱や、水場での温度差により生まれる熱などを電気エネルギーに変換します。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー』

2. 世界の再生可能エネルギーの取り組み状況

世界の電源構成の割合で最も多くを占めるのは石炭で、2016年時点で全体の38.4%を占めます。しかし国別に見ると、電源構成の割合は様々で、アメリカではシェールガスの生産の増加により、2010年以降石炭の割合が減少しています。

ここでは、各国の電源構成と先進的な再生可能エネルギー電源・開発例、今後の各国の再生可能エネルギー比率の目標などについてご紹介します。

各国の電源構成

出典:資源エネルギー庁『第3節 二次エネルギーの動向』

経済産業省・資源エネルギー庁の発表によると、世界の発電電力量は増加しており2016年度の時点で24.9兆kWhです。内訳は割合が大きい順に、石炭38.4%、ガス23.2%、水力16.2%、原子力10.5%、再生可能エネルギー7.8%、石油3.7%です。発電電力量に占める各電源の割合は、次のように、国により異なります。

  • 韓国:石炭42%、原子力29%、ガス23%、その他3%、石油3%、水力1%

  • 中国:、石炭69%、水力19%、その他6%、ガス3%、原子力3%、石油0%

  • アメリカ:、ガス33%、石炭31%、原子力20%、その他9%、水力6%、石油1%

  • フランス:、原子力73%、水力11%、その他7%、ガス6%、石油0%

出典:資源エネルギー庁『第3節 二次エネルギーの動向』

先進的な再生可能エネルギー電源・開発

インド

インドではこれまで気象条件の良い南部と西部を中心にメガソーラーの導入が進んできましたが、北部と東部で10GM級のメガソーラーの開発が計画されています。

アメリカ

テキサス州で最大出力63万kWの大規模太陽光事業の開発が行われています。2020年度に工事が着工し、2021年度中に段階的な運転が予定されています。

出典:資源エネルギー庁『平成29年度新エネルギー等の導入促進のための基礎調査』(2018/3)(p.24)

出典:東京ガス『米国での大規模太陽光発電事業の取得について』(2020/7/29)

今後の各国の再生可能エネルギー比率の目標

世界各国が再生可能エネルギー普及に向けての野心的な目標を掲げています。海外電力調査会の発表によると、フランスは2030年度の再生可能エネルギー比率を32%にすることを目標に掲げています。ドイツは2030年度の再生可能エネルギー比率を30%、さらに2050年度には60%にすることを目標にしています。

出典:海外電力調査会『欧州電気事業の最近の動向』(2020/5/26)(p.7)

3. 世界で普及。再生可能エネルギーのメリットとは

日本では、発電したエネルギーを電気事業者が一定期間、一定の価格で買い取ることを定めた固定価格買取制度(改正FIT法)が施行されたことをきっかけに、再生可能エネルギーを導入する自治体や企業が増加しています。

資源エネルギー庁は、『FIT制度の抜本見直しと再生可能エネルギー政策の再構築』において、水力をのぞく再生可能エネルギーの割合が2011年は2.7%だったのに対し2017年には8.1%まで増加したことを発表し、さらに現状では10.3%まで増加しています。ここでは、企業が再生可能エネルギーを導入するメリットについてご紹介します。

出典:資源エネルギー庁『FIT制度の抜本見直しと再生可能エネルギー政策の再構築』(p.6)
出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』

自給率を高め、災害時の備えにもなる

再生可能エネルギーは、どこにでも存在するエネルギーのため、日本のようにエネルギーの自給率が低い国は、再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組むことで、自給率を高めることができます。経済産業省の発表によると日本は再生可能エネルギーの比率が2019年度に18%まで向上しています。

再生可能エネルギーは災害時にも利用できるため、他国に頼らずに、自治体や企業が国内で電気を作り出す意義は大きいです。

出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』

再生可能エネルギー導入はCO2削減につながる

再生可能エネルギーには、CO2をほとんど排出しないというメリットがあります。経済産業省が発表した『2018年度の日本のエネルギー需給実績』によると、エネルギー起源CO2排出量は、前年度比の4.6%減と5年連続マイナス傾向です。

出典:経済産業省『2018年度エネルギー需給実績を取りまとめました(確報)』(2020/4/14)

企業のイメージアップ

企業は再生可能エネルギーを導入し、サステナブルな(持続可能な)企業であることをアピールすることで、企業に対するイメージを良くすることができます。企業のイメージアップは、売上アップや、採用時の優秀な人材の確保にもつながります。

4. 日本が抱える再生可能エネルギーの課題

固定価格買取制度(改正FIT法)の施行により、再生可能エネルギーの導入を始める自治体や企業が増加しましたが、世界の取り組みが進んでいる国と比較すると遅れている状況です。ここでは、日本の再生可能エネルギーへの取り組み状況を世界と比較しながら、解決すべき今後の課題についてご紹介します。

日本の取り組み状況

日本は、石油や天然ガスなどの資源が乏しいのですが、東日本大震災以降、化石燃料への依存が高まっています。

一方、エネルギー自給率は進んでおらず、2017年度におけるエネルギー自給率は世界34位で、9.6%と低い水準にあります。2018年度のエネルギー自給率は11.8%と、2.2%増加していますが、依然として低い水準です。

出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』

自然条件などの影響もあり、再生可能エネルギーの導入も世界と比較すると遅れており、2019年度の発電電力量比率は18%です。日本では水力発電が占める割合が高く、水力発電を除くと日本における発電電力量比率は、わずか10.3%しかありません。

出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』

日本が解決すべき課題

温暖化対策に有効な手段として世界で注目されている再生可能エネルギーですが、天候や季節により発電量が左右されるため、国によっては発電コストが高くなるデメリットがあります。日本は平野部が少ないため、欧州と比べると風力発電による発電が不利な自然条件にあるため、自然条件に恵まれている外国と比較すると、発電コストが高いです。

発電コストを下げることが、日本で再生可能エネルギーの導入を増やすための課題ですが、日本では2030年までに事業用太陽光発電を1kWhあたり5.8円、風力発電を6.6円程度まで下げる水準を示すなど、発電コストを下げる取り組みをしています。

出典:資源エネルギー庁『国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案』(p.13)

出典:資源エネルギー庁『資源エネルギー庁がお答えします!~再エネについてよくある3つの質問』(2018/3/16)

5. まとめ:再生可能エネルギーを導入して温暖化対策に貢献しよう!

再生可能エネルギーの導入をご検討中の法人の皆さまが、知っておくべき再生可能エネルギーの基本的な知識についてお伝えしました。

再生可能エネルギーの導入は、災害時への備えや、企業にイメージアップなど、企業にとってたくさんのメリットをもたらします。再生可能エネルギーの導入が進んでいる諸外国と比較すると、日本での導入は遅れている状況です。再生可能エネルギーを導入して、温暖化対策に貢献しましょう!

 

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