LCA(ライフサイクルアセスメント)を通しての環境負荷計算方法を解説

 LCA(ライフサイクルアセスメント)とは、製品やサービスの一連の流れを査定し、環境負荷を評価する方法です。

この記事では、LCAの重要性や、CO2と温室効果ガス排出量の算定方法についてまとめました。LCAのメリットも含めて解説します!

目次

  1. LCAで環境負荷低減を目指す重要性

  2. CO2・温室効果ガス計算方法を解説

  3. 国際規格ISOによるLCAの実施手順

  4. LCAを活用することのメリットとは

  5. まとめ:ライフサイクルアセスメント(LCA)を通して環境配慮が行える企業に!

1. LCAで環境負荷低減を目指す重要性

LCA(ライフサイクルアセスメント)とは

LCAは「Life Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント)」の略です。(以下LCA)ライフサイクルは「生物や物の一生」を表し、アセスメントは「評価」という意味です。LCAを簡単に言うと「製品やサービスの一生を評価するということ」になります。

工業製品や各サービスの資材調達から、製造、流通、廃棄や再生まで含めた一連の流れ(ライフサイクル)に発生するCO2などの環境負荷を、定量的、客観的に評価し査定を行う取り組みです。

環境負荷低減はなぜ重要か

そもそも環境負荷低減はなぜ必要でしょうか。経済活動による温室効果ガスの発生は地球温暖化を加速し、気温上昇や異常気象は世界の危機的問題です。日本のエネルギー起源によるCO2排出量は、2018年で10.6億トンにもなりました。

そのため日本は、「2050カーボンニュートラル」を宣言し、2030年までに温室効果ガスの発生を、2013年と比較して46%削減することにしたのです。さらに2050年までにはゼロにすることを目標としています。

日本のGHG排出量2018

出典:資源エネルギー庁「「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?」(2021.02.16)

環境負荷低減をLCAで取り組む意義とは

LCAは、製品の製造段階から流通までの一連で環境負荷低減に取り組み、経済活動自体の環境負荷を少ないものに変革するための手法です。定量的なデータを可視化することで、対策を具体的に行うことが可能になります。ライフサイクルという流れの中なら、技術進化や社会の変化に対応しながら、くりかえし検討することも可能です。

またライフサイクルを考慮することは、企業のサプライチェーンにおけるさまざまな課題を解決することにもつながるでしょう。

2. CO2・温室効果ガス計算方法を解説

CO2排出量の算定方法

CO2排出量の算定方法は以下の式になります。

CO2排出量=「エネルギー消費当たりのCO2排出量」×「人口1人当たりの経済水準」×「経済活動のエネルギー効率」×「人口」

この算定方法を見れば、エネルギー消費当たりのCO2排出量を減らすことで、CO2を低減できることがわかります。LCAの視点でこれらを行えば、さらに環境負荷低減へとつながるでしょう。

CO排出量計算式

出典:資源エネルギー庁「「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点」(2019.06.27)

温室効果ガス排出量の算定方法

温室効果ガスの排出量の算定方法は、「エネルギ-起源CO₂」「非エネルギー起源CO₂」「メタン(CH₄)」「一酸化二窒素(N₂O)」「ハイドロフルオロカーボン類(HFC)」「パーフルオロカーボン類(PFC)」「六ふっ化硫黄(SF₆)」「三ふっ化窒素(NF₃」などに由来する事業活動が対象になります。

以下が温室効果ガス排出量の算定方法です。

  • 温室効果ガス排出量 = 活動量 × 排出係数

温室効果ガスごとの排出量をCO2に換算する算定方法は以下になります。

  • 温室効果ガス排出量(tCO₂)= 温室効果ガス排出量(tガス) × 地球温暖化係数(GWP)

排出係数とは、活動量当たりの排出量のことを指し、GWP(Global Warming Potential)とはCO2と比較して、それぞれの温室効果ガスが地球温暖化にもたらす影響がどれくらいかを表す数字です。

このようにLCAを通して、CO2、温室効果ガスの排出量をデータ化し可視化することで改善点が見えます。環境負荷を排出する物質はその他にも存在しますので、それぞれの業種や内容に合わせて行うことも重要です。

出典:環境省「温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度」

https://earthene.com/form/download/general

3. 国際規格ISOによるLCAの実施手順

国際規格ISOとは

国際規格ISOとは国際的なマネジメントシステム規格です。マネジメントシステム規格とは、企業の問題解決や組織管理を行うためのシステムを標準化したものです。LCAは、環境負荷の算定を、ISO規格に基づき行います。

国際規格ISO4つのフェーズ

LCAは、ISOの以下の4つのプロセスにより実施されます。それぞれを具体的に解説していきましょう。

(1)目的と調査範囲の設定

LCAを実施調査するためには「目的と調査範囲の設定」が必要です。「目的と調査範囲の設定」は企業の業種内容によっても変わってくるため、目的意識と調査対象を明確にすることが重要になります。また調査結果をうけてどのように対応していくかも示さなくてはいけません。

(2)インベントリ分析

インベントリ分析とは蓄積したデータを、インプットデータとアウトプットデータに分けて把握し、活用することです。インベントリ分析を行うことで、ライフサイクルのどの段階でどれくらいの環境負荷があったのかを定量的に理解し、改善策を打ち出すことが可能です。

(3)LCA環境評価(インパクトアセスメント)

LCA環境評価(インパクトアセスメント)とは、インベントリ分析を行うことで、温室効果ガスなどの環境負荷の要素がどのような環境問題を引き起こすのかを評価します。製品の可視化された部分と可視化されない部分の影響も評価対象です。手順として、分類化や特性化などいくつかの方法があります。

(4)LCAの解釈

インベントリ分析や評価の結果から、ライフサイクルのどの段階で環境負荷を及ぼしているのかを判断し、結論や低減を導き出し具体的な対応策を講じます。

出典:『ISOの基礎知識』日本品質保証機構

4. LCAを活用することのメリットとは

さまざまな立場での活用

LCAは製品の製造から流通や消費、さらには再生産にいたるまでの一貫した流れで行うため、さまざまな立場や状況で活用することが可能です。企業のマーケティングや経済社会システムへの反映、消費者の個人的な活動まで。あらゆる形で環境負荷低減に活用できるメリットがあります。

データに基づいた分析が可能

ライフサイクルを通じデータの収集、分析を行うことで、全体的な環境負荷の問題点を把握することが可能です。またデータ化されることで課題が明確に見えやすくなり、企業の環境問題や配慮が消費者に可視化されます。

サプライチェーン全体の環境負荷を考慮できる

企業においてはサプライチェーンの環境負荷低減も大きな課題です。製品やサービス別にLCAを行うことはサプライチェーンマネジメント全体の環境負荷低減に大きく寄与します。

出典:『ISOの基礎知識』日本品質保証機構

5. まとめ:ライフサイクルアセスメント(LCA)を通して環境配慮が行える企業に!

LCAについて重要性や意義、そして算定方法を具体的に解説しました。ライフサイクルを通した環境に配慮する経済活動の必要性をご理解いただけたことと思います。経済活動や生産活動において、企業が環境に配慮することはもはや当然といえる時代となりました。

自社の生産活動や企業活動においてLCAを導入し、環境配慮を行う企業として躍進を果たしてはいかがでしょうか。

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