Scope3 カテゴリ6はどう算定する?方法や企業事例

企業の脱炭素化が進む中、企業はScope3の開示要求に応えられるよう準備をする必要があります。この記事ではScope3の15あるカテゴリのうちカテゴリ6に注目します。

Scope3 カテゴリ6の定義や算定方法、実際に算定しデータを公表している企業事例などについてご紹介します。Scope3 カテゴリ6を算定し、従業員の出張に伴いどれくらいのCO2が排出されているかを把握しましょう。

目次

  1. Scope3とは

  2. Scope3「カテゴリ6」とは?

  3. Scope3「カテゴリ6」の算定方法

  4. Scope3「カテゴリ6」の企業事例

  5. まとめ:Scope3 カテゴリ6を算定し、出張に伴うCO2排出量を把握しよう!

1. Scope3とは

Scope3を算定する企業が増加していますが、そもそもScope3とはどのようなものなのでしょうか。ここではScope3の定義やScope3を算定する企業が増加している背景についてご紹介します。

Scope3とは?

Scope3とは、CO2排出量を算定・報告する時に用いる国際的に認められた基準であるGHGプロトコルにおいて定められているCO2排出量区分の1つです。Scope1と2は自社から排出されるCO2を算定するのに対し、Scope3はサプライヤーから排出されるCO2を算定するという大きな違いがあります。Scope1・2・3を合計することでサプライチェーン排出量を算定することができます。

Scope1,2,3のイメージ

出典:環境省『温室効果ガス「見える化」の役割について』(p. 9)

出典:環境省『温室効果ガス(GHG)プロトコル〜事業者の排出量算定及び報告に関する基準〜』(p. 2)

Scope3を算定する企業が増えている背景

Scope3を算定する企業が増えている背景には様々な要因があります。その1つは、

CDPやGRI、TCFDやSBTなどにより企業にとってScope3の開示要求に応えることが当たり前になっていることがあげられます。

出典:環境省『サプライチェーン排出量の算定と削減に向けて』

2. Scope3「カテゴリ6」とは?

Scope3を算定する時に、カテゴリという概念が登場します。ここではScope3におけるカテゴリの概念やカテゴリ6の概念についてご紹介します。

Scope3のカテゴリとは?

Scope3は15のカテゴリから構成されています。1〜8までのカテゴリが上流、9〜15までが下流に分類されています。上流と下流は以下のように定義されています。

  • 上流:原則として購入した製品やサービスに関する活動

  • 下流:原則として販売した製品やサービスに関する活動

企業はScope3の活動をカテゴリに分け、カテゴリごとにCO2排出量を算定します。

出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p. 2.3)

Scope3 カテゴリ6は出張に伴うCO2排出である

Scope3のカテゴリ6と7は人の流れに関連しており、カテゴリ6は従業員が出張に伴い移動の時に利用した移動手段から排出されるCO2排出量のことです。企業が所有・管理する移動手段を利用した場合はScope1と2で計上するため、Scope3からは除外します。

出典:環境省『Scope3 〜算定編〜』(p. 29)

3. Scope3「カテゴリ6」の算定方法

ここではScope3を算定するために必要となる基本的な計算式とScope3 カテゴリ6の算定方法について整理しましょう。

活動量と排出原単位について

サプライチェーン排出量は、以下のように算定することができます。

  • 算定目的の設定

どのような事業目的を達成するために算定をおこなうのか、算定目的を設定します。

  • 算定対象範囲の設定

算定する場所や算定する期間の確認を行います。

  • カテゴリの抽出

Scope3の活動をカテゴリ1〜15に分類します。

  • カテゴリ内での特定

各カテゴリに該当する活動を特定し、収集するデータを整理します。

  • 活動量データの収集と算定

収集したデータをもとにカテゴリごとに算定を行います。

各カテゴリごとの基本的な計算式は、活動量×排出原単位です。活動量とは事業者の活動の規模に関する量で、排出原単位は活動量あたりのCO2排出量です。

CO2排出量算定の基本式

出典:環境省『Scope3 〜算定編〜』(p. 4.9)

Scope3 カテゴリ6の算定にチャレンジ!

バスと電車を利用する時は、分けて計算する必要があります。移動手段によって排出されるCO2の量が異なるためです。

出張旅費金額が把握できる場合は、出張旅費金額を活動量とし出張旅費金額当たりの排出原単位を乗じることでCO2排出量を算定することができます。従業員数をもとに計算する場合は、従業員数を活動量とし従業員数当たりの排出原単位を乗じることでCO2排出量を求めることができます。

出典:環境省『サプライチェーン 排出量算定の考え方』(p. 14)

4. Scope3「カテゴリ6」の企業事例

Scope3 カテゴリ6を算定している企業の事例を見ていきましょう。

住友理工株式会社・製造業(ゴム製品)

住友理工株式会社が、2019年度のSBT成果報告として公表しているデータによると、Scope3 カテゴリ6である従業員の出張によるCO2排出量が全体に占める割合は0.2%でした。住友理工株式会社は2022年度までに2017年度比でCO2排出量を8%削減する目標を設定し、省エネルギーやモノ作り改革など脱炭素に取り組んでいます。

Scope1・2・3の排出量の状況

出典:SBT成果報告2019年度『住友理工株式会社』(p. 2)

横河電機株式会社・製造業(電気機器)

様々なSDGsに取り組んでいる横河電機株式会社は、環境問題対策として2040年までのカーボンニュートラル実現を目標にしており、サプライチェーン排出量を算定しています。出張交通手段ごとの旅費支給額を活動量とし、出張手段別の排出原単位を乗じることでScope3 カテゴリ6を算定しています。カテゴリ6のCO2排出量は17,750t-CO2eqです。

出典:環境省 『横河電機株式会社』(2020年度)(p. 3〜4)

日本航空株式会社・空運業

日本航空株式会社は、出張費支給額を活動量とし、従業員あたりの排出原単位を乗じることでScope3 カテゴリ6を算定しています。2018年に公表したデータによると、カテゴリ6が全体に占める割合は0.9%です。

サプライチェーン排出量算定結果

出典:scope3 『日本航空株式会社』(p. 3〜4)

5. まとめ:Scope3 カテゴリ6を算定し、出張に伴うCO2排出量を把握しよう!

この記事ではScope3 カテゴリ6の算定方法や企業の算定事例などについてご紹介しました。Scope3 カテゴリ6を算定し、従業員の出張に伴うCO2排出量を把握しましょう。

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