再生可能エネルギー購入が注目?企業のCO2削減の取り組みを実践例で解説!

2021年、世界中がCO2排出量の削減に取り組んでおり、日本も例外ではなく、その活動は企業や家庭にも強く求められています。しかし一部の中小企業では、CSR部門やISO担当者のような専門担当が存在せず「CO2削減は分かるけど、普段の仕事で忙しく、何ができるのかわからない」という企業が増えています。今回は、専門担当がいない企業でも実践できる「CO2削減の取り組み」を、具体的な事例を交えてご紹介します。

目次

  1. パリ協定が発端?世界中がCO2排出削減に取り組む理由

  2. 全体の85%!? 企業への圧力の原因は日本のCO2排出バランスにあった

  3. 自社に合ったCO2削減方法を考えるため。企業が見るべき3つの要素

  4. 【業界別】明日から取り組める企業のCO2削減例

  5. 土地や資金がなくてもできる?中小企業で注目を浴びる再エネの購入

1. パリ協定が発端?世界中がCO2排出削減に取り組む理由

そもそも、世界中でCO2削減が求められているのは、どういった理由があるのでしょうか。地球温暖化による気候変動の顕在化など、背景はさまざまですが、各国に大きな影響を与えているのは「パリ協定」の存在です。

パリ協定とは、2020年以降の気候変動問題に対する国際的な枠組みとして、第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)の開催地パリで採択された協定のことを指します。

パリ協定では以下の2点を長期目標として掲げています。

①世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする。

②できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる。

参照:外務省『気候変動「2020年以降の枠組み:パリ協定」

パリ協定の加盟国には、5年ごとに削減目標の見直しと国連への報告の義務があります。活動が十分でないと判断されると、罰則はありませんが世界中から非難を受け、貿易関係悪化や日経株価の減少など、外交や経済に大きな影響を与える可能性があります。

主要国の削減目標(2021時点)

出典:各種報道資料を元にアスエネが作成

日本では中期目標として、2030年度の温室効果ガスの排出を「2013年度の水準から46%削減」することを掲げています。こうした目標を達成するために、再生可能エネルギー(再エネ)の導入を政策として進め、温室効果ガスの低排出化と更なるエネルギー効率化の推進を図っているのです。

実際に政府の示したエネルギーミックスでは、電源構成を再エネ22〜24%、原子力20〜22%にすることや、徹底した省エネの見通しが示されています。

出典:環境省「温室効果ガス排出・吸収量算定結果」を元にアスエネが作成

2. 全体の85%!? 企業への圧力の原因は日本のCO2排出バランスにあった

日本全体でCO2削減を進めているため、企業にはCO2削減をはじめ、再エネ電源や低炭素・省エネ商品の開発普及など、さまざまな活動が求められています。実際に、多くの企業は国からの政策であったり、大手サプライヤーからの要請であったりと、能動的であれ受動的であれ、CO2削減が求められてきたかと思います。

しかし、なぜ公共機関や家庭だけではなく、各企業にまで活動が求められるのでしょうか。この背景には、日本のCO2排出量の割合があります。

出典:環境省『温室効果ガスの総排出量(2020年12月速報値)』よりアスエネが作成

日本のCO2排出量の割合を見てみると、家計関連部門は約20%、企業・公共部門関連は約80%となっています。つまり、日本全体のCO2排出量を減らしていくためには、企業や地方自治体など、各団体の削減活動が非常に重要であり、各企業のCO2削減への圧力も強まっているのです。

3. 自社に合ったCO2削減方法を考えるため。企業が見るべき3つの要素

実際にCO2削減に取り組むとして、どのような方針で、どのようなことに取り組めばよいのでしょうか。これは各企業によって事情が異なるため、自社にあった方針と対策を考える必要があります。そのためにコンサルティングを雇う企業もあるくらいですが、今回は自社のみで方針を立てられる方法を簡単にご紹介します。

CO2削減の方針は、企業のなかで排出量の増減がどのようにして起きているのかを分析することで考えることができます。一般的にCO2排出量の増減は以下の①〜③の掛け合わせによって決まります。

  1. 活動量

  2. 活動量当たりのエネルギー消費量

  3. エネルギー消費当たりのCO2排出量

企業でCO2の削減に取り組む際は、まず①〜③のうちどこに課題があるかを整理してみましょう。CO2排出量の原因が可視化されることで、企業ごとに効果的な方法や、取り組みやすい方法に優先順位をつけることができます。

4. 【業界別】明日から取り組める企業のCO2削減例

自社のCO2排出の原因を整理し、方針が立ったとしても、たとえば製造業界とIT業界では使う建屋や設備も異なるため、取り組むことができる内容も異なってきます。

ここでは大きく「工場」「オフィス」に分けて、実際に企業で行われた具体的な取り組みをいくつか紹介していきます。自社での取り組みに行き詰まっている代表の方や、CSR担当、環境マネジメントなど専門担当者もぜひ参考にしてみてください。

工場

①活動量の削減

・ライン工程の集約による利用電力の削減

・常時利用している設備としていない設備の電源回路を分けて待機電力の削減

・シミュレーションシステムを利用しての試運転の削減

②活動量当たりのエネルギー消費量

・高圧配電線を太線化して配電線の抵抗を抑えることで電力ロスの低減

・電力ロスの少ない変圧器に変更

・熱回収設備の設置による省エネの実施

③エネルギー消費当たりのCO2排出量

・再エネ発の電力を購入し、使用電力中のCO2排出係数を下げる

・自社内の火力発電所で使用するエネルギーをLNGに変更

オフィス

①活動量の削減

・ノー残業デーや直行直帰、テレワークの推進

・エレベーター利用回数の削減

・人のいない場所の消灯の徹底

②活動量当たりのエネルギー消費量

・エレベーターの相乗りでの利用推奨

・照明器具のLEDへの切り替え

・扇風機やサーキュレーター、遮熱素材を用いた空調制限

・クールビズ、ウォームビズの推奨

③エネルギー消費当たりのCO2排出量

・再エネ発の電力を購入し、使用電力中のCO2排出係数を下げる

5. 土地や資金がなくてもできる?中小企業で注目を浴びる再エネの購入

自社に合った削減方針の考え方や、具体的なCO2削減への取り組み方法を紹介させていただきましたが、参考になるものはありましたでしょうか。上記で紹介したような取り組みで、「活動量の削減」や「活動当たりのエネルギー消費量の削減」へは多くの企業が取り組み成果を出しています。事実、ダイキン工業株式会社は空調・換気・照明施設等の管理により、2年間でエネルギー消費量を67%削減しました。

出典:資源エネルギー庁「ダイキン工業株式会社『既設ビルにおけるZEB更新事例と運用における課題と対策』(2020.2.25) を元にアスエネが作成

一方、なかなか取り組みにくいのが「エネルギー消費あたりのCO2排出量の削減」ではないでしょうか。そもそも企業が使うエネルギーをクリーンなものにするという方法で、数年前までは一企業にはどうしようもないとされてきました。

しかし現在は電力自由化に伴い、クリーンな電力を選ぶことが可能になりました。それがまさに近年注目を浴びている「再エネ発の電力を購入し、使用電力中のCO2排出係数を下げる」という方法です。

従来、中小企業は再エネ設備の設置・管理に必要な初期投資金や土地が準備できないために自社発電に踏み切れないところが多くありました。しかし、再エネの電力メニューを購入することで、再エネ率を上げ、CO2削減に取り組むことができます。「再エネ電力は電気代が高いのでは」という懸念に対しても、再エネを導入しつつも大手電力や新電力よりもコストダウンできるという電力を取り扱っている企業を選べば解決できます。

「エネルギー消費あたりのCO2排出量の削減」はエネルギー源の変更のみ、特に電力は切り替えさえすれば半永久的に削減が実現できるため、手軽さと効果の大きさから検討している企業が急増しています。

電力の切り替えは、手続き自体はすぐにできますが、財務など経営面にも関わる取り組みのため、企業内での検討に時間がかかってしまいがちです。喫緊のテーマとして取り組むとしても、中長期的に取り組むとしても、早めに情報を知っておくに越したことはありません。興味のある企業は再エネ電力メニューを取り扱っている電力小売事業者へ問い合わせて、情報収集をしてみましょう。早期に動いている環境への関心が高い企業ほど、最適な情報提供をしてもらえるはずです。

 

アスエネESGサミット2024資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
アスエネESGサミット2024