バイオマスとバイオガスの違いとは?バイオガスのメリットについて解説!

バイオマスとバイオガスの違いについてご存知でしょうか。バイオマスは生物由来の資源、バイオガスはバイオマスからつくられる可燃性のガスのことです。

今回は、バイオマスとバイオガスの違いやバイオガスの生産工程、バイオガスのメリットや課題などについてまとめます。

目次

  1. バイオマスとバイオガスの違い

  2. バイオガスの生産工程

  3. バイオガスのメリット

  4. バイオガスの課題

  5. まとめ:バイオマス回収の取組みは中小企業にも求められる

1. バイオマスとバイオガスの違い

バイオマスとバイオガスは、たった一文字の違いですが、内容は大きく異なります。それぞれが何を意味するかについてまとめました。

(1)バイオマスとは何か

バイオマスの分類

出典:資源エネルギー庁「バイオマス発電|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー」

バイオマスとは、生物由来の資源のことです。林業で発生する製材時の廃材(おが屑や端材)や未利用の間伐材、稲わらやサトウキビの搾りかすであるバガス、家畜の排せつ物など農牧業によって生み出された農業残滓、建築時に発生する建築廃材などは代表的なバイオマスです。

他にも、食品加工の途中で発生する廃棄物や製紙工場で発生する廃棄物、古紙、人間が生活する上で排泄するし尿など、人々が生活する上で発生させているものもバイオマスとして利用可能です。

これらのうち、木質系や建築廃材、セルロース(古紙)など直接燃焼させられるものは、火力発電所などで燃料として用いることができます。

その一方、農業残渣や家畜の排せつ物、糖やでんぷん、サトウキビ、パーム油などの搾りかすなどはそのまま燃焼させることができないため、バイオガスの原料として利用されます。

(2)バイオガスとは何か

嫌気環境でのバイオガス発生

出典:環境省「メタンガス化が何かを知るための情報サイト」

一方バイオガスとは、生ごみ、紙ごみ、家畜ふん尿などといったバイオマスを原料として、微生物の力(メタン発酵)により、発生するガスのことです。

微生物の発酵などによって生み出されたバイオガスは、化石燃料のような枯渇する資源ではなく、再生可能な非枯渇性の資源であるため再生可能エネルギーに分類できます。

バイオガスは、天然ガスと同様にメタンガスを主成分としています。つまり、バイオガスを燃料としてそのまま燃焼させられるため、ボイラーやガスエンジン、ガスタービン、燃料電池などに利用可能です。

出典:環境省「メタンガス化が何かを知るための情報サイト」

出典:鹿島建設「バイオガス(メタン発酵技術) | 再生可能エネルギー | 技術とサービス |」

2. バイオガスの生産工程

バイオガス生産の過程

出典:環境省「メタンガス化が何かを知るための情報サイト」

バイオガスは、生ごみや紙ごみ、家畜のふん尿や草木類などのバイオマスを原材料とし、それらを嫌気環境(酸素のない状態)でメタン発酵させることによってつくられます。

バイオガスの中には、メタンの他に二酸化炭素などの物質も含まれてるため、燃料として有用なメタンだけを取り出します。取り出されたメタンは、発電所などに送られ発電・発熱のためのエネルギーとして利用されます。

このとき、分解されずに残った発酵残渣(微生物の食べ残し)は肥料として利用されます。肥料として畑に戻った発酵残渣は、次のバイオマスのもととなります。

3. バイオガスのメリット

生物由来の資源であるバイオガスにはどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的な2つのメリットについてまとめました。

(1)廃棄物を資源化できる

バイオガスの原料となるバイオマスは、農林水産業や家庭での生活、企業の生産活動で発生する生物資源系の廃棄物です。本来ならば、処理のために大きなコストをかけなければならないものです。

しかし、バイオマスをバイオガスの原料として利用することができれば、今まで廃棄物として捨ててきた未利用のバイオマスを資源化し、廃棄物処理費用を削減できる可能性があります。

つまり、未利用のバイオマスをバイオガス化して活用することによって、環境負荷を減らし、エネルギーを効率よく利用する循環型社会の構築に大いに寄与できます。

さらに、バイオマスは枯渇が心配される化石燃料と異なり、再生可能な資源であるため、エネルギー問題の解決にもつながります。

出典:資源エネルギー庁「バイオマス発電|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー」

(2)カーボンニュートラル化に貢献できる

カーボンニュートラルのイメージ図

出典:資源エネルギー庁「「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?」(2021/2/16)

2020年10月26日、菅総理大臣は所信表明演説の中で日本が2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言しました。カーボンニュートラルとは、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」ことという考え方です。

出典:資源エネルギー庁「「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?」(2021/2/16)

この動きは、2021年10月末から11月にかけて開催されたCOP26(グラスゴー会議)でさらに加速しました。日本は、CO2排出量が多いとされる石炭火力発電からバイオマス発電を含む再生可能エネルギーの割合を増やす必要に迫られています。

出典:ジェトロ「グラスゴー気候合意」採択しCOP26閉幕、石炭の段階的削減へ

バイオマス由来のバイオガスは、燃焼時にCO2を発生させます。しかし、CO2を吸収して成長する植物やそれを飼料として成長する家畜のふん尿などを主原料にしているため、大気中に新たなCO2を放出しているわけではありません。

そのため、全体的にみれば大気中のCO2の総量に影響を与えないカーボンニュートラルな燃料であるため、政府が掲げる2050年までのカーボンニュートラル化に貢献できるエネルギーだといえます。

出典:資源エネルギー庁「知っておきたいエネルギーの基礎用語~地域のさまざまなモノが資源になる「バイオマス・エネルギー」」

4. バイオガスの課題

メリットが大きいバイオガスですが、課題もあります。ここでは、バイオガスの課題を2点、解説します。

(1)バイオガスをつくるプラントが必要

バイオマスからバイオガスを作り出すためには、メタン発酵を行うためのプラントを作る必要があります。プラントの建設には計画策定や建設場所の住民合意、許認可などを得なければならず、プラント完成まで長い時間を要します。

バイオガスプラントは、メタン発酵設備だけではなく、発酵に適さない物質をとり除く前処理設備やメタン発酵後の消化液の液肥利用設備、脱臭設備など数多くの施設が必要となる点にも留意が必要です。

出典:経済産業省「メタン発酵バイオガス発電の導入促進」(p2)(2021/10/29)

出典:経済産業省「バイオガス発電における現状と要望」(p4)(2017/10/18)

(2)安定的なバイオマスの収集と搬入が必要

バイオガスを作り出すには、原材料となるバイオマスを安定的に、安く確保する必要があります。たとえば、製材の端材や木の皮、おが屑などの木質バイオマスを確保するには、林業の発展が不可欠です。

同様に、家畜のふん尿や農業生産の過程で生まれる稲わらなどのバイオマスを調達するには、農牧業の振興が欠かせません。また、食品の廃棄物を利用するなら、それらを収集する仕組みが必要です。

つまり、安定的にバイオガスを生産するには、原材料となるバイオマスを生み出す産業も同時に育成する必要があるということです。

出典:資源エネルギー庁「知っておきたいエネルギーの基礎用語~地域のさまざまなモノが資源になる「バイオマス・エネルギー」」

5. まとめ: バイオマス回収の取り組みは中小企業にも求められる

バイオマスは生物由来の資源のことであり、バイオガスはバイオマスをメタン発酵させることで生み出される可燃性のガスのことです。政府は2050年までのカーボンニュートラル達成を国の方針として掲げており、今まで以上に再生可能エネルギーの普及に努めるでしょう。

その過程で、家庭や企業に対し、バイオマス回収の取り組み強化を求めてくる可能性があります。ゴミの分別はもとより、中小企業の生産過程で発生する生物由来の廃棄物をゴミとせず、バイオマスとして提供するよう求められるかもしれません。

各企業は、バイオマスの回収を新たなビジネスチャンスと考え、自社の持っている技術や設備でバイオマスの回収方法を研究し、積極的にバイオガス関連事業に参入してみてはどうでしょうか。

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