企業向け!蓄電池のDER補助金と補助金一覧

蓄電池においては、国の補助金と、地方自治体の補助金があります。蓄電池システムは主に住宅や事務所で太陽光発電とともに利用されます。カーボンニュートラルが推進される中、事務所や事業所で使用する電力の再生可能エネルギーへのシフトは企業価値の向上にもつながります。

この記事では、蓄電池における補助金の中でも、企業が申請できるDER補助金について、概要、補助金額や条件、その他地方自治体の補助金を紹介します。導入を考える企業の担当者の方はぜひ参考にしてみてください。

目次

  1. 蓄電池における補助金の仕組み

  2. 蓄電池におけるDER補助金の概要

  3. 蓄電池におけるDER補助金以外の補助金

  4. まとめ:蓄電池の補助金について正しく理解して活用しよう!

1.蓄電池における補助金の仕組み

ここでは、国の補助金の中でも、一般の家庭や企業が申請できる「DERを用いたVPP構築のための分散型エネルギーリソースの更なる活用に向けた実証事業」(DER補助金)の仕組みについて説明します。

DERとは?

DERは、「分散型エネルギーリソース」のことです。分散型エネルギーリソースとは、需要家の受電点以下の自家発電機や太陽光発電機、蓄電池などのエネルギー供給源に加え、直接接続される発電設備や蓄電設備のことです。受電点とは、電線を通じて建物に電気が入ったポイントのことを言います。つまりDERは建物内に設置された、電力供給源の機器と考えれば良いでしょう。

出典:資源エネルギー庁『VPP・DRに関する用語一覧』(2021/6/2)

VPPとは?

VPPとは、「Virtual Power Plant(バーチャルパワープラント)」の略です。DERの保有者が、DERを制御することでまるで発電所のように機能することです。

1つの工場や家庭での蓄電は小規模でしかありませんが、それらのDERをIoTなどを活用して束ね、制御することで発電所のような仕組みを作ることを理想としています。制御することをアグリゲーションと呼び、制御する事業者のことをアグリゲーターまたはアグリゲーションコーディネーターと呼びます。

VPPのイメージ図出典:資源エネルギー庁『VPP・DRとは』(2021/6/2)

VPPを活用したビジネスとしては、ネガワット取引があります。ネガワット取引はアグリゲーターなどを仲介して電力会社と電力を供給する企業や個人とを結びつけます。

ネガワット取引の全体図

出典:資源エネルギー庁『エネルギー・リソースアグリゲーション・ビジネスハンドブック』(p7)

DER補助金について

DER補助金とは、VPPが機能する社会を構築するための実証実験として、参加する代わりにSII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)より支援してもらえる制度です。自宅や事務所を発電所システムにする代わりにその自宅や事務所に補助金が交付される仕組みです。

DERとアグリゲーションによる新たなビジネスモデルを導入することで、再生可能エネルギーの電力拡大と、電力の安定供給を目的としています。

出典:資源エネルギー庁『VPP・DR普及に関する施策』(2021/11/1)

出典:SII:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|事業トップ(令和5年度 分散型エネルギーリソースの更なる活用実証事業)

2.蓄電池におけるDER補助金の概要

DER補助金の概要は以下のようになります。ここで説明している内容は令和3年度の募集要項となりますので、あくまで次年度の参考程度にしてください。

スケジュールの流れ

一般の企業・家庭の応募は、C事業になります。C事業では以下のスケジュールが設定されています。

(1)導入設備の検討

(2)申請開

(3)交付決定

(4)連携開始

(5)事業実施期間:約1週間

(6)報告期限:事業完了後30日以内

DER実証実験に参加すると、HEMS機器と呼ばれる電力制御のIoTを通して、アグリゲーターが蓄電池の電気分配を遠隔操作します。これにより、家庭や事業所の電気配分が制御されます。

制御によっては電気料金が増えることもあり得ます。ただし、実証実験の期間は3年間とされていますが、実験が実施されるのは1年間のうち1週間程度のため電気料金については心配する必要はありません。

また、DER実証実験のスケジュールでは連携開始までに蓄電池システムの機器を揃え、電気を蓄えられる状態にしておく必要があります。おかなければいけません。

なお2021年12月現在、2022年度の申請スケジュールは公表されていません。2021年度の補助金の募集は終了していますので、次回の募集はSIIのサイトを確認しておきましょう。

補助金額

令和3年度のDER実証実験の概算予算は、60億円でした。ここでは、令和3年度の募集の家庭や事務所用・業務用・産業用の補助金額を解説します。次年度の申請の参考にしてください。

出典:sii『令和3年度 蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した 次世代技術構築実証事業費補助金 公募要項』(2021/4/12)(p36)

・蓄電池システムの補助金額

【家庭用設備】

補助金:初期実効容量 × 4万円/kWh

※初期実効容量とは実際に使用できる容量のことです。

(上限:設備費と工事費を含めた金額の1/3)

【業務用・産業用設備】

補助金:蓄電容量 × 7万円 /kWh

※蓄電容量とは蓄電池に蓄えることができる電気量のことです。

(上限:設備費と工事費を含めた金額の1/3)

・HEMS機器の補助金額

【家庭用設備】

補助金:10万円

(上限:設備費と工事費を含めた金額の1/2)

【業務用・産業用設備】

補助金:500万円

(上限:設備費と工事費を含めた金額の1/2)

対象機器

新しく導入した蓄電池とIoT機器であるHEMS機器が対象です。それぞれ、条件に当てはまらなければ補助を受けられません。申請前に要件を確認して予算を立てましょう。なお、交付決定後は最終的に「太陽光発電システム」「蓄電池」「HEMS機器」の3つを揃える必要があり、申請者は申請前に導入機器の見積もりを取得しておく必要があります。

・蓄電池

対象の蓄電池には要件があります。「SIIで事前に登録された機器であること」「蓄電池システム購入価格と工事費の合計が、目標価格以下であること」です。

「SIIで事前に登録された機器」は、高い性能のものが対象です。SIIのサイトから対象の蓄電池が確認できます。また、「目標価格」は募集要項に定められていますので、該当年度の募集要項を確認しておきましょう。

出典:sii『蓄電システム登録済製品一覧』(2021/9/8)

・HEMS機器

HEMS機器とは、家庭や事務所内で使う電気量を把握し、見える化することで所有者が最適な電気分配を制御する機器です。使用量を計測してモニターに映し、家庭や事務所内の電気機器を一元管理して制御することができます。

DER実証実験では、アグリゲーターによりHEMS機器を通して電気配分が制御されます。そのため、24時間インターネットに接続できる環境が必要です。

HEMS機器の補助金の要件は、「設備費・工事費の合計が25万円以下であること」です。

申請前に確認すべきポイント

申請前に注意しておくべきことが2点あります。

・蓄電池の対象が決められている

対象メーカーや機種は募集要項で限られています。対象メーカーは、京セラ株式会社や株式会社エヌエフ回路設計ブロック、ニチコン株式会社などがあります。対象メーカーは何があるか申請前にSIIのサイトで確認しておきましょう。

出典:sii『蓄電システム登録済製品一覧』(2021/9/8)

・補助金申請後に蓄電池とHEMS機器を購入する

DER補助金は、蓄電池とHEMS機器の購入時に交付されます。申請前に機器を揃える必要はありません。事前にするべきことは、機器の選定をして見積もりを取ることです。必要機器は申請後に購入をしましょう。

3.蓄電池におけるDER補助金以外の補助金

補助金は、国の補助金以外に地方自治体から交付されています。国の補助金は違う種類のものを同時に申請はできませんが、国と地方自治体の補助金は同時に申請できます。例えば上記の、経済産業省のDER実証実験と、東京都の補助金を同時に申請することが挙げられます。お住まいの地方自治体の要件を確認して、両方を上手に利用しましょう。

地方自治体の補助金

地方自治体の補助金は、前述したようにDER補助金と一緒に申請ができます。地方自治体の補助金は自治体ごとに対象や申請手順が決まっていますが、交付自体がない自治体もあるので注意してください。

ここでは、例として東京都の「令和3年度自家消費プラン事業」を挙げています。

・補助金の対象

対象は、自治体によって違います。共通する要項としては、住んでいる地域の自治体であること、SIIに登録されている蓄電池を購入することが挙げられます。

・申請の流れ

東京都であれば、オンラインで申請します。その際、登録機器番号や購入予定金額が必要になるので、事前に機器を選定して見積もりを取っておきましょう。

・補助金額

東京都の場合は、以下のうち低い方の金額です。

①蓄電池の蓄電容量×70,000円/kWh

②420,000円

出典:クール・ネット東京『(令和3年度)自家消費プラン事業』

補助金の交付詳細は、地方自治体によって違います。自分の属する自治体の交付要件を確認しておきましょう。

ZEH補助金

ZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギーハウスのことで、使用するエネルギーと発電エネルギーの総和をゼロにすることです。ZEH補助金は環境省の事業となるため、DER補助金と一緒に申し込むことはできません。なお、ZEH補助金は申請者が常に居住している必要があるため、一般家庭向けの補助金です。

出典:sii『2021年の経済産業省と環境省のZEH補助金について』(p1)

・補助金の対象

申請者が常時居住する住宅

・補助金額

定額60万円+蓄電池システム導入補助金額(初期実効容量×2万円/kWh、もしくは蓄電システムの補助対象経費の1/3、もしくは補助額上限20万円)

出典:sii『令和3年度 ZEH支援事業 公募要領 (四次公募)』(2021/10)(p16)

V2H補助金

V2Hとは、ビークルトゥホームの略で、電気自動車に貯めている電気を家庭に供給することです。V2H補助金を交付しているのは、経済産業省と環境省です。背景として、環境省では事業所において「再エネ100%電力調達」を推進しており、電気自動車などを導入する企業を支援しています。電気自動車の検討も補助対象になるため、積極的に活用しましょう。

出典:環境省『大気環境・自動車対策』

4.まとめ:蓄電池の補助金について正しく理解して活用しよう!

蓄電池の補助金について、DER補助金と、その他の補助金について紹介しました。カーボンニュートラルの実現のためには、官民が共同しての取り組みが欠かせません。企業のCSRの向上やブランド力の強化のためにも、事務所や事業所での使用電力を再生可能エネルギーにシフトすることは大きなメリットとなります。

 

これを機に、太陽光発電と蓄電池システムの見積もりを取り、DER補助金と地方自治体の補助金への申し込みを検討してみましょう。

資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説