水素発電のメリットとは?日本の目標や課題についても解説

日本は水素社会の実現を目指し、水素エネルギー普及に向けて計画を策定し、企業が中心となり様々な取り組みを実施しています。水素発電は次世代エネルギーとして注目を集めていますが、どのようなメリットがあるのでしょうか。この記事では、水素発電に関心がある法人の皆さまが知っておくべき、水素発電のメリットや課題、日本の現状や将来的に目指す姿などについてご紹介します。

目次

  1. 水素発電はなぜ注目?水素発電のメリット

  2. 【水素発電】日本の目標と現状

  3. 水素エネルギーの活用例

  4. 水素発電が抱える課題

  5. まとめ:水素発電への理解を深め、活用に備えよう。

1. 水素発電はなぜ注目?水素発電のメリット

水素発電は様々なメリットを持つことから、脱炭素社会の鍵を握る次世代エネルギーとして注目を集めています。水素発電のメリットについてご紹介します。

様々な資源から製造できる

水素は水から取り出すだけでなく、様々な資源から製造できます。

(例)

  • 石油や天然ガス

  • メタノールやエタノール

  • 下水汚泥

  • 廃プラスチック

日本は依然として化石燃料への依存が高く、自給率が低いという課題を抱えています。2018年度の自給率は11.8%で、世界で34位です。様々な資源から製造できる水素エネルギーは、エネルギー自給率の低さの解決に貢献できます。

出典:資源エネルギー庁『「水素エネルギー」は何がどのようにすごいのか?』(2018/1/23)

主要国の一次エネルギー自給率比較(2018年)

出典:資源エネルギー庁『2020 日本が抱えているエネルギー問題(前編)』(2020/11/18)

脱炭素化の鍵を握る電源として注目

水素は大きく3種類に分類されており、ブルー水素とグリーン水素がCO2排出量削減に貢献する電源として注目されています。

  • グレー水素

グレー水素は化石燃料から製造する水素で、製造工程でCO2を排出するためエコな電源ではありません。

  • ブルー水素

グレー水素と同様に化石燃料から製造されますが、製造工程で排出されたCO2を回収・貯留・利用するためCO2排出量を削減できます。

  • グリーン水素

太陽光発電や風力発電による電気で水を分解することで水素を製造するため、製造工程においてもCO2は排出されません。

グレー水素・ブルー水素・グリーン水素

出典:資源エネルギー庁『次世代エネルギー「水素」、そもそもどうやってつくる?』(2021/10/12)

世界最高水準の日本の技術

日本は、燃料電池分野における特許出願件数が世界一など、水素分野において高い水準の技術力を保有しており、知財とノウハウを蓄積しています。水素社会の実現を目指すことは、日本の産業競争力を高めることにつながります。

出典:資源エネルギー庁『「水素エネルギー」は何がどのようにすごいのか?』(2018/1/23)

2. 【水素発電】日本の目標と現状

日本は水素発電をどのように位置づけているのでしょうか。ここでは、日本における水素の現状と今後の展望、水素量の現状と目標についてご紹介します。

日本における水素の現状と今後の展望

水素は2050年までのカーボンニュートラルを実現させるための不可欠な重要分野に位置づけられています。水素はこれまで乗用車用途での活用が中心でしたが、産業・運輸・業務・家庭部門において電化、水素化を基本とし、対応できない分野において水素やCCUS、カーボンリサイクルを活用するなど水素を幅広く活用する方針を示しています。

出典:経済産業省『水素社会実現に向けた経済産業省の取組』(2020年11月)(p.1)

日本の水素量の現状と目標

日本における水素量は、2017年度の0.02万トンから2020年度は0.4万トンまで増加しています。中間目標として2030年度には水素量を30万トン、将来目指すべき姿として1,000万トン+αの水素を生産することを目標にしています。

水素基本戦略における達成目標

出典:経済産業省『水素社会実現に向けた経済産業省の取組』(2020年11月)(p.4)

3. 水素エネルギーの活用例

水素発電によって生産された水素エネルギーはどのように活用されるのでしょうか。ここでは、水素エネルギーの一般的な活用例についてご紹介します。

燃料電池自動車(FCV)・燃料電池バス(FCバス)

水素エネルギーは主にFCVに活用されています。FCバスの導入も東京都交通局がすでに行っており、今後の導入拡大が見込まれています。

水素ステーション

出典:資源エネルギー庁『2019年の今、「水素エネルギー」はどこまで広がっているの?』(2019/3/29)

燃料電池

水素エネルギーを活用した燃料電池は家庭向けや業務・産業向けに開発されています。燃料電池は高効率のため、家庭やオフィスにおける省エネルギー対策にもつながります。

出典:資源エネルギー庁『ようこそ!水素社会へ ~ 水素・燃料電池政策について』(2020/11/26)

水素燃料電池船

日本では、水素燃料電池船の実用に向けた実証実験が、企業を中心に進んでいます。

(例)

日本で初となる『高出力燃料電池搭載船の実用化に向けた実証事業』が2020年9月から実施されています。この実証実験には以下の5社が参加しています。

  • 日本郵船株式会社

  • 東芝エネルギーシステムズ株式会社

  • 川崎重工業株式会社

  • 一般財団法人日本海事協会

  • ENEOS株式会社

出典:日本郵船株式会社『高出力燃料電池搭載船の実用化に向けた実証事業を開始』(2020/9/1)

4. 水素発電が抱える課題

日本は水素社会の実現を目指していますが、解決すべき課題が残されています。ここでは、水素発電が抱える課題についてご紹介します。

コストの高さ

水素発電が抱える課題の1つはコストの高さです。水素ステーションにおける価格は〜100円/N㎥ですが、中間目標として2030年度には30円/N㎥、将来目指すべき姿として20円/N㎥までコストを下げることを目標に設定しています。

出典:経済産業省『水素社会実現に向けた経済産業省の取組』(2020年11月)(p.4)

水素発電タービンやFCトラックの商用化

水素発電タービンに関しては実機による実証実験が完了しておらず、商用化が課題になっています。FCトラック実証実験中で、水素発電タービンと同様に商用化が課題とされています。

出典:経済産業省『今後の水素政策の課題と対応の方向性 中間整理(案)』(2021/3/22)(p.3)

5. まとめ:水素発電への理解を深め、活用に備えよう。

法人の皆さまが知っておくべき、水素発電に関する基本的な知識についてご紹介しました。今後間違いなく日本は水素社会へと移行します。水素発電への理解を深め、企業はどのように水素を活用していくのか検討につなげていただければと思います。

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