メタネーションが脱炭素の切り札として期待されている!

メタネーションという技術が脚光を浴びています。メタネーションとは、水素と二酸化炭素からメタンを合成する技術です。メタネーションが注目されている理由は、メタンを合成するときに使用するCO2の量と、メタンを燃焼させたときに発生するCO2の量が等しくなるため、大気中のCO2量を増加させないカーボンニュートラルな技術だからです。

今回は、メタネーションとは何か、どうして脱炭素に有効なのか、メターネーションのメリットと普及に向けての課題、今後の目標などについてまとめます。

目次

  1. メタネーションとは何か

  2. メタネーションは脱炭素に有効

  3. メタネーションのメリット

  4. メタネーション普及の課題

  5. メタネーションの導入量目標と供給コスト目標

  6. まとめ:メタネーションは、中小企業にとっても大きなメリットあり

1. メタネーションとは何か

メタネーションとは、水素と二酸化炭素を反応させ、メタンを合成する技術のことです。メタンとは都市ガスの主成分でありますが、メタネーション技術の確立後は既存の都市ガスをメタネーションで合成したメタンに置き換えることで、ガスの脱炭素化を目指します。

メタネーションは、ヨーロッパなどで既に実用化されている技術です。ドイツの大手自動車メーカーのアウディは、メタンを主成分とする天然ガスを燃料とする自動車を開発しました。

出典:資源エネルギー庁「ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術」(2021/11/26)

2. メタネーションは脱炭素に有効

メタネーションによるCO2排出削減効果

出典:資源エネルギー庁「ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術」(2021/11/26)

メタネーションは、なぜ脱炭素に有効なのでしょうか。その理由は、メタンの合成から排出に至るまでの仕組みを見ればわかります。合成メタンの原料は水素と二酸化炭素です。合成メタンは都市ガスなどとして利用される際、燃焼時にCO2を排出します。

しかし、メタンを合成する際に、発電所などからCO2を分離回収しているため、全体としてのCO2排出量は相殺されているのです。排出時のCO2は、メタンを合成するときに使用されるCO2と同じ量です。

したがって、メタネーションで作り出したメタンガスを燃やしても、大気中のCO2の総量は増えません。CO2の総量を増やさないメタネーション由来のメタンガスは、脱炭素に有効だといえます。

3. メタネーションのメリット

二酸化炭素と水素を合成させ、人工的にメタンガスを作り出すメタネーションには、どのようなメリットがあるのでしょうか。2点のメリットについて解説します。

(1)環境負荷が小さい

化石燃料の燃焼時に発生する、CO2・SOx・NOxの比較

出典:資源エネルギー庁「ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術」(2021/11/26)

上の円グラフは天然ガス、石油、石炭の燃焼時に発生する二酸化炭素や硫黄酸化物、窒素酸化物の排出量を比較したものです。

まず、二酸化炭素については石炭のおよそ半分の排出量で、石油よりも排出量が少なくなっています。次に窒素酸化物についてみると、天然ガス石炭の3分の1程度の排出量です。そして、硫黄酸化物に至っては全く排出しません。

これらのことから、天然ガスは環境負荷が小さいクリーンなエネルギーとして脱炭素の有力な選択肢となってきました。メタネーションは、こうした長所を持つ天然ガスを人工的に作り出す技術であるため、環境負荷を小さく抑えられると考えられます。

メタネーションの原料である水素をつくる方法の一つに水の電気分解があります。電気分解に使う電力を再生可能エネルギーでまかなえば、水素作成時にCO2を発生させない「グリーン水素」となり、より一層の脱炭素を実現できます。

(2)既存の都市ガスのインフラを利用できる

もう一つのメリットは、既存の都市ガスインフラを利用できる点です。現在、都市ガスはLNG(液化天然ガス)を利用していますが、天然ガスの主成分もメタネーションで作り出すガスもメタンです。

したがって、既存の設備を大幅に変えることなく、天然ガスからメタネーションで合成したメタンに置き換え可能です。その点で、メタネーションは経済性に優れた技術だといえます。

近年の台風・豪雨によるさまざまなインフラの支障件数

出典:資源エネルギー庁「災害に強い都市ガス、さらなるレジリエンス向上へ

また、天然ガスのパイプはほとんどが地下に埋設されているため、台風や豪雨災害に強く、多少の地震では損傷しないようにできています。

既存の都市ガスインフラを継承できるメタネーションの場合、こうした都市ガスのメリットも引き続き享受できるというメリットもあります。

出典:資源エネルギー庁「ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術」(2021/11/26)

4. メタネーション普及の課題

メタネーションを普及させるにあたって、2つの課題が指摘されています。

(1)グリーン水素の製造コストがかかる

メタネーションで作り出すメタンを完全に脱炭素化するには、原料となる水素を作り出す際のエネルギーとして、再生可能エネルギーである「グリーン水素」にしなければなりません。

グリーン水素の製造コストを下げるには、再生可能エネルギー由来の電力価格を下げる必要があります。日本では、再エネ市場の規模が小さく、施設整備や投資などの関連ビジネスの発達が遅れているため、コストが高くなっています。今後、FITやFIPをはじめとする制度を通し、再生可能エネルギーのコストが下がれば、メタネーション普及に弾みがつくと考えられます。

出典:アスエネメディア『温室効果ガス削減の切り札!ブルー水素とグリーン水素とは?』(2021/11/8)

(2)コスト低減に限界がある

もう一つの課題は製造コストです。メタネーションによって作り出されるカーボンニュートラルメタンは、複数の生産工程を経るため、ガス田から採掘される天然ガスよりも高コストになることが想定されます。

都市ガスの代替品としての利用のみでは、天然ガスとの競争に負けてしまうため、「環境にやさしい」「グリーンな燃料」といった付加価値をアピールし、価格面以外のメリットを強調する必要があるでしょう。

出典:環境省『ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術』(2021/11/26)

5. メタネーションの導入量目標と供給コスト目標

2021年6月、経済産業省は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」をまとめました。この中で、メタネーションは「次世代熱エネルギー産業」と位置づけられ、天然ガスを合成メタンに置き換える導入量の目標と、供給コスト目標が定められました。

2050年ガスのカーボンニュートラル化の実現に向けた姿

出典:資源エネルギー庁「ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術」(2021/11/26)

それによると、2030年までに既存のインフラに合成メタン1%(年間28万トン)を注入し、2050年までに合成メタンの注入割合を90%まで引き上げる(年間2,500万トン)としています。残りの10%は、バイオガスや水素の直接利用などによってまかなわれます。

仮に、2050年までに上記の目標を達成できれば、8,000万トンのCO2削減効果があると見込まれています。また、供給コストについては現在のLMG価格と同程度を目指すとしました。しかし、メタネーションの課題でも述べた通り、割高になる合成メタンの価格を如何に下げるかが目標達成の鍵を握るでしょう。

出典:資源エネルギー庁「ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術」(2021/11/26)

6. まとめ:メタネーションは、中小企業にとっても大きなメリットあり

メタネーションはヨーロッパで活用されつつあるものの、まだまだ研究・開発の余地が多い技術です。メタネーションを導入することでカーボンニュートラルなエネルギー源を手に入れ、CO2の排出を増やさないことが期待されます。

また、メタネーションは既存の都市ガスのインフラを使用できるため経済性に優れるという利点もあります。都市ガス関連企業はもとより、都市ガスを導入している中小企業にとっても、メリットがあります。

それは、合成メタンを使う都市ガスの利用だけで脱炭素に協力することになるからです。新規の投資をせず、脱炭素に協力できるとなれば、中小企業にとっても大きなメリットがあるといえるでしょう。

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