自治体によるSDGsへの取り組み事例を紹介!

国連加盟国が世界共通の目標として掲げるSDGsは、日本政府だけでなく、自治体とも大きく関係しています。日本が将来的に直面する問題は、自治体や関連する民間企業などの参加なくしては解決しないためです。

この記事では、自治体のSDGsへの取り組みについての知識や理解を深めたいと考えている法人の皆さまが知っておくべき、自治体SDGsに関する基本的な知識についてご紹介します。

目次

  1. 自治体SDGsに関する基礎知識
  2. 自治体SDGsの地方創生への取り組みと事例
  3. 自治体の脱炭素化社会を目指す取り組みと事例
  4. まとめ

1. 自治体SDGsに関する基礎知識

ここでは国連加盟国が、世界共通の持続可能な開発目標として掲げるSDGsの概念や、日本政府がどのような方針でSDGsを推進しようとしているかについてご紹介します。 

SDGsは世界共通の持続可能な開発目標である

SDGsはSustainable Development Goalsの略称で、「持続可能な開発目標」と訳されています。

SDGsは2015年9月に開催された国連のサミットにおいて、国連加盟国である193カ国のリーダーの合意により採択されたもので、世界が共通目標として掲げる、2030年までに達成すべき17の目標を指します。どのような17の目標があるかについては、外務省がホームページ上で公表しています。

出典:外務省『JAPAN SDGs Action Platform』

日本におけるSDGsの進め方

2015年9月に国連のサミットでSDGsが採択されたことを受け、日本政府は2016年5月に安倍晋三総理を本部長とする「SDGs推進本部」を設置しています。

SDGs推進本部は2016年5月に策定した「SDGs実施指針」において、日本が取り組むべき8つの優先課題と3つの柱を公表しています。

(3つの柱)

  1. SDGsと連携する「Society5.0」の推進
  2. SDGsを原動力とする地方創生
  3. 次世代・女性のエンパワーメント

日本が選定した8つの優先課題の詳細については、環境省が「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針の概要」において公表しています。

政府は、SDGsを推進する上で、自治体や企業が参加することの重要性についても見解を示しています。2016年12月に第2回SDGs推進本部会合において決定した「SDGs実施方針」の中で、『SDGsを全国的に実施するためには、広く全国の地方自治体及びその地域で活動するステークホルダーによる積極的な取組を推進することが不可欠である』との見解が示されています。また政府は2018年から、SDGs達成に向けた取り組みを提案する都市を「SDGs未来都市」に選定するなどして、自治体でのSDGsへの取り組みを推進しています。

出典:閣府地方創生推進事務局『地方創生に向けた自治体SDGsの推進について(平成29年11月)』

出典:外務省『JAPAN SDGs Action Platform 』

出典:SDGs推進本部『持続可能な開発目標(SDGs)実施指針 1 序文

2. 自治体SDGs・地方創生への取り組みと事例

国が提唱するSDGsの8つの優先課題と3つの柱の中で、自治体が大きく関係してくるのが、SDGsを原動力とする地方創生への取り組みや、脱炭素化社会への取り組みです。ここでは、地方創生の概念と、各自治体の取り組み事例をご紹介します。

地方創生とは地域を活性化させる政策である

地方創生とは、2014年9月に第2次安倍改造内閣発足後に開かれた総理大臣記者会見において発表された政策であり、東京一極集中と地方の人口減少問題を解消することで、日本全体を活性化させるという内容です。

内閣府地方創生推進事務局は、「地方創生の現状と今後の展開」の中で、4つの基本目標を公表しています。

(地方創生の4つの基本目標)

  1. 地方に仕事を作り、安心して働ける環境を整える。
  2. 地方へ人が来る流れを作る。
  3. 若い世代の結婚・出産・子育ての希望を叶える。
  4. 時代に合う地域作りと、地域と地域のつながりを深める。

自治体が地方創生に取り組むことで、住民の生活の質が上がり、その結果住民の満足度を高め、東京一極集中による地方の過疎化を食い止めることができます。また似たような問題を抱える自治体同士が手を組み、地方創生に取り組むことで、他地域とのパートナーシップを強化することもできます。

出典:法務省『地方創生の現状と今後の展開』

自治体の取り組み事例

大阪府泉佐野市・石川県加賀市・青森県弘前市

農業の担い手不足という共通の課題を持つ3つの市がパートナーシップを結び、課題を解決するために「都市と地方をつなぐ就労支援カレッジプロジェクト」を実施しました。大阪に住む就農希望者や無職の若者達を加賀市や弘前市が受け入れ、基礎的な農業技術を習得させ、就農へ結びつけるという内容です。

出典:弘前市『都市と地方をつなぐ就労支援カレッジプロジェクト』

栃木県那須塩原市・小山市

2016年から3年間、新幹線駅を軸に、都内からの移住・定住を促進する目的で、栃木県の塩原市と小山市が連携し「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を実施しています。栃木県での暮らしの魅力を都内に発信し、希望者に実際に栃木県での暮らしを体験する機会を設けたり、移住を検討している人に支援の説明など移住をサポートしています。

出典:企画部シティプロモーション課『事業 新幹線を軸とした移住・定住促進広域連携プロモーション事業について』

長野県佐久市

2050年代から予防医療を福祉として行ってきた佐久市は、長寿のまちとしてのブランドを確立しました。予防医療を福祉から経済にシフトさせ、保険サービスやヘルスケア関連機器の輸出に力を入れたり、輸出先の外国人を留学生と受け入れることで、地域の経済や人の流れを活性化させることに成功しています。

出典:佐久市『「佐久市健康長寿まちづくり計画」及び「佐久市健康長寿産業振興ビジョン」を策定しました』

3. 自治体SDGs・脱炭素化社会を目指す取り組みと事例

近年稀に見る台風や大雨など、気候変動問題を目の当たりにして、脱炭素化社会を目指す自治体が令和元年から令和2年にかけ急増しています。ここでは、自治体が脱炭素化社会を目指すことで得られるメリットや、取り組む自治体が急増した背景、各自治体の取り組み事例についてご紹介します。

脱炭素化社会を目指す自治体が増えている

環境省は、「脱炭素に向けた地方自治体の取組について」において、各自治体が再エネ活用などにより、脱炭素を実現することを推進しています。

自治体は、再エネ活用に取り組むことで、将来的に二酸化炭素の排出量を減らすことができる他にも、地域において産業と雇用を生み出す、エネルギー自給率を上げる、災害時にエネルギーを供給できるなどのメリットを得ることができます。

日本では令和元年から急激に脱炭素に向けた取り組みを表明する自治体が増えています。環境省は、「脱炭素に向けた地方自治体の取組について」にて「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明」をしている自治体の数の推移を発表しています。

令和元年は、4自治体のみでしたが、令和2年には166自治体、そして令和3年は329自治体に急増しています。329自治体の人口の総人口は、実に約1億516万人にものぼります。

出典:環境省『脱炭素に向けた地方自治体の取組について(2021年3月19日)』

自治体の取り組み事例

神奈川県川崎市

令和元年に台風第19号による甚大な被害を受けた川崎市は、脱炭素化社会を目指すことの重要性を、市民や事業と共有することで、2030年までに100万トンの二酸化炭素削減を目指す「かわさきカーボンゼロチャレンジ2050」を策定しました。

出典:川崎市『かわさきカーボンゼロチャレンジ(案)』(2020/11/16)

横浜市

温暖化対策実行計画「Zero Carbon Yokohama」を策定し、脱炭素化社会を実現するための取り組みをしています。再生可能エネルギーを軸とし、2020年までに2013年度比で10%、2030年までに18%の中間目標を設定しています。再生可能エネルギーの生産量が豊富な地域と連携することで、最終的に2050年度の実質ゼロを目指しています。

横浜市温暖化対策統括本部『Zero Carbon Yokohama』実現に向けた横浜市の取組

京都府

2050年度の温室効果ガス排出量実質ゼロを目標に、脱炭素社会に向けた取り組みを継続的に行っています。2020年度には、第3次となる京都府環境基本計画が策定されています。

出典:京都府『京都府環境基本計画」(第3次計画:令和2(2020)年策定)』

4. まとめ

この記事では、自治体と大きく関係しているSDGs(地方創生・脱炭素化社会)の取り組みについての基本的な知識をお伝えしました。

自治体が掲げるSDGsの目標を達成するためには、地元住民や企業の理解や協力なくしては達成することはできません。また自治体単独ではなく、似た課題を抱える他の自治体と手を組み、企業も参加することで、課題をより解決しやすくなり、パートナーシップも深まります。

企業のある地域の活動にも目を向け、積極的に自治体と連携し、さらなる事業拡大と地方創生に取り組みましょう!

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