【脱炭素の未来に向かって】進化するカーボンニュートラル技術を紹介

世界は経済やビジネスにおいてもあらゆるシーンで企業における脱炭素への責任はますます重要になっていくでしょう。この記事では、カーボンニュートラルは、なぜ達成されなければならないのか。そのためにどのような技術が開発されているのか。企業として知っておくべきカーボンニュートラルの技術について詳しく解説していきます。

目次

  1. カーボンニュートラルとは

  2. カーボンニュートラルに向けた技術開発の意義

  3. 日本と世界のカーボンニュートラルへの取り組み

  4. 進化するさまざまなカーボンニュートラル技術

  5. まとめ:カーボンニュートラル技術の進化は新たなビジネスチャンスの到来!

1. カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、人為的な温室効果ガスの発生と排出を、吸収源による除去量とで均衡を達成し、温室効果ガスの合計を実質ゼロにする取り組みです。2015年にパリ協定が採択され、多くの国がこれに合意し脱炭素に向かって歩みはじめました。

パリ協定とは、温室効果ガスを2020年度以降削減するための国際的な枠組みです。地球規模の課題となっている、温暖化や気候変動への対応を120カ国以上が合意しました。

カーボンニュートラルとは

出典:環境省「脱炭素ポータル」

日本の「カーボン・ゼロ宣言」

日本は2020年10月に、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。日本もグリーン社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの普及促進や、グリーン産業をけん引するための技術開発を積極的に開始したのです。

日本の産業政策「グリーン成長戦略」

2020年に発表された「グリーン成長戦略」とは、経済成長と環境適合を循環させるための産業政策です。カーボンニュートラルを達成するためには、あらゆる面での努力が必要不可欠です。電力会社や産業部門の抜本的な構造を転換し、アグレッシブな投資によるイノベーションの創出などに大胆に取り組んでいかなくてはなりません。国はカーボンニュートラルの実現に向けて、イノベーション創出を加速させるために、投資支援をおこないます。

特に、グリーン成長戦略で期待される14の分野を特定し、バックアップすることを決めました。

成長が期待される14分野

出典:・経済産業省『2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』(2021.6.18)

アメリカ・中国も脱炭素を加速

世界で最もCO2を排出しているアメリカと中国も、現在は脱炭素に向けた取り組みを推進しています。中国は2030年度までにCO2排出量を削減に転じさせ、2060年度までにはカーボンニュートラルを達成すると宣言しました。

また、一人当たりのCO2排出量が最多のアメリカも、2050年までにカーボンニュートラルを達成すると表明。化石エネルギーからクリーンエネルギーに切り替えるための政策に膨大な資金を投入するなど、脱炭素の動きを開始しています。

2. カーボンニュートラルに向けた技術開発の意義

世界的に再エネ開発が促進

カーボンニュートラルを推進するための技術の一つとして、世界的に開発が加速しているのは再生可能エネルギーの技術です。自然を利用したクリーンなエネルギーは脱炭素社会においても、カーボンニュートラル達成においても、いまや欠かせません。再生可能エネルギーを導入する国は世界的に見ても拡大しています。日本も再生可能エネルギー導入は、国際機関の分析によれば現在世界第6位となっており、2012年度から2018年度の6年間で見ると、再エネの発電電力は約3倍にも伸びています。

 各国の再エネ導入容量(2018年)出典:資源エネルギー庁「今後の再生可能エネルギー政策について」(2021.3.1)

脱炭素社会とテクノロジー

デジタルテクノロジー開発の分野でも、脱炭素に向けた取り組みは開始されています。いくつかのイノベーション事例をあげると、富士通は再生可能エネルギーの需要や供給の高度な予測や制御に最先端のデジタルテクノロジーを用いることを掲げています。それにより、再生可能エネルギーを主力電源とする電力ネットワークを構築し、脱炭素社会の実現に貢献することを目指しています。

出典:富士通株式会社「富士通グループ中長期環境ビジョン」

3. 日本と世界のカーボンニュートラルへの取り組み

日本企業の取り組み

パリ協定以後、グローバル企業においては、ESG金融の進展もあり気候変動に対応する経営戦略開示(TCFD)や、脱炭素の目標を掲げる(SBT、RE100)などの動きが拡大しています。企業として脱炭素を掲げることは、消費者に対しても投資家に対しても大きなイメージアップへと繋がります。企業間ではCO2削減目標達成のため、再生可能エネルギーの調達要請や、他社との差別化のための取り組みが行われています。

脱炭素が、新ビジネスの獲得チャンスとなっている近年、今後企業の取り組みはさらに進展するでしょう。

脱炭素経営の広がり

出典:環境省「脱炭素ポータル 脱炭素経営の広がり」(2021.7.16)

世界の中小企業の取り組み

世界の国々では、どのように脱炭素に向けた取り組みが行われているのでしょうか。ここでは、世界の中小企業の事例をいくつかご紹介します。

  • ドイツ企業

小型精密部品を精製するオット・バウクハーゲ社は、生産工程の省エネを図ることでCO2削減を実行しています。空気圧縮の空気の漏洩を防止したり、熱回収を行ったり工場内の省エネを徹底しています。

  • フランス企業

オンラインでアウトドア用品販売の販売をしているアドループ社は、自社の電力を再生可能エネルギーで調達するとともに「カーボンオフセット」を利用し、ブラジルの森林保護やフランス・アルプスにおける植林などのプロジェクトに投資しています。

  • カナダ企業

カナダのザ・リステル・ホテルは、ソーラーパネルを屋上設置し、シャワーや洗濯に利用しています。また、冷却装置からの排熱を回収するシステムを導入し、ホテルの天然ガスを30%削減しました。

出典:独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)「省エネなどの温室効果ガス排出削減、中小でも」(2021.121.16)

注目されるカーボンニュートラル関連分野

さまざまな事例に見られるように、カーボンニュートラルを企業の成長のチャンスと捉えて、世界中の金融市場やビジネスが脱炭素へ向けて、大転換を始めています。カーボンニュートラルへの挑戦は、社会経済の変革を促すこととなりました。言い換えれば、カーボンニュートラル事業には、新たなビジネスのチャンスや投資、生産性を生み出す可能性が満ちていると言えるでしょう。

4. 進化するさまざまなカーボンニュートラル技術

次世代エネルギー「メタネーション」技術

「メタネーション」とは、CO2と水素から「メタン」を合成する技術です。脱炭素化はガスの分野においても重要なため、都市ガスの原料である天然ガスを、「メタネーション」を利用した合成メタンに置き換えることで実現が有望視されています。燃焼するとメタンはCO2を排出しますが、メタネーションを行うガスの原料を発電所や工場から排出されたCO2を回収し利用すれば、燃焼時のCO2は回収したCO2と相殺され、排出は実質ゼロになります。まさにCO2の発生と排出を、吸収源による除去量とで均衡を達成する、次世代のカーボンニュートラル技術として注目されています。

出典:資源エネルギー庁「ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術」(2021.11.26)

CO2を回収・貯留して有効利用。期待のCCUS技術

カーボンニュートラルを達成するためには、CO2削減とともに、CO2を大気中に放出しない取り組みも重要です。CCUSの技術は、工場や発電所から排出されるCO2を排気ガスの中から分離し、回収して資源として再利用する、またはCO2の漏れることのない安定した地層に貯留します。火力発電所やゴミ焼却所などのCO2を大量発生する分野において導入が可能であり、CO2を大幅に削減できると期待されている技術です。

IEA(国際エネルギー機関)によれば、CCUSの技術は2070年までに累積CO2削減量の15%を担うと報告されています。

出典:環境省『CCUSを活用した カーボンニュートラル社会の 実現に向けた取り組み 』p.2(2020年2月)

カーボンリサイクル技術

カーボンリサイクルは、排出され回収したCO2を資源として考え、炭素化合物として再利用することです。2019年には、「カーボンリサイクル技術ロードマップ」が作成されました。カーボンリサイクルは、機械、バイオ、セメント、科学などあらゆる事業分野で取り組むことが可能です。かかるコストの削減に努め、広く社会や事業への実装に取り組めば、グローバルに展開できる可能性も秘めた産業です。

カーボンリサイクル産業を実現するために必要なCO2の回収や分離技術においては、すでに開発が進んでいます。カーボンリサイクルの技術開発は、日本企業がトップを占めているため、今後、カーボンリサイクル産業の世界的拡大が期待されています。

出典:資源エネルギー庁「CO2削減の夢の技術!進む「カーボンリサイクル」の開発・実装」(2021.4.30)

5. まとめ:カーボンニュートラル技術の進化は新たなビジネスチャンスになる!

いかがでしたか。今回はカーボンニュートラルに関する技術開発や、それに伴う企業事例など、あらゆる角度からカーボンニュートラルを解説しました。日本はカーボンニュートラルを、2050年度に達成する目標を掲げているため、企業は達成に向けた努力をしていかなくてはなりません。

しかし、新たなビジネスを生み出すチャンスとして捉え、前向きな努力をはじめるならば、自社の価値を高め、未来に向けて大きく前進した企業となるでしょう。カーボンニュートラル達成に向けた努力をはじめ、未来に貢献する企業にしていきましょう。

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