建築物省エネ法改正で何が変わる?法の要点や変更点を解説!

皆さまは2021年4月より建築物省エネ法が改正されたことはご存じでしょうか?建築物省エネ法とは建物の省エネ促進を目的とした法案です。この記事では建築物省エネ法の要点、改正の理由や改正後の変更点を説明します。限りある資源の有効活用や、地球環境改善の為の重要な法案の1つですので是非お読み下さい。

CO2排出の主な起源は産業分野・住宅/建築物分野・運輸分野で分けられる事が多いです。その中でも住宅/建築分野のCO2排出量や最終エネルギー消費量は多く住宅/建築物分野での省エネは喫緊の課題です。

目次

  1. パリ協定と建築物省エネ法

  2. 建築物省エネ法要点

  3. 建築物省エネ法の改正で何が変わる?

  4. まとめ:建築物省エネ法の要点を理解し、省エネを促進しよう

パリ協定と建築物省エネ法

このセクションでは建築物省エネ法の要点や改正後の変更点を解説する前に建築物省エネ法の意義や、今回改正に至った理由を日本を取り巻く環境を交えて解説したいと思います。

パリ協定は産業分野だけでなく住宅分野にも省エネの波が訪れたきっかけとなりました。日本は2015年に『2030年度に2013年度比で温室効果ガス26.0%減の水準』という草案を国連に提出し、同年気候変動抑制の為の国際的な枠組みであるパリ協定を採択しました。目標達成の為の一環として建築物省エネ法が2016年から段階的に施行されました。

(出典:国土交通省『建築物省エネ法の改正概要と今後のスケジュール等について』)

温室効果ガス削減目標における住宅の重要性

住宅/建築物分野のCO2排出量はどの程度なのでしょうか。実際各分野の排出量を参照し重要性を見ていきましょう。下図のように2013年度において、CO2排出量は住宅/建築物分野が産業分野よりも多いです。最終エネルギー消費量に関しては産業分野よりは少ないものの全体の3分の1が住宅/建築物分野で占められているとわかります。

(出典:国土交通省『建築物省エネ法の改正概要と今後のスケジュール等について』のデータを基に作成)

何故、建築物省エネ法が改正されるのか

下図は省エネ基準に適合する住宅および建築の割合を示す棒グラフです。住宅以外の建築物には省エネ基準を満たす物が多いことがわかります。一方で住宅では省エネ基準に適合してない住宅が多いことがわかります。

(出典:国土交通省『建築物省エネ法の改正概要と今後のスケジュール等について』のデータを基に作成)

さらに用途別・規模別のエネルギー消費量を確認すると半分以上が建築物のエネルギー消費でそのうち15.9%は中規模建築物となります。住宅物を見てみると小規模住宅がエネルギーを多く消費しているとわかります。

(出典:国土交通省『建築物省エネ法の改正概要と今後のスケジュール等について』のデータを基に作成)

つまり、小規模住宅と中規模建築物の省エネをこれまで以上に促進することでパリ協定で設定した二酸化炭素排出量削減の目標に近づくと考えられます。今回の建築物省エネ法では中規模建築物と小規模住宅に対して変更があります。特に中規模建築物に関しては手続きが増えますので注意が必要です。

建築物省エネ法の要点

建築物省エネ法では建築物と住宅、さらにその中でも大中小規模それぞれで制度が違います。このセクションでは変更点を確認する前に、改正前の建築物省エネ法の中身の要点を確認していきたいと思います。

建築物省エネ法の適合義務制度

2,000㎡以上の大規模非住宅建築物に対して義務付けられる制度です。新築時に省エネ基準に適合しているかどうか行政や省エネ判定機関から判定を受ける義務があります。この際に省エネ基準に適合出来ないと判断された場合は着工および開業が出来ません。

建築物省エネ法の届け出義務制度

300㎡以上2000㎡未満の中規模建築物と大・中規模の住宅に義務付けられる制度です。新築時に行政へ省エネ計画を届出する義務があります。不適合な場合は必要に応じて指示・命令がなされます。

建築物省エネ法のトップランナー制度

小規模住宅において通常の省エネ基準よりも高い水準を定めて、さらなる省エネ性能の向上を誘導する制度です。国土交通省は標の省エネ性能に達しない対象の住宅事業者に公表・命令が出来ます。

建築物省エネ法の改正で何が変わる?

建築物省エネ法大きな変更点は、2,000㎡以上の大規模建築物に加えて300㎡以上の中規模建築物にも適合義務が生じる事です。前項で説明した通り省エネ基準に適合しないと判断された場合は着工・開業が出来ません。

(出典:国土交通省『建築物省エネ法の改正概要と今後のスケジュール等について』を基に作成)

省エネ適合判定の取得

これまでは届出だけで問題なかった中規模建築物にも適合義務が生じると説明しました。手続きのフローは下記の図を参照してください。適合義務化により追加される手続きは赤字で示します

(出典:国土交通省『建築物省エネ法の改正概要と今後のスケジュール等について』を基に作成)

義務化に当たって登録省エネ判定機関等からの省エネ適合判定(省エネ適判)を受け適合判定通知書が必要になります。大規模建築物と同様に定められた省エネ基準をクリアしないと工事着手が出来なくなりました

その他の変更点

最後に小規模住宅および建築物の変更点も少しだけ説明します。これまでの省エネ性能向上の努力義務に加えて建築士から建築主への説明義務が追加されました。

説明義務制度では省エネ基準に適合しているか、基準に適合しない場合は性能確保の為に必要な変更内容を建築士が説明します。説明を義務化することで省エネ住宅の増加を狙った制度と言えます。

まとめ:建築物省エネ法の要点を理解し、省エネを促進しよう

本記事では築物省エネ法の要点、改正の理由や改正後の変更点を解説しました。建築物の省エネ法は改正されたばかりです。色々な変更点がありますが、特に中規模建築物に関しては手続きが増え、省エネ適判が貰えないと着工も出来ないので注意が必要です。これらの改正で省エネが促進される事を願っています。

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