トヨタのEV戦略から見る真摯に取り組む脱炭素とは

2021年12月にトヨタ自動車株式会社がバッテリーEV戦略を公表し、野心的な戦略に驚かれたのではないでしょうか。ガソリン車からEV車に変わる時代がすぐそこまで来ています。中小企業にとってもEV車の買い替えを検討しなければならない時期になったと言えます。この記事では、トヨタ自動車が発表したEV戦略の内容やその他自動車メーカーの戦略、世界の動向などについてご紹介します。

目次

  1. 世界に衝撃!トヨタのEV戦略

  2. 日本が掲げるEV戦略

  3. 世界各国のEV戦略

  4. まとめ:2030年に向け、EV車の購入を検討しよう!

1. 世界に衝撃!トヨタのEV戦略

トヨタ自動車株式会社は、2021年12月14日にバッテリーEV戦略に関する説明会を開催しましたが、その内容は国内外に大きな衝撃を与えました。ここでは、トヨタ自動車が販売を予定しているEV車やEV戦略、EV販売に力を入れる背景にある要因についてご紹介します。

トヨタが発表したEV車の販売目標台数と車種

トヨタ自動車は、2030年におけるEV車の販売目標台数を年間350万台とすることを発表しました。2021年12月に開催した説明会において、SUBARUとの共同開発により誕生した本格SUVの走破性を追求したbzシリーズやLEXUSのEV車などが公開されました。2035年から新たに販売されるLEXUSは100%EV車になります。トヨタ自動車は2030年までに30車種にまで展開する計画を示しています。

出典:TOYOTA『バッテリーEV戦略に関する説明会』(2021/12/14)

トヨタのEV戦略:投資額はどのくらい?

トヨタ自動車は、2022年から2030年までに自動車の電動化の研究開発や設備投資に8兆円の投資を行います。EVに充てられるのは4兆円で、内2兆円はEVの普及で鍵を握るとされるバッテリーの研究開発などに割り当てられます。

出典:電気新聞『トヨタがEV投資を加速 30年に開発4兆円、販売350万台』(2021/12/15)

トヨタはなぜEV販売台数目標を大幅に引き上げたのか

トヨタ自動車はこれまでEVとFCVを合わせた2030年における年間販売目標台数を200万台と発表していましたが、2021年12月に350万台にまで大幅に目標台数を引き上げました。中国におけるEV市場の急拡大が、トヨタ自動車が目標を大幅に引き上げた背景にある要因の1つです。中国は2017年度にEV・PHVの生産シェアで世界第1位となり、全体の44%を占めています。

EV・PHVの生産シェア

出典:経済産業省『自動車新時代戦略会議(第1回)資料』(2018/4/18)(p.5)

2. 日本が掲げるEV戦略と日本の各メーカーの目標

トヨタ自動車以外の自動車メーカーはどのようなEV戦略を設定しているのでしょうか。ここでは、日本がグリーン成長戦略において設定しているEV戦略と、日産自動車とHONDAのEV戦略についてご紹介します。

日本のEV戦略

グリーン成長戦略において2050年までに成長が期待できる14の重点分野が示されており、自動車・蓄電池分野もその1つです。グリーン成長戦略とは、2050年までのカーボンニュートラルを実現させるために企業の挑戦を後押しする目的で策定された国の政策です。乗用車は2035年までに新車販売で電動車100%、小型商用車は新車販売で2030年までに電動車20〜30%、2040年までに電動車・脱炭素燃料車100%、大型車は2020年代に5,000台の先行導入を計画しています。

出典:経済産業省『グリーン成長戦略(概要)』(2021/6/18)(p.10)

出典:資源エネルギー庁『カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは?』(2021/5/20)

日産の目標

日産自動車は2021年11月に、自動車の電動化を戦略の中核とする長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表しました。

電動化を加速させる目的で、今後5年間に2兆円の投資を行う計画です。2030年までに23車種の新型電動車を発表予定で、その内15車種がEVです。

出典:NISSAN『長期ビジョン  Nissan Ambition 2030 会社情報』

HONDAの目標

HONDAは2021年4月に、2040年までに世界の新車販売全てをEVとFCVに切り替えるとの意欲的なEV戦略を発表しました。

北米と中国とで異なる車種を販売するなどHONDA独自の戦略で、自動車の電動化を進める予定です。EVの研究開発に今後6年間で5兆円の投資を行う計画です。

出典:日本経済新聞『ホンダ、世界販売全てをEV・FCVに 40年目標』(2021/4/23)

3. 世界各国のEV戦略

トヨタ自動車の意欲的なEV戦略など、日本において自動車の電動化が加速している背景にあるのが、欧州と中国のEV市場の拡大です。ここではEV市場を牽引する欧州と中国のEV戦略についてご紹介します。

EUのEV戦略

欧州ではCAFE規制の強化によりEV普及を促進しています。CAFE規制とは、走行1キロメートルあたりのCO2排出量の基準を設定し、基準を超えた量に応じ罰金を課すというものです。2035年に欧州のEV市場は20年度比で11倍に拡大するとの予測も発表されています。今後世界で最もEV販売台数が伸びるとされているのが欧州で、年間販売台数は851万台にまで拡大する見通しです。

出典:日本経済新聞『EV世界市場、35年に11倍の2418万台 20年比、民間予測』(2021/7/27)

出典:日本経済新聞『車メーカーなぜ罰金1.8兆円の可能性?』(2020/9/4)

中国のEV戦略

EV・PHVの生産規模は中国が牽引する形で拡大しています。政府による補助金事業やナンバープレート優遇などの政策により、EVの普及が進んでいます。EVは最大で約74.8万円、PHVは最大で40.8万円の補助金が交付されます。50万円程度で購入できる小型EVなど、価格が安いのが魅力です。中国の上汽GM五菱が2020年7月に販売を開始した宏光ミニEVは、わずか2ヶ月でEV世界最大手である米テスラの販売台数を抜き、20,150台を売り上げています。

出典:経済産業省『自動車新時代戦略会議(第1回)資料』(2018/4/18)(p.5.6)

出典:朝日新聞『43万円のEV、中国でテスラ超え 五菱製「人民の足」』(2020/11/30)

4. まとめ:2030年に向け、EVの購入を検討しよう!

この記事では、トヨタ自動車が発表した野心的なバッテリーEV戦略の内容や国内外のEV市場における動向などについてご紹介しました。これまでごく当たり前に利用していたガソリン車がEVに替わる時代は目の前に迫っています。企業が利用する公用車についても例外ではありません。トヨタ自動車をはじめとする国内外のEV市場の動向を理解し、2030年に向けてEVの購入を検討しましょう。

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