FITからFIPへ|注目されるアグリゲーター企業とは?

FIP制度の開始を控え、注目を集めているアグリゲーター企業とはどのような役割に位置づけられている組織なのでしょうか。日本は再生可能エネルギーの普及を目的とし2017年7月にFIT制度をスタートさせましたが、2019年11月から順次買取期間が終了しています。さらなる再生可能エネルギーの普及を目的とし2022年4月からFIP制度が新たにスタートします。

FIP制度では電力の需要と供給バランスの調整が不可欠とされていますが、その役割を担うのがアグリゲーター企業です。この記事ではFIT制度やFIP制度とはどのような制度であるかを分かりやすく解説し、FIP制度におけるアグリゲーター企業の役割などについてご紹介します。

目次

  1. 2022年4月から始まるFIP制度で電力市場はどう変わる?

  2. アグリゲーター企業とは?

  3. 電力業界におけるアグリゲーター企業の役割

  4. まとめ:アグリゲーター企業への理解を深めFIP制度を活用しよう!

1. 2022年4月から始まるFIP制度で電力市場はどう変わる?

2022年4月から始まるFIP制度により、再生可能エネルギーの売電方法が大きく変わります。ここではFIT制度とFIP制度の概念と、FIP制度により電力市場がどのように変わるのかについてご紹介します。

FIT(固定価格買取)制度について

FIT制度とは、再生可能エネルギーの普及拡大を目的として2012年7月から始まった制度です。発電方法と電力量により期間と単価が定められており、その期間は一定の価格で電力会社が電力を買い取ることを国が義務づけています。買取にかかる費用の一部は電気を利用している国民から再エネ賦課金という形で賄われており、コストが高い再生可能エネルギーの導入を支えています。

FIT制度で売電できるのは、次の5種類です。

  • 太陽光

  • 風力

  • 水力

  • 地熱

  • バイオマス

FIT制度は国民の負担増や太陽光発電への偏りが問題視され2017年4月に改定されました。改正FIT法は2019年11月から順次買取期間が終了しています。

固定価格買取制度の仕組み)

出典:経済産業省『制度の概要』

FIP(フィードインプレミアム)制度について

FIT制度に代わる再生可能エネルギー普及拡大を目的とした新たな制度として2022年4月からFIP制度が始まります。FIP制度は再生可能エネルギーの導入が進んでいる欧州ではすでに導入されています。FIP制度とは、発電事業者が卸市場などで売電した時の売電価格に対して国が一定額のプレミアムを補助することで、再生可能エネルギーの導入を促すものです。

出典:資源エネルギー庁『再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート』(2021/8/3)

FIP制度への移行で何が変わるのか?

FIP制度に移行することで、FIT制度のもとで実施されていた固定期間の固定価格での買い取りがなくなります。FIP制度のもとでは一定額がプレミアムとして補助されますが、売電価格は市場により変動します。発電事業者はFIT制度のもとでは電力の需要や供給のバランスを考える必要がありませんでしたが、FIP制度では市場競争の原理が導入されるため発電事業者側は需要と供給のバランスを考える必要が出てきます。

出典:資源エネルギー庁『再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート』(2021/8/3)

2. アグリゲーター企業とは?

FIP制度の移行により、発電事業者は需要と供給のバランスを考えながら電力を供給していかなければなりません。発電事業者に代わり、需要と供給バランスを調整する役割を担う組織として位置づけられているのがアグリゲーター企業です。ここでは、アグリゲーター企業の概念やFIP制度移行で注目されている背景、アグリゲータービジネスへの企業の参入事例についてご紹介します。

アグリゲーター企業の概念

アグリゲーター(aggregator)には「収集する人、物」などの意味があります。

日本は再生可能エネルギーを上手く活用するシステムとしてVPP(バーチャルパワープラント)の普及を推進していますが、VPPにおいてアグリゲーターは工場やビル、家庭などからの電力を束ね、効果的なエネルギーマネジメントサービスを提供する組織として位置づけられています。

出典:資源エネルギー庁『VPP・DRとは』

アグリゲーター企業の種類

アグリゲーター企業は主に2種類ありますが、両方の機能を兼ね揃えた企業もあります。

  • リソースアグリゲーター

工場や家庭などの需要家と直接契約を締結し、リソース制御を行う。

  • アグリゲーションコーディネーター

リソースアグリゲーターが制御した電力量を束ね、一般送配電事業者や小売電気事業者などと直接電力取引を行う。

VPPのイメージ

出典:資源エネルギー庁『VPP・DRとは』

FIP制度への移行でアグリゲーター企業が注目される背景

FIP制度への移行でアグリゲーター企業が注目される背景にあるのが、「再生可能エネルギーの不安定さ」です。FIPでは発電事業者が市場取引または相対取引により電力を販売します。太陽光など天候に左右される再生可能エネルギーの場合、蓄電池を活用して需給バランスを取り、安定した供給を計画的に行う必要がありますが、小規模の発電事業者にとっては対応が困難です。そこで注目されるのが、小規模発電事業者に代わり、この役割を担うアグリゲーター企業です。ドイツでは実際にFIP制度に移行してからアグリゲーター企業の数が増加しています。

出典:資源エネルギー庁『VPP・DRとは』

3. 電力業界におけるアグリゲーター企業の役割

アグリゲーター企業は様々な役割を担っています。ここでは、電力業界におけるアグリゲーター企業の役割についてご紹介します。

ピーク時の電力需要制限と新たな電力需要の創出

アグリゲーター企業の役割の1つは、ピーク時の電力需要を制限することです。1日の中で最も電力の需要が高まるピークの時間帯があります。この時間帯にアグリゲーター企業が需要家に呼びかけ電力を抑制することで、維持費や設備投資を抑えることができます。

逆に再生可能エネルギーなどの電力が余っている場合は、需要家に呼びかけ電力を消費させることができます。

出典:資源エネルギー庁『VPP・DRの意義』

再生可能エネルギーの有効活用

アグリゲーター企業は分散する再生可能エネルギーなどを束ね、その後一般送配電事業者や小売電気事業者と直接電力取引を行います。リソースアグリゲーターが工場や家庭と直接契約を結ぶため、再生可能エネルギーを有効に活用することができます。

電力の需要と供給バランスの調整

FIT制度からFIP制度に移行するにあたり、発電事業者には需要と供給のバランスを調整しながら電力をコントロールすることが求められます。アグリゲーター企業は、発電事業者に代わりこの役割を担います。

4. まとめ:アグリゲーター企業への理解を深めFIP制度を活用しよう!

この記事ではFIT制度からFIP制度への移行準備が進む中で注目を集めているアグリゲーター企業に関する基本的な知識についてご紹介しました。2022年4月からFIP制度がスタートし、今後アグリゲーター企業への関心が高まると予想されます。アグリゲーター企業への理解を深め、FIP制度をうまく活用しましょう。

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