プラスチックのリサイクルの種類は?現状と企業の取り組み事例も解説

プラスチックのリサイクル問題は深刻化しています。そのような状況の中、企業として取り組めることには何があるのでしょうか。

この記事では、プラスチックのリサイクルの種類と再利用方法、日本のリサイクルの現状と企業の取り組み事例を解説します。プラスチックのリサイクル問題の解決に向けての活動の参考にしてください。

目次

  1. 3種類のプラスチックリサイクルとその利用先

  2. プラスチックのリサイクル率と日本の現状は?

  3. プラスチックのリサイクル問題

  4. 企業でのプラスチックのリサイクルの取り組み

  5. まとめ:プラスチックのリサイクル!まずは施策を考えよう

1. 3種類のプラスチックリサイクルとその利用先

プラスチックのリサイクルの種類は「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」の3種類です。それぞれのリサイクル方法について説明します。

1:マテリアルリサイクル

マテリアルリサイクルとは、廃プラスチックを原材料にして再度プラスチック製品として利用することです。

分別されたプラスチックは事業者が回収し、粉砕・貯蔵・混合・溶融・成型を経て製品になります。この際、異物が除去されていなければ再利用できません。再生加工品は、コンテナ、ベンチ、フェンス、遊具、土木シートなど様々なものに再利用されます。

2:ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルとは、廃プラスチックを化学的な処理をして分解し、原料にしてから再利用することです。

ケミカルリサイクルのリサイクル方法は、5つあります。「元の素材に戻して再度プラスチック製品」になる『原料・モノマー化』、「石油などの燃料」になる『油化』、「水素・アンモニア」になる『ガス化』、「製鉄所で使用する還元剤」になる『コークス炉化学原料化』、「銑鉄」になる『高炉原料化』があります。

3:サーマルリサイクル

サーマルリサイクルとは、廃プラスチックをガスや油などの固形燃料にしたり、廃プラスチックを焼却した熱を発電などに使用することです。

サーマルリサイクルでは、分別しきれない廃棄物が処理されます。近年ではごみ発電が注目されており、プラスチックの高い発熱量から今後も有効活用が見込まれています。ごみ発電では、焼却しても有害物質を出さない仕組みになっています。

プラスチックのリサイクル手法と成果物

出典:一般社団法人 プラスチック循環利用協会『プラスチックとリサイクル 8つの「?」』(p.10) 

出典:一般社団法人 プラスチック循環利用協会『26 プラスチックの3つのリサイクル』

2. プラスチックのリサイクル率と日本の現状は?

プラスチックのリサイクル問題は以前からありますが、現状はどのようになっているのでしょうか。ここでは日本のリサイクル率と世界のリサイクル率、日本の現状について説明します。

日本のプラスチックのリサイクル率

日本の2019年のプラスチック有効利用率は、85%です。

廃プラスチックの総排出量・有効利用量・有効利用率の推移

出典:一般社団法人 プラスチック循環利用協会『プラスチックリサイクルの基礎知識』(2021/6/30)(p.5)

内訳は、マテリアルリサイクルが22%、ケミカルリサイクルが3%、サーマルリサイクルが60%です。有効利用率は年々、上昇傾向にあります。

3つのリサイクルの割合

出典:一般社団法人 プラスチック循環利用協会『26 プラスチックの3つのリサイクル』

世界のプラスチックのリサイクル率

世界のプラスチックのリサイクル率を見ていきましょう。2020年のリサイクル率をヨーロッパで比較すると、オランダが1番高い割合で、約45%、ノルウェーが約45%と続きます。

treatment per country in 2020出典:PlasticsEurope『Plastics – the Facts 2022』P49

プラスチックのリサイクルを取り巻く現状

実は日本とヨーロッパでは、リサイクル率の計算方法が違います。「日本のプラスチックリサイクル率は85%」と数字だけ見ると、世界の中でも日本はリサイクル率が高いと思うかもしれません。

しかし、ヨーロッパではサーマルリサイクルはリサイクル率に含みません。日本のサーマルリサイクルをのぞいたリサイクル率は、日本は19.9%と、かなり低い水準にあると言えます。この原因は、日本はヨーロッパに比べてごみ焼却処理率が高いことが挙げられます。

出典:環境省『一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について』2023年3月30日

3. プラスチックのリサイクル課題

日本は世界に比べてもプラスチックのリサイクル率が低いことが分かります。近年問題となっていることが、輸出規制です。ここでは、海洋プラスチック問題と合わせてプラスチックのリサイクル課題について解説します。

問題1:輸出規制で日本の国内循環が問われている

世界180ヶ国が参加するバーゼル条約の改正で、2021年より廃プラスチックが規制対象となりました。これによりプラスチック廃棄物を輸出する際には、事前に輸入国の同意が必要になりました。そのため、日本のリサイクルの国内循環が問われています。

日本は2017年、世界3位のプラスチック輸出大国でした。主に中国に輸出していましたが、2017年、中国が廃プラスチックの輸入を禁止したことで他のアジアの国や途上国へ輸出するようになりました。

しかしそれも一時的で、それらの国も輸入規制が始まったことで、日本の廃プラスチックは行き場を無くしています。

出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)『行き場を失う日本の廃プラスチック』(2019/1/10) 

日本が輸出大国となった原因は、設備費や人件費のコストが高いからです。今後は日本国内の資源循環の方法を模索するべきでしょう。

プラスチックくずの輸出量

出典:環境省『プラスチックを取り巻く国内外の状況』(2021/1/28)(p.5) 

問題2:海洋プラスチック問題

海洋プラスチック問題とは、捨てられたプラスチックごみなどが海に浮かび、マイクロプラスチックと呼ばれるプラスチック粒子となって蓄積する海洋汚染問題です。これにより、海の生き物約700種に死んだり傷ついたりと影響が及んでおり、そのうちの92%がプラスチックごみによる影響と言われています。

出典:日本財団『【増え続ける海洋ごみ】今さら聞けない海洋ごみ問題。私たちに何ができる?』(2020/4/27)

海洋ごみ問題は、「SDGs」の14.「海の豊かさを守ろう」で、「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。」という内容がターゲットとして掲げられているほか、G7やG20などでも取り組んでいる問題です。国としても、プラスチック・スマート キャンペーンや海ごみゼロアワードなど、様々な施策を行っていますが、今後も積極的に取り組むべき課題であるといえます。

出典:環境省『プラスチックを取り巻く国内外の状況』(2021/11/22)(p.5) 

出典:環境省『海洋プラスチック問題の解決に向けた 環境省の取組について』(2019/2/26)(p.15) p15 (2019/2/26)

4. 企業でのプラスチックのリサイクルの取り組み

実際に企業としてどのような取り組みができるのでしょうか。ここでは、プラスチックのリサイクルをするメリット、リサイクルをするのに役立つ国の施策、企業の取り組み事例を紹介します。

リサイクルをすることによるメリット

リサイクルによるメリットは2つあります。

・ESGが高くなる

ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」のことで、ESG投資は企業の財務のみで判断した投資だけでなくこの3つの取り組みを考慮した投資のことを言います。プラスチックのリサイクル問題は、環境の面でESGに当たります。ESGが高くなることで投資家のESG投資を促し、「ブランド力が向上する」「成長が持続する」ことが期待できるでしょう。

出典:経済産業省『SDGs経営/ESG投資研究会』

・CSRに取り組む企業として認められる

CSRは「corporate social gavernance」の略で、「企業の社会的責任」という意味になります。CRSに取り組むことで、「企業イメージの向上」が見込まれ、それにより「顧客との関係の強化」「従業員の満足度向上」も期待できます。

出典:東京商工会議所『「企業の社会的責任(CSR)」についてのアンケート調査』(2005/7/12)(p.30)

リサイクルを後押しする国の施策

プラスチックのリサイクルに取り組む企業を支援する施策の中でも3つを紹介します。

・「プラスチック・スマート」キャンペーン

環境庁が推進する取り組みで、プラスチックの排出抑制や分別回収の徹底などの取り組みを国内外に発信していくキャンペーンです。共通ロゴマークの元、様々な企業や自治体が参加し、優良な取り組みを表彰する機会もあります。

出典:PlasticsSmart『OUR STORY』

・海ごみゼロアワード

日本財団と環境庁の共同事業で、海洋ごみ削減となる優れたモデルとなる取り組みを募集しています。こちらも表彰があります。

・プラスチック資源循環アクション宣言

農林水産・食品産業における企業、団体の自主的な取り組みを促進することを目的として、農林水産省が推進している取り組みです。食品関係の企業から、製造業の企業まで取り組み事例を見ることができます。

出典:​​農林水産省『プラスチック資源循環アクション宣言』

企業の取り組み事例を8つご紹介

では実際の企業の取り組みはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは企業規模を問わずに取り組み事例を紹介します。

・イオン

繰り返し利用可能にする、新たな商品提供システムである「Loop」を展開しています。食品などの容器やパッケージをステンレスやガラスなどに変え繰り返し利用可能にするシステムで、商品を購入し、利用した後容器を返却すると容器代が返金されます。

・旭化成

資源循環プロジェクト「Blue Plastics」を発足しています。まだ試験段階ですが、最新のITテクノロジーを用い、QRコードを読み込むことで商品の再生プラスチック利用率を表示します。また消費者のリサイクル行動にポイントをつけることで、消費者の行動も促せます。

・ミズノ株式会社

人工芝である「MS Craftシリーズ」により、マイクロプラスチックの流出抑制に取り組んでいます。パイルに特種捲縮(けんしゅく)を施し、重鎮材の飛散を抑制しています。衣服にも入りにくくグラウンド外への流出も軽減されています。

・​​東京リスマチック株式会社

非塩ビ、省プラの「ecopa」という商品を展開しているインクジェットメディアです。従来は原材料に塩ビやPETの複合素材が多く、焼却処理されずに埋め立てられていたものを、塩ビの複合素材を使用せずプラスチック原料も減らして環境への負荷を軽減させています。

・株式会社三共丸商

プラスチック製造会社と合同で開発を進めた「土に還るプラスチック素材」を一部製品に導入しています。

・株式会社アーリークロス

マイクロプラスチックにならない植物由来の天然繊維(セルロース)をしようしたスポンジクロスを開発しています。

・行政システム九州株式会社

従来のプラスチックから、紙の原料を使用した半透明紙ホルダーの利用への切り替えをしています。

・合同会社HAYAMI

植物由来の草ストローの販売を行なっています。自然の力だけで土に還るため、ゴミを減らすことができます。また、原材料の産出地である東南アジアの農村の開発にも取り組んでいます。

出典:PlasticsSmart『CASES』

出典:海ごみゼロアワード『2021年応募一覧』

5. まとめ:プラスチックのリサイクル!まずは施策を考えよう

プラスチックのリサイクルは、リサイクル事業を展開している企業のみでなく、製造業・食品業・飲食業やIT業など全業種取り組むことが可能です。プラスチックを使用しない新たな素材で製品を開発することで新しいビジネスチャンスが生まれるかもしれません。またはプラスチックの製品の使用を軽減するなど簡単なことから始めるのも良いでしょう。国の政策も活用しながら、ぜひ施策を考えて企業全体で取り組みましょう。

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