循環する経済に挑戦する企業!サーキュラーエコノミーとは?

環境問題に関する取り組みが企業でも注目されており、この取り組みのひとつに「サーキュラーエコノミー」というものがあります。

ここではサーキュラーエコノミーとはどのようなものか、また、実際に取り組んでいる企業についてご紹介していきます。リサイクルからさらに進化した環境問題に取り組む企業の考え方はどのようなものなのでしょうか。次世代の企業の取り組みに注目していきましょう。

目次

  1. サーキュラーエコノミーとリサイクルとの違いは?

  2. サーキュラーエコノミーが注目されている理由

  3. <サーキュラーエコノミーに挑戦する企業>事例の紹介

  4. 【まとめ】サーキュラーエコノミーは進化したリサイクルへの考え方!

1. サーキュラーエコノミーとリサイクルとの違いは?

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミーは資源の循環を考える経済モデルで、通常無駄となる廃棄物を資源として利益に変える仕組みとなり、「循環型経済」と訳されます。環境保護と利益の創造を同時に実現する地球に優しい経済の構築を目指す考え方です。

今までの経済モデルで対照的な仕組みを「リニアエコノミー」と呼び、こちらは原料⇒生産⇒使用⇒廃棄の流れが一方向の流れとなり、大量生産・大量消費・大量廃棄が基本となり、サーキュラーエコノミーの循環型経済に対して「直線型経済」と訳されています。

サーキュラー・エコノミーとは

出典:経済産業省『サーキュラーエコノミーに係わるサスティナブルファイナンス促進のための開示対話ガイダンス(概要)』(2021.1)

サーキュラーエコノミーの3原則

サーキュラーエコノミーを推進しているエレンマッカーサー財団では、「サーキュラーエコノミー原則」として3つの原則を掲げています。「Circulytics」という企業のCircularity(循環性)の評価とスコア提供を行うための枠組でこの3つのいずれか1つ以上に該当し、かつ他の2つに逆行しないことが条件としています。

  • 廃棄・汚染を生まないビジネスデザイン

GHG排出、有害物質、水・大気の汚染や交通渋滞など経済活動による人の健康や自然環境の負荷を低減できるビジネスであること。

  • 製品と原料の循環

設計によって製品・部品・素材の耐久性、リユース、再製造やリサイクルを進め、経済の中で循環させる他、バイオ由来素材については経済システムと自然サイクル間を行き来させるビジネスであること。

  • 自然システムの再生

再生可能エネルギーの活用や土壌への養分還元など、非再生資源の使用を避け、再生可能資源を活用するビジネスであること。

サーキュラーエコノミーのイメージ

出典:経済産業省・環境省『循環型の事業活動の類型について』(2020.6.24)(p10)

リサイクルとの違いは?

いままで一般的に使われてきた「リサイクル」との違いは、製造の前段階で、廃棄物を生み出さないように設計されているという点であり、また使用を続けることによって自然資本を保護し、保存・増加につなげる考え方ということになります。

出典:経済産業省『サーキュラーエコノミーに係わるサスティナブルファイナンス促進のための開示対話ガイダンス(本文)』(2021.1)

2. サーキュラーエコノミーが注目されている理由

ビジネスにおいてこのサーキュラーエコノミーが注目されている点は大きく2つあげられます。

CO2排出削減に貢献

サーキュラーエコノミーは、現在世界的に拡がっている環境問題への取り組みである地球温暖化の原因とされるCO2の排出削減に大きく貢献する点です。IPCCの第6次評価報告書ではこのまま排出が進むと地球の大気気温上昇は2021年~2040年で1.5℃に達し、2100年には最大5.7℃の上昇となると予測されています。

出典:JCCCA『世界平均気温の変化予測』

サーキュラーエコノミーの推進団体である「Circle Economy」は2019年の温室効果ガス排出量591億トンのうち、サーキュラーエコノミーを2倍に推進することで2032年までに39%を削減できると発表しています。

出典:CIRCLE ECONOMY

市場の拡大に期待

EUでは2015年にサーキュラーエコノミーについて国際的な競争力の向上、持続可能な成長、新規雇用の創出を実現する産業政策として「サーキュラーエコノミー・パッケージ」を公表、また2020年には「サーキュラーエコノミー・アクションプラン」を公表して経済政策としてサーキュラーエコノミーに取り組んでいます。この流れに遅れることはEU市場での競争力の喪失、極端な場合EU市場からの締め出しにつながる恐れもあります。

出典:経済産業省『循環経済ビジョン2020』(2020.5)(p21)

これに対して日本でも2020年5月に今後の循環経済政策の指針として「循環経済ビジョン2020」を発表し、

  • 循環性の高いビジネスモデルへの転換

  • 市場・社会からの適正な評価の獲得

  • レジリエントな循環システムの早期構築

を今後の方向性として取り上げ、経済システムの転換を進めています。今後循環経済の市場は政府の後押しを受け拡大していくものと考えられています。

出典:経済産業省『循環経済ビジョン2020』(2020.5)

3. サーキュラーエコノミーに挑戦する企業事例の紹介 

企業がサーキュラーエコノミーに取り組む理由とは?

企業がサーキュラーエコノミーに取り組む理由として、グローバルな経済社会の変化があげられます。世界の人口比率の変化に伴う新興国の台頭によりパワーバランスの変化がおこり、世界的な資源需要が増加しました。それにより、地球温暖化が著しいスピードで進行しています。

SDGsやパリ協定の採択により、環境問題への国際協調の枠組が発展しているものの、状態は悪化している状況となっています。各国は今後企業に対しても環境問題についての取り組みを求めていくことになるでしょう。先鋭企業はいち早くこの市場に取り組み、市場規模の確保を図っているのです。

出典:経済産業省『循環経済ビジョン2020』(2020.5)

サーキュラーエコノミーへの取り組み事例

  • 三菱ケミカルホールディングス「KAITEKI Vision 30」

三菱ケミカルホールディングスでは、中長期的な経営ビジョンの中で高度なサーキュラーエコノミーの推進を掲げています。「人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと」をコンセプトに資本の効率化を重視する経営、イノベーション創出を追求する経営、サステナビリティの向上を目指す経営という3つの経営を実践し、企業価値を高めていくことをすすめています。

  • クボタ「クボタスマートインフラストラクチャシステム(KSIS)」

クボタだからこそできるサステナビリティとして、自然との調和、効率的な食料生産、社会インフラの整備、循環型社会の構築という4つの課題とそれらに対するソリューションを明示しています。IoTを活用した「クボタスマートインフラストラクチャシステム」をすすめ、技術発展や顧客ニーズの変化に合わせた事業展開を目指しています。

  • ファーストリテイリング「RE.UNIQLO」

ファーストリテイリングは「服のチカラを、社会のチカラに」というサステナビリティステートメントを掲げ、事業戦略の中核と位置付けています。顧客に長く愛用してもらえるように情報収集し、商品改良、生産数量の予想精度の改善、物流改革による生産、販売における無駄の削減、廃棄させない販売戦略など、社会のサステナビリティ向上に取り組んでいます。

  • キャノン「サーキュラーエコノミーに係わるリスクと機会を報告書で明示」

キャノンは環境ビジョン「Action for Green」の中で、低炭素社会実現への貢献、資源循環型社会実現への貢献、有害物質廃除と汚染防止、自然共生型社会実現への貢献を重点領域として設定し、統合報告書でもそれぞれの領域におけるリスクと機会を公表しています。

  • 伊藤忠商事「サステナビリティ推進室」

担当役員の下に設置されたサステナビリティ推進室で、全社のサステナビリティ推進のための施策の企画・立案を行い、取締役会で定期報告しています。2019年には経営幹部と外部有識者が参加する「循環型経済」をテーマとした「サステナビリティアドバイザリーボード」を開催、全社的な推進へ反映させています。

  • 三井化学グループ「気候変動・プラスチック戦略グループの設置」

三井化学グループでは、経営ビジョンに「地球環境との調和や材料・物質の革新と創出」を掲げ、2020年にESG推進室内に「気候変動・プラスチック戦略グループ」を新設、リサイクル戦略とバイオマス戦略の2つに注力しています。

  • 株式会社エフピコ「バリューチェーンでのSDGsへの取組」

株式会社エフピコは「地球環境の保全及び保護が最重要課題であるとの認識のもとに、環境と調和し持続的発展が可能な社会の実現に貢献すること」を環境の基本理念としており、自社のバリューチェーンを示し、各段階での自社の製品・サービスの提供内容を説明し、どのように社会問題の解決に貢献するかを示しています。

  • キリンホールディングス株式会社「リスクマネジメント体制・重要リスクの確定プロセスの開示」

キリンホールディングスではリスクマネジメント体制と重要リスクの確定プロセスの開示をしています。統合報告書ではPETボトル等のプラスチック容器がもたらすリスク及びそれに対応するための目標や、事業活動の設定を公表しています。国内PETボトル樹脂の内、リサイクル樹脂が占める割合を2027年目標で50%とし、プラスチックポリシーの策定や、リサイクル樹脂100%使用した「キリン生茶デカフェ」を発売といった取り組みをすすめています。

  • 株式会社セブン&アイホールディングス「GREEN CHALLENGE 2050」

セブン&アイホールディングスではサステナビリティに関わる重点課題を特定し、対応するリスク・機会・及びリスク低減と機会創出のための仕組みを公表しています。「GREEN CHALLENGE 2050」では容器の環境配慮型素材の使用率やプラスチック製品の使用量について、2030年の目標と2050年での目指す姿を示しています。

  • サントリーホールディングス株式会社「プラスチック基本方針」

サントリーホールディングスではマテリアリティを分析、重要課題に対応していくためのコミットメント及び取り組みを公表しています。「プラスチック基本方針」では、素材の移行に関する2030年目標値を示しています。また、使用済みプラスチックの再資源化事業に取り組む共同出資会社「株式会社アールプラスジャパン」への出資を行い、植物由来原料100%使用ペットボトルの実現に向けて技術開発に取り組んでいます。

出典:経済産業省『サーキュラーエコノミーに係わるサスティナブルファイナンス促進のための開示対話ガイダンス(本文)』(2021.1)

4. 【まとめ】サーキュラーエコノミーは進化したリサイクルへの考え方!

サーキュラーエコノミーはリサイクルを進化させ、設計段階から地球環境を意識し、環境問題に対応しながら企業経営を成り立たせる経済モデルとなります。

これからの全ての企業は環境問題への取り組みが必要となり、コストとしての考え方から企業発展のために環境対策を取り入れる考え方への変革が必要となるでしょう。自社でサーキュラーエコノミーについてどのように取り組むべきか、またどのような発展が望めるのか考えていきましょう。

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