環境債の発行が増加!なぜ、利回りが低いのに増加しているの?
- 2022年06月15日
- その他
2014年以降、アメリカや中国、欧州を中心に環境債の発行額が増加しています。環境債は普通債よりも利回りが低いにもかかわらず、なぜ投資家は環境債に投資するのかと疑問に思われているかもしれません。
この記事では環境債に関心のある法人の皆さまが知っておくべき、環境債に関する基本的な知識についてご紹介します。
目次
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世界で需要が高まる環境債とは?
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利回りが低いのに環境債の発行に注目が集まる背景
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【事例紹介】21年EUでは世界最大規模の環境債が発行
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まとめ:環境債の活用状況を理解し、今後の世界の動向を把握しよう!
1. 世界で需要が高まる環境債とは?
2014年にグリーンボンド原則が策定されたことをきっかけに、世界で環境債の需要が急激に高まりました。ここではそもそも環境債とはどのようなものなのか、世界における環境債の発行件数の推移についてご紹介します。
そもそも環境債とは?
環境債(グリーンボンド)とは調達した資金を環境対策事業(グリーンプロジェクト)に使うことを条件に、企業または地方自治体等が発行できる債権です。グリーンボンド原則では、4種類の環境債が定義されています。
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Standard Green Use of Proceeds Bond
環境対策事業を実施するために必要な原資を特定の財源から得るのではなく、発行体全体のキャッシュフローにおいて調達する目的で発行する環境債です。
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Green Revenue Bond
環境対策事業を実施することで得られる事業収入や公共施設の利用料、特別税などを原資として償還する環境債です。
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Green Project Bond
単一もしくは複数の環境対策事業によるキャッシュフローを原資として償還する環境債です。
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Green Securitized Bond
ソーラーパネルや省エネ性能の高い設備などを担保に、これらの資産から生まれるキャッシュフローを原資として償還する環境債です。
環境債の発行件数の推移
海外では2006年に国連責任投資原則が設立されたことにより、環境債の発行が普及していきました。日本では2010年から2012年にかけて国内機関投資家による私募SRI債投資が増加しています。
出典:環境省『グリーンボンド・グリーンローン等の国内・海外動向』(p.1)
2018年における世界全体での環境債の発行額は前年度比で3%増となる約1,670億ドル、欧州とアジア太平洋での発行額の増加が目立ちます。
出典:環境省『グリーンボンド・グリーンローン等の国内・海外動向』(p.2)
2018年の環境債の発行額上位を占めているのは、2017年と同様に1位がアメリカ、2位が中国、3位がフランスです。日本は10位ですが、年平均成長率順で見ると中国に次ぐ第2位です。
2. 利回りが低いのに環境債の発行に注目が集まる背景
世界では、環境債の利回りが普通債よりも低くなる、グリーニアム現象が発生しています。しかし、世界における環境債の発行額は増加しています。ここではグリーニアムとはどのような現象なのか、グリーニアムが起きているにもかかわらず環境債への投資が増加している理由についてご紹介します。
世界ではグリーニアム現象が発生
利回りが普通債権より低いにもかかわらず、企業や地方自治体等が発行した環境債を、投資家が購入するグリーニアム現象があります。現在、環境債の発行が活発な欧州を中心にこのグリーニアム現象が拡大しています。
出典:日経新聞『環境債、割高でも買う「グリーニアム」脱炭素後押し』(2021/5/24)
環境債の発行に注目が集まるのはなぜ?メリットについて
普通債より利回りが低いにもかかわらず投資家が環境債を購入する理由は、以下のようなメリットがあるためです。
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投資家としてのイメージが向上する。
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投資を通じて環境問題に貢献できる。
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分散投資によるリスク管理ができる。
3. 【事例紹介】21年EUで世界最大規模の環境債が発行
2021年10月にEUが世界最大規模となる15年物の環境債を発行しました。ここでは世界各国の環境債の発行事例についてご紹介します。
2021年にEUは15年物環境債を発行
2021年10月12日にEUの欧州委員会が、環境債として120億ユーロを調達したことを発表しました。日本円に換算すると約1兆5700億円になる環境債は、過去最大の発行額になります。EUは2026年末までに
最大2500億ユーロの環境債を発行する計画があることを示しており、今後世界全体の債券市場に大きな影響を与える可能性があります。
出典:日本経済新聞『EU、世界最大規模の環境債を発行 120億ユーロ』(2021/10/13)
中国はカーボンニュートラルに特化した環境債を発行
中国は環境債の発行額がアメリカに次ぐ世界第2位です。2021年2月に調達資金の使途をカーボンニュートラルに特化し、64億元、日本円に換算すると約1,000億円の環境債を発行しています。中国にとってカーボンニュートラルに限定した環境債は初の試みでしたが、国をあげて脱炭素に取り組む姿勢を見せているため、今後の活用の広がりに注目が集まっています。
出典:産経新聞『中国、環境債1千億円発行 温室効果ガスゼロに特化』(2021/2/18)
世界最大の起債国・アメリカ英国が初の環境債を発行
イギリスは2021年9月に初となる環境債を発行しました。環境債で集めた資金の使途を政府主導の気候変動対策に限定し、償還期限を2033年7月31日で、表面利率を0.875%に設定しています。環境債の発行額は100億ポンド(約1兆4,900億円)でしたが、実に1,014億ポンドもの応募が投資家から集まりました。この額は世界最大であることから、投資家の間でいかに環境債への関心が高まっているかがうかがえます。
出典:JETRO『英政府が初の環境債を発行、市場からは大きな反響(2021/9/28)』
4. まとめ:環境債の活用状況を理解し、今後の世界の動向を把握しよう!
この記事では、環境債について関心がある法人の皆さまが知っておくべき、環境債に関する基本的な知識をご紹介しました。EUや中国による大胆な新しい環境債
発行により、今後世界の債券市場にも影響を与えることが予想されています。世界における環境債の活用状況を理解することで今後の世界の動向を把握し、企業の経営方針のあり方をご検討いただければと思います。