補助金の支給もある!SHIFT事業とは

2021年より環境省主導のSHIFT事業という制度が始まりました。国内企業でも脱炭素化に向けた取り組みが広がってきましたが、この取り組みをさらに後押しするのがSHIFT事業です。

実は、SHIFT事業はどのように脱炭素化に向けて取り組めばいいか分からない企業や設備投資における資金面の不安がある企業にとって、外すことのできない制度なのです。今回はSHIFT事業の概要から、具体的な支援内容まで詳しく解説していきます。

目次

  1. SHIFT事業とは

  2. SHIFT事業の支援内容

  3. SHIFT事業の公募期間

  4. まとめ:来年度以降のSHIFT事業の公募に備えよう!

1. SHIFT事業とは

SHIFT事業とは、政府が閣議決定した「地球温暖化対策計画」を実現するための取り組みです。「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業」を英語表記(Support for High-efficiency Installations for Facilities with Targers)した頭文字を取ってSHIFT事業と呼びます。

SHIFT事業公募の背景

世界は地球温暖化による気候変動の影響が増しています。この危機を脱するため、国連気候変動枠組条約に関する締約国会議(COP)が開催され、2015年にパリで開かれたCOP21では、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑える努力目標が各国に求められているのです。

出典:環境省「パリ協定概要」

目標達成のためには、温室効果ガスの排出を減らすことが重要であるため、日本においても2020年10月26日に当時の首相である菅義偉内閣総理大臣が国会での所信表明演説にて、2050年までのカーボンニュートラル達成を宣言しました。

出典:首相官邸「第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説」

SHIFT事業の目的

SHIFT事業の目的は、「工場・事業場における脱炭素化取組の先導的な事例を創出し、その知見を広く公表して横展開を図り、我が国の中長期の温室効果ガス削減目標の達成に貢献すること」です。

出典:環境省「令和3年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業)の公募について」

地球温暖化の主たる原因である温室効果ガス、特に二酸化炭素の排出量は産業革命から人間の経済活動が活発化していくとともに増え続けています。

人為起源のCO2排出

出典:環境省「学ぼう!地球温暖化」

増え続ける二酸化炭素排出量を抑制するために、各国では2020年より相次いでカーボンニュートラル達成目標が示されてきました。前述の通り、日本も2050年までのカーボンニュートラル達成を宣言しています。これを達成するための手段の1つがSHIFT事業なのです。

日本の二酸化炭素排出量の内訳(間接排出量)は以下の通りです。

二酸化炭素排出量の内訳(電気・熱配分後)

出典:環境省「2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について」

この通り、産業部門が排出する割合が非常に高いため、工場や事業場の二酸化炭素排出量を抑制していくことでカーボンニュートラル達成に近づきます。SHIFT事業が「工場・事業場における脱炭素化取組の先導的な事例を創出し、その知見を広く公表して横展開を図ること」を目的としているのはそのためなのです。

2. SHIFT事業の支援内容

支援内容は「脱炭素促進計画の策定支援」「設備更新に対する補助」「CO2排出量の策定・取引、事例分析」の3つです。詳しく見ていきましょう。

脱炭素化促進計画の策定支援

何ごとも課題解決のためには計画を立てなければなりません。脱炭素に向けた取り組みも例外なくこれに当てはまります。かといって、見えない二酸化炭素の排出量の計算や目標値の設定方法はイメージがつかないと思います。

そこで、SHIFT事業の支援内容に「脱炭素化促進計画の策定支援」というものがあります。これは予め選定を受けた策定支援事業者を利用した場合に、以下の支援を行うものです。

  • CO2排出量削減余地の診断、脱炭素化促進計画の策定

  • 補助率:1/2 補助上限:100万円

※CO2排出量50t以上3000t未満の工場・事業場を保有する中小企業等が対象

出典:環境省「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業」

設備更新に対する補助

次に紹介する支援は、設備更新に対する補助です。脱炭素に向けた計画を立てても、いざCO2排出量の少ない設備を導入するには資金が必要となります。そこで、SHIFT事業では以下の支援が行われます。

  • 「脱炭素化促進計画」に基づく設備更新の補助(上限1億円)

計画に基づいて設備を導入した場合に、工場・事業場全体で15%、または主要なシステム系統で30%のCO2削減となる設備に対して、上限1億円として1/3の補助が行われます。

  • 次の①~③を満たす「脱炭素化促進計画」に基づく設備更新の補助(上限5億円)

①ガス化または電化等の燃料転換

②CO2排出量を4,000t/年以上削減

③システム系統でCO2排出量を30%削減

計画に基づいて上記①~③を全て満たす設備を導入した場合に、上限5億円として1/3の補助が行われます。

出典:環境省「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業」

CO2排出量の策定・取引、事例分析

設備更新に対する補助を受けた場合には、CO2排出量の検証を受けた上で排出枠取引に参加することとなります。これは、SHIFT事業に参加している企業全体でCO2排出量の取引を行うことにより、SHIFT事業という制度全体での確実なCO2排出削減目指したものです。
設備更新を行って排出量を大きく削減した場合は、目標未達成の企業に対してCO2排出枠を買い取ってもらうことが可能となるのです。

出典:環境省「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業」

3. SHIFT事業の公募期間

令和3年(2021年)よりSHIFT事業が開始されましたが、実はすでに公募期間は終了しています。しかし、来年度以降もSHIFT事業は継続されます。詳しく見ていきましょう。

2021年度はすでに募集終了

先に説明した脱炭素化促進計画支援事業は2021年5月28日~同年7月29日までの受付でした。また、設備更新補助事業についても2021年5月28日~同年6月29日で締め切られています。
設備更新補助事業は二次募集がありましたが、これも2021年9月1日~同年9月30日で募集を終了しています。

2022年度以降も公募を予定

では、来年度以降は実施しないかというとそうではありません。
環境省は2022年度の概算要求を財務省に提出していますが、その中には2022年度のSHIFT事業も含まれています。

2021年12月下旬までに閣議決定された後、2022年1月からの国会で審議されます。3月下旬までに国会で予算案が可決されるとSHIFT事業は継続となるのです。

出典:環境省「令和4年度(2022年度)概算要求 脱炭素化事業一覧」

4. まとめ:来年度以降のSHIFT事業の公募に備えよう!

持続的な経済活動のためには、地球温暖化による気候変動は大きなリスクでしかありません。人類はこの危機に一丸となって対応しなければならないのです。そのために政府も様々な制度を駆使して、企業に対して脱炭素化に向けた支援を行っています。

来年度のSHIFT事業に参加できるよう、今のうちから他企業の脱炭素化促進計画をチェックしたり、補助金が出る設備を調べるなどの情報収集を続けましょう!

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