【経営者必見!】脱炭素経営を実践すべき理由と今後アクションプラン
- 2022年06月15日
- SDGs・ESG
世界は「低炭素化」から「脱炭素化」へ舵を切っています。この流れは会社経営、団体の活動も例外ではありません。脱炭素経営を実践すべき理由はここにあります。温室効果ガス排出ゼロを目標とした世界の流れの中で脱炭素化を無視した企業活動は、今や時代遅れの烙印を押されてしまいます。逆に、積極的に脱炭素化に取り組む企業は、市場からは「環境分野において先進的」と評価されます。自社をアピールするチャンスなので、積極的に「脱炭素化」に取り組み、対外的にアピールしましょう。
また、「脱炭素化への取り組み」はSDGsの取り組みの一分野ですが、一つの取り組みにとどまらず、長期にわたり広範囲の活動が望まれます。その後どうするか。今後のアクションプランも解説します。
目次
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そもそも脱炭素経営とは?
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脱炭素経営に取り組む理由
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脱炭素経営を行うメリット
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脱炭素経営を行うデメリット
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脱炭素経営の具体的な実践事例
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今取り組むべき脱炭素社会へ向けたアクションプラン
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まとめ:コストをかけなくても脱炭素経営に取り組める
1. そもそも脱炭素経営とは?
脱炭素経営とは低炭素経営からさらに進んだ考え方で、会社経営に脱炭素化の考え方を導入することです。脱炭素化とは「少しでもCO2を出せば、地球の温暖化に歯止めはかからない。温暖化を止めるにはCO2ゼロ排出のみ」との考えから、「すべての国でCO2ゼロ排出に取り組む」ということです。
2015年まで、この取り組みは「低炭素化」の取り組みでしたが、2015年のパリ協定でさらにレベルの高い「脱炭素化」へと改められました。パリ協定では、地球温暖化を防ぐための世界的な取り組みが決定されました。世界の平均気温の上昇幅を産業革命前から2℃より十分に低くし、1.5℃までに抑えることを目標としたのです。
そして、上昇幅を1.5℃未満に抑えることを目標とした場合、2050年頃までに温室効果ガスゼロ排出を実現しなければなりません。
脱炭素経営では、エネルギーの需要側面と供給側面の双方で両輪のごとく脱炭素化に取り組むことが重要です。
需要側面つまりエネルギーを使う立場での脱炭素化には、例えば「使わないときにはこまめにスイッチを切る」といった手動的な取り組みや、「人感知センサーを利用して、人がいなくなったら自動的にスイッチを切る」といった積極的な節エネ方法の導入が挙げられます。
また、エネルギーを供給する側の脱炭素化には、「化石燃料エネルギーの代替として再生可能エネルギーを供給する」といった取り組みがあります。
それでは、脱炭素化に向けた世界各国、そして日本の動きを確認していきましょう。
①脱炭素社会に向けた世界の目標
ここでは世界的に巨大な市場を持つアメリカ合衆国、環境問題に関心が高いといわれているEU、中国の取り組みを紹介します。
・アメリカ合衆国
アメリカは「2025年までに、2005年と比べて温室効果ガス排出量を26~28%削減する」という目標を掲げていましたが、共和党トランプ大統領は2017年にパリ協定からの離脱を表明しました。しかし、2021年1月に民主党バイデン新政権が誕生し、パリ協定の復帰を表明しました。今後、各政策での協調路線への復帰が期待されます。
・EU※1
EUの削減目標は「2030年までに1990年と比べて温室効果ガス排出量を国内で少なくとも55%削減する」としています。
・中国※2
中国は今や世界最大のCO2排出国です。「2060年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」という長期目標を表明し、堅持しています。
主要国の削減目標(2021時点)
出典:各種報道資料を元にアスエネが作成
このように、各国ともに2050年頃の温室効果ガスゼロ排出に向けて高い目標を掲げています。特に世界最大の温室効果ガス排出国である中国は削減目標値を60%以上と高く設定しています。経済的にまだまだ力をつけていくであろう国々が地球環境を最優先に考えています。
※1出典:EU MAG「EU、2030年までの排出量55%以上削減をパリ協定の国別貢献として提出」(2020.12.24)
※2出典:日本経済新聞「中国のCO2排出、60年までに実質ゼロへ 習主席表明」(2020.9.23)
②脱炭素社会に向けた日本の目標
世界各国で脱炭素化に向けての取り組みが表明され、進められていますが、日本はどのような状況でしょうか。
日本は「2030年までに、2013年と比べて温室効果ガス排出量を46%削減する」との目標を掲げています。この目標の達成のため、法整備や計画の策定など、国を挙げて取り組んでいます。
出典:首相官邸『地球温暖化対策推進本部』(2021年4月22日)
2. 脱炭素経営に取り組む理由
脱炭素経営に取り組む理由は冒頭でもふれたように、温室効果ガスの影響で地球温暖化が進む中、地球の未来のために温暖化を止めることです。この社会の動きには企業も同調を強く求められています。
新型コロナウイルス感染症の影響によるダメージを受けている経済界ですが、地球温暖化への取り組みは今や世界的なトレンドであり、市場から評価され、新しいビジネスチャンスにもつながります。
脱炭素経営に対応しないことによるリスクとは
もし、脱炭素化経営を無視して経営を進めていくとどのようなことにになるのでしょうか。世界的な流れとして脱炭素に取り組む中で、気になるポイントごとに解説します。
たとえ世界の潮流でも、国内向けのビジネスなら脱炭素に取り組まなくても問題ない?
→そんなことはありません。「②脱炭素社会に向けた日本の取り組み」でも示した通り、日本国内も対策が進んでいます。事務機器、光学機器などを製造する株式会社リコー(2050年に100%再生可能エネルギー 調達を目指す)、事務用品を中心とした通販会社のアスクル株式会社(2030年に100%再生可能エネルギー 調達を目指す)といった日本を代表する企業も脱炭素化を表明しています。
また、市場の会社に対する見方が変わってきます。市場は「対策を行って当然」との認識ですから、「何もしない=0(今までと同じ評価)」ではなく、「何もしない=マイナス評価(環境面で遅れている企業)」と受け止められます。
我が社の事業は直接CO2を出すような仕事じゃないから関係ない?
→そんなことはありません。例えば、小売業は商品を販売するお仕事ですが、扱う商品はCO2と大きくかかわっています。フィンランドのスーパーでは商品の製造・輸送等で生じたCO2排出量に応じて価格が決められます。消費者は決められた金額内で買い物を済ませるため、必然的に低炭素商品を多く選ぶことになります。
ここでは商品の生産から流通にかかわるまでの炭素排出量が商品の価格に加えられるため、CO2排出量の多い商品は消費者から選んでもらいにくくなるリスクがあります。
出典:IDEAS FOR GOOD「カーボンフットプリントに応じて食品の値段が変わる、スウェーデンのスーパー」
3. 脱炭素経営を行うメリット
脱炭素経営を行うメリットとは何でしょうか。市場の関心事が「脱炭素化」であることは先に述べました。取り組む企業は市場からの企業イメージが上昇し、結果として企業の業績を引き上げてくれる材料になり、企業にとって間接的なメリットとなります。
一方、脱炭素化経営で直接企業が得られるメリットもあります。
(1)エネルギーコスト削減が見込める
企業にとって電気エネルギーは非常に重要なエネルギーです。日本ではエネルギー資源が少なく、大部分を輸入に頼っていて、そのほとんどが化石燃料です。それを、たとえば太陽光発電システムを導入して自家消費とすると、「電気料金の削減」、「電気料金上昇リスクの回避※1」、「余った電力を売電できる※2」などコスト面のメリットがあります。
※1:毎月の電気代には再エネ賦課金が加算されています。再エネ賦課金は、環境省によると2030年ごろをピークに2048年ごろまで続く見通しです。再エネ賦課金は電力会社が再生可能エネルギーを買い取るときに使用されます。
出典:環境省「再生可能エネルギーの導入に伴う効果・影響分析」
※2:余剰売電型の場合
(2)脱炭素経営の企業であるとマーケットに訴求できる
例えば米国のアップル社は、自社の製造工程の再エネ転換を進め、さらにはサプライヤー(メーカーに部品等を納入する業者)にも再エネの利用を求めています(サプライヤー・クリーンエネルギープログラム)。アップル社の場合、日本企業を含むサプライヤーがサプライチェーンでクリーンエネルギーを調達することを確約しています。これは、アップル製品製造時の約1/3の消費電力に相当します。
このように、大手企業がESGの推進を打ち出せば、関係する中小企業にも対応を求められてくる可能性は高くなりますし、同種企業であれば脱炭素に積極的なな企業が優先採用されるといったケースも出てきます。
トヨタ自動車株式会社も、サプライヤーの選定において、環境問題など社会的責任に対する取り組みを総合的に勘案するとしています。
出典:黒川文子「自動車メーカーのESG経営と企業価値創造」(2017)
(3)求職者に選ばれやすい企業になる
脱炭素の活動は、人材採用の面でもメリットがあります。今やSDGs/ESGの観点は、就活生や転職者の企業選びの基準になりつつあるのです。
日本総研の発表によると、環境問題や社会課題に取り組んでいる企業で働く意欲がある若者は全体で47.2%となり、大学生に関しては55.3%に上っています。
日本総研『若者の意識調査(報告)―ESG およびSDGs、キャリア等に対する意識 ―』(2020 年8 月13 日)を元にアスエネが作成
また、海外に住んだ経験のある若者では70.8%が意欲があると回答しており、国際的な活動経験や、情報感度が高い若者ほど、企業選びの基準に環境への取り組みを重視する傾向が読み取れます。
優秀な人材の確保は多くの企業の課題となっていますが、その面でも脱炭素の活動がメリットとして働くのです。
4. 脱炭素経営を行うデメリット
脱炭素経営を行う上でメリットばかりではありません。デメリットはどのようなものがあるでしょうか。
(1)初期投資・維持費のコストがかかる
脱炭素の一環として、太陽光発電など再生可能エネルギー発電設備の導入や、グリーン購入などの取り組みが注目されています。
しかし、このような取り組みは多くのコストがかかり、中小企業にとって重い負担となります。また、定期的な設備の点検や売電契約など、設備の維持にコストが嵩む場合もあります。
(2)既存顧客とのビジネス上の関係の変化
脱炭素の取り組みでCO2 削減を検討する際に、直接的な事業の排出量の他にも「電力」「社用自動車」「サプライチェーンのCO2排出量」が注目されます。
しかし、企業によってはCO2排出量が多いものの、懇意にしている電力会社や仕入れ先が多数あり、脱炭素に取り組もうとすると、その関係の見直しを検討しなければならない場合もあります。
この場合、利益だけでは測れない関係性など、企業によって事情が異なるため、経営者が総合的に判断する必要があります。
5. 脱炭素経営の具体的な実践事例
株式会社大川印刷(神奈川県横浜市)
同社は印刷会社ですが、敷地内に太陽光電池の製造・販売を手掛ける他社の所有する太陽光パネルを設置、そこで発電した電力を太陽光パネルのメーカーから購入しています。
つまり、「初期投資0円太陽光パネル設置事業」として初期投資なしで太陽光パネルを設置できたのです(設置した発電設備は同社のものではありません)。発電容量は同社工場で使用する電力の20%の規模で、製造メーカーは契約期間17年間の期間中に設置・維持管理に係る費用を回収します。また、同社では残る80%の電力を電力会社を通じて風力発電所から購入し、使用電力の脱炭素化を実現しています。
総天然素材革工房 革榮(千葉県長生郡睦沢町)
同工房は電力の自給自足を目指し、13kWの太陽光パネルを設置しV2H※を導入しました。日中、自家消費以外の余剰電力は電気自動車に充電され、夜間には電気自動車からV2Hを介して住宅へ給電されます。余った電力は売電し、トータル12.5年でコストは回収できる見込みです。
※:V2H:「Vehicle to Home/車から家へ」で、車の電気エネルギーを家庭で使用するための設備。最近の相次ぐ災害で注目を受けている。
このように、多くの企業は電力面で脱炭素に取り組んでいます。製造メーカーの設備を自社内に設置し、発電電力を買い取る方法は初期投資がかからない素晴らしい方法であり、V2H設備は災害時にも有効に活用でき、今後広まっていくものと思われます。また、賃貸オフィスという限られた環境の中で鋭意ESGに取り組む企業もあります。
6. 今取り組むべき脱炭素社会へ向けたアクションプラン
目指すゴールが低炭素化社会から脱炭素化社会へ変わった今、2050年には温室効果ガス排出ゼロとしなければなりません。そのための助走として、今出来ることを至急且つ最大限行うことが求められます。
産業革命以来、地球表面温度は1℃上昇しており、伴って貴重な生物の絶滅、自然破壊や海面上昇、気候変動などが表面化しています。そこで、産業革命前に比べて気温上昇を2℃以内に、さらにはより被害が少ない1.5℃までに留めようというのが脱炭素化を必要とする理由です。
まずは比較的取り組みやすい、使用電力の再生可能エネルギー電力への切り替え、自社へ再生可能エネルギー発電設備の設置などから始め、企業活動全体を包括的にCO2を排除する方向に改善する必要があります。もちろん、ベストな省エネは大前提です。
出典:地球環境研究センター「脱炭素社会はなぜ必要か、どう創るか」
7. まとめ:コストをかけなくても脱炭素経営に取り組める
低炭素化社会から脱炭素化社会への流れとこの時代の企業の取るべき対応、その事例について説明しました。意欲的な脱炭素経営への切り替えは難しいことです。何もしなくとも、今日も明日も変わらず過ごせるからです。
しかし、私たちの目に届かないところで毎日数万人の難民が飢餓で亡くなり、海面上昇・異常気象で住居を失っています。
現在、中小企業が取り組める活動は次の3点です。
(1)脱炭素化経営を宣言する
現在はRE ActionやSBTといった、中小企業向けの脱炭素イニシアテブが増えています。企業の短期・中期目標に掲げることで、脱炭素化経営を市場にアピールするとともに、目標に応じた外部からの情報や支援も広く受けることが可能になります。
中小企業の脱炭素経営の主要な枠組み
※パリ協定:世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準(Well Below 2℃)に抑え、また1.5℃に抑えることを目指す協定
出典:環境省・経済産業省 「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム 国際的な取り組み」を元にアスエネが作成
(2)初期投資費用0の自家消費型太陽光発電の設置
導入事例で紹介したとおり、初期投資0で太陽光発電設備が設置可能です。電気代の上昇リスクも回避できます。
(3)再エネ電力への切り替え
電気料金のプランを見直すだけで切り替え可能です。
上記のように、コストをかけなくても脱炭素経営に取り組むことは可能です。これらをきっかけにして、脱炭素経営を拡充することが今の経営者に求められる重要な経営戦略です。
変化を前向きに捉え、取り組みをアピールし、貴社の「地球を大切にする想い」を広く認めてもらいましょう。