火力発電の主力燃料LNGとは?メリットやデメリット、今後の課題など

火力発電所

日本が使用している火力発電の中で、最も割合が多いのがLNG(液化天然ガス)火力発電です。石油や石炭と比較するとCO2排出量が少なく、発電効率も高いため、再生可能エネルギーの不安定さを補う電源として日本ではさらなる技術開発が進んでいます。

この記事では、LNG火力発電がどのような電源であるのか理解を深めたい法人の皆さまが知っておくべき基本的な知識やメリット・デメリットなどについてご紹介します。

目次

  1. LNG(液化天然ガス)に関する基礎知識

  2. LNG火力発電のメリット

  3. LNG火力発電のデメリット

  4. まとめ:LNGへの理解を深め、企業での脱炭素への取り組みを検討しよう!

1. LNG(液化天然ガス)に関する基礎知識

日本の電源構成を占める火力発電の中で、最も割合が高いのがLNGです。ここではLNGとはどのような燃料であり、現在電源構成を占める割合や2030年度の割合目標はどのように定められているかをご紹介します。

LNG火力発電とは?

LNG火力発電とは、LNGを燃料とする発電を指す用語で、Liquefied Natural Gasを略したものです。また、LNGは液化天然ガスとも呼ばれています。*液化天然ガス:約マイナス162℃まで冷却し液体化したもの

出典:資源エネルギー庁『LNGを安定的に供給するための取り組み』(2017/12/5)

LNG火力発電が占める割合

日本の2020年度における電源構成は以下の通りで、LNGの割合が最も多いです。

  • 石炭 26.7%

  • LNG 35.9%

  • 石油 2.3%

  • その他火力 10.2%

  • 原子力 3.7%

  • 水力 7.8%

  • 太陽光 8.9%

  • 風力 0.9%

  • 地熱 0.3%

  • バイオマス 3.4%

発電割合

出典:isep『【速報】国内の2020年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況』(2021/7/27)

日本の今後の電源割合目標

2050年までのカーボンニュートラル実現を目標に掲げる日本は、2030年度の野心的な電源割合目標を以下のように定めています。

  • 再生可能エネルギー 36〜38%

  • 水素・アンモニア 1%

  • 原子力 20〜22%

  • LNG 20%

  • 石炭 19%

  • 石油等 2%

日本は再生可能エネルギーを最大限に導入し、LNGを含む火力発電割合を削減する方針を固めています。

出典:経済産業省『エネルギー基本計画(素案)の概要』(2021/7/21)(p.12)

2. LNG火力発電のメリット

LNGによる発電は、石油や石炭と同じ火力発電に分類されていますが、火力発電の中では最もクリーンな電源であると言われるなど、LNGならではのメリットがあります。ここではLNG火力発電のメリットについてご紹介します。

火力発電燃料の中で最もCO2排出量が少ない

LNGは石炭や石油と比較するとCO2排出量が最も少なく、ライフサイクルで見てもCO2排出量が少ないのが特徴です。環境省によると燃料の種類別の排出係数は以下の通りです。

  • 原料炭 0.0245tC/GJ

  • 一般炭 0.0247tC/GJ

  • 原油 0.0187tC/GJ

  • ガソリン 0.0183tC/GJ

  • ジェット燃料油 0.0183tC/GJ

  • 灯油 0.0185tC/GJ

  • 軽油 0.0187tC/GJ

  • 重油 0.0189tC/GJ

  • LNG 0.0135tC/GJ

2050年までにカーボンニュートラル実現を目標として掲げる日本は、再生可能エネルギーを最大限に導入する方針を固めています。しかしながら再生可能エネルギーには天候によって発電量が左右されるという一面があります。再生可能エネルギーの不安定さを補う電源として、CO2排出量が少ないLNGが注目されています。

出典:環境省『燃料別の二酸化炭素排出量の例』

出典:資源エネルギー庁『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』(2019/6/27)

出典:資源エネルギー庁『【インタビュー】「日本のノウハウを生かし、LNGの国際市場をリードする存在に」-広瀬 道明氏(後編)』(2019/8/22)

高効率の発電

日本におけるLNGの発電効率は、世界最高水準にあり、発電をさらに上げるためにイノベーションに取り組んでいます。イノベーションには、次世代技術として期待される石炭ガス化燃料電池複合発電や高効率ガスタービンなどがあります。

出典:資源エネルギー庁『第1節 高効率石炭・LNG火力発電の有効利用の促進』

3. LNG火力発電のデメリット

火力発電燃料の中では最もグリーンな燃料であり、発電効率も高いことから注目を集めているLNGですが、デメリットもあります。ここではLNGが抱える3つのデメリットについてご紹介します。

輸入依存率が高い

天然資源に乏しい日本は世界最大のLNG輸入国であり、2020年時点におけるLNG輸入割合は以下の通りです。

  • 日本 20.9%

  • 中国 19.3%

  • 韓国 11.3%

  • インド 7.3%

  • その他 41.2%

輸入依存率が高いことは、輸送にかかるコストが高いことを意味しています。また国際情勢の影響を受けやすいため、資源を安定して供給できるかが課題となります。しかしながら、石油と比較すると供給は安定しています。

LNGの輸出国と輸入国 円グラフ

出典:日本経済新聞『LNGとは 脱炭素で注目、石炭より環境負荷少なく』(2021/10/6)よりアスエネ作成

CO2を全く排出しないわけではない

石油や石炭と比較すると、LNG火力発電の場合、燃焼時に排出されるCO2は少ないです。しかし、再生可能エネルギーのようにCO2を全く排出しないわけではないため、LNG火力発電に頼りすぎると温暖化を引き起こすリスクがあります。

地震のリスクが高まる

石炭やLNGの人為的な過剰採掘が原因となる地震が世界各国で発生するリスクが懸念されています。LNGを採掘する時に利用される水圧破砕法という技術が問題視されています。水圧破砕法とは、天然ガスが存在する地層に圧縮した液体を流し込み、圧力をかけることで人工的に割れ目を作り、天然ガスを流れやすくするための技術です。

水圧破砕法により、注入した液体が天然ガスを地表に押し上げる際に、化合物が含まれる地下水が大量に排出し、地下から出た排水量が5〜10倍に膨れ上がることで地震が発生します。また、注入される水の量が増えるほど、ただでさえストレスがかかっている断層の間隙水圧がますます上昇します。これにより通常はしっかりと固く接着している断層面が滑りやすくなり、その結果地震が発生するリスクが高まります。

出典:資源エネルギー庁『第1節 米国の「シェール革命」による変化』

4. まとめ:LNGへの理解を深め、企業での脱炭素への取り組みを検討しよう!

この記事では、火力発電の中では最もクリーンなLNG火力発電に関する基本的な知識についてご紹介しました。環境に優しく供給も安定していることから2030年度の目標割合は、火力発電の中で最も多く設定されています。LNGへの理解を深め、企業がどのように脱炭素に取り組むか検討につなげていただければと思います。

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