世界で異常気象頻発!2021年の異常気象対策で活躍する日本企業

夜の雷

ここ数年にわたり、世界各地でこれまでの記録を更新するような異常気象が報告されています。集中豪雨、極度の乾燥、高温など、多くの地域でこれまでにない異常気象が発生しています。

日本でも地域によっては、大雨、高温、大雪などで深刻な被害を受けています。世界で最近報告された異常気象を知り、今後、私たちがどういった行動を選択するべきかを考えてみましょう。

目次

  1. 世界で2021年に起こった異常気象

  2. 世界は異常気象対策に動いている

  3. 世界で活躍する日本企業の異常気象対策技術

  4. まとめ:異常気象への対応という新しいニーズ

1.世界で2021年に起こった異常気象

異常気象とは

気象庁では、異常気象を原則として「ある場所(地域)・ある時期(週・月・季節)において30年間に1回以下の頻度で発生する現象」と定義しています。気候災害も異常気象に含む場合があります。

異常気象とは一般に、これまでに経験した気候現象から大きく外れた現象で、人が一生の間に稀にしか経験しない現象を指します。異常気象には大雨や強風など、激しい短期間の現象から、極端な冷夏・暖冬などや数か月も続く干ばつなど、長期間の現象を含みます。

出典:気象庁『「世界の異常気象」に関する解説』

ヨーロッパ中部の洪水

ドイツやベルギーを中心としたヨーロッパ中部では、2021年7月12日から15日頃の大雨により広範囲で洪水が発生し、190人以上が亡くなりました。この大雨の原因は、ヨーロッパ中部の上空で寒気を伴った低気圧が停滞したことと考えられます。

ドイツ西部のリューデンシャイトでは、2021年7月14日の1日間で、143.0mmの降水量を観測しました。この地域での7月の平年の月降水量が97.1mmなので、その約1.5倍の雨が1日で降ったことになります。

リューデンシャイトの降水量

出典:気象庁『世界の異常気象速報 ヨーロッパ中部の洪水について』(2021年7月)

北半球の高温

2021年6月から夏にかけて、北半球では顕著な高温が続きました。特にヨーロッパ東部からロシア西部、東シベリア、カナダ西部からアメリカ北西部では、各地で最高気温の記録が更新されました。

カナダ気象局によると、カナダ西部のリットンでは2021年6月29日に日最高気温49.6℃を記録しました。この記録はカナダにおける最高気温の記録を更新しました。

その他、ロシアのモスクワでは6月23日に34.8℃、ロシア東部のビリュイスクでは6月22日に36.5℃、アメリカのオレゴン州ポートランドでは6月28日に46.7℃を記録し、日最高気温が記録されました。これら一連の顕著な高温は、北半球全体で偏西風の蛇行が大きくなったためと考えられます。
※偏西風の蛇行:対流圏上層の亜熱帯ジェット気流が南下し、平年より蛇行する現象。亜熱帯ジェット気流の南下には熱帯の海面水温の変動とそれに関連したモンスーン(季節風)活動の変動が影響していると考えられる。

2021年6月20日~29日における10日間で平均した日最高気温(単位℃)

出典:気象庁『世界の異常気象速報 北半球の顕著な高温について』(2021年7月)

アメリカ南西部の少雨

アメリカ南西部では、広い範囲で昨年から平年の降水量よりも雨の少ない状況が続きました。アメリカ海洋大気庁によると、2020年5月から2021年4月の12ヶ月間の降水量は、5月から4月の降水量としては、1895年以降で記録的に少ない状況でした。

2020年5月から2021年4月の降水量は、カリフォルニア州サンフランシスコで平年の約38%にあたる191mm、アリゾナ州フェニックスでは平年の約34%にあたる64mmでした。過去12ヶ月間の降水量を元に算出した、乾燥の程度を表す指標(標準化降水指数:SPS)で見ると、50年に一度以下の極端な乾燥となった地域が複数ありました。

12か月間降水量平年比の分布図(2020年5月~2021年4月の降水量から算出)

出典:気象庁『世界の異常気象速報 米国南西部の少雨について』(2021年6月)

異常気象の影響は日本でも深刻

日本でも2020年7月3日から31日にかけて、各地で大雨となり人的被害や物的被害が発生しました。翌年の2021年8月中旬から下旬にかけても大雨が降り、西日本では日本海側・太平洋側ともに1946年の統計開始以降、8月として最も多い月降水量を記録しました。

令和2年7月豪雨の被害の様子

出典:環境省『令和3年版 環境白書 2節 気候変動問題の影響』(2021年6月)

2021年8月の記録的な大雨は西日本の日本海側で平年比の371%、西日本の太平洋側で平年比の297%もの降水量を記録しました。東日本でも太平洋側では平年比の219%も降水量を記録し、1946年の観測開始以降2番目となる大雨でした。

月降水量の多い方から3年までの観測年と平年比(8月)

出典:気象庁『令和3年8月の記録的な大雨の特徴とその要因について』p.1,p.4(2021年9月)

2.世界は異常気象対策に動いている

世界の異常気象の現状は深刻です。地球温暖化が大きな原因とみられるこの異常気象は、国際商品価値の上昇、サプライチェーンの混乱、難民の増加など、経済にも影響を与えています。

IPCC(国連による気候変動に関する政府間パネル:Intergovernmental Panel on Climate Change)による報告書から、科学的研究をまとめて導き出された、気候の現状と問題解決に必要と考えられる対策を確認しましょう。IPCCでは何千人もの科学者による気候変動に関する研究成果をまとめ、国際的に必要と考えられる政策を示しています。

出典:IPCC『IPCCについて』

IPCCの見解

IPCC(地球温暖化に関する国連の科学的見地による報告書)が、7年ぶりに2021年8月9日、新報告書「第6次評価報告書」の第1弾を発表しました。この報告書では、気候の現状に関して以下のことが指摘されています。

  • 人間の影響が、大気・海洋・陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない

  • 大気・海洋・氷雪圏・生物圏において広範囲かつ急速な変化が表れている

  • 気候システム全般に渡る最近の変化の規模と、気候システムの現在の状態は、何世紀も何千年もの間、前例のなかったものである

  • 人為的起源の気候変動は、世界中の全ての地域で、多くの気象・極端な気候現象に既に影響を及ぼしている

出典:経済産業省『気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書』p.1(2021年8月)

IPCCによる地球温暖化に関する評価

出典:金融庁『事務局参考資料』(2021年9月)p.21

2030年までの対策の重要性

IPCCは2021年8月の報告書で、自然科学的見地から、人為的な地球温暖化を特定の水準に制限するには、CO2の累積排出量を制限し、少なくともCO2正味ゼロ排出(カーボンニュートラル)を達成し、他の温室効果ガスも大幅に削減する必要があると明示しています。CH4(メタン)排出の大幅で迅速かつ持続的な削減も、大気汚染減少にともない地球温暖化効果を抑制し、大気質の改善につながることも指摘されています。

出典:気象庁『IPCC 第 6 次評価報告書 第 1 作業部会報告書 気候変動 2021:自然科学的根拠』p.33(2021年9月)

2030年に温室効果ガスの排出が少なくなっているほど、2030年以降に地球温暖化を1.5℃に抑えるための課題が少なくなります。温室効果ガス排出削減の対策が遅れることにより生じる課題は、費用増大のリスク、炭素排出型インフラのロックイン(固定化)、座礁資産、中長期的な将来の対応策の選択肢が減少することなどが考えられます。

※ロックイン:(lock-in)現在の製品やサービス、技術などから別の同種のものへの転換が困難な状態

※座礁資産:市場・社会の環境が激変することで投資額の回収ができる見通しが立たなくなった資産

1.5℃の世界におけるエネルギー需要と供給のイメージ画像

出典:環境省『環境省における気候変動対策の取組』p.11(2020年9月)

3. 世界で活躍する日本の異常気象対策技術事例

雨水貯留システムによる水害の制御・水不足解消

積水化学工業株式会社の雨水貯留システムによる水害被害の抑制と水不足の解消の例を見てみましょう。インドでは慢性的な水不足により、工場建設の際には雨水を貯留する設備の設置が義務付けられています。

積水化学工業株式会社の開発した再生プラスチックを利用した雨水貯留システム「クロスウェーブ」は、豪雨の際は洪水の防止に貢献し、また雨水を貯めて雨水利用層として活用されています。2010年に海外での販売を開始し、2020年には国内外で10,000件以上の販売実績があります。

クロスウェーブを設置している様子

クロスウェーブ

クロスウェーブは気候変動や気候激甚化などの対応に貢献できる「環境貢献製品」とされています。積水化学工業株式会社は世界フォーラム(WEF)が7,500社を評価する「Global 100 Index」において、2018年から3年連続で「世界で最も持続可能性のある企業100社」のひとつに選出されています。

出典:経済産業省『日本企業による 適応 グッド プラクティス 事例集』p.73,p.74( 2021年3月)

山火事による動植物への影響を軽減

シャボン玉石けん株式会社は、化学的に合成された界面活性剤を一切使わない天然系界面活性剤を使用した、環境にやさしく消化能力の高い石けん系消火剤を開発しました。シャボン玉石けん株式会社は、1910年創業、1974年より化学物質や合成添加物を一切含まない無添加石けんの製造・販売を行っている企業です。

石けん系消火剤『ミラクルフォーム』

石けん系消火剤『ミラクルフォーム』

出典:環境省『7回グッドライフ第アワード 環境大臣賞 企業部門 世界初! 環境にやさしい石けん系消火剤でインドネシアの森林を守る』

この石けん系消火剤は、水と空気と混ぜ合わせて泡状にして使用することで、水のみの消火に比べ少ない水量で、より素早い消化を可能にしました。2015年よりインドネシアで販売を開始し、乾季に頻発する森林火災の現場で、火災により生じる泥炭からの煙害の減少、消化による森林保護による動植物の生息域の保全に貢献しています。

石けん系消火剤を利用している様子①

石けん系消火剤を利用している様子②

出典:環境省『7回グッドライフ第アワード 環境大臣賞 企業部門 世界初! 環境にやさしい石けん系消火剤でインドネシアの森林を守る』

石けん系消火剤は主成分が毒性の低い石けんから作られ、使用後の分解速度が速いだけでなく、自然界にあるミネラル分と結合して界面活性作用が失われるため、生態系への影響も低いのが特徴です。森林火災だけでなく、建物の火災においても泡切れが良く、改めて洗い流す必要がない点も高く評価されています。

出典:経済産業省『日本企業による 適応 グッド プラクティス 事例集』p.55,p.56( 2021年3月)

4. まとめ:異常気象への対応という新しいニーズ

世界は急速に脱炭素社会への移行を目指し、CO2排出量の削減、資源の有効利用、バイオマスや水素などの新エネルギーの開発を推進しています。しかし、今すぐ世界のCO2排出量がゼロになったとしても、地球温暖化はすぐには止まりません。

日本を含めた世界中で今後も異常気象が起こることが予想されています。それぞれの地域が、すぐには止められないこの気象の猛威に対策する必要があります。

【地域の防災・減災と低炭素化の同時実現】と【脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏の構築】のイメージ画像

出典:環境省『環境省における気候変動対策の取組』p.28(2020年9月)

異常気象を予測し、対策する必要はどこにでもある

日本も含めた世界で起こっている異常気象を知ることにより、企業にとって新たな市場が見える可能性もあります。世界で起こっている異常気象は地域によりさまざまな形で人々の生活に影響を与えており、対策が求められているからです。

また、自社の将来へのリスク対策としても、昨今の異常気象の現状や、今後の気候変動により予測されることを知っておく必要があります。誰にとっても他人ごとではない異常気象について、今後も情報を確認して、自社のリスクへの耐性を高めるとともに、新たなビジネスの機会の創出にも役立てましょう。

資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説