CO2排出実質ゼロ!カーボンニュートラルとは?企業例も紹介

緑と空

日本は2020年10月のカーボンニュートラル宣言により、国や自治体、企業を主体とするCO2排出量実質ゼロを目指す脱炭素の取り組みが加速しています。この記事では、カーボンニュートラルの意味や必要性、国の政策や企業での取り組み例などをご紹介します。カーボンゼロの取り組みに関心のある法人の皆さまは、ぜひご一読ください。

目次

  1. CO2排出実質ゼロのカーボンニュートラルとは

  2. なぜカーボンゼロを目指す必要があるのか

  3. カーボンゼロ実現に向けた国の政策

  4. カーボンゼロを目指す企業の取り組み

  5. まとめ:カーボンゼロの政策や取り組みを理解し、企業も取り組もう!

1. CO2排出実質ゼロのカーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルとはそもそもどのような意味を持つ用語なのでしょうか。カーボンニュートラルの意味や紛らわしいネットゼロという用語との違いについてご紹介します。

カーボンニュートラルの意味

日本においてカーボンニュートラルという用語は、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという意味で使用されています。事業活動で排出される温室効果ガスのほどんどをCO2が占めているため、温室効果ガス排出量実質ゼロではなくCO2排出量実質ゼロと表現されることもあります。日本の2019年度の温室効果ガス排出量は12億1,300万トンで、内訳は以下の通りです。

  • CO2 91.2%

  • メタン 2.5%

  • 一酸化二窒素 1.7%

  • ハイドロフルオロカーボン類 4.2%

  • パーフルオロカーボン類 0.3%

  • 六ふっ化硫黄 0.2%

  • 三ふっ化窒素 0.02%

日本は、CO2実質ゼロを実現させるために主に4つの方法を組み合わせる方向性を示しています。

  • 徹底した省エネルギー

  • 脱炭素電源の拡大と非電力部門におけるCO2排出原単位の低減

  • 非電力部門の電化

  • ネガティブエミッション技術の活用

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(後編)~なぜ日本は実現を目指しているの?』(2021/3/16)

我が国の温室効果ガス排出量のガス種別内訳 円グラフ

出典:環境省『温室効果ガス排出の現状等』(p.12)

カーボンニュートラル・カーボンゼロ・ネットゼロの違い

脱炭素に関する文章を読むと、カーボンニュートラルやカーボンゼロ、ネットゼロなど似たような用語が出てくるが、違いが分からないとの声を聞くことがあります。

実は、カーボンニュートラルとカーボンゼロ、ネットゼロはほぼ同じ意味で使われています。環境省はカーボンニュートラルとネットゼロの違いについて次のように説明しています。「カーボンニュートラルとは温室効果ガス排出を全体としてゼロにすることである。排出を全体としてゼロにするという言葉は、ネットゼロや実質ゼロと同じ意味である。」

出典:日経新聞『カーボンゼロとは 温暖化ガス減らし排出量実質ゼロに』(2021/1/4)

出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る 10の質問」』

2. なぜカーボンゼロを目指す必要があるのか

カーボンニュートラルや脱炭素という用語をよく聞くようになった背景にあるのが、温室効果ガスによる気候変動がもたらしている深刻な環境問題です。ここでは、世界でカーボンゼロの取り組みが加速するきっかけとなった出来事や、カーボンゼロが重要視されている理由についてご紹介します。

パリ協定採択でカーボンゼロ加速!

2015年12月に気候変動抑制に関する国際的な協定であるパリ協定が採択されたことをきっかけに、カーボンニュートラルへの取り組みが世界で加速しています。脱炭素への取り組みが加速した理由は、先進国だけでなく途上国にもCO2排出削減の努力を求めていることにあります。先進国だけでなく途上国にも対象を広げたことで、環境問題への関心が強くなったと言えます。

2017年実績で、2050年までのカーボンニュートラルに123カ国と1地域がコミットしており、国ごとに長期目標と中間目標を設定しています。

出典:資源エネルギー庁『今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~』(2017/8/17)

2050年カーボンニュートラルに賛同した国

出典:経済産業省『2050年カーボンニュートラルを 巡る国内外の動き』(2020年12月)(p.6)

なぜカーボンゼロが重要なのか

世界全体でカーボンゼロへの取り組みが加速している背景にあるのが、気候変動による深刻な環境問題に対する強い危機感です。IPPC(気候変動に関する政府間パネルは)は2021年8月に、第6次評価報告書において人間の影響が大気や海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がないとの見解を示しています。

出典:BBC NEWS『温暖化は人間が原因=IPCC報告「人類への赤信号」と国連事務総長』(2021/8/9)

3. カーボンゼロ実現に向けた国の政策

2050年までのカーボンゼロを実現させるために、国は様々な政策を打ち出してきました。国が主体となり実施している事業の例をご紹介します。

地域を推進!脱炭素ドミノを起こすための政策

日本はカーボンゼロを実現させるためには、2030年までの10年間が重要であるとし、地域で次々とカーボンゼロを実現していく脱炭素ドミノを起こすために次のような法整備を行っています。

  • 脱炭素社会実現に向けた国と地方の議論の場として「国・地方脱炭素実現会議」の創設

  • カーボンプライシングの検討の再開

  • 地球温暖化対策推進法において2050年までの脱炭素実現を明記

また地域脱炭素ロードマップを公表し、2025年までに集中して、適用可能な最新技術でできる重点対策を全国で実施することや、先行モデルケース作りを行う方向性を示しています。

地域脱炭素ロードマップのイメージ

出典:環境省『地域の脱炭素に向けた取組について』(2021/4/16)(p.2.4)

サステナブルファイナンスの推進

2050年までにカーボンゼロを実現させるためには経済と環境の好循環を作り出すことが政府の課題であるとし、課題や対応案などを検討する場として金融庁にサステナブルファイナンス有識者会議を設置し、サステナブルファイナンスを推進する方針を固めています。

出典:金融庁『今後のサステナブルファイナンスの取組について』(2021/9/22)(p.1)

4. カーボンゼロを目指す企業の取り組み

企業は脱炭素に取り組み情報を公開することで、企業のイメージを向上させる、ESG投資を行う投資家にアピールできるなどのメリットを得ることができます。企業の脱炭素への取り組みを公表できる枠組みの概要や企業の賛同数についてご紹介します。

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)

金融安定理事会が2015年に設立したもので、企業に対して4つの項目についての情報開示を推奨しています。

  • ガバナンス

  • 戦略

  • リスク管理

  • 指標・目標

TCFDに賛同する企業数が最も多いのは日本で、306(2020年9月28日時点)の企業が賛同しています。

出典:日本経済新聞『TCFDとは 気候リスクの情報開示促す』(2021/7/26)

TCFD賛同企業数(上位10位の国・地域)

出典:環境省『TCFD SBT RE100』(2020/9/28)(p.1)

SBT

SBTとは、5〜15年先を目標年として、パリ協定が求める水準に整合したCO2排出量削減目標を設定する枠組みです。SBTへ賛同する企業が最も多いのは95社のアメリカで、75社の日本はアメリカに次ぐ世界第2位です。

SBT国別認定企業数グラフ(上位10ヵ国)

出典:環境省『TCFD SBT RE100』(2020/9/28)(p.1)

RE100

RE100とは、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー電源にすることを宣言する国際的な枠組みです。RE100への賛同数が最も多いのは80社のアメリカで、54社の日本はアメリカに次ぐ世界第2位です。

RE100に参加している国別企業数グラフ(上位10ヵ国)

出典:環境省『TCFD SBT RE100』(2020/9/28)(p.1)

5. まとめ:カーボンゼロの政策や取り組みを理解し、企業も取り組もう!

カーボンゼロとは、気候変動の主な原因とされる温室効果ガスの排出量が実質ゼロの状態であることを意味しています。パリ協定の採択や、気候変動への取り組みをビジネスチャンスであると捉える風潮が高まったことで、カーボンゼロに取り組む企業が増加しています。日本におけるカーボンゼロの政策や取り組みを理解し、企業も脱炭素への取り組みを始めましょう。

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