「サプライチェーン全体の脱炭素化」が加速!

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サプライチェーン全体での脱炭素への取り組みを国が推進しています。推進する理由は、2050年までのカーボンニュートラルを実現させるためには、企業だけでなく、企業の事業活動に関わる全てのステークホルダーが脱炭素に取り組むことが重要視されているためです。

この記事では、日本の脱炭素に向けた動向に関心のある法人の皆さまが知っておくべきサプライチェーン全体での脱炭素化に関する基本的な知識をご紹介します。

目次

  1. 日本でも進むサプライチェーン全体での脱炭素化

  2. サプライチェーン全体での脱炭素経営を推進!国の政策と取り組み

  3. サプライチェーン全体で脱炭素に取り組むメリット

  4. サプライチェーン全体での脱炭素への取り組み事例

  5. まとめ:日本の動向を理解し、企業もサプライチェーン全体での脱炭素化に取り組もう!

1. 日本でも進むサプライチェーン全体での脱炭素化

脱炭素の国際的な枠組みであるSBTや日本政府は、個別企業だけでなくサプライチェーン全体での脱炭素化を推進しています。ここでは、日本でも推進されるサプライチェーン全体での脱炭素化がどのようなものであるか、環境省が実施する事業についてご紹介します。

SBTはサプライチェーン全体での脱炭素化を求めて

サプライチェーンとは、原材料、部品の調達から、製造、在庫管理、配送、配達までを含む一連の供給システムを指す用語です。パリ協定の水準に整合する温室効果ガス排出削減目標を企業に求めるSBTは、企業が排出する温室効果ガスだけでなく、サプライチェーン全体での削減を求めています。サプライチェーン排出量は、Scope1+Scope2+Scope3で算出されます。

 

Scope1:企業の温室効果ガスの直接排出

Scope2:他者から供給された電気などの使用に伴う間接排出

Scope3:商品の使用や廃棄など、企業の事業活動に関連する間接排出

サプライチェーン排出のイメージ

出典:環境省『中長期排出削減目標等設定マニュアル』(p.18)

国が推進!サプライチェーンの脱炭素化推進モデル事業について

国は2050年までにカーボンニュートラルを実現させるためには、企業だけでなくサプライチェーン全体で脱炭素に取り組むことが重要であるとの見解を示しています。温室効果ガス排出削減のロールモデル企業の創出と普及を目的として、環境省が主体となり「令和3年度サプライチェーンの脱炭素化推進モデル事業」を実施しています。

出典:環境省『サプライチェーン全体の脱炭素化に向けた支援事業への参加企業を募集します』(2021/7/5)

2. サプライチェーン全体での脱炭素経営を推進!国の政策と取り組み

環境省だけでなく、経済産業省や農林水産省もサプライチェーン全体での脱炭素経営を推進する目的で事業を行っています。ここでは省ごとの政策や支援策、取り組みなどについてご紹介します。

環境省の支援策

環境省は、自治体や企業の脱炭素への取り組みを推進するために様々な事業を実施しています。「脱炭素経営による企業価値向上促進プログラム」においてサプライチェーン全体での脱炭素の取り組みを推進しています。具体的には以下の支援を実施しています。

  • SBTやRE100などの目標設定の支援

  • SBTやRE100などの目標に向けた削減行動の支援

  • TCFDに沿った気候変動リスク・チャンスを織り込む経営の支援

出典:環境省『脱炭素経営による企業価値向上促進プログラムについて』(2018/6/27)

経済産業省の取り組み

経済産業省は、2021年度の経済産業政策の重点の1つにサプライチェーン強靭化とサプライネットの構築を置いています。

出典:経済産業省『令和3年度 経済産業政策の重点』(p.8)

農林水産省の取り組み

農林水産省は2021年5月に「みどりの食料システム戦略」を策定し、2050年までに農林水産業においてCO2ゼロエミッション化を実現させることを目標にしています。その中で持続可能な食料システムを構築するためには、サプライチェーン全体での脱炭素への取り組みが欠かせないとの見解を示しています。

出典:農林水産省『可視化検討会』

3. サプライチェーン全体で脱炭素に取り組むメリット

中小企業は、大企業と連携し、サプライチェーン全体での脱炭素に取り組むことで、経営や経済面においてメリットを得ることができます。ここでは、中小企業がサプライチェーン全体での脱炭素に取り組むメリットをご紹介します。

差別化とビジネスチャンスの獲得

パリ協定の採択をきっかけに、SBTやRE100などを通した企業の脱炭素への取り組みが加速しています。企業は脱炭素に取り組むことで、他の企業と差別化を図り、それにより新たなビジネスチャンスを獲得できる可能性が高まります。

競争力の強化と確保

大企業は、商品のライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの責任を問われるようになりました。このような状況において、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量削減を模索する大企業の数が増加しています。中小企業は脱炭素に取り組み、大企業と信頼関係を築くことで競争力を強化、確保できます。

出典:環境省『中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック』(p.17)

4. サプライチェーン全体での脱炭素への取り組み例

サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量削減に取り組む大企業の数が増加しています。サプライチェーン全体での脱炭素に取り組んでいる企業例をご紹介します。

積水ハウス株式会社

積水ハウスは2009年からCO2 50%削減モデルを販売するなど、早い段階から脱炭素に取り組んでいます。2017年にRE100に加盟し、2018年にはSBT認定を取得し、TCFDに賛同しています。2030年度の中間目標としてサプライチェーンから排出されるCO2を2013年比で45%削減する計画を示しています。

出典:SEKISUI HOUSE『脱炭素社会』

セイコーエプソン株式会社

セイコーエプソンは、事業に関連する企業などにCO2削減目標を示し、脱炭素に積極的に取り組んでいます。2025年に目指す姿とし、サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量を200万トン以上削減する計画を立てています。また、全世界にあるエプソングループの拠点で使用する電力を、2023年までに100%再生可能エネルギーに切り替える方針も固めています。

出典:EPSON『ニュースリリース 2021年』(2021年3月16日)

出典:EPSON『サステナビリティ 2025年に目指す姿』

トヨタ自動車株式会社

2050年までのカーボンニュートラルを宣言しているトヨタ自動車は、本格的にサプライチェーン全体での脱炭素化を進めています。直接取り引きをしている主要部品メーカーに、2021年度はCO2排出量を前年比で3%削減するよう指示を出しています。

出典:日本経済新聞『トヨタ、供給網で脱炭素主導 3%減を部品会社に要請』(2021/6/3)

5. まとめ:日本の動向を理解し、企業もサプライチェーン全体での脱炭素化に取り組もう!

SBTにおいて大企業は、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量削減の責任を問われるようになりました。中小企業は大企業と手を組み脱炭素に取り組むことで、競争力を強め、脱炭素に取り組まない企業と差別化を図ることができます。

サプライチェーン全体での脱炭素への取り組みは、ビジネスチャンスの獲得にもつながります。日本の動向を理解して、サプライチェーン全体での脱炭素に取り組みましょう。

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