「追加性の高い再エネ」を選び、環境問題に貢献する企業に!

たくさんの太陽光発電が並ぶ

再生可能エネルギー(以下再エネ)における追加性とは何かをご存じでしょうか。再エネの追加性とは「再エネの新たな設備投資を促す効果のこと」です。世界が脱炭素に向かう中、CO2フリー電力である再エネの需要は高まり、自社の電力を再エネで調達する企業も増えています。近年そのように画期的な企業は再エネの追加性という概念を非常に重視しています。

追加性のある再エネと、ない再エネでは何が違うのか、また持続可能な社会においての再エネの追加性の必要性など、様々な角度から再エネの追加性について解説します。

目次

  1. 再エネの「追加性」とは?|新たな再エネの設備投資を促す効果

  2. 再エネの「追加性」は持続可能な社会にとって重要

  3. 再エネの「追加性」を電力調達方法から考える

  4. 「追加性」のある再エネの市場動向における課題とは

  5. まとめ:追加性の高い再エネを導入し企業の環境価値をアップしよう

1. 再エネの「追加性」とは?|新たな再エネの設備投資を促す効果

再エネの「追加性」とは何か

再エネの「追加性(additionality)」とは簡単に言うと「その再エネ電力を購入することで世の中に新たな再エネ設備が増えていくこと」です。その再エネ電力を選ぶことで再エネへの新設備投資が推し進められる、結果的に化石エネルギーの代替につながり脱炭素や地球温暖化抑制に貢献できる、などの効果を含んだものが再エネの追加性です。

「追加性」がある再エネとない再エネの違いとは?

それでは追加性のある再エネとはどのような電力で追加性のない再エネ電力との違いはどこにあるのでしょうか。追加性のある再エネ電力とは、再エネ100%の電力、グリーン電力や非化石証書そしてJ-クレジットの購入などで、自社の調達した再エネ電力が次の再エネ設備投資を働きかける効果があることを示すものです。

一方追加性のない再エネとは、FIT制度で購入された電力などです。FIT電力は再エネ由来でありながらも「再エネとして扱わない」ことになっており、CO2排出量もゼロと扱われません。経済産業省の「電力の小売営業に関する指針」において、新電力の電源構成を公表する規則でもFIT電力は再エネ電力とは区別するように記載されています。そのためFIT制度で購入された再エネ電力には追加性があるとは認められません。

出典:経済産業省「電力の小売営業に関する指針」(2021.4)(p.27.28)

「追加性」のない再エネは持続可能な社会に貢献しない?

このように再エネの設備導入などが促進されず、CO2の排出削減や地球温暖化抑制に貢献しない再エネは追加性がないとみなされます。世界の脱炭素や持続可能な社会を実現するためにはCO2フリー電力である再エネの普及促進を目指さなくてはならず、その目標が達成されるためには追加性のある再エネの導入が不可欠なのです。

2. 再エネの「追加性」は持続可能な社会にとって重要

再エネは脱炭素に向けて不可欠なエネルギー

再エネは太陽光や風力、地熱などCO2を排出する化石エネルギーとは違い、自然界に常時存在し永続性があり自国の自然環境を生かしながら生産できるエネルギーです。今後CO2を削減し持続可能な社会を築くためにも、必要不可欠なエネルギーであることは間違いなく、全世界的にその普及促進に努めなくてはいけません。

各再エネの概要

出典:資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー 固定価格買取制度 (対象となる再生可能エネルギー)(2021.8.31)』

世界でも「追加性」の高い再エネが注目されている

世界では再生可能エネルギーの導入は加速しており、その中でさらに環境価値の高い「追加性」のある再エネを導入する取り組みが進んでいます。欧米の先進企業などは追加性の高い再エネ電力を購入する流れになっており、その流れは今後ますます加速するでしょう。世界の中でも日本の再エネ普及は遅れています。再エネのさらなる導入を目指し、そして追加性の高い再エネの促進を目指さなくてはなりません。

主要国の発電量に占める再エネ比率の比較

出典:資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』

「追加性」のある再エネで再エネ普及促進を目指す

再エネの追加性とは「再エネの新たな設備投資を働きかける効果のこと」でした。すなわちそれは再エネの導入を推し進めることで、地球温暖化や経済活動におけるCO2排出の抑制への寄与など社会に対しての環境貢献を行うことでもあります。企業には追加性のある再エネを導入し再エネ普及を促進する責任があるのです。

3. 再エネの「追加性」を電力調達方法から考える

(1)自社で再エネの発電設備を導入する

自社で太陽光などの再エネの設備を設置し、自家発電自家消費する方法です。初期費用はかかりますが、再エネ投資を自社で取り組むため環境への貢献度が高く、追加性も大きいと言えるでしょう。また企業としてのイメージアップにもつながります。構築費のコストが年々低下している太陽光発電を利用するなど、再エネ電力の導入をする企業は増えています。

(2)非化石証書等の再エネの証書を購入する

再エネを調達する手段として企業が多く利用するのは、「グリーン電力」や「非化石証書」などの証書や「J-クレジット」の購入です。これらは全て「環境価値」の証明となり、再エネの追加性を判断する目安になります。

  • グリーン電力

グリーン電力とは、太陽光や風力等の再エネで作られた電力のことです。グリーン電力証書とは再エネで発電した環境価値を証書として発行するものです。グリーン電力の取り引きをすることでその維持に貢献、電力を利用することがグリーン電力の促進に寄与している、などの基準をもとにして再エネの追加性があるかを判断します。

出典:自然エネルギー株式会社「グリーン電力証書システムとは?」

  • J-クレジット

この制度は企業の省エネ設備の導入や再エネの活用によるCO2等の排出削減量、また森林管理によるCO2等の吸収量などをクレジットとして認証するものでJ-クレジット制度と呼ばれています。 このクレジットを活用することで脱炭素に向けての企業の投資を促し、日本の温室効果ガス排出削減量の促進につなげることが目的です。J-クレジットの仕組みのイメージ画像

出典:経済産業省『J-クレジット制度』

  • 非化石証書

非化石証書は国が認定したもので、化石由来のエネルギーなどCO2を排出するものではなく、CO2を排出しない再エネや原子力などのエネルギーを使用していることを証明する証書です。電力小売事業者が購入すると、「販売している電力のCO2排出量は少量」と判断されます。

出典:資源エネルギー庁『「非化石証書」を利用して、自社のCO2削減に役立てる先進企業』(2019.1.16)

(3)小売電力事業者の再エネ電力を購入する

電力の「小売全面自由化」により消費者は新規の小売電力会社からさまざまなエネルギーを選択することが可能になりました。小売電力会社が扱っている再エネには追加性の高いものが多く存在します。大手の電力会社だけではなく、そのように再エネの追加性の重要性を認識し販売を行っている小売電力会社から再エネ電力を購入することも方法の一つです。

出典:資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化って何?」

4. 「追加性」のある再エネの市場動向における課題とは

(1)再エネのための設置場所を確保できない

再エネの設備投資を増やすことは重要ですが、そのための設置場所を確保することが難しいという問題があります。日本は元々土地が広くないため、大規模な風力や太陽光などの再エネの発電設備の設置場所が少ないことが課題です。しかし現在は土地の制約がなく、大型の風車の導入が可能な海に設置する洋上風力発電に対する期待が高まっています。

(2)業者の進退が著しく長期にわたる契約が困難

「小売全面自由化」により再エネを扱う新たな小売電力会社が多くの事業をはじめ、競争化が起きました。新規の電力会社が増加することは消費者のエネルギー選択が増えることでもありますが、競争に破れ市場から姿を消す事業者も多く、長期にわたって安定的な契約が実現できないなどの課題が顕在化しています。

(3)証書では再エネの推進が難しい

証書の発行だけでは、実際に再エネの設備投資は増えないなど、再エネの追加性を保証することは難しくなっている現状があります。例えばグリーン電力証書を原子力発電がメインの電力を購入し組み合わせた場合にそれでもグリーン電力使用と言えるのか、という問題があります。またどの制度も証書やクレジットが乱発されないよう判断が厳しいという現状があります。

5. まとめ:追加性の高い再エネを導入し企業の環境価値をアップしよう

本記事では「追加性の高い再エネ」について紹介しました。企業は追加性のある再エネを導入することで再エネ普及に貢献でき、さらには社会的に自社のイメージアップを図ることができます。もし仮に、企業が脱炭素に取り組み再エネを導入しても、追加性のある再エネを選ばなければ購入した再エネ電力に追加性がないと判断され、再エネ利用を認められないという事態も有り得ます。再エネを導入するときには追加性の有無をしっかりと確認し、企業の環境価値をぜひ高めてください。

 

 

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