環境にやさしい取り組みには価値がある?「環境価値」とは何?

緑の植物を持っている手

太陽光発電などの再生可能エネルギーによる電気は「グリーン電力」と呼ばれ、「電気や熱そのものの価値」の他に、二酸化炭素を排出しない環境への負荷軽減のメリットを持っています。

このメリットを「環境価値」と位置付けて制度化し、環境への負荷軽減の取り組みを証書化して売買する制度が導入されたのは、2017年4月の事でした。

では、実際に環境価値とはどのようなもので、企業にとってどのような役割を果たしているのか、詳細を解説します。

目次

  1. 環境価値とはどんな制度?

  2. 環境価値を定義している主な制度

  3. 環境価値制度のメリットとデメリット

  4. まとめ:目先の利益だけでなく環境問題にも目を向けよう!

1. 環境価値とはどんな制度?

環境価値とは、クリーンエネルギーの導入を促進するために作られた考え方です。例えば、地球環境に配慮したグリーン電力を利用していても外部には明示しづらいです。

そこで、Jクレジット、グリーン電力証書、非化石証書といった環境価値を証書化して取り引きすることにより「見える化」を推進しました。

事業者はこれらの環境価値を掲げることで、環境問題への取り組みを行っている先進的な企業としてのアピールが可能になります。

出典:環境省『再エネ加速化・最大化促進プログラム』(2017年4月)

二酸化炭素排出量の削減分に与えられる

環境価値は、その発電方法によって得られる二酸化炭素などの「温室効果ガス」の削減量に基づいて与えられます。

例えば、環境にやさしい発電方法を導入することや、グリーンエネルギーを購入することなどがそれらの行為に該当します。

購入すれば二酸化炭素排出量を相殺できる

環境価値を「Jクレジット」などの証書として購入すれば、その企業は自社が輩出している温室効果ガスの排出量を相殺できることになります。

例えば、製造業の企業ではどうしても二酸化炭素の排出量をゼロにすることはできません。しかし、100ある排出量を証書購入により相殺して100から減少させることは可能です。

その取り組みを「環境問題への取り組み」と掲げることもできます。

「環境問題への取り組み」をアピールできる

環境価値を認め、証書を購入することは、環境問題への取り組みをアピールできる要素になります。今までの環境問題では、自社でリサイクル率を高める、二酸化炭素の排出量を抑制するなどの取り組みが一般的でした。そのため、製造業など業種によっては取り組みに限界がありました。

しかし、証書を購入することで環境問題への取り組みを支援する仕組みに賛同しつつ、環境価値への取り組みとして自社の取り組みをPRすることができるのです。

 

2. 環境価値を定義している主な制度

日本国内で流通している主な環境価値と、その制度の概要について解説します。

(1)Jクレジット

Jクレジットは、省エネ設備の導入や森林の再生・保全によって温室効果ガスを削減・吸収した量を、国がクレジットとして認証する制度です。

実際にそれらの活動を行っている企業は、Jクレジットの売却益をさらなる設備投資や環境保護活動の資金として活用できます。

購入した企業も、自社事業内での努力では温室効果ガスを削減できないケースであっても、クリーンエネルギー事業などに投資して相殺することができます。

Jクレジットをわかりやすく表した図

出典:Jクレジット公式ホームぺージ『Jクレジット制度とは』(2013年)

(2)グリーン電力証書

グリーン電力証書は、太陽光・風力・水力・バイオマス・地熱など、再生可能エネルギーで発電されたグリーン電力の環境価値を証書形式で取引可能にしたものです。

発電事業者は、温室効果ガス削減量に応じて証書を発行し、それを売却することで利益を得ます。そして、さらなるグリーンエネルギーの導入や既存設備の維持管理・慣習費用に割り当てられます。

証書を購入する企業側にとっても、メリットはかなり大きいです。

最も大きなメリットは、グリーン電力証書を保有しているだけで、付与された環境価値の分、使用している電気を再生可能エネルギーとみなすことができるのです。

つまり「我が社はグリーンエネルギーを使用して事業を行っている」と、環境問題への取り組みを容易にアピールできるのです。

グリーン証明書をわかりやすく表した図出典:資源エネルギー庁『グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度』

(3)非化石価値証明(非化石証書)

現在の日本には「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(高度化法)」が存在します。

この法律に基づき、電力小売り企業は、販売する電力の電源に占める非化石電源(太陽光や風力、バイオマスなど)の比率を2030年度までに44%以上にすることが求められています。

とはいっても、日本の電力需要を支えるには、石油や石炭などの化石燃料を電源とした「火力発電」が欠かせないことも事実です。

しかし、非化石価値証明(非化石証書)を購入すれば、販売する電力をグリーンエネルギーとしてアピールすることも可能になります。

出典:自然エネルギー財団『第7回 電気のCO2排出削減政策としての非化石価値取引市場について』(2016年12月)

3. 環境価値制度のメリットとデメリット

これまでさまざまな環境価値制度を紹介しました。それぞれ、地球の環境を守るために必要な取り組みです。しかし、制度上のメリットやデメリットが存在することも事実です。

実際に、どのようなメリットやデメリットがあるのかを解説します。

メリット(1)企業として環境対策をアピールできる

メリットの1つは、やはり企業とした環境問題への取り組みや対策を行っているアピールが可能となることです。

自社内だけの取り組みでは限界があります。機器の更新等をしようとしても多額の費用が必要となり、中小企業にはその資金が捻出できないところも出てくるでしょう。

環境価値を証書形式で購入すれば、それだけで環境対策を行ったと見なされます。そこで、環境問題に解決のコストそのものを軽減することも可能になります。

メリット(2)環境先進技術を持つ中小企業の資金確保が容易になる

環境問題に対応する先進技術を持った中小企業は、自らの技術や製品に環境価値を付与し、電力事業者等に証書として販売することで、資金確保が容易になります。

環境価値を付与するのは国(経済産業省)ですが、プロジェクトとして申請し価値が認められるまで4年程度かかるのは、デメリットと言えるかもしれません。

デメリット(1)制度が乱立していてわかりにくい

制度が乱立していてどの制度がよいのかわかりにくいのは、デメリットと言えます。

よく調べてみると、購入することのメリットで選んでしまえばよいのですが、企業としてどのような環境問題への取り組みをするのかを決めていないと、制度のメリットが活かせません。

例えば、自社事業で排出される温室効果ガス量を相殺する必要があるならば「非化石価値証書」でしょうし、電気料金にかかるコストダウンも考慮すれば「グリーン電力証書」を選ぶことになるでしょう。

問題は、これらの検討や決定に際してまだまだ専門家や有識者が少ないことかもしれません。

出典:日経BP『「環境価値」に脚光、制度が乱立して混乱も』(2021年2月)

デメリット(2)発電設備設置時のトラブルなどを誘発

グリーン電力を導入すれば、それだけで環境問題への取り組みが認められる。証書を購入する企業側からすれば、企業のメセナ活動としてのメリットは大きいです。しかし、グリーン電力にまつわる様々なトラブルなどについても十分な調査も必要です。

例えば、クリーンエネルギーである太陽光発電が、多くの木々を伐採して山間部に作られたとしましょう。果たして人々はそれを、環境問題への良い取り組みと評価するでしょうか。

同じ証書を購入するにあたっても、水力や風力などの発電方法やその設置方法などを十分考慮することは、トラブルがあった時に受けるマイナスイメージから身を守る意味で極めて重要です。

4. まとめ:目先の利益だけでなく環境問題にも目を向けよう!

地球温暖化を防止する環境対策は、国が率先して努力義務を課しており、当然企業にもさまざまな対策が求められています。

しかし、自社内だけの取り組みでは十分な対策が講じられない実情を踏まえると、生産活動と環境保護活動の両立が可能な「環境価値」制度は、ベターな制度と言えます。

『環境に配慮している企業』アピールができ、アピールすることが一般的になることで、日本の環境問題も大きく改善されるでしょう。今後、日本の経済構造そのものが「環境重視」の考え方になることが期待されています。中小企業にとっては、環境問題への取り組みを求められても、必要な資金の確保が難しい場合が多かったです。

環境価値制度は比較的容易に取り組めるものです。うまく活用すればコストダウンにもつながり、研究の価値はあるでしょう。自社の技術に環境的な価値があるなら、証書を発行して投資を呼び込むこともできます。大きなビジネスチャンスとして、環境価値制度を有効活用されることもおすすめします。

 

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