【脱炭素の鍵】ゼロエミッションとは?意味や取り組みを分かりやすく

脱炭素実現の鍵を握るゼロエミッションの意味とは?ゼロエミッションとは、気候変動問題の原因とされるCO2排出量が実質ゼロであることを意味しています。

2050年までに脱炭素社会を実現させることを宣言している日本において、ゼロエミッションについての理解を深めることは企業にとって重要です。この記事では、脱炭素への取り組みに関心のある法人の皆さまが知っておくべきゼロエミッションの意味など基本的な知識や、国や自治体、企業の取り組みについて分かりやすくご紹介します。

目次

  1. ゼロエミッションとは?意味など基礎知識を整理

  2. CO2を再活用!ゼロエミッション実現に向けた技術

  3. ゼロエミッションの普及は進んでいる?国や企業の取り組みをご紹介

  4. まとめ:ゼロエミッションの意味や取り組みへの理解を深め、企業の取り組みにつなげよう!

1. ゼロエミッションとは?意味など基礎知識を整理

脱炭素実現に向けた国や自治体、企業の取り組みが加速する中、ゼロエミッションという言葉に注目が集まっています。ここでは、ゼロエミッションの意味や今重要視されている背景についてご紹介します。

ゼロエミッションの意味は?

ゼロエミッションとは、1994年に国連大学により提唱された考え方です。エミッションには「放出・排出」などの意味があり、生産活動から排出される廃棄物をリサイクルすることで埋立処分量ゼロを目指すというのが基本的な考え方です。

日本においては廃棄物ゼロも含め、温室効果ガス排出量がゼロの社会を意味する言葉としても使用されています。

出典:EICネット一般財団法人環境イノベーション情報機構『環境用語』(2015/1/22)

ゼロエミッションが重要視される背景

ゼロエミッションが重要視される背景にあるのが、大量生産・大量消費型社会により増えた廃棄物によるゴミ処理問題や企業など事業活動により排出されるCO2による気候変動問題です。

(1)日本における廃棄物処理の現状

日本では1960から1970代の高度成長期に、大量生産・大量消費型社会の構築が進んだことで、ゴミの総排出量が急増しました。1960年から1980年までの20年間に、実に約5倍に増加しています。ごみの総排出量の推移

2000年代に入ってからゴミの排出量が緩やかに減少しているとは言え、2017年の排出量は4,289万トンで、東京ドームの約115杯分もの量に相当します。

出典:環境省『日本の廃棄物処理の 歴史と現状』(p.5)

ごみ総排出量の推移

出典:環境省『一般廃棄物処理事業実態調査の結果(平成29年度)について』(p.1)

(2)日本のCO2排出量の現状

日本におけるCO2排出量は、2013年度をピークに緩やかに減少していますが、気候変動が原因とされる豪雨や台風による深刻な被害を受けています。自然災害は尊い人命を奪い、農作物に被害を与え、経済全体に深刻な損失をもたらしています。

日本の二酸化炭素排出量の推移

出典:JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター『4-3 日本の二酸化炭素排出量の推移 (1990-2019年度)』

2. CO2を再活用!ゼロエミッション実現に向けた技術

CO2排出量実質ゼロを目指す取り組みの1つに、企業が中心となり技術開発が進んでいるネガティブエミッションがあります。ここでは、事業活動を通して排出されるCO2を資源として再活用するCCUSと、今後ネガティブエミッションの柱になる技術として期待されているBECCSについてご紹介します。

CO2削減につながるCCUSとは?

排出されたCO2を資源として再活用するネガティブエミッション技術に大きな注目が集まっています。CO2排出量を削減すると同時に、資源循環型社会の構築につなげることができます。

CCUSと呼ばれるネガティブエミッション技術があります。CCUSはCarbon dioxide Capture,Utilization and Storageを略したもので、二酸化炭素の回収、有効活用、貯留という意味があります。CCUSとは、産業活動により生じた排気ガスから二炭化炭素を分離・回収し、資源として有効利用したり地下の地層に貯蓄する技術のことを指します。CCUSを活用することには大きく3つのメリットがあります。

  • CO2排出量の大幅削減

  • 炭素の循環利用が可能に

  • 水素とCO2からメタンを製造することで再生可能エネルギーの余剰電力の貯蔵が可能に

出典:環境省『CCUSを活用した カーボンニュートラル社会の 実現に向けた取り組み』(p.2)

ネガティブエミッションの柱として注目を集めるBECCS

ネガティブエミッションの柱として注目されているのが、BECCSと呼ばれる技術です。BECCSはbioenergy with carbon dioxide capture and storageを略したもので、バイオマス燃料で排出されたCO2を回収し地中に貯留する技術を指します。CO2を地中に貯留することで、大気に含まれるCO2の量を削減することができます。

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』(2021/2/16)

3. ゼロエミッションの普及は進んでいる?国や企業の取り組みをご紹介

気候変動問題の原因とされるCO2排出量実質ゼロを目指すゼロエミッションは、国や自治体、企業が主体となり普及が進んでいます。国と東京都が実施している事業についてご紹介します。

企業のイノベーションを後押し!国のゼロエミ・チャレンジ事業

経済産業省主導で実施されているゼロエミ・チャレンジは、脱炭素社会実現に向けイノベーションに取り組む企業を公表することで、民間資金を誘導することを目的とする事業です。企業は温室効果ガス排出量実質ゼロ社会を実現させるためのイノベーションに取り組むことで、企業のイメージを向上させ、投資を受けやすくなるなどのメリットがあります。

出典:経済産業省『「ゼロエミ・チャレンジ」について』(2020/7/7)(p.1.2)

ゼロエミ・チャレンジ事業の事例

ゼロエミ・チャレンジで取り組みが公表されている企業の、脱炭素に向けたイノベーションの事例をご紹介します。

(1)新日本繊維株式会社

新日本繊維株式会社は千葉県にある価値創発企業です。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発」のプロジェクトにおいて、石炭利用環境対策推進事業や石炭灰を主原料とした新規なリサイクル連続長繊維の応用研究が認められ、ゼロエミ・チャレンジ企業に選出されています。

出典:PR TIMES『新プロジェクト「ゼロエミ・チャレンジ」企業に新日本繊維が選定されました。』(2021/9/24)

(2)長瀬産業株式会社

長瀬産業株式会社は、大阪と東京に本社を置く化学品専門商社です。カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発と、植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発が認められゼロエミ・チャレンジ企業に選出されています。

出典:NAGASE『経済産業省「ゼロエミ・チャレンジ企業」に選定されました』(2020/10/12)

(3)横河電機株式会社

横河電機株式会社は東京都にある、工業計器とプロセス制御を専業とする大手電機メーカーです。航空機用先進システム実用化プロジェクト、 地熱発電技術研究開発、地熱発電と温泉との併用を目指した温泉モニタリングシステムの実証試験の3つの取り組みが評価され、ゼロエミ・チャレンジ企業に選出されています。

出典:YOKOGAWA『経済産業省「ゼロエミ・チャレンジ企業」への選定と経団連「チャレンジ・ゼロ」への参画』

東京都は家庭内のゼロエミッションも推進

東京都は「ゼロエミッション東京」を掲げ、2050年までに世界のCO2排出実質ゼロに貢献できる自治体になることを目標にしています。具体的にどのような対策を講じるかについて、2019年12月に「ゼロエミッション東京戦略」を策定し、その後公表しています。

ゼロエミッション東京戦略は3つ柱とし、

企業や地域だけでなく都民に対しても家庭内でできるゼロエミッションを推進しています。東京戦略は3つの視点を柱にしています。

  • 気候変動を食い止める緩和策と、既に起こり始めている影響に備える適応策を総合的に展開すること

  • 資源循環分野を本格的に気候変動対策に位置づけ、都外のCO2削減にも貢献すること

  • 省エネと再生可能エネルギーの拡大策に加えて、資源循環分野や自動車環境対策などを含むあらゆる分野の取組を強化すること

出典:東京都環境局『ゼロエミッション東京』

出典:東京都環境局『ゼロエミッション東京』(2019/12/27)

4. まとめ:ゼロエミッションの意味や取り組みへの理解を深め、企業の取り組みにつなげよう!

脱炭素社会と深いつながりがあるゼロエミッションに関する基礎知識や取り組みなどについてご紹介しました。東京都では既にゼロエミッション構想に基づいた様々な取り組みが実施されています。ゼロエミッションへの理解を深め、企業での取り組みにつなげていただければと思います。

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