バイオマス発電が普及しない理由とは?課題や取り組みを徹底解説

バイオマス発電が普及しない理由は?CO2を排出しない再生可能エネルギーの1つであるバイオマス発電の普及拡大は、2050年度のカーボンニュートラル社会を実現させる上で欠かせません。地域で排出される廃棄物や未使用の残木を燃料として利用できることから、廃棄物の量を削減できるメリットもあります。

しかし日本におけるバイオマス発電の割合は、思うように普及していません。この記事では、バイオマス発電に関心のある法人の皆さまが知っておくべき、バイオマス発電に関する基礎知識や普及しない理由、日本の普及に向けた取り組みについてご紹介します。

目次

  1. バイオマス発電に関する基礎知識

  2. バイオマス発電が普及しない理由

  3. バイオマス発電普及に向けた取り組み

  4. まとめ:バイオマス発電が普及しない理由や取り組みを理解し、導入を検討しよう!

1. バイオマス発電に関する基礎知識

日本は2050年度までのカーボンニュートラル社会実現に向けバイオマス発電の普及を拡大させる方針です。ここでは、バイオマス発電とはそもそもどのようなものなのかや、バイオマスの種類、日本における普及の現状と具体的な目標についてご紹介します。

バイオマス発電とは?

バイオマス発電とは、動植物などに由来する生物資源を直接燃焼したり、ガス化し燃料にしたりすることで発電する方式のことです。生物資源を燃焼させる時にCO2が排出されますが、成長する過程でCO2を吸収することから、京都議定書においてCO2を排出しない再生可能エネルギーの1つとされています。これまで棄てられるだけだった廃棄物や家畜の排泄物、木材などを燃料として再利用することで、地域活性化や廃棄物の量の削減などのメリットも生まれます。

出典:資源エネルギー庁『バイオマス発電』

バイオマス発電の種類

バイオマスは木質系、農業・畜産・水産系、建築廃材系、食品産業系、製紙工場系、生活系などの種類があります。これらの燃やされる燃料とその燃焼方法によって、バイオマス発電は3種類に分けられます。

一つ目は直接燃焼方式です。これはバイオマスを直接燃焼し、そこから発生した水蒸気で蒸気タービンを回転させ発電する方法です。

二つ目は熱分解ガス化方式です。バイオマスを直接燃焼するのではなく高温で熱処理し、そこで生じたガスでガスタービンを回し発電します。

三つ目は生物化学的ガス化方式です。バイオマスを発酵させることでガスを発生させ、ガスタービンを回して発電します。

出典:資源エネルギー庁『バイオマス発電』

日本のバイオマス発電の目標

現在、第6次エネルギー基本計画では2030年までの目標として、日本のバイオマス発電の割合は5%程度、再エネ全体の割合は36〜38%で検討されています。その一つ前の第5次エネルギー基本計画の中では再エネ全体で22~24%、内バイオマス発電が3.7〜4.6%とされていましたが、2021年7月に第6次のさらに高い目標が発表され、現在検討されています。

電力構成

出典:資源エネルギー庁『今後の再生可能エネルギー政策について』(2021/3/1)(p.19)

出典:資源エネルギー庁『エネルギー基本計画(素案の概要)』(2021/7/21)(p.18.19)

日本のバイオマス発電割合の現状

2011〜2018年度における、日本の再生可能エネルギー割合の内訳は以下のようになっています。

2011年度の再生可能エネルギー割合10.4%の内、水力7.8%、太陽光0.4%、風力0.4%、地熱0.2%、バイオマス1.5%。2018年度の再生可能エネルギー割合16.9%の内、水力7.7%、太陽光6.0%、風力0.7%、地熱0.2%、バイオマス2.3%。

2012年にFIT(固定価格買取制度)が施行され、急激に割合を伸ばしているのが太陽光発電です。バイオマス発電が普及しない一方で、太陽光発電が順調に普及している理由として、燃料購入費や輸送費がかからないことによる発電コストの安さや、設備の設置のしやすさなどがあげられます。

2011年と2018年の発電電力量の構成

出典:資源エネルギー庁『持続可能な木質バイオマス発電について』(2020/7/20)(p.5)

2. バイオマス発電が普及しない理由

2030年度におけるバイオマス発電割合の目標は、5%程度まで引き上げられる見通しです。2018〜2019年の1年間でわずか0.3%しかバイオマス発電割合が増加していない日本は、この5%という目標を達成することができるのでしょうか。ここでは、なぜ日本でバイオマス発電が普及しないのか、その理由についてご紹介します。

輸入依存率が高い

森林・林業基本計画の定めにより、国内で間伐採できる木材量には制限があります。そのため一般木材等・バイオマス液体燃料のFIT認定内訳は、国内調達のみは24%で、残りの76%の発電所は輸入由来の原料を一部取り入れて発電しています。このように輸入依存度が高いため、今後バイオマス発電割合を5%まで増やすためには燃料を安定して供給できる体制作りが求められます。

一般木材等・バイオマス液体燃料のFIT認定内訳(設備容量)

出典:資源エネルギー庁『今後の再生可能エネルギー政策について』(2021/3/1)(p.64)

発電コストが高い

バイオマス発電は、太陽光発電など他の再生可能エネルギーと比較すると発電コストが高いという課題があります。バイオマス発電にかかるコストを高くしている要因は、主に燃料となる資源の購入費用、資源を木材チップにする費用、燃料の運搬費用です。バイオマス発電の普及を拡大させるためには、発電コストを下げ、参入する事業者を増やす必要があります。

バイオマス発電における資本財と運転維持費の関係

出典:資源エネルギー庁『持続可能な木質バイオマス発電について』(2020/7/20)(p.12.22)

発電所を建設する場所の確保が難しい

発電コスト以外のコストが高いことも日本でバイオマス発電が普及しない理由の1つです。資源が収集できる場所の近くに大きな発電所を建設する場所の確保が難しいことから、小規模分散型の設備になりやすく、収集や運搬、管理にコストがかかります。

出典:資源エネルギー庁『バイオマス発電』

発電効率が悪い

発電効率が悪いことも、バイオマス発電が普及しない理由です。日本におけるバイオマス発電所が小規模になりやすいことが、発電効率が悪い原因の1つです。たとえば、蒸気タービンを利用した木質バイオマス発電の場合、通常の発電効率は20%程度しかありません。

出典:林野庁『第1部 第4章 第3節 木材利用の動向(4)』

3. バイオマス発電普及に向けた取り組み

日本はバイオマス発電を普及させるために様々な取り組みを行っています。ここでは、各自治体が独自に実施しているバイオマス発電の補助金制度と地産地消モデルの発電所建設を推進する取り組み事例についてご紹介します。

バイオマス発電の補助金制度

[1]山形県 寒河江市

寒河江市は、再生可能エネルギーの普及を目的とし、木質バイオマス燃焼器を新たに家庭または事業所に設置する人を対象に5万円または10万円を支給する補助金制度を実施しています。

出典:寒河江市『寒河江市再生可能エネルギー設備導入事業』(2021/4/7)

[2]福島県

10kWh以上、バイオマス依存率60%以上、コージェネレーションを含むバイオマス発電所の建設を計画している福島県内の市町村・非営利団体・民間事業者を対象に5000万円を支給する補助金制度を実施しています。

出典:福島県『令和2年度福島県地域参入型再生可能エネルギー導入支援事業(設備導入事業)補助金について』(2020/6/4)

[3]東京都

CO2を排出しない社会を目指す東京都は、「ゼロエミッション東京」を掲げ、地産地消型の再生可能エネルギー発電等設備や熱利用設備の導入を計画している民間事業者を対象に補助金を支給しています。

出典:東京都『地産地消型再エネ増強プロジェクト事業 申請受付を開始』(2021/4/1)

地産地消モデルの発電所建設の推進

[1]福島県会津若松市・グリーン発電会津

グリーン発電会津は、会津で未利用の間伐材を主な燃料とするバイオマス発電所で、2010年に会津若松市に設立され、2010年から稼働しています。「スマート会津若松」を掲げる市は、エネルギーの地産地消の推進を目的とし、市が保有する5施設にバイオマス発電由来の電力を供給しています。

出典:会津若松市『エネルギーの地産地消への取組-木質バイオマス発電の活用について-』(2020/3/31)

[2]岡山県真庭市・真庭バイオマス発電(株)

豊かな森林資源に恵まれている真庭市の市役所には林業・バイオマス産業課があり、バイオマス発電の普及を推進しています。地元の森林組合や企業などと協同で、地域にあるヒノキや未利用の間伐採を主な燃料として使用する国内最大級の真庭バイオマス発電を設立し、2015年4月に稼働させています。

出典:真庭市『林業・バイオマス産業課』

[3]山梨県南部町・南部町 木質バイオマス発電所

豊かな森林資源から木質バイオマス資源を調達し、発電した電気は地域にある温水プールや木質チップの乾燥用熱源として利用されます。また非常時に使用する非常用電源としても利用されます。

出典:長大『山梨県南部町における木質バイオマス発電所』(2021/5/27)

4. まとめ:バイオマス発電が普及しない理由や取り組みを理解し、導入を検討しよう!

バイオマス発電が日本で普及しない主な理由に、燃料の輸入率の高さや発電コストの高さ、発電所を建設する場所の確保などがあります。日本はバイオマス発電の普及を推進するために、補助金制度などの取り組みを実施しています。地域でも地産地消モデルのバイオマス発電所の建設が進んでいます。バイオマス発電に関する理解を深め、導入の検討につなげていただければと思います。

アスエネESGサミット2024資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
アスエネESGサミット2024