温対法の改正による変更点とその影響で具体的に変わったことは?

温対法と呼ばれている地球温暖化対策推進法は、国や地方公共団体、事業者、国民が関係するもので、地球温暖化対策への取り組みの促進を目的にしています。

これまでに様々な改正が行われてきましたが、2021年度の改正によりさらに地球温暖化対策への取り組みが進むことが予想されます。カーボンニュートラル実現に向けた取り組みに関心のある法人のみなさまが知っておくべき、温対法に関する基礎知識についてご紹介します。

目次

  1. 温対法とは?温対法に関する基礎知識

  2. 温対法改正でどこが変わったか

  3. 温対法の改正による影響で予想されること

  4. まとめ:温対法により日本での脱炭素への取り組みが加速!企業も理解を深めよう。

1. 温対法とは?温対法に関する基礎知識

日本国内における地球温暖化対策の取り組みを促進させる目的で、1998年に温対法と呼ばれている地球温暖化対策推進法が制定されています。温対法とはどのような制度であり、温対法の中で国や地方公共団体、事業者、国民の役割はそれぞれどのように定められているのかなどについてご紹介します。

温対法とは?

気候変動に関する国際的な枠組みである京都議定書の採択を受け、翌年の1998年に「地球温暖化対策推進法」が制定されました。地球温暖化対策推進法は、略されて「温対法」と呼ばれています。

温対法は国、地方公共団体、事業者、国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むための枠組みとして制定されたもので、1998年に制定後、様々な改正を経て現在に至ります。

出典:環境省『地球温暖化対策推進法の成立・改正の経緯』

温対法で定められている役割について

温対法では国、地方公共団体、事業者、国民が地球温暖化対策にどのように取り組むべきかが定められています。

[1]国の役割

・環境監視。排出抑制、吸収作用の保全強化のための計画的な地球温暖化方策の策定

・関係施策における排出抑制等の配意

・自ら出す温室効果ガスの排出抑制等

・地方公共団体、事業者、国民の取組の支援

・政策向上のための調査研究

・国際協力

[2]地方公共団体の役割

・自ら排出する温室効果ガスの排出抑制等

・区域の住民、事業者の活動の促進のための情報提供等

・その他の自然的・社会的条件に応じた措置

[3]事業者の役割

・自ら排出する温室効果ガスの排出抑制等

・製品改良、国際協力等他の者の取組への寄与

・国、自治体の施策への協力

[4]国民の役割

・日常生活における排出抑制

・国、自治体の施策への協力

出典:国税庁『地球温暖化対策推進法の概要』

2. 温対法改正(2021年)による3つの変更点

1998年に制定された温対法は、様々な改正を繰り返し、直近では2021年5月26日に1部改正案が成立しています。2021年の改正により大きく変わった点が3つあります。

カーボンニュートラルの実現を法律上で明記

2020年10月に日本は、2050年までにカーボンニュートラルを実現させることを宣言しています。この宣言を受け、温対法に2050年までにカーボンニュートラルを実現させることが目標として明記されています。

地域の再エネ活用事業の計画・認定制度の創設

2021年度の温対法改正で、地域の再エネ活用事業の計画・認定制度が創設されました。環境保全や地域の発展への貢献が自治体から認められた再エネ活用事業には、行政手続きのワンストップ化が認められます。再生可能エネルギーの導入をスムーズにすることで、普及を促進し、地域の経済発展につなげる狙いもあります。

企業のGHG排出量情報のデジタル化・オープンデータ化

温対法には、GHG(温室効果ガス)を一定以上排出する事業者に対し、国に排出量を報告させる制度が盛り込まれています。国が事業者の報告をまとめて公表することになっていますが、2021年度の改正により、国がまとめたデータはデジタル化され、開示請求不要とするオープンデータ化されることになりました。

出典:環境省 脱炭素ポータル『改正地球温暖化対策推進法 成立』(2021/6/4)

出典:環境省『地球の脱炭素化の促進について(改正地球温暖化対策推進法等)』(2021/9/7)(p.3)

3. 温対法の改正による影響で予想されること

2021年度の温対法の改正による大きな変更点は上記でご紹介した3つです。ここでは、温対法の3つの変更点による影響でどのようなことが起きるのかについてご紹介します。

地域の再生エネルギー導入のスピード化

カーボンニュートラルを実現させるために、日本は再生可能エネルギーを最大限導入する方針を固めていますが、再生可能エネルギー事業をめぐり、地域では合意形成が上手くいかないなどトラブルが起きています。地域レベルでの再エネ活用事業の計画・認定制度が創設されることで、合意形成が円滑になり、再生可能エネルギーの導入までのスピードがアップすることが予想されます。

ESG投資の増加

2021年度の温対法の改正により、事業者の温室効果ガス排出に関する情報がデジタル化され、開示請求不要で閲覧できるようになりました。これまで公表までに2年間かかっていましたが、1年未満に短縮されています。事業者の温室効果ガス排出に関する情報が活用されやすくなることから、ESG投資が増加することが予想されます。

ESG投資とは、従来の財務情報に加え、環境と社会、ガバナンスも考慮する投資のことです。日本では、投資にESGの視点を組み入れることを原則とするPRI署名機関数が2015年から急増しています。

出典:環境省『地球の脱炭素化の促進について(改正地球温暖化対策推進法等)』(2021/9/7)(p.3)

出典:経済産業省『ESG投資』

4. まとめ:温対法により日本での脱炭素への取り組みが加速!企業も理解を深めよう。

1998年に成立した温対法は、国や地方公共団体・事業者・国民が1つになり、地球温暖化対策に取り組むための枠組みを定めた法案です。その後さまざまな改正を経て現在に至ります。それぞれ役割が明確化されたことにより、事業者や地方自治体の脱炭素への取り組みが活発化し、国民の関心も高まりを見せています。温室効果ガス排出量が一定量を超えていない企業にとっては直接関係するものではありませんが、脱炭素に取り組む上で温室対法への理解を深めることは役に立ちます。

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