これからのビジネスモデルのカギになる?サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミーという言葉を耳にしたことがあるかもしれません。どういうものなのでしょうか。サーキュラーエコノミーとは資源を循環させる経済のしくみをいいます。

日本では2000年代から3Rに取り組んでいました。しかし、海洋プラスチックゴミの問題が深刻となる中、世界でもサーキュラーエコノミーを推進する動きが高まっています。今回はサーキュラーエコノミーについて背景や取り組み、G7やG20環境大臣会合の話題にも触れ、解説いたします。

目次

  1. サーキュラーエコノミーとは

  2. サーキュラーエコノミーが推進される背景

  3. サーキュラーエコノミーに向けた取り組み

  4. まとめ:サーキュラーエコノミーを企業経営に反映させよう!

1. サーキュラーエコノミーとは

世界の関連市場は500兆円?

サーキュラーエコノミーとは、ゴミを出すことなく資源を循環させる経済のしくみを構築し、持続可能な発展を目指すものです。循環経済と訳されており、これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄の線形経済から、廃棄物の発生をできるだけ少なくし、製品の価値を長期にわたり保全、維持することを目的としています。

世界的にサーキュラーエコノミーの市場規模は拡大しており、2030年には世界の関連市場が500兆円にもなるとの見通しもあります。

出典:環境省『令和3年版環境・循環型社会・生物多様性白書 第2節循環経済への移行』(2021)

日本はかねてより3R(Reduce、Reuse、Recycle)を推進してきました。さらなる廃棄物の抑制、資源の再利用等、新しい経済のあり方への転換が迫られています。政府はビジネス戦略として、サーキュラーエコノミーに取り組む企業が中長期的な競争力を得ることによって、持続可能な事業経営が促進されることを目指しています。また、作る前からゴミにならないデザイン等、製品、サービスの資源効率性や循環性を備えることは、ESG投資の投資判断のひとつとなっています。

出典:経済産業省『「循環経済ビジョン2020」を取りまとめました』(2020)

2. サーキュラーエコノミーが推進される背景

サーキュラーエコノミーが推進される背景には、人口増加による資源の枯渇、エネルギー問題、廃棄物の増加、海洋プラスチック問題をはじめとした環境問題があります。

3Rの推進でいち早く取り組んできた

日本は最終処分場の逼迫が顕在化してきた2000年頃から3Rに取り組んできました。Reduce廃棄物を減らす、Reuse繰り返し使う、Recycle再資源化することで、環境、資源の枯渇に対応してきました。サーキュラーエコノミーの市場規模が世界で拡大する中、今後さらに循環型の経済の構築を強化することによって、経済成長効果を生むことが可能とみられています。

出典:環境省『令和3年環境・循環型社会・生物多様性白書 第3章 循環型社会の形成』(2021)

出典:環境省「令和3年環境・循環型社会・生物多様性白書『第3章 循環型社会の形成』」(2021)
出典:3R活動推進フォーラム『3Rについて』
出典:経済産業省『3R政策』

環境配慮要請の高まり

世界人口の増加、新興国の経済成長により市場経済は膨らみ、資源やエネルギーの増加、それに伴う廃棄物の増加が顕著になりました。将来的な資源価格の高騰が懸念されることや、アジア諸国の廃棄物に対する輸入規制等の問題も顕在化しています。

デジタル技術の進展によるサービスの加速化や地球温暖化問題も相まって、ESG投資をはじめとした環境への配慮の要請が高まっているのです。サーキュラーエコノミーは、廃棄物の抑制という環境活動から、中長期的な成長戦略として転換が図られています。

出典:経済産業省『循環経済ビジョン2020(概要)』

深刻!海洋プラスチックゴミの問題

海洋プラスチックゴミの問題は国際的にも関心が高まっています。生態系を含めた海洋環境への悪影響や船舶航行への障害、そして漁業、沿岸居住環境への悪影響も懸念されています。

特に、マイクロプラスチックと呼ばれる5mm以下の微細なプラスチックは、長期にわたり自然分解されることなく、食物連鎖を通じて多くの生物に深刻な影響を及ぼしています。このままでは2050年には魚の総重量を上回るとも言われています。

この問題については、2021年に開催されたG7やG20環境大臣会合でも議題に上りました。

出典:環境省「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書『第3章 プラスチックを取り巻く状況と資源循環体制の構築に向けて』」(2019))
出典:政府広報オンライン『海洋プラスチックごみ問題』

ネイチャーポジティブとG20環境大臣会合

2021年6月、G7サミット(主要7カ国首脳会議)で2030年「自然協約」が採択され、「ネイチャーポジティブ」が宣言されました。これは2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させることです。さらに、2021年7月、G20環境大臣会合が開かれ、海洋プラスチックゴミ問題や循環経済について、話し合われました。これらの課題には、世界的に取り組みが強化されていくことになるでしょう。

出典:環境省『別紙1-2 G20環境大臣会合コミュニケ(仮訳)』(2021)
出典:外務省「G7・2030年『自然協約』サマリー」(2021)

TNFDの発足

TNFD自然関連財務情報開示タスクフォースは、気候変動や自然破壊への取り組みを推進することを目的とし、金融機関や企業の活動による自然関連リスクなどの情報を開示するものです。G7サミット主要7カ国首脳会議に先だって、2021年6月に発足しました。自然破壊リスクに対し、企業活動の自然への依存度や影響を、企業が把握することを促す枠組みとなっています。

環境、社会、ガバナンスを重視するESG投資は世界的に拡大の一途を辿っていますが、サーキュラーエコノミーも判断材料の一つとなっており、TNFDを通してますます企業の責任が問われることになるでしょう。

出典:環境省「令和3年環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書『5 ESG金融の推進』」(2021)
出典:日本経済新聞『自然破壊リスク、開示枠組みづくりへ国際組織発足』(2021.6.4)

3. サーキュラーエコノミーに向けた取り組み

前章のような国内、国際的な潮流により、資源を循環させる経済の仕組みの構築が重要となりました。国内外の機関投資家の間では、サーキュラーエコノミーを主要なテーマとして考慮する動きが活発化しています。

では、サーキュラーエコノミーに向けて、日本では具体的にどのような取り組みがなされているのでしょうか。

再生・再利用

製品を長く使用できることや、修理や再利用、リサイクルによって価値を保つことは、大量生産、大量消費、大量廃棄と対局にあるものです。設計段階から価値の保持が可能なコンセプトにすることよって、魅力的なサービスや商品というさらなる価値の創造に結びつきます。

再生、再利用については、家電リサイクル法による家電製品の回収、材料のリサイクルや、自治体による家具等の耐久消費財のリサイクルの取り組みがなされています。製品メーカー独自の取り組みも増えています。ユニクロが回収したダウンでリサイクルダウンジャケットを商品化したことは、記憶に新しいところです。

また、エネルギー源として永続的に利用できる自然由来のエネルギーは、今後のエネルギー政策の中心となっていくでしょう。バイオマス発電は、資源の有効活用となるだけでなく、発電で発生した熱の農業等への活用や、ガソリンに替わるバイオマス燃料として二次利用が可能なものがあります。

出典;資源エネルギー庁『エネルギー白書 第3節 一次エネルギーの動向』(2021)

出典:環境省『サーキュラー・エコノミー』PDF(2021)

シェアリング、サブスクリプションの拡大

所有、消費する経済から、共有、利用する経済に移行しつつあります。事務所を持たずにワーキングスペースを共有するコワーキング、インターネット上で不用品をやりとりするフリーマーケットやオークション、シェアサイクル等のシェアリングサービス、音楽・動画配信等定額料金でサービスやコンテンツを利用するサブスクリプションは資源の有効利用という点で、サーキュラーエコノミーに当たります。

これらのサービスは、インターネットを介して、ますます広がりを見せています。モノ、空間、移動手段、スキル、資金等、あらゆるものをシェアするビジネスの拡大は目覚ましいと言えるでしょう。

出典:総務省『令和2年版 情報通信白書|第1部 5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築』

海洋プラスチックゴミへの対応

海洋プラスチックゴミ問題は、国際的にも重要課題としてあげられています。プラスチックゴミの収集システムの構築、適切な廃棄物処理やリサイクルのインフラ整備について、国内はもとより途上国への国際協力も叫ばれています。また、環境に配慮された設計、製造や、代替素材の利用促進もキーポイントとなってくるでしょう。

政府はプラスチック資源の循環促進について、基本方針を策定しています。まず、廃棄物排出の抑制や環境に配慮した設計とすることが重要としています。

すでに有料化されているレジ袋に加え、ストローやスプーン等の使い捨てプラ製品についても、有料化や再利用の対応を義務化する措置を具体案として示しています。

さらに、市区町村の分別回収・商品化だけでなく、製造・販売事業者による自主回収や再資源化についても促進し、資源循環の高度化を目指しています。

株式会社パイロットコーポレーションは、海洋プラスチックゴミから再生した樹脂を使用したボールペンを発売しましたが、このようなリサイクル素材の回収、活用、流通が今後拡大することが期待されます。

出典:環境省『令和3年環境・循環型社会・生物多様性白書 第2節 循環経済への移行 2 プラスチック資源循環戦略の具体化』(2021)

4. まとめ:サーキュラーエコノミーを企業経営に反映させよう!

大量生産、大量消費、大量廃棄の経済に変わり、サーキュラーエコノミーは持続可能な社会形成に不可欠なものと言えるでしょう。サブスクリプション等、経済の形としてすでに社会生活に定着している部分もあります。

今後のモノづくりやサービスのあり方は、持続可能であるかが付加価値を生み出す一つの指針となるではないでしょうか。環境や循環性に配慮した経営が、投融資を呼び込み、企業価値の向上に寄与するでしょう。

価値の保持、再生、再利用、シェア、リサイクル、これらのキーワードにビジネスチャンスがないか、検証してみてはいかがでしょうか。

 

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