企業が公開!GRIスタンダード対照表の概念やメリット紹介

ESG投資の広がりを受け、GRIスタンダード対照表を作成し、非財務情報を開示する企業数が増加しています。非財務情報開示ガイドラインには、価値協創ガイダンスやTCFDなどもありますが、どのような特徴があるのでしょうか。この記事では、GRIスタンダード対照表とはどのようなものか関心のある法人の皆さまが知っておくべき、GRIスタンダードに関する概念やメリット、課題などの基本的な知識についてご紹介します。

目次

  1. GRIスタンダードとは?

  2. その他非財務情報開示ガイドライン

  3. GRIスタンダード対照表を企業が公開するメリット

  4. GRIスタンダードが抱える課題とは?

  5. まとめ:GRIスタンダードへの理解を深め、ESG対策につなげよう!

1. GRIスタンダードとは?

GRIスタンダードとは、どのような非財務情報開示ガイドラインなのでしょうか。ここでは、GRIスタンダードの概念や企業の活用状況についてご紹介します。

GRIスタンダードとは?

GRIスタンダードは、オランダに本部を置く国際的な非営利団体GRIが主体となり策定しています。GRIスタンダードは、非財務情報開示ガイドラインの1つです。非財務情報とは、財務情報以外の情報を指していますが、従来の財務情報だけでなく環境・社会・ガバナンスの要素も考慮するESG投資への関心の高まりにより、重要視されています。

GRIスタンダードは、全ての組織を対象にしていることから、世界で最も利用されているガイドラインであり、組織の背景情報や重要課題のマネジメント、経済・環境・社会面における影響など合計800以上の項目から構成されています。

出典:経済産業政策局『事務局説明資料(運営:SDGs経営/ESG投資に係るメッセージ発信等)』(2019年3月)(p.11)

出典:国際開発センターSDGs室『GRIスタンダードについて』

GRIスタンダードの活用状況

日本IR協議会が2018年度に実施した実態調査によると、主な非財務情報開示ガイドラインのうち、「活用中または活用予定」との回答が多かった順に26.2%の価値協創ガイダンス、24.5%のIIRC、23.3%のGRIとなっています。企業規模で見ると

海外市場に上場しているグローバルな企業ではGRIやIIRCの活用が多い結果となっています。

出典:経済産業政策局『事務局説明資料(運営:SDGs経営/ESG投資に係るメッセージ発信等)』(2019年3月)(p.10)

2. その他非財務情報開示ガイドライン

代表的な非財務情報開示ガイドラインには、GRIスタンダードを含めて5種類あります。GRIスタンダードとはどのような違いがあるのか、それぞれ特徴をご紹介します。

価値協創ガイダンス

価値協創ガイダンスは、企業と投資家の建設的な対話を促進させることを目的に経済産業省が主体となり策定したものです。価値協創ガイダンスは、価値観、ビジネスモデル、持続可能性・成長性、戦略、成果と重要な成果指標(KPI)、ガバナンスの6項目から構成されています。

出典:経済産業省『価値協創ガイダンス解説資料』(2018年3月)(p.6)

国際統合報告フレームワーク

国際統合報告フレームワークとは、IIRC(国際統合報告評議会)が中心となり、統合報告書の作成にかかわる指導原則や内容要素をまとめたガイドラインです。

4つの基礎概念と9つの内容要素から構成されています。統合報告書を作成し情報を公開することで、財務資本の提供者に対して、企業がどのようにして長期にわたり価値を創造していくかを説明することができます。

出典:Integrated Reporting『国際統合報告 フレームワーク 日本語訳』(p.4)

SASB

SASBとは、ESG要素に関する開示請求の基準を定めているアメリカの非営利団体です。米国証券取引所に上場し、有価証券報告書や年次報告を提出する企業を対象にしています。

出典:経済産業政策局『事務局説明資料(運営:SDGs経営/ESG投資に係るメッセージ発信等)』(2019年3月)(p.11)

TCFD

TCFDとは、G20の要請を受け設立された気候関連財務情報開示タスクフォースのことです。企業に対し、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の観点から気候変動関連リスクに関する情報開示を求めます。

2021年8月25日時点におけるTCFD賛同機関数は、世界で2,418、日本では475です。

出典:TCFDコンソーシアムホーム『TCFDとは』

3. GRIスタンダード対照表を企業が公開するメリット

日本においてもGRIが定めるガイドラインに基づき、GRIスタンダード対照表を公開する企業が増加しています。ここでは、企業がGRIスタンダード対照表を公開するメリットについてご紹介します。

(1)情報開示により透明性と説明責任の確保

GRIスタンダードは、5つの非財務情報開示ガイドラインの中で最も普及しています。世界の大手企業上位250社の内、75%がGRIスタンダードを利用し、サステナビリティ報告書などを作成しています。企業のあり方を情報開示することは、透明性や説明責任の確保につながり、ステークホルダーとの信頼関係を強化することができます。

出典:国際開発センターSDGs室『GRIスタンダードについて』

(2)投資家へのアピール

GRIスタンダードなど非財務情報の開示が重要視されている背景にあるのが、ESG投資の普及拡大です。日本においても世界においても、投資にESGの視点を組み入れる機関投資家の投資原則であるPRIに署名する機関数が増加しています。GRIスタンダード対照表を公開することで、投資家へアピールすることができます。

出典:経済産業省『ESG投資』

4. GRIスタンダードが抱える課題とは?

非財務情報開示ガイドラインの1つである

GRIスタンダードには、解決すべき課題があります。ここでは、GRIスタンダードに関する課題デメリットについてご紹介します。

ESG情報開示基準の乱立

GRIスタンダードを含め、ESG情報開示基準が多すぎることから、企業にとっても投資家にとってもデメリットが生じています。企業にとっては、開示基準の内容を1つ1つ比較し精査するのが煩瑣になり、投資家にとっては、開示されている情報の比較可能性が損なわれるという課題があります。

出典:多様化するESG情報開示基準等の果たす役割と課題』(2019/12/20)(p.20.21)

企業の個性を出しにくい

GRIスタンダードは、800以上もの項目に分けて企業に情報を開示することを求めています。基準が細かく定められていることかは、企業の個性を出しにくいという課題を抱えています。

5. まとめ:GRIスタンダードへの理解を深め、ESG対策につなげよう!

GRIスタンダードは、800以上の項目から成る非財務情報開示ガイドラインです。

GRIスタンダード対照表を作成し公開することで、企業の透明性や説明責任を確保することができます。そして、ステークホルダーとの信頼関係を強化し、ESG投資家へアピールすることがにつながります。

ぜひこの記事をきっかけにGRIスタンダードへの理解を深め、ESG対策につなげていただければと思います。

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