環境にやさしい木質バイオマス発電。概要や手続きを分かりやすく解説

木質バイオマス発電は、廃材などを燃料として活用できることなどから、地域活性化や地域の環境改善にもつながるエコな電源として今後のさらなる普及が期待されています。

この記事では、木質バイオマス発電とはどのような再生可能エネルギーなのか一通り理解を深めたいと考える法人の皆さまが知っておくべき、基本的な知識についてご紹介します。木質バイオマス発電への理解を深め、今後の企業の環境活動の検討につなげていただければと思います。

目次

  1. エコな電源。木質バイオマス発電とは?

  2. バイオマス発電の現状と課題

  3. バイオマス発電を設置するまでの流れ

  4. まとめ:木質バイオマス発電への理解を深め、企業の環境活動を検討しよう!

1. エコな電源。木質バイオマス発電とは?

木質バイオマス発電では、薪や木質チップなどを燃焼させ発電する時にCO2を排出します。しかし、再生可能エネルギーの1つであるバイオマス発電に位置づけられ、普及が推進されています。ここでは、木質バイオマス発電について知っておくべき基本的な知識として、発電方法やエコな電源とされる理由、木質バイオマス発電のメリットについてご紹介します。

木質バイオマス発電はどのように発電するのか?

木質バイオマス発電で燃料として利用される資源は3種類あり、燃料製造コストが高い順に薪、木質チップ、木質ペレットです。木質バイオマス発電で利用する燃料は、林業や製材工場、土木建設、建築物の解体などから発生します。

木質バイオマス発電で利用されるのは主に木質チップです。木質バイオマス発電の発電方法には、汽力発電とガス化発電の2種類があります。しかし、日本では燃料をボイラーで燃焼することで高温高圧の水蒸気を発生させ、スチームタービンを回転する発電方法が一般的です。

出典:林野庁『第2章 木質バイオマスエネルギー編』(p.12.18)

出典:林野庁『木質バイオマス発電事業の概要』(p.25)

木質バイオマス発電がエコな電源である理由

木質バイオマス発電では、燃料を燃焼させる時に、温室効果ガスを排出しています。しかし木材は成長する過程で光合成によりCO2を吸収し、燃焼時に生じるCO2の排出量と相殺されるため、木質バイオマス発電は、カーボンニュートラルの電源であると解釈されています。

出典:資源エネルギー庁『バイオマス発電のライフサイクルGHGについて』(2020年11月)(p.25)

出典:林野庁『なぜ木質バイオマスを使うのか』

木質バイオマス発電のメリット

木質バイオマス発電がエコな電源であることもメリットですが、この他にも様々なメリットがあります。

[1]循環型社会の構築

循環型社会とは、資源を有効活用することで廃棄物の量を削減させる、環境への負荷が少ない社会を指す言葉です。木質バイオマス発電では廃材なども燃料として利用できることから、循環型社会の構築につながります。

[2]地域活性化

自然資源が豊かな地域で雇用を生み出すため、地域活性化につながります。また廃棄物の量が減ることで、地域の衛生環境も良くなります。

出典:資源エネルギー庁『バイオマス発電』

2. バイオマス発電の現状と課題

日本は2050年度までの脱炭素化を実現させるために、5種類の再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス)の普及をバランス良く拡大させる方針を打ち出しています。ここでは、日本におけるバイオマス発電の目標と普及状況、目標達成のために打破すべき課題についてご紹介します。

バイオマス発電の普及目標と現状

「第6次エネルギー基本計画の素案」によると、日本は2030年度までの野心的な見通しとして、再生可能エネルギーの割合を現行目標の22〜24%から36〜38%に引き上げる可能性があります。再生可能エネルギーの電源ごとに見ると、どの電源も200〜400億kWhの追加導入が見込まれており、バイオマス発電の普及促進も今後さらに進むことが予想されます。

出典:資源エネルギー庁『エネルギー基本計画(素案)の概要』(2021/7/21)(p.12.13)

目標達成のために打破すべき課題

バイオマス発電は、発電コストと効率面において課題を抱えています。他の電源と比較すると発電コストが高く、木質バイオマス発電の効率は良くて30%程度とされています。今後さらなるバイオマス発電普及を進めるためには、発電コストの高さと効率の悪さを改善する必要があります。

出典:資源エネルギー庁『持続可能な木質バイオマス発電について』(2020/7/20)(p.12)

出典:林野庁『第2章 木質バイオマスエネルギー編』(p.18)

3. バイオマス発電を設置するまでの流れ

資源エネルギー庁は、バイオマス発電所設置に関する指標となる「事業計画策定ガイドライン」を定めています。バイオマス発電所を設置するまでの基本的な流れと、補助金制度についてご紹介します。

バイオマス発電設置の流れ

事業計画策定ガイドラインでは、バイオマス発電設置について4つの過程に分け説明しています。

[1]企画立案

バイオマス発電所を円滑かつ確実に実施するためには自治体や地域住民の理解が不可欠であるとし、企画立案に関して3つの遵守事項を定めています。

  • 土地及び周辺環境の調査・土地の選定・関係手続

  • 地域との関係構築

  • 燃料の安定調達に関する計画の策定及び体制の構築

[2]設計・施工

バイオマス発電所の運転開始後に、安定かつ効率的に発電を続けるためには「防災・環境保全・景観保全」の観点から策定された計画に基づいて設計・施工することが重要と考えられており、4つの遵守事項が定められています。

  • 土地開発の設計

  • 発電設備の設計

  • 施工

  • 周辺環境への配慮

[3]運用・管理

適切な方法で発電し、長期間安定して電気を供給するためには適切な保守点検と維持管理が重要であるとし、5つの遵守事項が定められています。

  • 保守点検及び維持管理に関する計画の策定及び体制の構築

  • 通常運転時に求められる取組

  • 非常時に求められる対処

  • 周辺環境への配慮

  • 設備の更新

[4]撤去・処分

バイオマス発電所が適切に撤去・処分されることは、再生可能エネルギーの長期安定的な発電と自立化につながるとし、2つの遵守事項を定めています。

  • 計画的な廃棄等費用確保

  • 事業終了後の撤去及び処分の実施

出典:資源エネルギー庁『事業計画策定ガイドライン』(2021年4月)

資金調達はどうする?

政府だけでなく、新たにバイオマス発電設置を計画している事業者を対象とする補助金制度を実施している自治体もあります。補助金の事例をいくつかご紹介します。

[1]食料産業局バイオマス循環資源課「再生可能エネルギーの導入等の推進」

地産地消に該当するバイオガスプラントなどの導入を計画している民間団体等を対象に、補助金が交付されます。

出典:農林水産省『8 再生可能エネルギーの導入等の推進』

[2]山形県「山形県再生可能エネルギー等設備導入事業費補助金」

山形県は、特にバイオマス発電の普及促進に力を入れています。木質バイオマス燃焼機器の購入費として上限50万円が交付されます。

出典:山形県『【エネルギー政策推進課】令和3年度山形県再生可能エネルギー等設備導入事業費補助金』

4. まとめ:木質バイオマス発電への理解を深め、企業の環境活動を検討しよう!

法人の皆さまが知っておくべき、木質バイオマス発電に関する基本的な知識をご紹介しました。

木質バイオマスはCO2を中立するカーボンニュートラルな電源であるだけでなく、循環型社会の構築や地域活性化にもつながる優れた電源です。木質バイオマス発電への理解を深め、自社の活動としてできることはないか、検討してみてはいかがでしょうか。

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