SBTとは?目標設定や認定取得の方法を解説

SBTとは、国際的に温室効果ガス削減の取り組みを進めることで、日本でも近年、注目が高まっています。その背景には、気候変動による企業の経営のリスクが関係しており、自社だけでなくサプライチェーン全体での環境保護の取り組みが重要だとしています。

ここでは、SBTについてその概要や目標設定の方法、SBT認証の取得方法、SBT設定で期待できるメリットなどをご紹介します。せひ、SBTの知識を理解して環境に配慮できる企業を目指しましょう。

目次

  1. SBTとは

  2. SBTの考え方と目標設定の方法

  3. SBT認証取得の手順

  4. SBTに取り組むことで得られるメリット

  5. まとめ:SBTを理解し実践して環境貢献の意識が高い企業を目指そう!

1.SBTとは

ここでは、SBTの概要や日本のSBT参加状況などをご紹介します。

SBTとは

SBT(Science Based Targets)とは、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のことです。パリ協定で合意された地球の温度の上昇を産業革命以前と比べて2℃未満または1.5℃に抑えるという目標に基づいており、CDP、UNGC、WRI、WWFといった4つの国際共同機関の管理のもと、We Mean Businessというイニシアチブの一環として行われています。

そして、企業はこの国際的な目標に沿って5年から15年の間に達成する計画を立てる必要があります。SBTを設定した企業は、気候変動への積極的な対策を公表することで一般社会や投資家からの指示や信頼を得やすくなると考えられています。

出典:経済産業省『パリ協定とは?SBT とは? ~自主的な削減目標を持つ企業による』p,1.2.(2020/12/23)

出典:環境省『SBT(Science Based Targets)について』p,5.9.(2021/08/11)

日本の企業のSBT参加状況

現在、86ヵ国から7,705社がSBTに参加しており、2024年3月の時点で世界全体でSBT認定を受けた企業は4,779社、SBTの目標達成に向けて取り組んでいる企業は2,926社で、この中のSBT認定企業904社は日本の企業で、次いでイギリスの781社と続いています。日本のSBT参加状況で見ると、2023年3月から2024年4月の1年間で479社が新たにSBT認定を受けていることから、日本の企業におけるSBT認定数は、年々増加傾向にあります。さらに、今後2年以内にSBT認定を取得すると宣言しているコミット企業を含めると合計で988社となり、前年度より大幅に増加していることが分かります。

SBTに参加する⽇本企業の認定数

出典:環境省『4. SBT参加企業』p,2.3.4.(2024/03/28)

2.SBTの考え方と目標設定の方法

SBTを達成させるには、SBTの考え方や目標設定を理解することが重要です。ここでは、SBTの考え方や目標設定の方法をご紹介します。

SBTの基本的な考え方

SBTでは、企業が直接的(Scope1)または、間接的(Scope2)に排出する温室効果ガス(GHG)の全量を報告するとし、Scope1・2に対しては、一定の削減目標を設定する必要があり、排出総量を一定の割合で削減していくものとしています。また、他社による間接的な排出(Scope3)に対しては、野心的な目標を設定し、企業が全体の環境負荷を減らし製品ひとつあたりの排出を削減するとともに、取引先や顧客と協力して環境保護に取り組む目標を立てていきます。

出典:環境省『7. SBTの認定基準』p,2.3.4.(2021/08/11)

SBTの目標設定基準

SBTに提出する削減目標は、SBTイニシアチブに基づいた野心的なGHG削減目標であることが重要で、過去に達成した目標や提出日からあまりにも近い目標はSBT目標とは認められません。具体的には、削減目標設定基準は、その目標が提出された日から5年以上15年以内の期間と決まっており、例えば、目標を2020年前半に提出した場合はその目標期間は2024年から2034年の間で企業が独自に設定することができます。また、GHGインベントリは、提出日から2年以内に作成したものを使うこととしています。

基準年と目標年のイメージ

出典:環境省『7. SBTの認定基準』p,11.12.13.(2021/08/11)

SBTの削減対象となる範囲

SBTは、Scope1・2・3を全て合わせたサプライチェーン全体の排出量を削減することを求めており、Scope1・2では企業が設定した目標期間の間に、地球の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2℃未満できれば1.5℃未満に抑えるレベルの排出削減の達成を望んでいます。その際、1.5℃シナリオに沿った割合で再生可能エネルギーの積極的な使用は、Scope2の排出削減目標を達成するための代替手段として認められます。また、企業のScope3排出量がScope1と2を含む総排出量の40%以上であった場合、企業はScope3の排出削減目標を設定することが求められています。

出典:環境省『7. SBTの認定基準』p,14.15.18.21.(2021/08/11)

出典:環境省『SBT(Science Based Targets)について』p,7.(2021/08/11)

3.SBT認証取得の手順

SBTの認証を受けるためには、SBT事務局に申請をし審査を受ける必要があります。ここでは、SBT申請の手順をご紹介します。

SBT申請の手順

SBTの申請手順は、まず、企業側は任意でCommitment Letterを提出し、2年以内にSBTを設定することを宣言します。そして、SBT事務局による審査の後、目標が認定されると企業側はSBTのウェブサイトで公表し、排出量と対策の進捗状況を毎年報告し公開します。さらに、企業は定期的に目標が適正かどうかを見直し5年ごとに新しい目標の設定を行っていきます。また、SBT事務局のサービスを利用して目標を設定し、その評価を受ける際には費用が掛かります。

出典:環境省『6. SBTの手続き』p,2.(2021/08/11) 

SBT申請には「中小企業」と「通常」がある

SBT事務局は、独自に従業員500人未満・非子会社・独立系企業などの中小企業向けのガイドラインを設けており、目標提出後の審査のある通常SBTと異なり目標提出後に自動的に承認されるシステムとなっています。これは、2℃のシナリオまたは1.5℃のシナリオから、2018年から2030年の間でScope1・2の削減の目標を設定するものとなっています。

出典:環境省『7. SBTの認定基準』p,24.(2021/08/11)

4.SBTに取り組むことで得られるメリット

投資家獲得拡大の期待

近年、気候変動に関する情報開示を促進する国際的システム「CDP」に署名する投資家が増加しており、企業がSBTを設定することは自社が環境に優しい企業だということを投資家にアピールするとともに、CDPの評価で高い点数を得るために役立ちます。そのため、環境や社会の責任を重視する投資家の注目を集め、投資家の投資意欲を促進する効果が期待できます。

出典:環境省『SBT(Science Based Targets)について』p,14.15.17.(2021/08/11)

ビジネス拡大のチャンス

リスクを重視する顧客はサプライヤーにも高い目標の設定を望んでおり、企業はSBTを設定し顧客の要望に応えることで、企業がビジネスを展開する上でのリスクを減らすとともに新しいビジネスチャンスを掴む期待があります。特に、SBT認定企業は、自社の活動だけでなくサプライチェーン全体のGHG排出量削減の目標を立てる必要があり、サプライヤーにも環境目標を設定してもらうことで環境に配慮したビジネスを求める顧客のニーズに応えることができます。

出典:環境省『SBT(Science Based Targets)について』p,22.23.(2021/08/11)

サプライチェーンでのリスク軽減

サプライチェーンは、地震や洪水などの自然災害や法律が変わることで影響を受けやすく、このような外部の影響をできるだけ少なくするためには、サプライヤーが環境保護に取り組む必要があります。仮にサプライヤーが環境に配慮しないと、それが企業の評価に影響を及ぼし、経済的な負担が増えるリスクを引き起こす可能性があります。サプライチェーン全体の環境目標であるSBTを設定し企業が環境に配慮した目標を立てることで、協力する他の会社も同じように環境保護に取り組むように促すことができます。そして、目標をサプライヤーと共有することで供給過程のリスクを下げることができます。

出典:環境省『SBT(Science Based Targets)について』p,29.30.(2021/08/11)

5.まとめ:SBTを理解し実践して環境貢献の意識が高い企業を目指そう!

SBTとは、地球の温度の上昇を産業革命以前と比べて2℃未満または1.5℃に抑えるという目標に基づいた企業が設定する温室効果ガス削減目標のことです。SBTに取り組むことは、投資家獲得やビジネスの拡大のチャンスやサプライチェーン全体のリスク軽減に期待があるのも注目したい点です。SBTの認定を受けるにはSBT事務局に申請が必要となり、ガイダンスに沿った目標設定と情報提供が求められます。

気候変動はビジネスに影響を与えるため、ぜひ、SBTの目標を設定しサプライチェーン全体で環境保護の意識を共有して、環境に配慮した企業としての評価を高めていきましょう。

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