環境配慮と電力供給をセットに!PPAモデルの仕組みとは

近年、エコへの取り組みの一環で再生可能エネルギー(以下、再エネ)の活用需要が高まり、太陽光発電が注目されています。そこで注目されているのが「PPAモデル」と呼ばれる仕組みです。電力を必要とする企業や団体と発電業者の協業であるPPAモデルの仕組みや実施方法をまとめてチェックしましょう。

目次

  1. PPAモデルの仕組み

  2. 法人がPPAモデルを取り入れるには

  3. PPAモデルの懸念点は長期契約?

  4. まとめ:PPAモデルの導入を検討しよう

1. PPAモデルの仕組み

太陽光発電とセットで語られることが増えてきた「PPAモデル」。電力と再エネ活用の証明書といった環境価値を手に入れられる仕組みですが、実際にはどういったものかご存じでしょうか?日本国内で主流となっているフィジカルPPAと、欧米ではメインになっているバーチャルPPAの2つをチェックしましょう。

まずはPPAモデルの概要を把握しよう

PPAモデルは、「Power Purchase Agreement(電力販売契約)モデル」の略称です。電気を必要とする団体が発電業者と契約を行い、太陽光パネルなどを設置する場所を貸し出す代わりに、再エネ由来の電力を比較的安価で買い取るという仕組みとなります。

PPAモデルは大きく2種類に分けられます。

(1)フィジカルPPA

フィジカルPPAは、企業が発電業者と直接取引して電力を購入する仕組みのことです。発電業者が発電設備を設置して、電力需要家に電力を供給します。日本で普及しているのはこの形態で、電力と再エネを活用しているという証明書などの環境価値をセットで取引するのが特徴です。

フィジカルPPAの中では、電力需要家が自分たちの所有する場所を貸し出して、発電業者が発電設備を設置し電力を供給する「オンサイトPPA」が主流です。しかし、発電需要の増加で自分たちの場所だけては足りなかったり、そもそも場所を持っていなくとも再エネを活用したい企業などでは、敷地外の場所で生まれた電力を送電設備を利用して受け取る「オフサイトPPA」の活用が増えてきています。

出典:経済産業省『需要家による再エネ活用推進のための環境整備』(p5)

 

(2)バーチャルPPA

バーチャルPPAでは、発電業者と電力需要家が直接長中期的な契約を結ぶという点はフィジカルPPAと同様です。

一方フィジカルPPAと違う点は、電力と環境価値が別々に取引され、市場など通して電力が供給されるということです。日本では電力と環境価値は別々に購入することは制度上の問題で出来ませんが、欧米ではPPAモデルの80%ほどがバーチャルPPAとなっています。

バーチャルPPAにおいて、電力需要家は市場における電力価格変動の影響を受けるリスクはありますが、より自由に再エネ発電事業の場所を選択できるというメリットがあるのです。

出典:自然エネルギー財団『コーポレートPPA 実践ガイドブック』(p.11)

フィジカルPPAでデッドスペースを活用

日本のメインモデルであるフィジカルPPAは、デッドスペースとなる屋根や土地に発電設備を設置するので無駄な空間が有効活用されます。

企業として環境問題などへの取り組みが重要視される中、デッドスペースが企業価値を高める働きをしてくれるのは大きなメリットとなります。

将来的にコストを抑えることができる

従来の火力発電は、化石燃料の金額によって電気代が高くなってしまうことがありました。また、今後枯渇が予想される中で希少価値が高くなり電気代が高騰する可能性もあります。

一方で、再エネは技術の発達により発電コストが抑えられ世界的に見て安価な電力となりました。世界的には既に一番安価な電力が再エネであることもしばしば見られます。

日本では送電網の問題や再エネ活用のための政治的な支援が必要など課題はありつつも、コストは低下しており、将来的には世界水準に近づいていくことが予想されています。

出典:GLOBE+『「再エネは安い」が世界の常識、なぜ日本は高いまま? 普及遅れれば企業に打撃も』(2021年6月6日)

2. 法人がPPAモデルを取り入れるには

法人がPPAモデルを実際に行った事例をチェックして、PPAモデルの実行の条件やどんなポイントで業者を選ぶべきかを確認しましょう。

PPAモデルの活用事例

PPAモデルの活用事例として、小売大手のイオン株式会社が挙げられます。店舗の屋上に発電設備を設置し、店舗運営用の電力として活用するというまさにオンサイトPPAの取り組みを行っています。

また、ビール製造大手のキリンホールディングスでは、2021年2月より国内4つの工場でオンサイトPPAを実施しています。

どちらの企業も、運営において再エネによるエネルギー比率100%を目指す企業で構成されているRE100という国際的な環境イニアシアチブに加盟しています。様々な取り組みによって再エネの活用を進めている中、PPAモデルも有力な手段として認識されています。

出典:イオン株式会社『PPAモデルを導入し太陽光発電電力の活用を拡大』(2019年4月18日)

出典:キリンホールディングス『バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量をネットゼロに向けて具体的取り組みを開始しています』(2021年2月1日)

PPAモデル実行の条件実行条件の一つとして、太陽光発電設置場所が必要なことはいうまでもありません。日本で主流のフィジカルPPAの中でも、オンサイトPPAはシンプルで取り組みやすい仕組みです。しかし、重要なポイントとしてそもそも発電設備を設置する場所を持っているかが挙げられます。

よって、オフサイトPPAやバーチャルPPAを採用して購入する電力を再エネ由来のものにするという形も可能です。

取り組み事業者を選ぶ際のポイント

PPAモデルは日本でも需要が高まり、今後再エネ活用の大きな柱となることが期待されています。PPAモデルに取り組む企業も増えていくことが予想されますが、事業者を選ぶ際には太陽光発電の施工実績はもちろん、メンテナンスの内容スピードといった運用面も重視しましょう。

もしもPPAモデルが稼働したのちに何らかのトラブルが起きた際、すぐに対応ができないと事業に影響を及ぼします。だからこそ、太陽光発電の施工実績だけでなく、サポート体制や対応スピードも非常に重要なポイントとして認識しておきましょう。

3. PPAモデルの懸念点は長期契約?

10年以上の長期契約

PPAモデルは、コストがかからずに太陽光発電を取り入れることができる仕組みですが、基本的には15〜20年程度の長期契約となります。新しくお得な電気料金プランがでたとしても、基本的には途中で解約することは難しくなります。建物面でも、契約期間中はリフォームや取り壊しをすることはできません。

契約終了後の維持は自己負担

契約期間終了後は太陽光発電システムは業者から譲渡されます。契約期間中よりも発電の利益は大きくなると考えられますが、修理やメンテナンスが必要となった際はすべて自己負担でまかなう必要があるのです。

技術、インフラ、政治での協力がカギ

日本ではまだまだ再エネのコストが高く、電力をより安く生み出すための技術の開発、生まれた電力をスムーズに届けるためのインフラ構築、より再エネの活用が進んだり事業者にメリットがある政策などを打ち出す政治といった三者間の協力が欠かせません。

実際に、世界的には太陽光発電は2017年時点で、10セント/kWhとなっており、化石燃料の火力発電の5〜17セント/kWhと同等以下となっています。

日本においても、今後世界水準に近づいていくように取り組みの強化が期待されています。

自然エネルギー財団『世界の自然エネルギー発電コスト:陸上風力は6セント/kWhに低下』(2018年1月23日)

4. まとめ:PPAモデルの導入を検討しよう

SDGsやESGが注目されている中、企業にとって環境配慮のための再エネの活用は今後の企業価値を決める重要なポイントです。日本国内でも大手企業がオンサイトPPAを取り入れ、再エネの活用を進めています。

一方で、日本における再エネのコストは以前に比べると安くなっているとはいえ、従来の化石燃料による火力発電や原子力発電に比べて割高となっているのも事実です。

世界水準では再エネが一番安価な電力として活用が広がりを見せる中、日本国内の活用は進捗が遅い状況ですが、環境への配慮という点では再エネを無視する訳にはいきません。

コストと環境価値のバランスを意識して、企業としてどのようにPPAモデルを取り入れていくのかをぜひ検討してみましょう。

 

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